【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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やっとこの冬夜君の本領発揮が出来た気がする


双子、そして1日の終わり。文字にするなら1万字ちょっと。

 裏路地を進んでいくと、突き当たりで男2人少女2人で言い争っていた。

 男2人はいかにもガラが悪く、僕が昔おじいちゃんの力を借りてボコった不良にそっくりだ。

 そして少女2人はどちらも可愛い。顔が似ているから双子だろうか、片方はロングでもう一方はショートと髪の長さが違うから入れ替わりネタは出来なさそうだ。服は上半身が共通で黒を基調とした上着に白いブラウス、下半身はロングの子がキュロットに黒いニーソ、ショートの子がフレアスカートに黒のタイツ。性格の差があらわれているのだろうか。ちなみにこの服の知識が役立ったことは一度も無い。

 

「約束が違うじゃない! 代金は金貨1枚だったはずよ!」

 

 ロングの子が男2人に向かって声を荒らげた。どうも報酬か何かでもめているらしい。

 一方、男2人は汚らしい薄笑いを浮かべている。この時点で僕が味方する方は決めていたのだが、まあ恩を押し売りする気はないので危なくなるまで様子を見よう。それにしても男の1人が持っているあの光る鹿の角みたいなのは何だろう、ドロップアイテム?

 

「何言ってやがる、確かにこの水晶鹿の角を金貨1枚で俺達が買うとは言ったさ。だがここに傷があるだろ、俺達は傷物を金貨で買うつもりなんざねえ。だが銀貨1枚くらいならくれてやる、受け取れよ」

 

 そう言って男は銀貨を少女たちの足元に投げる。

 

「そんな傷、傷物の内に入る訳無いでしょ!」

 

 悔しそうな目で男達をロングの子が睨み、後ろでショートの子も悔しそうに唇を噛んでいる。成程、難癖をつけて報酬をケチろうってハラか。

 

「……もういいわ。お金は要らないから、その角返してもらうわ。後そこで隠れてる奴も出てきなさい、あんたもそいつらの仲間?」

 

 おっと、ロングの子は僕に気付いていたらしい。まあ隠れて見てたとはいえ仲間扱いは心外だ。僕は4人の前に姿を現す。

 

「誤解だよ、僕はたまたま何か言い争ってる声が聞こえたから気になって様子を見に来ただけさ。いざとなったら助けに出るつもりだったけど、そっちのロングの子だけでどうとでも出来そうだから引っ込んでただけだよ」

「……そう」

「何だてめえ? 俺らがこの女1人にやられるってか」

 

 不信感を隠せないロングの子を尻目に、男2人がこっちに絡んでくる。

 

「そうそう、その水晶鹿だっけ? それ僕が買うよ、ほら金貨1枚」

 

 絡んできた男を無視して僕は金貨を1枚取り出し、親指ではじいてショートの子に渡す。本当はロングの子に渡したかったのだが、いつの間にか大きいガントレットを腕に付けていたので諦めた。

 

「売ったわ」

「んじゃそういうことで」

 

 ロングの子が僕に水晶鹿の角を売ったと同時に、僕は水晶鹿の角を持っている男の顔面を殴り飛ばす。そしてその隙に角を掏り取る、なかなか硬そうだ。

 

「これなら人を殴るのには丁度いいな」

「エグイ事考えるわねあんた……」

 

 ロングの子の呆れ混じりの声色に僕は苦笑いで返す。

 

「て、てめえらあんまり俺らを舐めるんじゃねえぞ!」

「そうだそうだ!」

 

 僕が殴り飛ばしていない方の男が、懐からナイフを抜き僕に襲い掛かってきた。

 

「女2人に会うのに光物なんか持ち歩いてるのか、女の扱いが僕よりなってないな」

「うるっせえ!」

 

 叫びながら切りかかって来るが、僕はそれをよく見た上で身をかわすことが出来た。なぜかナイフの軌道がよく見える、これが神の力か。

 その力の恩恵に遠慮なく与かりながら、僕は男の背後に回る。そして――

 

「この角は、天を突き未来へ進むドリルとなる!!」

 

 男の尻の穴に突き立てる! 更にそれを回転、角はどんどん男の中へ入っていく。

 

「アッ――――――――――――――――――!!」

「これが正義の力だ!」

「どの辺りが正義なんですか!?」

 

 汚い声をあげながら男は倒れ、僕の言葉にショートの子がツッコミを入れた。

 

「プッ、なにそれ! アハハハハハハハハ!!」

 

 一方、ロングの子は大爆笑だった。ちなみに相手していた男は既に倒れていた、まあ元々顔面に一発入ってたしね。

 

「あー、おっかしい……。でも助かったわ、あたしはエルゼ・シルエスカ。こっちは双子の妹のリンゼ・シルエスカよ」

「……あ、ありがとうございます」

 

 まだ笑っているロングの子と対照的に、ペコリと後ろにいたショートの子が頭を下げてくれるもののどこか引き気味だ。もうちょっとカッコよく倒せばよかった。

 にしてもやっぱり双子だったんだ、ロングの方がエルゼでショートがリンゼ。まあ分かってしまえば見分けはそう難しくないな。

 

「僕は望月冬夜。望月が家名で冬夜が名前だけど出身はイーシェンじゃないよ」

「へー、イーシェン以外にもそんな所あるんだ……」

「まあね」

 

 異世界にね、とは言えないな。

 

「それよりこれどうする?」

 

 そう言ってエルゼが指差すのは、男の尻に突き立った水晶鹿の角。正直触りたくない。

 

「どうって……、男の尻に突っ込まれた物なんか持ち歩きたくないし、こいつらにあげるよ」

「何だか癪な気もしますけど……」

「でもこんなの見せられちゃね……」

「「プッ、アハハハハハハ!」」

 

 もう1度笑い出す僕とエルゼ。

 

「2人とも、ちょっと笑いすぎです」

 

 なぜかリンゼに怒られた、解せぬ。

 

 

 その後、僕は彼女達を連れて宿屋銀月に戻っていた。彼女達が宿を探しているというので一緒に連れてきたのだ。その際にミカさんから

 

「ふーん、さっき私を口説いたと思ったらすぐに別の女の子連れて来るんだ」

「ちょ、やめてくださいよミカさん。僕は別にそんなつもりじゃ……」

「はいはい、分かってるって」

 

 と言われた。まあそう言いつつもほくほく顔だったので新しいお客さんが来て嬉しいのだろう、分かりやすい人だ。

 そしてそのまま3人で食事をする事になった。色々喋りながらミカさんの作った夕食を食べ終え、今は食後のお茶を楽しんでいる。

 

「私達はあいつらの依頼でここに水晶鹿の角を届けに来たんだけどさ」

「あれ、それなら僕を仲間だと思うのはおかしくない?」

「いや別に仲間位いてもおかしくないでしょ」

「あそっか」

 

 僕の疑問をさらりと論破するエルゼ。頭が良いと言うよりこれは僕が迂闊だった。

 

「まあ酷い目にあったわ、胡散臭いとは思ってたけどね……」

「だからやめそうって私は言ったのに……。お姉ちゃん聞いてくれないから……」

 

 リンゼが非難する様にエルゼを睨む。成程、エルゼはガンガンいこうぜなタイプで、リンゼはいのちだいじになタイプなんだな。

 

「というか何であんな奴らの依頼を受けたのさ?」

 

 疑問に思ったことを聞いてみた。あんなあからさまに自分チンピラですってアピールしてる奴と取引するなんて、肝が据わり過ぎだよ。

 

「ちょっとしたツテでね。あたし達が前に水晶鹿倒して手に入れてたから、それ欲しいって話来たから丁度いいかなって。でもやっぱアングラは駄目ね、ギルドみたいにちゃんとした所から依頼受けないとロクなことならないわ。この機会にギルドに登録しましょ、リンゼ」

「私、ずっと前からそれ言ってたのに……。安全第一にしようって」

「ごめん、反省してるから」

 

 おお、本当にギルドがあるなんて。乗るしかない、このビッグウェーブに。いや小さいけど。

 

「良かったら一緒に行っていいかな、僕もギルド登録したいんだ」

「いいわよ、一緒に行きましょ」

「いいですよ冬夜さん」

 

 2人とも了承してくれた、エルゼはともかくリンゼはちょっと距離を感じるから断られるかと思ったけどそんなことなくて良かった。

 それにしてもギルドで冒険者か、なんていうか、楽しくなってきた。

 まあこの日はこれで2人と別れ、自分の部屋に戻って寝るけど。

 とりあえず今日のことをスマホを日記にして書こう。異世界に来て、服売って、宿屋に泊まって女の子を助けた。盛りだくさんだ。

 ついでに少し気になったので友人のツイッターを見る。僕が死んだことについて何かいってるだろうか、と思ったらこんなツイートがあった。

 

『死んだ友人の名を借りて悪戯の手紙が届いた! しかも死んだあとの事を書いてやがる、ふざけるな!!』

 

 どうやら僕の手紙は悪戯だと思われたらしい。

 紛らわしいことして、本当に申し訳ない。

 でも迂闊な個人情報流出はよくないと思うよ、うん。

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