【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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活動報告で気が早い次回作についての話、という名の思いついたネタを晒しています。
良かったら見てください。
見なくても本編には何一つ影響しません。


ジャングル、そして脅威襲来。ファンタジーといえばやっぱりこれだよね

 ラングレーの町を離れると、すぐに景色が変化する。ジャングルと言えるほど木々が鬱蒼とした森になったのだ。アフリカの都市計画ってこんな感じだよね。そんな森の中を3台の馬車が進んで行く。

 ベルファストよりミスミドの方が魔獣が多いらしいが、そりゃこんな森があって魔獣が少なかったら逆に詐欺な気さえしてくる。時折何の動物か分からない遠吠えも聞こえてくるけど、どうやらこの国ではチャメシ・インシデントらしい。

 魔獣は多いがそれほど人里に被害はないらしい。それは森の中に餌が豊富で、人里の人間が狩りに行くでもしない限り魔獣に遭遇する事はまずないとか。狩人の道は死狂いなり。

 

「日暮れまでにエルドの村に着くのは無理そうですね」

 

 オリガさんの言葉に、僕がマップアプリで確認してみると、ラングレーの町から王都に到街道の途中、森を抜けた先にエルドの村があった。遠っ! これはついても真夜中になっちゃうな。

 

「ミスミドはいくつもの種族が集まってできた、いわば群体のような物です。今でも種族ごとに村や町を形成していて、互いに友好的な種族もあれば、互いに相手を毛嫌いしている種族もいます。それをまとめ上げているのが国王陛下を含めた七族長なのです」

 

 多民族国家で合議制なんだろうか、ミスミドって。それはさておきオリガさんの説明によれば七族長とは獣人族、有翼族、有角族、竜人族、樹人族、彗星族、妖精族の主要七種族の長なんだそうだ。で、今現在は獣人族の長、獣王がこの国の王となっているらしい。そんな事より樹人族すっごい気になる、どういう見た目してるんだろ。風のタ○トに出てきたコログ族みたいな感じだろうか。

 話を戻して、一応王位は世襲制らしいが、他の六族長も強い権限を持つ。株式会社と大株主みたいな関係だろうか。まだまだ新興国らしく、問題を抱えていそうだ。

 やがてだんだんと陽が暮れてきた、暗くなる前に野営に入るとの事だ。今日はここまでだな。

 少し道が開けた場所で馬車を停め、野営の準備に取り掛かった。薪を集め、石でキャンプみたいに小さなかまどを作り、食事の用意を始める。僕も手伝い、大皿にミネストローネを作った。

 完全に夜になると、森の中のざわめきが結構聞こえてくる。夜行性の動物が多いのだろう。煩い。

 

「結構、怖いですね……」

 

 ユミナが僕のミネストローネを飲みながら、身体を寄せてくる。

 

「普通の獣なら琥珀がいれば近寄ってこないってさ。魔獣でもすぐ分かるから安心してくれって」

 

 琥珀が念話で伝えてきたことをユミナに話す。すると彼女は横にいた琥珀を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。

 

「ありがとう琥珀ちゃん」

『安心してください、奥方。私が居れば大丈夫です』

 

 他の人に聞こえないように、小さく琥珀は呟く。その言葉にユミナは微笑んで、琥珀の頭を撫でた。

 食事をするときも数人が交代で見張りをしていたが、ベルファスト側の護衛兵士達の方が、見知らぬ土地の為かいささか緊張していた。

 

「そろそろ八重とエルゼを迎えに行ってくるよ。琥珀、ユミナとリンゼを頼む」

〈御意〉

 

 僕はたき火を囲む皆から離れて、客車の中へ入り、ゲートを使ってベルファスト王都にある自宅に戻った。

 僕が出現したリビングではエルゼと八重がすっかりくつろいでいた。傍にはうちの執事、ライムさんが控えている。主がいきなり帰ってきて世話させられるとか執事ってブラックな仕事なんだな。ごめんなさい。

 

「あ、もう時間?」

「忙しないでござるな……。まだ髪が乾いていないでござるよ」

 

 この2人は風呂に入りに戻っていたのだ。他の人達にゲートがバレないように、30分と時間を決めて。

 魔法で水は出せるので、たらいに貯めた水に焼いた石によるお湯を作り、湯浴みをするという偽装工作をして。ここまでして戻る意味とは。

 

「ほら、怪しまれない内に戻るよ。ライムさん、今日は何かありましたか?」

「いえ、これといって。ああ、フリオが庭の隅に家庭菜園を作ってはどうかと申しておりましたが、いかがいたしましょう?」

 

 家庭菜園か、面白い。取れたて野菜を食べられるのもいいな。

 

「いいですね、是非やって下さい。好きにしていいって言っておいてください」

「かしこまりました」

 

 それにしてもメイドのラピスさんとセシルさんがいないな、彼氏でも出来たのかな? 僕が2人の事をライムさんに尋ねると、ラピスさんは明日朝早く市場に用があるので既に寝ていて、セシルさんは王都に来ている知り合いに会いに行ったそうだ。

 

「何か御用があれば伝えておきますが」

「いや、ちょっと気になっただけなんで。ほら行くよ2人とも」

「「はーい」」

 

 僕は引率の先生かよ、と思いながらゲートで馬車に戻る。すると何だか外の様子がおかしい。森が騒がしく、色んな動物たちの鳴き声が辺りを包んでいた。明らかにおかしい。まさか琥珀に怯えているのか!? いや違う!

 馬車を飛び出し皆の元へ走る。護衛兵士達が剣を構え、辺りを警戒している。一体何が起きているんだ!?

 

「冬夜さん!」

「何があったの!?」

「分かりません、急に森の動物達が騒ぎ出して……」

「まさか、発情期!?」

「絶対違います」

 

 ユミナ困惑した表情で駆けてきた、と思ったらいきなりテンションが下がった。その時、僕の側に居た兎の獣人レインが、顔をあげた。

 

「何か大きなものが来ます……、空だ!」

 

 レインの叫びに皆が空を見上げる。突風に木々がざわめく中、頭上の空に何か大きなものがゆっくり飛んでいくのが見えた。なんだァ? アレェ……。

 僕には黒い影としか捉えられなかったが、夜目がきく獣人達にはしっかりと見えたようだ。

 

「竜だ……。まさか、こんなところに!?」

 

 ガルンさんが空を見上げたまま呆然と声を洩らす。その瞳は信じられない物を見た、とばかりに見開かれている。

 

「何で、こんな所に竜が……!?」

「どういう事です? 普通はここまで来ないって事ですか?」

 

 震えた声で呟くオリガさんに尋ねると、彼女は怯えたアルマを抱きしめながら口を開く。

 

「竜……、ドラゴンは普通、この国の中央にある聖域で暮らしています。そこは竜のテリトリーとして誰も立ち入ることは無く、また竜たちも侵入者が無ければ、そこから出て暴れるようなことは無いのです。そうやって我々は住み分けてきたのに……」

「誰かが聖域に踏み込んだのですか!?」

 

 オリガさんの言葉にガルンさんが声を荒げる。これが聖域に誰かが侵入して、住居不法侵入罪の過激な懲罰だとするなら正直僕ら何もすることがない。嵐が過ぎ去るのを待つように、侵入者が報いを受けるまで留まるしかない。

 しかし、そんな考えをオリガさんは首を横に振って否定する。

 

「いえ、そうとは限りません。何年かに一度、若い竜が人里に現れ、暴れる事があるからです。聖域を離れた竜は我々が撃退しても、他の竜から報復される事はありません。この場合は向こうが侵入者だからです。ですが……」

「竜って、どれくらいの強さなんですか?」

 

 そう聞いた僕の質問に答えたのはガルンさんだった。

 

「我々の王宮戦士中隊、戦士100人もいればなんとか。しかし、中途半端な攻撃はかえって怒りを買う事になりかねません」

 

 うわ超強い。今回のこれは若い竜による暴走だろう、多分。迷惑極まりないな全く。

 僕はスマホを取り出して、マップアプリを起動しドラゴンを検索。

 ミスミドの中央辺りにいくつかの反応がある。ここが聖域だな。そして僕らの側にある1つの反応がゆっくりと移動しているその先には……。

 

「おい……。あいつ、エルドの村に真っ直ぐ向かっているぞ……!」

「なんだって!?」

 

 僕の呟きに皆が驚きの声をあげる。

 

「なんだってエルドの村に!」

「あそこは牧草地帯が南に広がっている。家畜を狙っているんじゃないか!?」

 

 何かは知らないが、家畜を襲って満足すれば村は大丈夫なんじゃない? という僕の考えはガルンさんにそげぶされた。

 

「味を占めた竜はまた同じ所を襲いますよ。それにあいつらにとっちゃ我々も家畜も大して変わらないでしょうな。好みの差はあるかもしれませんがね」

 

 マジもんの獣害だよ! 申し訳ないが三毛別羆事件の再来はNG。どうにかするにしても今の僕じゃ攻撃が届かない。

 

「どうします? 我々の任務は大使の護衛だ。大使を危険な目に遭わせるわけにはいかない……」

「くっ……」

 

 リオンさんの言葉に、ガルンさんが歯を食いしばる。兵士にとって上官の命令は絶対。ここで迂闊に村に向かう訳にはいかない、という理論はよく分かる。かといって護衛の兵士を半分だけ残してもう半分は救出、って訳にもいかないし……。僕のゲートじゃエルドの村へは行けない、どうすれば……。

 

「何とかならないでござるか、冬夜殿……」

「そりゃ何とかはしたいけどさ……」

 

 八重の言葉を聞いて、僕は考える。確かに僕らだけなら問題なく動ける、国の命令ではなくギルドを通して依頼を受けただけだから。しかも別にオリガさんの護衛じゃない移動魔法が付与されていることになっている姿見を運ぶのが――

 

「あっ……!」

 

 降りて来たっ……、僕の中に天啓がっ……!

 僕は馬車の客室から持ってきた姿見を出してきて、馬車の車体に立て掛けた。

 

「冬夜殿、これは?」

 

 リオンさんが訝しげに姿見を指差す。他の皆も同様だ。

 

「えっと、これは転移の鏡と言いまして、2枚で1セットの魔力付与アイテムです。もう片方はベスファスト王宮に置いてあり、この鏡を使えば一瞬にして王宮に転移できます。これを使ってとりあえずオリガさんとアルマは王宮に非難して頂くというのはどうでしょうか?」

「そんな物を持ち込まれていたのですか……」

「これをミスミド国王の元へ届けるのが僕らの仕事です」

 

 咄嗟に考えた大嘘をペラペラ話す。1日に往復1回しか使えない事、大勢は移動出来ない事など、主にミスミドの兵士たちに安全さを出まかせでアピール。将来は俳優でも目指すか……。

 

「分かりました。それを使って私達は一旦王宮の方へ避難しましょう。そして皆さんはエルドの村の人をどうか……」

「分かりました。冬夜殿、頼みます」

 

 オリガさんの決断にガルンさんが頷く。

 

「分かりました。ではオリガさんとアルマ、そして説明役にユミナと、向こうの確認の為ガルンさんに来てもらえますか?」

「私ですか?」

 

 ガルンさんが不安げな声を洩らすのを聞きながら、僕は鏡に手を当てた。

 

「ゲート」

 

 誰にも聞こえない位小さな声で魔法を発動させる。鏡の1センチ手前に光の門を作り上げた。ミスミドについてない今エンチャントで付与する訳にはいかない。

 まずユミナが入り、次にガルンさん、アルマ、オリガさん、最後に僕が通り抜けると光の門は静かに閉じた。振り返ると王宮のユミナの部屋に1枚の鏡が取り付けられている。何が幸いするか分からない物だ。

 

「ここは……」

「ベルファストの王宮です。それじゃユミナ、王様に説明を頼む」

「はい。冬夜さん、お気をつけて……」

「そんなに心配そうな顔しなくても、僕なら大丈夫さ」

 

 不安そうな顔をするユミナの頭を撫でて安心させた後、驚きの余り開いた口がふさがらないガルンさんに声をかけて、再びゲートを発動させ元の場所へ戻る。後の事はユミナに任せていれば大丈夫だろう。

 戻ってくると、出発の準備は整えられていた。

 

「よし皆、これで大使は安全だ! 我々は竜から村の人達を避難させる為に、エルドへ向かう!」

 

 帰ってきたガルンさんの命令におう! と答えるミスミドの兵士達。それを見ながら僕はリオンさんに尋ねる。

 

「リオンさんはどうします? ベルファスト王国は関わる必要はないと思いますが……」

「こんな状況で我関せずを貫いたら父上に炎の拳で殴られますよ。私達も行きます、恐らく陛下もおそうおっしゃると思います」

 

 リオンさんはきっぱりとそう言い切った。どうやら意思統一はされているらしい。なら問題は無い。

 マップを見る限り、竜が村へ辿り着くまでまだしばらくかかる。幸い全力で馬車を走らせれば、1時間遅れ位で村に着く。

 その1時間が命取りにならないように、と祈りつつ僕は馬車に乗りこんだ。

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