【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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四天王、そして救出。水着回の伏線貼っとくか

 館の西、曲輪の端に建つ家屋の中に地下牢はあった。流石に鑑札を持った椿さんもこの中には入れなかったらしく、仕方ないので彼女もリーンのインビジブルで透明になってもらった。

 

「だから透明化じゃないってば」

「だって名前が……」

 

 透明化じゃないと言い張るリーンを適当に躱しながら中へと潜入する僕ら。中で待機している番人の部屋を通り抜け、石で組まれた地下へ向かう階段を降りていく。

 牢屋は石と木で作られた座敷牢であった。その中で1人の老人が目を閉じ、座禅を組んでいる。老人は白髪交じりの長い髭の巨漢で、顔には深い皺がいくつも浮かんでいる。

 

「誰だ」

 

 座禅をしたまま突然発した声に僕らは驚いて足を止めた。姿を消しているのにこの人は気配だけで僕らを察したというのか。え、そんなのあり?

 

「何だかんだと言われたら」

「答えてあげるが世の情k」

「馬場様、椿です。高坂様の命にて助けに参りました。内藤様と山県様はどちらに?」

「高坂の……? ふん、やはりあやつが完助の軍者に下ったというのは偽りであったか。全く食えぬ奴よ」

「あれれー、僕らスルー?」

「椿ったらまだ怒ってるのー?」

 

 僕らをスルーして、武田の四天王が1人馬場信晴が笑う。というか馬場さんは僕らについて疑問に思ってよ。

 

「内藤と山県は奥の牢に居る。というかさっきから知らぬ声がするな、姿を見せよ」

 

 リーンが魔法を解くと馬場さんは片眉を上げて、僕らを眺めている。

 

「さっきのふざけた言葉の主はこの2人か。何者だ?」

「こちらは徳川殿の客人である望月冬夜殿とリーン殿です。望月殿は徳川に攻め込んだ鬼面兵15000を1人で打ち倒したほどの実力者です」

「何だと!?」

 

 馬場さんの目が見開かれる。あれ15000も居たんだ、エンドレスエイトみたいな数だな。

 馬場さんが信じられないと言った感じで僕を見てくるけど、だからと言って僕にどうしろというんだ。とりあえずさっさと脱獄させるか。まさか魔法で吹っ飛ばす訳にもいかないし……、そうだ。

 

「モデリング」

 

 座敷牢の講師になっている角材を変形させて、人1人通れる出口を作る。すぐにそれは完成し、易々と馬場さんは牢から出てきた。

 

「随分と不思議な事が出来るんだな、小僧」

「小僧って……」

 

 いや確かにあなたよりは年下ですけど小僧って。

 

「言われてるわね最年少」

「うるさいよ最年長」

 

 リーンのからかいに僕が真っ向勝負で応えると、リーンは音もなく僕の腹に拳を叩きこみ、僕は声どころか息も出来ずに倒れこむ。

 

「ちょ、リーン……!?」

「女性に年齢の話はタブーでしょう?」

「え、これその代償?」

「そうよ」

「うん、それならしょうがないね。後で絶対やり返す」

「はいはい」

「何だこの狂人どもは……」

 

 僕らの会話を聞いて馬場さんはなぜか慄いていた。いやおかしいのはリーンだけだから、僕は違うから。

 ともかく僕は回復したので、奥へ進み別の座敷牢へと移動する。そこには左右に座敷牢が造られていた。

 右手の座敷牢には穏やかな顔をした、退職間際のサラリーマンみたいな男性。左手の座敷牢には、全身傷だらけでいかにも歴戦の勇士と言った目つきの鋭いおっさんが座っていた。

 

「おお、馬場殿。お元気そうで何より」

 

 サラリーマン風の男がにこやかに声をかけてくる。

 

「なんか面白そうな事になってるみたいだな馬場殿。暴れんなら俺も混ぜてくれよ」

 

 こっちの傷の人は楽しそうな笑みを浮かべ、立ち上がって格子の方へ寄ってくる。その2人を見て、馬場さんは呆れたように溜息を漏らす。

 

「内藤、お前はもうちょっと緊張感を持て。いつもにこにこ緩んだ顔しやがって。逆に山県、お前はもうちょっと考えろ。なんでもかんでも戦えばいいってもんじゃねえぞ」

 

 サラリーマン風の人が内藤正豊で、傷だらけの人が山県政景か。

 

「小僧、悪いがこいつらも出してやってくれや」

「いやいいんですけど、小僧って止めてもらえません?」

 

 流石にいい加減嫌になってきたので訂正を求めると、リーンが馬場さんに向かって口を開いた。

 

「一応その子ベルファストの次期国王候補だから、口のきき方には気を付けた方が良いわよ」

「権力で脅しにかかるのは予想外だった」

 

 というかリーンも子ども扱いだし。あ、でも椿さん以外の3人は絶句している。効果覿面だな。でも僕容認してないよ次期国王候補の部分。

 

「そうなのか? うーむ、しかし今更変えるのもみっともない気もするしな……。ま、小僧でいいだろ」

「……もういいです」

 

 馬場さんの台詞を僕は肩を落としながら受け入れ、リーンは笑って肩を竦める。駄目だこれ、言っても聞かないタイプだ。

 

「私は冬夜さんと呼ばせてもらいますよ」

「んじゃ、俺は冬夜で」

 

 内藤さんも山県さんも好き勝手な事言いだした。名前呼びはいいけど、何このフリーダムな四天王、一体どうやって真玄って人は従わせてたんだ。

 でもしょうがないからモデリングを使い、馬場さんと同じように2人を座敷牢から解放する。その後、リーンに再びインビジブルを掛けてもらい、全員で番人をやり過ごし地下牢から脱出した。

 

「というか脱出してから聞くのもアレですけど、捕らわれの姫とか居ないんですか? 男ばっかり助けてもテンション上がらないんですけど」

「あいにくといねえな」

「椿の胸揺れで我慢しなさい」

「うん分かったよリーン。という事で椿さん、1分くらいスクワットしてもらえませんか?」

「嫌です」

 

 うわっ、露骨に拒否された……。凄い傷つくんだけど。

 

「しょうがないわね。ならニルヤの遺跡の調査の前に少し遊ぶ時間を用意するわ。その時に私のセクシーな水着姿を見せてあげるから頑張りなさい」

「……リーンの水着とかどうでもいいけどやる気は出た! せっかくだしセシルさんとか誘おうっと!!」

「ぶち殺すわ」

「はいはい、お遊びはその辺りで終わらせて下さい。それよりこれからどうする気ですか、スケベな次期国王陛下」

 

 明らかに面白がりながら内藤さんが話しかけてきた。いやその形容詞は要らないよね? 絶対いらないよね!? それは一旦置いといて、一応考えていた事を伝える。

 

「貴方達を館の外へ逃がした後、僕らで山本完助を捕まえるつもりですが」

「おいおいそりゃねえぞ。俺も連れてけよ冬夜。あの野郎にゃ俺達は貸しがたんまりあるんだからよ」

 

 山県さんが指の骨を鳴らしながら不敵な笑みを浮かべる。完全に悪役面である。

 

「だが完助の周りは鬼面兵で固められ、奴自身も奇妙な魔法を使うぞ。あいつは人間じゃない、倒せるのか?」

 

 馬場さんが妙な事を言ってくる。え、人間じゃないって何? アンデッドなの?

 

「かつて山本完助は軍師として真玄様に使えていました。優れた人物で頭も良く、軍師として申し分のない男でした。しかしある時、彼は悪魔の力を宿した宝玉を手に入れたのです」

「それから様子が変わっていったんですか?」

「はい、何かを試すように犬猫を殺し、やがてそれが人間になるまで時間はかかりませんでした。そして死んだ肉体を操る鬼面を生み出し強大な力を手に入れたのです。私達には止められませんでした……」

 

 その宝玉のせいで山本完助はおかしくなったのか……。状況から考えて、悪魔の力を宿したそれがアーティファクトだろう。

 

「どう思う、リーン?」

「その宝玉が山本完助の人格を変えたのは間違いなさそうね。強すぎるアーティファクトは、時として意思を持つ事もあると言うわ。製作者の怨念か執念か、そういったものが宿る事があるのかもしれない」

「完璧に呪いのアイテムじゃん」

 

 シャナクで解除とか出来ないかなあ……。誰が使えるんだシャナク。

 でも分かりやすいな、完助は宝玉のせいでおかしくなった。つまりその宝玉を壊せば何とかなるんじゃないか?

 行動方針を決めた所で、横にいた椿さんに尋ねてみる。

 

「椿さん、それで完助は今どこに?」

「おそらく中曲輪の屋敷にいると思われますが……」

 

 椿さんの話を聞いた後、スマホを取り出し山本完助を検索してみたがヒットしない。あれ、ここにいないのか? いや違うか。確認の為にリーンを検索してみたけど、こっちもヒットしない。

 結界のせいでサーチも使えないのかよ。

 

「椿さん、中曲輪ってどっちですか?」

「あちらですが」

 

 そう言って椿さんが指し示す方向にロングセンスで視覚を飛ばした。これも結界の影響を受けるかと思ったがなんともない、今一つ影響を受ける魔法と受けない魔法の区別がよく分からない。

 広い庭を抜け、屋敷の中を見回そうとした瞬間、その庭に1人の男が屋敷から出てきた。

 黒い着物に袴、色黒の肌に左目に眼帯。こいつが完助か。

 視覚を戻しリーンに結界を壊すにはどうしたらいいか尋ねる。四天王も助け出したし、バレた瞬間完助の所へ転移するから問題は無い。

 

「おそらくこの館の四隅に魔力を篭めた護符が配置してあるのよ。それを1つ破壊するだけでいいわ」

「その場所なら分かるぜ、こっちだ」

「え、場所知ってるんですか?」

「ん? ああ、完助がああなってから館の四隅に地蔵が出来たからな。多分それだろ」

 

 山県さんの先導に僕らはついて行く。インビジブルの効果で途中誰かに気付かれる事も無くその場所に着いた。

 壁の隅、小さくスペースが取られた所に石で出来た地蔵が置いていた。高さはポーラと同じくらいか。

 

「間違いないわね。この地蔵自体が護符の1つよ」

 

 護符というからにはてっきりお札的な物を想像していたんだけど、違った。ここでいう護符ってのはお守りの意味合いらしいので、決まった形は無いらしい。

 

「じゃあこれを壊したら、すぐ完助の所へ転移するって事でいいですか?」

「いやちょっと待て小僧。流石に丸腰では儂らでもきつい。何か武器は無いか?」

 

 武器とか言われてもなあ、今あるの僕のブリュンヒルドだけだし。しょうがない。

 

「じゃ、何か作りますけど希望とかありますか?」

「あ、ああそうだな……。儂は槍、内藤は短剣2つ、山形には大剣があるとありがたいな」

「かしこまりっ!」

 

 注文を聞いた僕はストレージから自転車を作った時に余った鋼を取り出し、モデリングで変形させていく。まずは簡単な短剣2つ、それから大剣、最後に槍を作った。

 

「あっという間にこんな物を作ってしまうとは……。凄いですね冬夜さんは」

「柄の部分まで鋼じゃ重いだろうと思ったが、予想より軽いなこの槍。バランスがちょっとおかしいけどな」

「突貫で作った物なんで出来の悪さは勘弁してください」

 

 軽くするために柄の部分中身空だからなあ。まあ1つの鋼の塊だし耐久性はあるでしょ、斬れ味は分かんないけど。

 

「それじゃあ準備はいいですか?」

「セーブはした? 回復は大丈夫?」

「何でゲームになってるの」

 

 リーンの戯言を無視して皆頷く。腰からブリュンヒルドを抜け、ウエストポーチからエクスプロージョン(小)が付与された弾丸をリロードした。

 目の前の地蔵に銃を構える。罰当たりな気もするけど、文句の方はこれを護符にした山本完助にお願いしておこう。そんな事を考えながらトリガーを引き、命中と同時に地蔵は粉微塵になった。

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