【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。 作:味音ショユ
その為書籍版要素は入っていません、というか書籍版持っていません。
買えよ、という声が多かった場合アニメ版の範囲まで購入を検討します。
出発当日の日、僕らは荷物をもって出発地点である王都の門前を目指して歩いていた。
皆はそれぞれ自分の荷物を持っているが、僕はそれに追加してある物を持っている。
「冬夜殿、そのわきに抱えている物は何でござるか?」
気になったのか八重が聞いてきた。
「これは姿見だよ」
「姿見でござるか、何でまたそんなものを?」
僕が疑問に答えると、八重はまた違う質問をぶつけてくる。そういえば、説明していなかったっけ?
「いや、あの後オルトリンデ様と話し合ってさ、僕があらゆる無属性魔法を使える事もそうだけど、それ以上に僕が魔力付与されたアイテムを作れることを知られる方が問題になるんじゃないかって事になって」
「ふむふむ」
「最終的にあらかじめこっちで作った姿見を向こうへ持って行く体になった」
実際は向こうに着いてから僕が作るんだけどね。
「色々と面倒でござるな……」
「ま、しょうがないさ。それにオルトリンデ様だって意地悪で言ってるわけじゃないんだし」
人の忠告は、割と素直に受け入れる方だよ僕は。
とか言っていたら目的地に着いた。どうやらオリガさんやアルマ含め、ミスミドに行くメンバーは僕らを除いて全員集まっているみたいだ。
「お待たせしてすみません」
「いえ、冬夜殿達と旅が出来てうれしく思います」
僕が謝ると、オリガさんは気にしていないのか笑顔でそんなことを言っていた。微妙に会話が成立していない気がする。
「それで、こちらが私達を護衛して下さる――」
「ミスミド兵士隊長、ガルンです」
「ベルファスト王国第一騎士団所属、リオン・ブリッツです」
「リオン・マグナス?」
「リオン・ブリッツです」
「エミリオ・カトレット?」
「誰よそれ」
オリガさんの紹介で、2人の兵士が挨拶をする。
ガルンさんは、背が高くいかついと言われそうな外見だが優しそうな顔をし、頭には獣人だけあって獣耳が生えている。見る限りでは犬耳だろうか? 正直似合わない。
一方、リオンさんは何というか正統派なイケメン騎士だった。少々はねた前髪が特徴的だが、それ以外は誰もが思い描く騎士の姿がそこにはあった。チッ、イケメンかよ。
「ミスミドの王都まで、両国の兵士が私達を共同で護衛してくださいます」
「よろしくお願いします」
オリガさんの紹介が終わったので、僕はガルンさんとリオンさんにそれぞれ頭を下げる。
それからオリガさんに向き直って言う。
「オリガさんとご一緒させてもらって、助かりました」
「いえ、私達も丁度帰国する時期でしたから」
「私も冬夜さん達と旅が出来て嬉しいです」
オリガさんのありがたい言葉とアルマの嬉しい言葉。いや嬉しいけど、僕そんなアルマの好感度稼ぐような事したっけ? 姉の恩人だから?
「まずはベルファスト領内のカナンの町に向かい、ガウの大河を渡ってミスミドの領内に入ります」
ガルンさんが方針を説明する。地理に明るいとは言えない僕らからすればありがたい。いや、ユミナは別か。
「道中、我々がしっかりと護衛いたしますので!」
「頼りにしてますね、リオン殿」
「はっ、はいっ!」
一方、オリガさんとリオンさんは何かラブコメやってた。
「イケメンと美人、まさにお似合いねー」
「まだだ、まだ僕の入る隙が……」
「微塵もないと思いますけど……」
今日もリンゼのツッコミは冷たい。安心感すら覚えてきた。
かなり広い屋根つきの、ワゴンタイプと呼ばれる二頭馬車が3台連なって街道を進んで行く。
1代目はベルファストの、3台目にはミスミドの護衛兵士が5人ずつ。そして真ん中の2台目には僕らとオリガさん、そしてその妹のアルマが乗っている。
御者台にはリンゼとエルゼが座り、残りの僕らは馬車の中で白熱した戦いを繰り広げていた。
「よし、ストレートでござる!」
「「フォーカードです」」
「また負けたでござるううう!!」
八重とユミナとアルマは3人でポーカーをしていた。なぜかユミナとアルマは結構強いらしく、八重は全然勝てずにいた。
あまりにも馬車で揺られるだけの旅が暇で、しかも遊び道具を持ってくるのを忘れるというミスをしてしまったので、ドローイングとモデリングでトランプを作ったのだ。
ポーカーのルールは全員が知っていたのでしばらくやっていたが、僕がちっとも役が揃わないので一抜けて、その後にオリガさんも抜けてきた。どうやら勝てなかったらしい。
なので八重にサンドバッグ役を押し付け、僕とオリガさんは同じくモデリングで作った将棋をやっていた。
「はい王手」
「あっ……!」
オリガさんが盤面を激しく睨む。もう詰んでます。
「こっちは負けですか……。冬夜殿とは実力の差があり過ぎます」
オリガさんが口をとがらせて不満を漏らす。僕も弱い方なんですけどね、流石に初心者には勝つよ。これで負けてたら立つ瀬が無さすぎる。でも何回かこなしたらすぐに追い越されそうだな……。八重と交代して別のゲームを提案しよう。サンドバッグ扱いもいい加減可哀想だし。
「八重、僕と代わろう。オリガさんと対戦してみたら?」
「そうでござるな。将棋なら銀月でさんざんやったでござるし」
主にドランさんとね。
「じゃあ今度はポーカーじゃなくて、ババ抜きをやろうか」
「ババ抜き、何ですかそれ?」
僕の提案にアルマが質問をしてくる。この世界にババ抜きは無いのか、それともこの辺りには伝わってないのかどっちだろうか? ま、どうでもいいか。とりあえず僕はアルマにルール説明をする。
そして理解してもらったところでババ抜き開始。カードを配り終え、ペアになっているのを捨てる。これで僕の手札は8枚、ジョーカーもある。それはいい。いいんだけど……。
「何で2人とも、手札4枚位しかないの?」
「さあ……?」
理不尽すぎる。というか別に僕、ゲーム弱いキャラじゃないはずなのに……。
ちなみに結果は僕の敗北だった。勝利を知りたい。
「と、いうわけでジョ○ョは宿敵であり奇妙な友人であるディ○を連れて、船の爆発と共に沈みましたとさ」
放し終ると焚火を囲んでいた皆から拍手が送られた。寝る前のちょっとしたお話のつもりで始めたんだけど、ついノッてしまった。
「面白かったです、冬夜さん!」
アルマが頭の上の耳をピコピコさせて、興奮しながら僕に感想を述べてくる。それ僕じゃなくて荒木先生に言ってあげて。
「素晴らしいお話でした、冬夜殿。しかしこの話はどこで?」
「あーっと、以前住んでいた所で吟遊詩人が教えてくれたんですよ」
オリガさんのツッコミを適当に流す。焚火の周りにいたミスミド、ベルファスト両国の兵士達にも好評だったようだ。ジョ○ョ1部ならこの世界でもそのまま話しても大丈夫だろうと思ったけど通じてよかった。
「他にも冬夜さんは、色々なお話を知っているんですよ」
「本当に!? 聞かせて下さい、冬夜さん!」
隣り合って座っていたユミナの言葉に、目を輝かせて身を乗り出すアルマ。そんなに迫られても困る、いや知ってるけどこの世界で通じる様にアレンジするの結構面倒なのよ。
「今日はもうここまで、また明日」
アルマのお願いをやんわりと断る。その時焚火の周りにいた1人の小柄なミスミド兵士が立ち上がり、自らの口の前に指を立てて皆に黙るように頼んだ。
その兵士の頭の上の耳が動く、兎耳だ。バニーか、バニーなのか? 嬉しくない!
「何者かが複数近づいてきます……。気配を消して少しづつ、明らかに我々を狙っています」
その声に周りの兵士たちが静かに剣を抜き、辺りを警戒しながら動き出す。オリガさんとアルマを中心にして、護衛するためのフォーメーションに移行していく。
「何者だろ?」
「恐らく街道の盗賊団でしょう。数が多いと厄介ですな」
僕の疑問にガルンさんが答えてくれた。
〈主よ、確かに何者かがこちらへ向かっています。友好的な者とはとても思えません。彼らの言う通り、十中八九盗賊の類でしょう〉
傍にいた琥珀が僕だけに聞こえる声で語りかけてきた。スマホでちょっと調べてみるか。
マップアプリを起動。盗賊、で検索すると地図上にピンが次々と落ちてきた。
「北に8人、東に5人、南に8人、西に7人。合計28人だな」
「分かるのですか!?」
ガルンさんが驚いて僕の方を振り返る。数多いなあ、勝てるとは思うけど結構きつい戦いになるかもしれない。
「……ちょっと試してみるか」
僕はこの間思いついた魔法の使い方を試してみる事にした。多分いけるはず……。
「エンチャント:マルチプル」
マルチプルをマップアプリに付与し、画面上の盗賊達を指でタッチしてロックしていく。えーと、北に8人東に5人……。
「多いな!」
「どうかしましたか!?」
指でタッチするのが面倒にキレて声をあげると、ガルンさんに心配をかけてしまった。僕は謝ってから盗賊全員をロックした。
「パラライズ!」
麻痺させる無属性魔法をマップ上のターゲットに向けて発動させる。次の瞬間、周り森の中から重なるように呻きが聞こえてきた。
「ああああああああああ!!」
「ヴァアアアアアアア!!」
「アシクビヲクジキマシター!」
「はう!」
「ああん!」
様々な声が聞こえ、続けてバタバタと倒れる音が聞こえてきた。今女盗賊いたよね、絶対いたよね!? 早く麻痺してる女盗賊というエロい絵面を見ないと!
「早速盗賊の捕縛を――」
「それは兵士の皆様に任せましょう」
女盗賊の声がした方に向かおうとする僕をユミナが止める。一体どういうつもりなんだ!
「ガルンさん、今冬夜さんが何らかの方法で盗賊を無力化しました。恐らく動けないはずです」
「全員ですか!?」
「28人が全員なら、今頃盗賊団はパラライズの餌食だよ」
ターゲットになったのは、あくまでこの状況で僕が盗賊だと判断した奴らだけだ。逆に言えば、盗賊っぽいだけの普通の人がいたら巻き添えを食った可能性もある。多分ないと思うけど、もしあったら金銭をいくらか包んで謝罪するのでそれで勘弁してもらおう。
護衛の兵士達が森に入り、倒れている奴らを引きずってきた。合計で28人。全員が盗賊団の証なのか、手の甲に蜥蜴の入れ墨をしていた。もっと分かりにくい所に証付けろよ。
「凄いですね……。これだけの数を一瞬で……」
「誰1人、魔法防御の護符とかを持っていなかったのは幸いでしたね。パラライズは小さな魔法防御でも弾かれますから」
オリガさんが唖然とした表情でぼそりと呟く。パラライズそんな弱点遭ったのか……。というかこのやり方問題多いな。移動速度が速いとロック出来ないかもしれないし、一々ロックするの面倒くさい。
「いや助かりました。全く驚きましたな」
「いえ、最初にあの人が気づいてくれたからですよ」
「ああ、レインですか。あいつはウサギの獣人ですからね。地獄耳ですよ」
ガルンさんが盗賊達を引きずっている兎耳の少年を見て笑う。小柄でサラサラの赤毛、年齢は僕と同じくらいかな。レインって言うのか……。
「人間なら麻痺は半日位続くと思いますけど、盗賊達どうします?」
「そうですな、ここがミスミドなら面倒にならないように殺してしまうのが1番楽ですが、そうもいきませんな」
物騒なんだけどミスミド。本当に国交結んで大丈夫ベルファスト?
とか考えているとガルンさんがリオンさんを呼ぶ。ガルンさんから事情を聞いたリオンさんは、少し考え込んだ後口を開く。
「とりあえず縛り上げて、この先の町へ引き取りの警備兵をよこすように馬で使いをやりましょう。朝には警備兵を連れて戻って来るでしょうから、盗賊達を引き渡してから出発というのはいかかでしょう?」
ガルンさんも異論は無い様なので、その方向で決まった。猿轡をかまし、全員後ろでに縛り上げる。その後念の為に、僕が土魔法で穴を掘り、首だけ地面に出して埋めた。なんか北○で見たなこんなの。
ちなみに、女盗賊も埋めてしまった。僕は埋めることなく見張りと称して朝まで見ていたかったのだが、安全を重視して欲しいとリオンさんから懇願された。何か断るのも感じ悪いから泣く泣く埋めた。畜生め、体が見えなきゃエロさ9割カットだよ。
「こいつらの見張りは我々が、外敵の警備はミスミド側にしてもらいます。冬夜殿は姫様をお願いします」
こっそりとリオンさんが僕に伝えてくる。
ユミナがベルファストの姫だと知っているのは僕ら以外にオリガさんとリオンさんだけだ。他のメンバーは姫と会ったことが無いそうだ。おいベルファスト兵士。更にユミナの婚約者(仮)という僕の立場を知っているのはリオンさんだけになる。ひょっとしてユミナの護衛とかだろうか。
「リオン殿、お手数を掛けます」
オリガさんが近寄ってきて微笑みながら礼を言う。と、リオンさんが急にあたふたと焦りだした。
「あ、いやっ、これ、これが私の任務ですから! どうか、お気になさらず!」
さっきまでの冷静さはどこへやら、リオンさんはオリガさんに言葉をまくし立てる。その様子を見ながら狐の美女はおかしそうに笑っていた。
任務中にいちゃついてるんじゃない。
とはいえ邪魔するほど野暮じゃない僕は2人に気付かれないようにこっそりその場を離れた。馬車の陰から、焚火の前で笑い合う2人をこっそり観察する。
「青春ねー」
「青春でござるなー」
「……青春です」
「青春ですわね」
君達いつ来たんだ。
僕のパーティメンバーが同じように見守っていた。
「全くさー、盗賊が他にも居るかもしれないんだからもうちょっと気張るべきじゃないリオンさんさー」
「嫉妬は醜いでござるよ冬夜殿」
僕のボヤキに八重が一言。僕よりモテる奴は全員敵だ。
「大丈夫ですよ、私は冬夜さんが好きですから」
「そりゃどうも」
ユミナの言葉を僕は適当に流す。正直眠い、もう夜だしそろそろ寝よう。