【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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不死の宝玉、そして合掌。これっていわゆる誰得シリアス?

 地蔵型の護符を破壊した僕は、スマホのマップ画面で鬼面兵を検索した。大丈夫だ、問題なく使える。そしてそのまま館の鬼面兵を全てロックした。

 

「お、おい、何だありゃあ……!?」

 

 夜空一面に浮かぶマルチプルによる小さな魔法陣に、山県さん達が目を見張る。その下り徳川の方で既にやったからもういいですって言っちゃ駄目かな、駄目だよなあ。

 

「またアレをやるの?」

 

 とか考えていたらリーンが僕に尋ねてきた。

 

「邪魔な奴は始末するにこした事はないでしょ。向こうに転移したら囲まれましたなんて間抜けな話は御免だしね」

 

 こちとらチート与えられただけの高校生、英雄壇やる気はないんだから。

 とは流石に言わないけどとにかく空に手をかざし、魔力を集中して魔法陣全てを発動させる。

 

「とりあえず穿て、光る槍、シャイニングジャベリン」

 

 カワゴエの砦の時と同じように、空から光の槍が落ちてくる。まるで雷撃の如く。しかし、落ちる現場にいるとこんなにも衝撃音と振動があるとは思わなかった。煩いな。そして館の至る所に光の槍が落ち、そこにいた鬼面兵が崩れ落ちる。それは屋外だろうと屋内だろうとお構いなしだったので、当然の如く館にも被害が出た。やっべ、そこら辺考えてなかった。大丈夫かな……、と不安になって武田の人達の顔色を見るが、皆僕の魔法に唖然としていたので特に何か言われることは無かった。

 やがて槍が降り終わると、「敵襲! 敵襲だーッ!」という兵士達の叫びが聞こえてきたが、同じように敵対する武田兵をロックしてパラライズをかましたら、あっという間に静かになった。これぞまさしく流れ作業。

 

「よし、じゃあ行きますか」

「おい……。今の全部お前の仕業か?」

「イエース、ザッツライト」

 

 ゆっくりと首を回し、目を瞬かせながら馬場さんが口を開く。他の2人も開いた口が塞がらない様だったが、やがて何とか声を出した。

 

「こりゃまた……、とんでもないですね……」

「オイオイ、こりゃもう完助もやっちまったんじゃねえか?」

「多分無いわね。山本完助は無事よ」

 

 一応敵対する武田兵の中には完助も混じっているから、パラライズの対象にはなっているけど、多分無事だろうと僕は思っている。護符でパラライズが無効化出来るように、魔力が高い物には効果が薄いのだ。

 でもそれを分かっているとはいえリーンに先こされるのは何か嫌。

 

「僕もリーンと同意見です。さあ、決着付けに行きましょうか!」

 

 中曲輪にいる完助の所へゲートを開き、潜る。潜った先は、大きな屋敷の広い庭の前に左目を眼帯で覆った隻眼の肌黒い男が立っていた。こいつが、山本完助……。ロングセンスで1回見ているから知ってるけど。

周りには倒れたまま動かない武田兵が転がっている。辺りは篝火で照らされ、それで揺らめく影の中、完助は突然現れた僕らを真っ直ぐ見据えていた。

 

「成程、誰の仕業かと思えば四天王の皆さんでしたか。いや、これは驚いた。一体どうやったのです?」

「テメエに教える義理はねえよ。さっさとくたばりな!」

 

 大剣を構えて、いきなり山県が完助目がけて斬りかかっていく。行動早いなあの人。

 

「駄目だ山県さん! いきなり斬りかかっても効きません! そんなの匹夫の勇です、いやもうHIPのYOUです! つまり匹夫の勇ってます!!」

「何で繰り返すんですか冬夜殿!?」

「しかも匹夫の勇の使い方間違っているわよ」

「マジで?」

 

 あれ? こんなのじゃなかったっけ?

 と疑問を抱く暇もなく山県さんの一撃は完助の首を取るかと思われたが、横から割って入った鎧武者に止められてしまった。

 

「なっ!?」

 

 赤い鎧に身を包んだ武者は獅噛、獅子の頭を模様とした装飾の兜から伸びる真っ白な毛を振り乱し、受け止めた山県さんの大剣を払いのける。

 顔には赤い鬼の面、2m近い身長とはちきれんばかりに盛り上がった肉体。何者だ……?

 

「御屋形様……」

 

 馬場さんが発した絞り出すような声を聞き、僕は赤い鎧武者に視線を戻す。

 あれが武田真玄、かつての武田領主か。最も、今となってはただの操り人形だ。

 

「完助テメエ! 御屋形様を盾にする気か!」

「盾だなどと。これは御屋形様が私をお護りくださっただけの事。しかし、御屋形様の手を煩わせるのは申し訳ありませんね。代わりの者を呼びましょう」

 

 そういうと完助の周りに魔力が集まり、庭の中央に大きな魔法陣が出現した。これは、召喚術!

 

「闇よ来たれ、我が求むは骸骨の戦士、スケルトンウォーリアー」

 

 魔法陣から右に湾曲した剣、左に丸いラウンドシールドを装備した骸骨がウジャウジャ何匹も這い出してくる。

 えっと、アンデッドは確か光属性に弱いんだっけ。テンプレだな。

 

「光よ来たれ、輝く連弾、ライトアロー」

 

 どこからかリーンの呪文が聞こえ、光の矢が骸骨の1匹に刺さる。その瞬間、骸骨は粉々になって二度と再生する事は無かった。

 

「こっちも負けてられないな」

 

 僕はブリュンヒルドに光属性が付与された弾丸をリロードし、寄ってくる骸骨の頭蓋骨目がけて引き金を引く。銃声と共に閃光が辺りを照らし、頭部が粉微塵となった骸骨はそのまま動きを止めて塵となる。

 横を見ると椿さんをはじめ、武田の皆さんも骸骨共を次々なぎ倒していたが、いくらやっても再生する相手には時間稼ぎ以上の意味が無かった。

 

「面倒ね、一気に終わらせるわ」

 

 リーンが魔力を解き放つと、足元に魔法陣が浮かび上がる。やがてそれは庭全体を包み込むほどの大きさになった。

 

「光よ来たれ、輝きの追放、バニッシュ」

 

 リーンの詠唱が終わると同時に、庭にいた全ての骸骨が光の粒となって消滅した。流石魔法に長けた妖精族。それらしい所初めて見た気がする。

 

「光の浄化魔法ですか。やりますね、ですが」

 

 完助の前には彼を守るように真玄が立ちふさがる。目の前にいた山県さんに刀を向けて、彼を牽制していた。

 

「どいてくれ御屋形様!!」

「フフフ、無駄ですよ。御屋形様は私を護って下さる。貴方達が大恩ある御屋形様に刃を向けられないのは分かっているのですよ。つまり私には無敵の守護者が常に傍にいるという事です!」

 

 成程ね。攻撃を決して向けられない相手が守護者になっている。それは確かに無敵だろう。

 

 バキィンッ!

 

 だけど僕には通じない、だから僕が撃つ。

 僕が真玄の仮面を打ち、仮面が壊れた鎧武者は糸が切れたかのように崩れ落ちうつ伏せに倒れる。

 

「な!?」

 

 完助が驚きの表情で、視線を倒れたままの真玄と僕に向けてきた。

 それは四天王達も一緒なのか、唖然とした表情で僕を見ている。いやそうでもないか。椿さんは僕を一瞬だけ憎々し気な目で僕を見た後、すぐにそれを恥じたのか目を逸らした。

 

「別に、貴方達の大将を殺したんですから憎んでくれて構いませんよ。男に見られるならともかく、椿さんみたいな美人の熱烈な視線なら大歓迎だ」

「そんな事……」

 

 一応気を遣ったつもりだったけど、どうやらいらなかったらしい。

 

「フ、フフフ、中々やるじゃないですか。しかし、私にはまだ不死の宝玉がある!」

 

 そう言って完助は大袈裟に両腕を広げ叫ぶ。余りにも隙だらけだが、攻撃は無意味だという宣言だろうか。

 

「不死の宝玉がある限り、私が死ぬことは無い! たとえ首を刎ねられたとしても、瞬く間に再生してみせましょう!」

「その宝玉の力で鬼面の兵士に不死の力を与えていたのね」

「その通りです。遠くに離れてしまうと単純な命令しか受け付けなくなるのが欠点ですが、持ち主に絶大な魔力と不死の力を与えてくれる素晴らしいアーティファクトですよ!」

 

 リーンの問いかけに自慢するかのように答える完助。そんなに素晴らしいならその不死性試してやる。

 僕はエクスプロージョン(小)が付与された弾丸をリロードし、完助に撃つ。

 

「うわっ、エグ……」

 

 リーンのドン引きの声の通り、完助は着弾と同時に弾け飛び首と両腕両足だけになった。リアルゆっくりの誕生だ。

 

「無駄ですよ! 宝玉がある限りこの状態からでも再生は可能なんですよ!」

 

 しかし完助は未だ生きていて、完助の首から身体が少しづつ生えてくる。つまり宝玉はまだあると。壊すつもりで撃ったんだけどな……。というかどこにあるんだ? ……いや分かったぞ、宝玉の居場所が!

 

「ブレードモード」

 

 ブリュンヒルドを長剣に変え、完助に斬りかかる。勿論攻撃なんて無駄な真似はしない、狙うのは眼帯だ。

 

「やっぱりね」

 

 眼帯を斬り見えた物は、左目の部分に埋め込まれた赤く妖しく禍々しい光を放つ不気味な玉。これが不死の宝玉か。

 

「アポーツ」

 

 そこで僕の無属性魔法で、手の中に宝玉を引き寄せる。それをリーンに投げて渡す。さっきは壊すつもりで撃ったけど、壊れず手に入れた以上勝手に壊すのもどうかと思うし。え? 1回壊す気だった以上駄目? 僕もそう思う。

 

「だめねこれは。周りの負のエネルギーを取り込んで、持ち主の心を濁らせる呪いが掛かっているわ。そいつがおかしくなったのもこれが原因でしょうよ。アンデッドを操るには澄んだ心は邪魔だから、合理的と言えば合理的だけど」

「よく分かるね」

「妖精族の目を舐めないでよね」

 

 ふふん、と自慢げに無い胸を張るリーン。そう言うなら妖精らしいところをもっと見せて欲しいものだ。

 

「アーティファクトは古代文明の魔法具。とても貴重な物だけど、これは長い間悪意を吸って災いを呼ぶ類の物に変化しているわ。破壊した方がいいわね」

 

 そう言うと彼女は、宝玉を馬場さんに向かって投げた。

 

「決着は貴方が付けなさい」

「ああ」

「何をする!? やめろ!!」

 

 槍を振りかぶる馬場さん。それを必死に止める完助。だが槍は止まらない。槍は振るわれ宝玉は粉々に砕け散った。

 椿さんの話からするに、元々人格者だった完助がここまで狂ったのは間違いなく宝玉のせい。これでどうなるのか。

 

「うがぁあぁあああああああッ!!!」

 

 血を吐くほどの絶叫を上げ完助がその場に崩れ落ちる。しばらく悶え苦しんでいたが、やがて動かなくなり倒れたその身体が徐々にミイラのように干からびていく。

 

「あり、が……とう……ござ……」

 

 そんな声と共に、最後には塵となって風に吹かれ空へと消えて行った。元の完助に戻る、なんて甘いオチはなしか。

 まあ仮に戻っても、主を手に掛けここまでの凶行を行った相手に居場所があるとは思えない。これでよかったのかもしれないな。

 

「こりゃあ……、どういう事だ?」

「元々山本完助という人間の体は既に死んでいたのよ。魔力、気力、体力。色んな物をあの宝玉に吸い上げられていたのよ、きっと」

 

 完助が消え、残された服を見た山県の呟きにリーンがさらりと答える。既にアンデッド化していた完助は、宝玉を破壊されて身体を維持出来なくなったって事か。

 

「あ、御屋形様が……!」

 

 椿さんの小さな声に振り返ると、真玄や他の鬼面兵たちの身体も完助と同じように塵とかし、風に吹かれて消えていく所だった。

 四天王と椿さんが手を合わせて死者へ祈りを捧げる。僕も祈っておくとするか、あの宝玉で狂わされた全ての命に。

 こんなの、僕のガラじゃ無いなあ。




ギャグさせろ(切実)
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