【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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完結予定の半分まで到達。こっからが長い……。


新居、そして引っ越し。デカァァァァァいッ説明不要!!

 あ、ありのまま起こった事を話すぜ! 『気が付いたら王様に家を貰っていた』。何を言ってるのか分からないと思うけど僕にもさっぱり分からなかった……。頭がどうにかなりそうだった、催眠術とかそんなチャチなものじゃ断じてない。

 もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……。

 

 

 爵位授与式の日、謁見の間では台本通りに事は進む。

 

「余の命の恩人であるそなたに爵位を授けよう」

「もったいないお言葉。しかし自分には冒険者稼業が合っていますので」

「そうか、ならば無理強いすまい」

 

 とここまでは予定通り。

 

「だが、このまま帰すのは余の命の恩人に対して失礼であろう。そこで、謝礼金と冒険の拠点となる屋敷を用意した。爵位の代わりに受け取ってくれ」

「え?」

 

 王様の言葉と共に、僕の方に銀の盆を持った初老の男が歩み寄って、お金の入った袋と家やその他の目録を渡してきた。王様の言葉に木を取られた僕はそのまま受け取ってしまった。

 気付けば時既に遅し、返すタイミングを失ったところで。

 

「この度は真に大儀であった。そなたのますますの活躍を期待している」

 

 そう締められた。

 

 

「西区、パララン通り21A……。外周区でも裕福な層が済む区域ですね」

 

 目録を見ながらユミナが呟く。

 王都は城を中心として、内周区と外周区に分かれている。内周区には王族や貴族、大商人が済み、川を挟んでその外側に外周区が存在する。この前来た時にそういえば川を渡ったっけ。

 外周区には色んな人々が住み、更に東区、南区、西区と分かれている。北にはパレット湖があるから北区は無い。その西区は富裕層が多く住むエリア。そこにある屋敷を1軒王様から貰ったのだ。

 

「で、どうするの?」

 

 今日も将軍に参加させてもらった訓練を終えて、水場で汗を流してきたエルゼが興味津々に尋ねてくる。訓練シーン、ないよそんなの僕見てないし。

 城にある訓練所の隅で草むらに転がる。抜ける様な大空に雲が流れていて何だかとても綺麗だ。

 

「どうするもなにも、受け取った以上はそこに住むよ。それに家だけじゃなくお金も受け取ったし」

「いくら貰ったのでござるか?」

 

 寝転んだ僕に八重が尋ねてくる。

 

「王金貨20枚」

「「「王金貨20枚!?」」」

 

 エルゼ、リンゼ、八重の驚く声が見事にハモる。

 王金貨は白金貨の更に上の貨幣で、王金貨1枚が白金貨10枚だとうだ。大きすぎてあまり普通の市場では使われない貨幣らしいが。なんであるんだそんな貨幣。

 現代日本で言うなら王金貨1枚は約1000万円。つまり僕は2億円を王様から貰ったことになる。最早意味分からん。しかもこのお金、全部王様のポケットマネーらしい。どうやって稼いだんだ。

 ひょっとしてこれはあれか、こんだけあげたんだからこれからも我が国の為によろしくね、的な感じだろうか。金で抱き込もうとしてるのか。

 とりあえず持ち歩くのは怖いので、お金は公爵に預けた。

 

「家を貰ったんだし、もう隠居とかして暮らしてもいいんじゃない?」

「それも悪くないけど、何かつまんないな……」

 

 溜息交じりのエルゼに僕は体を起こして答える。遊んで暮らすのも悪くは無いけど、貰い物の金任せなのもな……。女口説くときに金にあかせてってのも主義に反するし。

 

「とりあえず見に行きませんか冬夜さん。私達の愛の巣を」

「その愛の巣君の父親から貰ってんだけど」

 

 ユミナの言葉を適当にあしらいながら、とりあえず皆でその家を見に行くことにした。

 

 

「え、ここ……?」

 

 思わず僕は言葉を零していた。

 外周区の西区、見晴らしのいい高台に貰った家は建っていた。白塗りの壁に赤い屋根。瀟洒な造りの3階建ての洋館だ。デザインンは素晴らしいし、場所的にも悪くは無い。けど……

 

「デカすぎィ!」

 

 いや、公爵家やソードレック子爵家と比べたら小さいけど。それでも豪邸だよこれ。

 貰った鍵を使って門開けて敷地に入る。芝生が植えられた広い庭と、色々な花が咲き乱れる花壇、そして小さな噴水月の池が見える。庭の向こうには離れと馬小屋まである。馬いないんだけど。

 両開きの扉を開けて玄関ホールに入ると、真っ赤な絨毯と2階に続く階段が僕らをお出迎え。

 

「中々良い家ですね、気に入りました」

 

 僕らの中で唯一こういうのに慣れているユミナが、琥珀を抱えながらホールの中を平然と歩いていく。僕もそれについて行きながら思わず正直な思いが口から漏れた。

 

「こんな大きい家、掃除するだけでも大変だぞ……」

「最初に気にするのそこなのね……」

「メイドとか雇えばいいじゃないですか」

「あ、そうか」

 

 リンゼの言葉に思わず頷く僕。メイド、メイドかあ……。

 

「スカートの長さはどこまで短く出来るかな?」

「絶対人来ないでござるよこれ」

 

 八重の懸念もなんのその。僕のテンションは高くなる一方だ。とそこで僕はある事に気付く。

 

「メイドとか、雇った事ないからどこに連絡すればいいか分からない……」

「「「ああ……」」」

 

 僕の言葉にそう言えば、みたいな顔をするユミナ以外の3人。

 

「ユミナが知ってるんじゃない?」

「そうでござるよ」

 

 エルゼと八重の言葉に思わず納得する僕。それもそうか。とそこで僕は天丼芸みたいにまたもあることに気付く。

 

「というか今思ったんだけど、この家僕とユミナの為の物だよね」

「それはそうでしょ」

「じゃあ皆どうするの? 王都の宿屋?」

「いや今まで通り銀月のつもりだけど……」

 

 ちょっと待って、それ送迎をゲート使える僕がやる事になるよね?

 

「正直面倒臭いんだけど……」

「なら皆さん一緒に暮らしませんか?」

 

 いつの間にかユミナが僕の隣に立って、そんな事を言う。

 

「僕はいいけど、ユミナはいいの?」

「勿論です。せっかく皆さんと仲良くなれたのですから、今まで通りにいきましょう。それに……」

 

 そこでユミナは他の女性陣を呼んで僕から離れる。

 

「冬夜さん――――――――――――なる―――――――から。それ―――――に皆さん―――――――です」

「―――――ですね――」

「で――――」

「――――けど――」

 

 遠くにいるから断片的にしか聞こえないな……。あ、帰ってきた。

 

「あんた、結構黒い子に好かれてるのね……」

「いやそれは知ってるけど……」

 

 それだけ言ってエルゼは僕の肩を叩き、2階へ上がっていく。なんだなんだ?

 

「私、屋根裏部屋を見てきますね」

「拙者はキッチンが気になるでござる」

 

 リンゼも八重も行ってしまった。何で皆単独行動するんだ。

 

「冬夜さんもリビングを見てきてはいかがですか。私も見て回りたいので」

「そうさせてもらうよ」

 

 という事で僕はリビングへ向かう事にした。

 途中お風呂場や、応接室、食糧庫、ワインセラーなんてものも見たが、見事に何もない。棚すらない。当たり前と言えば当たり前か。

 そして1階の最奥よる少し手前にある扉を開くと、そこがリビングだった。リビング広いな……。ここも暖炉とカーテン位しかないから猶更広く見える。家具とか買わなくちゃな、それを見越して王様も謝礼金渡したのか。

 壁一面の窓からはテラス越しに、広い庭と高台からの西区を眺望する事が出来る。

 窓からテラスを抜けて庭に出ると、気持ちのいい風が吹いてきた。

 

『いい庭ですね。ここで昼寝をしたら気持ちよさそうです』

「いいねー」

 

 琥珀が芝生に寝転がり、僕もそれに続く。

 

「僕は気に入った。琥珀は?」

『はい、とても』

 

 琥珀もこう言ってるし、ここに住む事に異論を挟む気は起きないな。起こす気もなかったけど。

 

「冬夜さん」

 

 呼びかけられて振り向くと、ユミナに連れられて皆が立っていた。

 

「いやー、いい屋敷ねここ。こんな所に住めるなんてあたし思わなかったわ」

「私もです」

「流石は王様が用意した屋敷でござる」

 

 皆も口々に屋敷を褒める。どうやら気に入ったようだ。

 

「それでは各自、自分の部屋を決めましょうか」

「あたし、2階の角部屋がいいな」

「私は3階奥の書斎の隣が良いです」

「拙者は1階の庭に面した部屋を」

 

 ワイワイと話を始める女性陣。何か疎外感を感じるけど、部屋ならたくさんあるしまあいいか。

 

「ところでユミナ、この家僕らだけじゃ管理無理だと思うし、メイドさん雇いたいんだけど心当たりとかある?」

「何人かありますよ。私に任せてください」

 

 ユミナがそう言うなら任せよう。

 僕らも引っ越しの準備をしなきゃね。と言っても荷物をゲートでこっちに運ぶだけの簡単なお仕事だけど。あと、家具とかも買わなくちゃな、

 それにリフレットで世話になった人達へ挨拶しないと。

 雇用人の募集とか都合を合わせて、3日後に引っ越す事に決まった。忙しくなりそうだ。

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