【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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銀狼、そして大猿。ラノベのチョロインってどういう育ちしたらああなるんだろうか?

 翌日、僕らは連れ立ってギルドに向かった。

 町を歩くにはユミナの服はあまりにも目立つので、エルゼとリンゼから服を借りてきている。お古か。

 借りものの服なのにえらく似合っている。ちょっとサイズはあって無い気がするが。

 長い金髪は三つ編みで纏められ、動きやすい様にされていた。

 僕はオッドアイの方が目立つと思ったのだが、この世界ではそうでも無いらしい。

 これで見た目だけなら普通の美少女の出来上がりってわけだ。何かパワーワードが生まれた。

 

「ちょっと気になったんだけどさ、ユミナが冬夜と結婚したら、次の王様って冬夜になるの?」

「そうですね。そうなって頂けると嬉しいのですけど。その為には、貴族達や国民に冬夜さんの事を認めさせなければなりません。まあ、弟が生まれればその子が継ぐことになるでしょうけど」

 

 ギルドまでの道すがら、エルゼとユミナが話している。

 頑張れ王様、王妃美人だからいつだってヤる気になれば出来る筈だ。僕を王にしたら碌な事にならないぞ。

 

「僕は王様になる気は無いよ……」

「存じております。叔父様の所に男の子が生まれるとか、私達の間に生まれた子供が男の子なら、その子が継ぐという方法もありますし」

 

 この年で子持ちかぁ……、考えたくないな……。というかシレっと言うねユミナ。

 とりあえず、ギルドの前に武器屋熊八に寄って、ユミナの装備を整える事にする。お金はユミナが王様から選別を貰ったとのこと。中身は白金貨で50枚、過保護にも限度があると思う。

 バランさんに弓を見せてもらう。王都と比べると流石に品揃えは良くないが、それなりにここは物が揃っている。その中からユミナは何本か選び、弦を引いたりして感触を確かめ、丈の短い軽めのM字型合成弓、コンポジットボウを選んだ。

 飛距離よりも扱いやすい速射性を選んだそうだ。

 一緒に矢筒と矢をセットで100本購入。白い革鎧の胸当てと、おそろいでブーツも買った。これで準備OKだ。

 

 

 いつものように賑わうギルドにユミナを連れて入る。

 ギルドにいる男達がこれまたいつもの様に、こちらを一瞥すると舌打ちする。

 最初は理由が分からなかったが、今ならよく分かる。

 エルゼやリンゼ、八重もだけど贔屓目に見なくてもかなり可愛い。そして、そんな子に囲まれている僕に対して男達がやっかみを向けているのだ。

 事実、彼女達が居ない時に僕が絡まれた事もある。まあ、男のやっかみに付き合う趣味は無いので丁重に気絶させて路地裏に捨てさせてもらったけど。

 ま、気持ちは分かるので視線位なら甘んじて受けよう。

 僕がユミナを連れて受付のお姉さんに彼女の登録をお願いしている間に、エルゼ達は依頼書のボードをチェックする。

 登録が終わり、僕とユミナがボードの所へ行くと、1枚の依頼書をエルゼが持っていた。

 

「何かいいのあった?」

「んー、これならどうかなって」

 

 渡された依頼書は、キングエイプ5匹の討伐依頼、か。

 

「どんな魔獣だっけ?」

「大猿の魔獣です。数匹で群れを作り襲い掛かってきます。知能は余り無いので罠などが使えますが、パワーには要注意です。私達のレベルなら問題ありませんが」

 

 力押しのパワーモンスターか、マヌーサ効きそうだな。キングが複数いるのもRPGの雑魚敵っぽいし。と考えつつ、依頼書をユミナに手渡した。

 

「どう、いけそう?」

「大丈夫です、問題ありません」

 

 何かフラグっぽいな、その台詞。

 とりあえずキングエイプ討伐の依頼書を受付に持って行き受理してもらう。場所はここから南、アレーヌの川を渡った先の森だそうだ。

 南には行った事が無いからゲートは使えない。なので馬車を借りていくことにした。

 御者台にはエルゼとリンゼが座り、荷台に僕と八重、ユミナが座った。ちなみにユミナも馬を扱えるそうだ。僕の立場が増々低くなっていく気がする。

 

「いっそ馬車買っちゃおうかな……。一々借りるのも面倒くさくなってきたし……」

「馬車もピンキリでござるが、結構いい値段するでござるよ? 馬の世話も大変でござるし、銀月にずっと預けておく訳にもいかんでござるし」

 

 そっかー、そうだよな。馬の世話なんかやったことないしね、世話も出来ないのに生き物を飼うべきじゃないよね。

 そして3時間後、僕らは目的地に到着した。

 

 

 さて、キングエイプはどーこだっ? サーチで検索出来ればいいのだが50メートル圏内に居たら普通に気づくし、ロングセンスを使ってもあれ1人で森の中探すのと大して変わらないんだよな。

 スマホのマップを見る限りそれなりに大きな森だ。ここから特定の魔獣を探すのは面倒だな。マップの検索機能は生物を探してくれないし。

 面倒くさいけど地道に探すか、と僕らが森に入ろうとした所でユミナが呼び止める。

 

「すみません、森に入る前に召喚魔法を使ってもよろしいですか?」

「召喚魔法?」

「はい、キングエイプを探すのに役に立ちそうな子を呼びたいと思います」

 

 ユミナは僕らから少し離れて、呪文を唱える。

 

「闇よ来たれ、我が望むは誇り高き銀狼、シルバーウルフ!」

 

 魔法が発動されると、ユミナの影から次々銀色の狼が現れた。そのまんまである。全部で5匹、大きさは1メートル位。嬉しそうに尻尾を振りながら、ユミナの周りをまわっている。1匹だけ少し大きく、額に十字の模様がある狼が居た。

 

「この子達にも探してもらいます。離れていても私と意思の疎通が出来るので、発見したらすぐ分かります」

 

 物見の為に生まれたの、こいつら?

 

「じゃあ皆、お願いね」

 

 ユミナが命じると、ひと吠えして皆森の中へ駆けていく。これが召喚魔法か。前に見たリザードマンの時も思ったけど、使ってみたいな。便利そうだし。

 森の中を進みながら、ユミナに聞いてみる。

 

「基本的には呼び出した魔獣と契約さえ出来れば習得できます。あの子達の契約条件は難しくなかったので、楽に契約出来ました。中には戦って力を占めて、自分の問いに答えろと言ってくるものもいます。強さに比例して契約の難度は上がると思ってください」

 

 なるほどなー。何だかゲームみたいだ。

 とか考えてるとユミナが急に立ち止まる。

 

「……あの子達が見つけたようです。でもちょっと多いですね、7匹です」

「7匹ねえ……、ちょっと多いな」

 

 どうする、と僕が目で問うとエルゼは無言でガントレットを打ち鳴らす。やる気マンマンだ。

 

「一気に殲滅の方が良いと思います。1匹でも逃すと仲間を呼ばれるかもしれません」

 

 うわっ、RPGだと優先して倒さなきゃいけないタイプの雑魚だ。それなら僕も大賛成、さっさと叩くとしよう。

 

「ユミナ、キングエイプの群れをこっちにおびき寄せられないかな?」

「可能ですけど……、どうするんですか?」

「罠を張っておこう。落とし穴位なら魔法で作れる」

 

 土魔法で落とし穴を何個か作り、僕らは木の上で待つ。やがて雄叫びと共にユミナが呼び出した狼に釣られて、数匹の大猿が姿を見せる。

 ゴリラより少し大きく、牙が長く、耳が尖っていて目が真っ赤なその猿は、凶暴そうな顔で狼達を追いかける。

 地面に偽装してある落とし穴手前で狼はジャンプし罠を飛び越える。しかし大猿は真っ直ぐに突っ込み見事落とし穴に落ちた。

 

「今だ!」

 

 木の陰から僕、八重、エルゼが飛び出す。罠に嵌ったのは7匹のうち3匹、胸の高さまで埋まった猿が何とか出ようともがいていた。

 そのうち1匹の目に、矢が突き刺さる。ユミナの援護だ、その矢によって生まれた死角から八重が切りかかり、首の頚動脈を断ち切った。

 

「炎よ来たれ、渦巻く螺旋、ファイアストーム!」

 

 罠にかかった残り2匹に、リンゼが炎の竜巻を作り出し無慈悲に焼き殺す。

 そして竜巻が消えた瞬間、残り4匹が腕を振り回しながら、雄叫びと地響きを上げて僕らに向かってきた。

 

「スリップ!」

「オオウ、マッサラデス!」

 

 分かる人居ないだろそのネタ!? なんて言う暇も無くスリップで倒れた大猿に、大量の矢が突き刺さり、最後に猿目掛けて飛び込んだ八重が胸に刀を突き立て、猿は動きを止めた。

 

「ブースト!」

 

 その横ではエルゼが自身の無属性魔法を用いて身体能力を上げ、猿に連続で腹パンを叩き込んでいた。その攻撃に耐えられず、そのまま倒れた猿にユミナの狼達が数の暴力で沈める。

 

「雷よ来たれ、白蓮の雷槍、サンダースピア!」

「炎よ来たれ、紅蓮の炎槍、ファイアスピア!」

 

 残り2匹の猿に、ユミナとリンゼの魔法の槍が突き刺さる。刺された猿は断末魔を上げて地に倒れ伏した。

 おお、魔法の腕はリンゼ並か。ということは六属性魔法では僕より上だな。僕はどうにも魔力の調整が上手くいかないからか、上位魔法、特に攻撃魔法がなかなか習得できない。光属性は得意なんだけどね。これは僕の心が光属性であることを表しているに違いない。

 とりあえず戦闘終了、ユミナの影に5匹の狼が飛び込んでは消えていく。

 

「あの、私どうでしたか?」

 

 ユミナの聞きたいことは分かっている。足手まといなっていないかだろう、なってない所か大助かりだ。援護射撃ってありがたいんだなあ……。

 

「実力的には何の問題もないわ」

「魔法も中々のものです」

「後方支援は助かるでござる」

 

 次々とユミナの実力を認める肯定的な意見が出てくる。その意見は最もだと僕も思うので無言で頷いて賛同しておく。

 

「気持ちは、口に出さないと伝わりませんよ……」

 

 そんな僕を見てユミナが口を出してきた。はぁ……。

 

「これからもよろしく頼むよ、ユミナ」

「はい、お任せ下さい! 冬夜さん!」

 

 何だか外堀が埋められている気分だ。と思っていたらユミナが腕に抱きついてきた、スキンシップのつもりだろうか。

 それを引き剥がして、キングエイプの個体確認部位である牙を集めていく。

 

「しかし、ユミナが入ると女の子4人なのに男は僕1人か……」

 

 ラノベ主人公みたいだ、と小さく溜息をつく。

 

「男女比に何か問題でも?」

 

 リンゼが尋ねてくる。いや問題はあるんじゃない?

 

「3人とも気づいてないかもしれないけど、ギルドとかで目立つんだよ。そして僕に対する視線が冷たい、別にいいけど」

「? 何ででござる?」

「そりゃ傍から見てたらハーレム野郎だからだよ。エルゼにリンゼ、八重も皆可愛いんだからさ」

「「「え?」」」

 

 皆固まる。何だ? 変な事言ったかな僕? まさか可愛いと言われ慣れてないとか? いやいやそんなまさか、ラノベのチョロインじゃあるまいし。

 

「と、冬夜の事だしいつものあれでしょ!」

「そ、そうですよ! いつも誰かしらに可愛いだの美人だの言ってますし!」

「全くでござるな!」

 

 森の中を早足で進む3人。ゲートあるんだけどな。

 

「冬夜さん私は? 私は可愛いですか?」

「? 可愛いとは思うよ?」

「えへへ」

 

 ユミナは照れ笑いを浮かべながら、僕に抱き着いてきた。

 それから馬車にゲートで戻り、ゲートでリフレットに戻った。

 にしても召喚魔法か、今までは自分でやった方が手っ取り早かったけど何か契約するもの悪くないかもしれないな。

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