【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。 作:味音ショユ
え、何だって?(難聴) 結婚? 結婚……。 結婚!?
「……すまんが、もう1度言ってもらえるかな、ユミナ」
「ですから、こちらの望月冬夜様と結婚させていただきたいのです。お父様」
「あらあら」
王様の言葉に、もう1度同じことを言うユミナ王女。王妃様は目を大きく開いて、王女を見ていた。
アルフレッド様も驚いたのか、視線が王様と王女様の間を行ったり来たりしている。
「理由は何だ?」
「はい、お父様を救って頂いたというのもありますが……。冬夜様は周りの人を笑顔にしてくれます。アルフレッド様やシャルロッテ様、みんなを幸せにしてくれます。そのお人柄もとても好ましく、私はこの人と一緒に人生を歩んでみたいと、初めてそう思えたのです」
「そうか……。そうか……? まあ、お前がそう言うのならそうなのだろうな……。なら反対はせん。幸せにおなり」
「お父様!」
「いや待ってぇぇぇ!!」
手を上げて親子の会話をぶった切る。何でとんとん拍子に結婚が決まってるの!?
「あのですね、勝手に話を進められても困るんですけど!」
「おお、すまない。冬夜殿、そういう訳で娘をよろしく頼む」
「待って待ってウェイトウェイトストップぅぅぅ!!」
おかしい……、話が早すぎる……。
「仮にも一国の姫を、どこの馬の骨とも分からん奴と結婚させては駄目でしょう!? というか僕、そんな人柄好ましいですかね!?」
「そこは私も疑問に思ったが、まあユミナが認めたのだから、最低でも君は悪人ではない。そういう質が分かるのだよ、この子はね」
質? どういう意味だ?
「ユミナはね、魔眼持ちなんだよ。人の性質を見抜く力を持っているんだ。まあ、直感のようなものだがユミナは外したことが無い」
アルフレッド様の説明を聞き、自分なりに咀嚼すると本能的にいい人か悪い人かを見極められるということだろうか。その能力があれば悪い男には引っ掛からないだろうけど……。
そんなにいい人か、僕?
「……大体ユミナ姫っていくつですか?」
「12だな」
「結婚とか、早くないですかね?」
「いや、王家の者は大概15までには婚約して相手を見つけるぞ。私も妻と婚約した時は14だった」
えー、14と婚約かー。婚約した以上子作りとかもするんだろうけど勃たないでしょー。
とか思っているとコートの袖を掴まれる。
「冬夜様は私がお嫌いですか……?」
王女様が悲しそうな瞳で見つめてくる。女の涙とかずっる! 断れないんだけど!!
「いや、嫌いじゃ、ない、んだけど……さ……」
「でしたら問題はありませんね!」
コロっと笑顔を見せる王女様、悪女やでこの子……!
どうしよう? 別にこの子は嫌いじゃないし、親も公認だし断る方法が思いつかない。でも結婚したら僕のライフワークであるナンパは出来ないんじゃないか、普通に考えて。
よし、僕は独身貴族を貫くぞ! 平民だけど。
「……僕の国では男は18、女は16まで結婚出来ないんですよ。それに僕は姫様の事を何も知りませんし、結婚とか考えた事もありません」
「でも冬夜様はシャルロッテ様に随分声をかけていましたよね……?」
「いや、知らないからこそ分かりあおうという僕の気持ちで……」
「私の事は、知りたいと思いませんか?」
上目使いで聞いてくる王女様、怖い!
「ところで冬夜さんは15歳でしたね?」
「あと2か月位で16になりますけど」
王妃様の問いに答える僕。僕の体感で、と上に付くから誕生日が地球と日付が合っているかまでは知らない。
「という事は結婚は2年後ですね。それだけ時間があればユミナの事もよく分かりますよね。とりあえず婚約ということにして、冬夜さんにも考える時間を与えましょう」
2年後って王女様14歳じゃないですかやだー、年上がいいー。
「冬夜殿」
「うはぁい!?」
王様の呼びかけに思わず変な声を出す僕。どうしよう。ああ逃れられない。
「これだけは言っておく。私は妻を1人しか娶らなかったが、王族は一夫多妻が一般的だ」
その言葉を聞いた直後、僕は王女様の手を問て傅き、こう言っていた。
「一目見た時から君の瞳にフォーリンラブ」
しまった! 一夫多妻と聞いて思わず王女を口説いてしまった。最悪じゃん!!
「やりましたお母様!」
「良かったですねユミナ。言質さえ取ってしまえば後は勢いで何とかなる物です。私の時もそうでした」
僕の言葉に喜ぶ王女様と王妃様。というか王妃様の言葉怖い! と思って王様を見ると、目をそらして口笛を吹いていた。あんた実は道連れが欲しかっただけだろ!
「冬夜様、コンゴトモヨロシク。あと私は妻が10人いようと20人いようと構いませんよ。それも男の甲斐性というものですから」
メガ○ンの悪魔みたいに仲間になった!? というか凄いこと言ってない!?
「冬夜君」
とここでアルフレッド様が話しかけてくる。
「君が結婚するかどうかは君の意思に任せよう。だがこれだけは言っておく、私の娘には手を出さないでくれよ」
「……出しませんよ」
何だろう、選択肢ミスった気がする。どこでだろうか。
「という訳で着いてきた、ユミナ・エルネア・ベルファスト様です。新人だからって苛めたりしないように」
「ユミナ・エルネア・ベルファストです。皆様よろしくお願いします」
銀月に戻った僕が、一連の事件を皆に話し、王女様を紹介する。何で着いてきちゃったんだろう、王女だよ王女。城の中で蝶よ花よ、って感じで暮らすのが王女って物じゃないの?
「冬夜殿が結婚でござるか……」
「正気ですかユミナ様……」
八重もリンゼも驚きを隠せずにいる、というかリンゼが普通に酷い。
「ほんと、こんなののどこがいいのかしら……?」
エルゼも酷い。が、それは驚きや呆れと言うより何だか苛立ってるように見える。僕なんかした?
「で? 何でお姫様がここにいるのでござるか?」
「はい、お父様の命で冬夜様と一緒に暮らす事になりました。花嫁修業というものです。何分世間知らずでご迷惑をおかけすると思いますが、何卒よろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げる王女様。そうなのだ、あの後王女様を王様は僕に押し付けた。どういうつもりだよ、娘可愛くないのかあの人。相手の事を知るためには近くにいるのが一番肝心って、そりゃそうかもしれないけどせめて護衛位つけろよ! それとも秘密裏に動いているとか、暗殺とかされないだろうな。
そんなことを思い浮かべたら、天井から音がした。サーチで正体位分かるが、確かめたくない。
「一緒に暮らすってここで? お姫様なのに大丈夫な……んですか?」
エルゼの言いたいことはよく分かる。今まで使用人に囲まれて生活していた者が、全て1人でやっていくなど無理じゃないか。
正直、これでやっぱり婚約は無しと言うのなら僕はそれでもいいと思う。
「どうか敬語はやめてください、エルゼさん。とりあえず自分のやれる事から、冬夜様のお手伝いをしていきたいと思います。足手まといにならないように、頑張ります!」
今日も1日がんばるぞい! なポーズをするユミナ。あらかわいい、じゃなくて。
「……具体的には?」
リンゼから質問が出る。
「まずは皆さんと同じくギルドに登録して、依頼をこなせるようになりたいと思います」
「「「「え!?」」」」
僕らの声がハモる。ギルドに登録って、これ以上僕の胃をどうする気だ!?
「姫様。ギルドで依頼を受けるって……。万が一のことがあったらこの国が――」
「分かっています。後、姫様はやめて下さい。ユミナ、と呼んでください、旦那様」
「旦那様はやめて」
「ではユミナ、と」
にっこりと微笑む姫様……もといユミナ。分かってたけどしたたかだなおい。
とりあえず旦那様はやめさせた、冬夜様もやめてもらった。ユミナ、冬夜さん、で。
「シャルロッテ様から魔法の手ほどきと、弓による射撃術を学んでおります。そこそこ強いつもりですよ、私」
「弓と魔法、遠距離攻撃は助かるでござるなあ。魔法の属性はなんでござる?」
「風と土と闇です。召喚獣はまだ3種類しか喚べませんが」
風と土と闇。丁度リンゼが持ってない属性だ。
「うーん、どうする?」
エルゼがリンゼと八重の方を向いて腕を組む。どうする、とはユミナをパーティに入れるかどうか、という事だろう。
「……とりあえず様子見で何か受けてみては?」
「成程。まずは実力を見てから、ということでござるな?」
「そうね。まあ、危なくなったら冬夜が守ってあげればいいのよ。じゃあ決まりね」
何だか僕の意思を無視して話の流れが決定した。とりあえず明日ギルドに行って、ユミナの登録をするという事で決まったらしい。
それからミカさんに彼女の部屋を取ってもらう。
「私は冬夜さんと同じ部屋でかまいませんよ」
「僕が拒否するよ」
「え、何? 冬夜あんた年下趣味だったの? 私は別にいいけどアエラ泣きそう」
「ちーがーいーまーすー、僕はずっと年上好きです!」
「酷いです冬夜さん、一目見た時から君の瞳にフォーリンラブとおっしゃっていたのに……」
嘘じゃないのが性質悪い。
「というかミカさんは泣いてくれないんですか?」
「私も枕を濡らすかもね、涎で」
「快眠だよ!」
微塵も泣く気配見せないな!
「とにかく部屋お願いします!」
「はいよー」
こうして部屋を取り、皆で食事をとり、明日に備えて寝ることにした。
その為に部屋に戻る直前、ユミナと2人きりになり話しかけた。
「……僕の人柄に惚れたとか言ってたけど、それ本気?」
「女性の告白を疑うなんて、冬夜さんは酷いです」
ふて腐れた様な表情を見せるが、僕は何も言わない。
そんな僕を見てユミナは話を続ける。
「……冬夜さんの周りの人が笑顔になっているのを見て素晴らしいと思ったのも、人柄が好ましいと思ったのも事実です。でもそれだけじゃ普通婚約なんて望みませんよね」
「でしょ?」
一番引っ掛かっていたのはそこだ、ユミナもその両親も展開が早すぎた。
「私がこんな性急に行動したのは、冬夜さんの第1夫人になる為ともう1つ」
そこでユミナは今日1番の満面の笑みを僕に向け
「冬夜さんにこの国の力になって欲しかったからです」
そんな腹黒いことを言ってきた。
「全ての無属性魔法を使える、はっきり言って異常です。それを万が一にでも他の国に奪われるのは、ですね……」
「良くないだろうね」
何か、納得した。僕じゃなくて僕の力が目当てって所に。それなら、まあ理解できる。
「とはいっても両親は何も知りません。察してはいるかもしれませんが、これは私の独断です」
「そっか……」
「冬夜さんは、腹黒い女の子は嫌いですか?」
そう言って上目使いで僕を見つめるユミナ。本当にずるい子だ。
「別に。ただ明日からはもう少し気兼ねなく接せると思っただけだよ」
全部許してくれると思って、僕に本音を話してる。
「……じゃあおやすみ、ユミナ」
「はい、おやすみなさいませ冬夜さん。ありがとうございました」
それを聞きながら僕は部屋に入る、これでようやく1人きりだ。
すっきりした気分で眠れると思ったら、いきなりスマホから着信音が聞こえてきた。
スマホを取り出すと、着信神の文字が。
「……もしもし」
『おお、久しぶりじゃな冬夜君。婚約おめでとう』
「何ですか、ストーカーですか。いつもニコニコ這いよる神様ですか」
『機嫌悪いのうおぬし……。たまたまじゃよ。久しぶりに君の様子を見たら、何か面白いことになっておるのう』
神の楽しげな声が聞こえる、腹立つ。
「面白くないですよ……。僕結婚願望とか無かったのに……」
『ちょっと腹黒いが王族としてなら必要な技量じゃろ、それを除いても十分いい子ではないか』
「まあ、将来は美人になると思いますし性格も嫌いじゃないですけど……。でもそれはそれですよ」
『固いのう。そっちの世界は一夫多妻が普通じゃし、気に入った娘がいたらどんどん嫁にしていけばいいのに』
「それに釣られて思わず告白しましたよ」
『あれは酷かったの』
「自分でもそう思います」
あの時点でやっぱ無し、と言われると思ってよ僕。
『まあ、君がこれからどうなるか皆楽しみにしているんでな、頑張りたまえ』
「勝手だな本当……。ところで皆って何です?」
『この世界の神々じゃな。ワシが一番上の世界神で、他に下級の神として芸術神や恋愛神、剣神などいろいろおるぞ。特に恋愛神は君を見て興味津々じゃったぞ』
何そのまんまなネーミング。
「とりあえず神々の間にプライバシーって言葉根付かせてくれません?」
『断る!!』
僕の要望は力強く断られた。じゃあもういい、諦める。
『まあ、応援しとるよ。よく考えて後悔しない生き方をせい。君には幸せになって欲しいからの。では、またな』
「はあ……」
曖昧に返事で電話を切る。後悔しない生き方か……。
「何をすれば後悔しないのかなんか、分かんないよ……」
今日はもう寝よう。