【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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海、そしてバカンス。やっぱ水着回は必須だよね

 あれから3日が過ぎた。

 色々ゴタゴタしたものの、なんとか武田の領地は落ち着きを取り戻し新しい領主も決まった。武田四天王の1人、僕らに救出を依頼した高坂さんが真玄公の遺児を完助から匿っていたらしい。

 真玄に息子がいたことは完助も知っていたらしいが、領主である本人を操っていた為さして問題にしなかっただろうか? 単に殺そうとしたけど見つからなかっただけかもしれない。

 ともかく、真玄の息子武田克頼が領主となり四天王達がその補佐をする事になった。

 地球の歴史を参考に、織田に喧嘩を売らない様言っておいたけど大丈夫だろうか? 数年後武田滅亡の報せを聞きたくは無い。

 ともかく徳川と武田の争いは決着がついたので、僕らは本来の目的地であるニルヤの遺跡に向かう事にした。

 ニルヤの遺跡は島津領の外れ、イーシェンの最南端にある。運よく馬場さんが若い頃に立ち寄った事があるらしく、記憶を回収させてもらった。

 

「……爺さんと手を繋いで額を合わせるとか、どんな罰ゲームだよ」

「ごめんなさい……。本当に、ごめんなさい……!」

 

 僕の言葉に、涙を懸命にこらえながら謝罪を口にするリーン。やめて、余計嫌だから。

 

「では父上母上、それに兄上と綾音も。行って参ります」

「ああ、気を付けてな」

「冬夜さん、娘をよろしくお願いしますね」

「はい、分かりました」

 

 オエドの八重の実家から遺跡へ旅立つ別れの挨拶の際に七重さんに頭を下げられしまい、思わず適当な返事をしてしまう僕。あの状況どうすれば正解だったんだよ。

 

「今度またゆっくり遊びに来ますよ。その時はベルファストに招待しますね」

「楽しみにしているよ」

 

 重太郎さんと握手を交わし、遺跡へのゲートを開く。

 八重の家族に手を振りながら光の門をくぐると、そこは砂浜だった。しかし風情の無い別れ方だな。いやでもゲートで移動できるの知ってる人の前で見えなくなるまで歩くのもそれはそれで無様な気も……。

 ともかく目の前を見ると、どこまでも広がる海と白い砂浜。遠くにはいわばと小さな森が見えるだけで、後は何もない。こんな所に馬場さん何の用で来た事あるんだ?

 マップアプリで確認してみると、どうやらここは完全に小さな孤島らしい。200mも泳げば本土に着く陸地を孤島と呼んでいいかは疑問だが。

 エメラルドグリーンの海が太陽に輝き、眩しい光を放っている。真っ白な砂浜は確か、珊瑚礁やら石灰岩が小さく砕けた物が含まれているんだっけ? この辺に活火山とかあるのかな?

 

「わああ、綺麗ですねえー」

 

 ユミナが白い砂浜を歩きながら、目の前に広がる海に目を奪われている。彼女の足元に居る琥珀は可哀想なくらい歩きづらそうにしているのに、その横をはしゃぎながらかけていくのはポーラだ。どうなってんのあいつ。

 そのご主人様は、どこから取り出したのか黒い日傘を差して優雅に砂浜を歩いている。正直似合わない。

 

「フッッ!!」

 

 そう思った瞬間リーンから鋭い突きが飛んでくる。どうなってんのこれ。

 とはいえ何度も喰らう僕じゃない。その拳を受け止めて、即座に足払いをしかけて転ばせる。そして倒れそうになった所を受け止めた。

 

「……やるわね」

「でしょ?」

「何やってんのよアンタらは」

 

 リーンが僕の成長を実感している横で、エルゼは呆れた様な表情をして僕らを見る。何って……、何だろう? 僕らは何をしているんだろう?

 

「海なんて久しぶりですー」

 

 一方、リンゼは僕らを完全無視して1人潮風を受けながら砂浜を歩いていた。酷くない?

 八重がその後に続こうとして、途中で草履と足袋を脱いで素足になった。砂が入るから鬱陶しかったんだろうな。

 

「熱っ! あちっ! あちちち!」

 

 そりゃ熱いだろうよ。だって日差しキツイよこれ、今昼じゃないのに。まさしく真夏、今夏だったんだ……。

 奇妙な踊りを踊るように、暑さから逃げる為に片方ずつ足を上げながら八重は海へと走っていく。

 とりあえず、マップで遺跡を検索。聞いていた通り場所は本当に海の底。この先100mほど沖にあるみたいだけど、何にも見えないな……。潜れと?

 

「リーン、水の中で動ける魔法ってないの?」

「水の上を渡る魔法とかならあるけれど。……そういえば無属性魔法で水中でも呼吸できる魔法ってのがあったはずだけど、興味無かったので覚えてないわ」

「よし分かった。じゃあ僕がミスミドにリーンを送るから調べてきてよ。それまで僕らは遊んでいるから」

「冗談じゃないわ」

 

 これで解決だな、と思ったらリーンが食って掛かってきた。えー、元々リーンの要望じゃん、と僕が言うとリーンがこう言ってきた。

 

「せっかく海に来たんだし、シャルロッテも呼ぼうと思っていたのだけど。私が居ないんじゃ無しね」

「むしろあの人、リーンが来ない方が来そうなんだけど……」

「何言ってるの冬夜。私が来いと言えば来るし、来るなと言われれば来ないわよあの子」

「横暴極まりないな」

 

 と抗議してもリーンは結局その主張は曲げなかった。まあ、いいか。別にリーンにいて欲しくない訳じゃないし。

 

「じゃあ早速」

「水着買いに行こうか、皆!」

 

 僕の言葉にえ? みたいな顔をした皆。そう言えば僕とリーンだけで決めて誰にも言ってなかったっけ?

 なので、昨日リーンが調査の前に遊ぶ時間を用意してくれたことを話す。勿論、椿さんの胸揺れの下りはカットして。

 

「まあそういう事なら……」

「行きましょうか」

 

 シルエスカ姉妹が了承し、ユミナと八重もそれに追随した。

 水着は衣類、だったらあそこしかないので僕らはリフレットのファッションキングザナックへ転移した。久しぶりだなここ来るの。

 再開もそこそこに話を持ちかけると、丁度これから暑くなる時期で水着の需要が増えるらしく、大量に入荷したらしい。やだ、タイミング良すぎ……。

 とりあえず女性陣の水着選びに時間がかかりそうなので、後で迎えに行くことを告げて一旦家に帰る。皆で楽しもうってのに、仲間外れは可哀想だ。

 

「あ、私も連れていきなさい冬夜」

「え、なんで?」

「……シャルロッテは、私が誘わないと来ないって言ったでしょ」

 

 何かシャルロッテさん誘うの申し訳なくなっていくんだけど。

 

 

「海、ですか?」

「わあ~、いいですねえ~」

「セシル姉ちゃん、海ってなんだ?」

 

 ウチのメイドさん達に僕が話を切りだすと、三者三様の反応が返ってきた。ラピスさんとセシルさんの水着楽しみ~、なのでゲートでラピスさん、セシルさん、レネをザナックさんの店へ放り込む。

 それから厨房にいたクレアさんと、庭にいたフリオさんも放り込む。ハブにはしない。

 流石に家の警備を朴り出すわけにはいかないので、トムさんとハックんには悪いけど家に居てもらおう。埋め合わせは……、女性陣の水着写真でも持って行くか。

 ライムさんは泳がないとの事なので、そのまま彼を連れてオルトリンデ様の家へと転移する。誘わないと後で面倒臭そうだし。

 

 

「イーシェンの海か! いいな、行くとしよう!」

「父上! 誘われたのはわらわじゃぞ!」

 

 誘っといてなんだけど、この国の王族は暇なんだろうか? 何で公爵様が一番に海に行きたがるんだよ……。はしゃぎ出すその横で奥さんのエレン様が優しく笑っている。

 とりあえずこの3人と、公爵家の執事レイムさんをゲートでザナックさんの店へ送る時、オルトリンデ様がとんでもない事を言い出した。

 

「兄上達も誘おう」

 

 いや、王城には行くつもりでしたけどね?

 

 

「ほほう、イーシェンの海か。アルの奴、気が利くじゃないか」

「久しぶりに潮風に当たってみたいですわね」

「政務とか大丈夫なんですか?」

 

 ベルファストの未来に不安を覚えつつ、やたらノリノリの国王陛下とユミル王妃に一応尋ねてみる。

 

「今日は午後からの予定が空いていてな。久しぶりにアルを呼んで将棋でも指そうと思っていたのだ。だから問題は無いぞ」

 

 タイミングがいいんだか悪いんだか、若干悩むがとりあえずそのままの格好だと目立つので着替えさせた。明らかに王様が店に来たらザナックさんは流石にビックリするだろう。

 その間にレオン将軍の所へ行き、王様の警護をしてくれる人を付けてもらおうと思ったら将軍本人が行くと言い出した。

 

「マジですか?」

「陛下のバカンスに儂がついて行かんでどうする! ついでに儂も楽しむがな!」

 

 警護しろよ、とツッコむ暇もなく大声を出しながら背中を叩いてくる。この人のこれ何とかならない?

 そしてシャルロッテさんも誘った。というかリーンに命令されて来ることになった。

 

「師匠のお誘いは断れない……」

 

 あまりにも嫌そうな顔でブツブツと呟いているから、正直断っても文句を言うつもりは無かった。リーンが何か言ったら僕が黙らせればいいし。

 しかしリーンが何事かをシャルロッテさんにの耳元で呟くと、さっきまでの鬱屈した顔が一変。頬を赤らめながら一気に乗り気な表情へと変化した。

 

「何言ったのリーン?」

「内緒よ」

 

 気になるなあ、と思うけど女性の秘密を一々穿り出す趣味は無い。DV男じゃないんだからさ。

 さっきよりは地味な服に着替えた陛下達を連れて、ザナックさんの店へ戻る。

 あれ? 何でミカさんとアエルさんがいるんだ? まだ誘ってないのに。

 

「久しぶりー、元気だった?」

「エルゼちゃんに誘われたんです。海に行くから一緒にどうだって」

 

 エルゼが誘ったのか。僕が誘いたかったのに、気が利かない男だと思われたらどうしよう。ま、いいや。とりあえず水着を買った人達からビーチへと転移してもらおう。もう面倒だしゲートは固定で。

 僕は自分用の水着、フリーサイズのトランクス型のを購入して砂浜に転移。そしてストレージから取りだした鉄と敷布を使い、モデリングを使用して簡易な着替え用のテントを作る。女性陣のは大きく、男性陣のは小さくていいや。早速エルゼ達が水着に着替えようと入っていって、僕はしっしっと追いやられた。

 

「僕が近くにいると覗きでもしそうって言うの?」

「言いますけど……」

 

 僕が抗議すると、リンゼの容赦ないが正論の言葉のナイフが僕を切り裂く。傷つく。

 傷つきながらもパラソルやビーチテェアを何点か、それと大き目のサンシェードを作っておく。知ってるサンシェードって? 要は日除けなんだけど。後はゴムを使ってビーチボールと浮き輪でも作っておくか。

 水着を買い終えた人達が次々ビーチヘやって来る。多いなあ……。って考えたら22人+2匹なんだから多いに決まってる。

 とりあえずザナックさんに礼を言って、ベルファストの自宅のリビングへとゲートを繋ぎ直し固定しておく。トイレとか困るしね。

 後は飲み物でも適当に用意しておくか……。ってあれ?

 さっきから僕だけ働いているような気がする。いや、僕しか働いてない。間違いない。

 ……絶対許さないぞ、ドン・サウ○ンドォォォオオオオオ!!

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