【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。 作:味音ショユ
「それじゃ、よろしくお願いしますよリンゼ先生」
次の日、僕はリンゼに魔法の続きを教えてもらうために宿屋の裏庭、使われなくなったであろう机と椅子を使わせてもらっている。ちなみにエルゼはやることが無いからって1人で出来る採取の依頼を受けて出かけた。あれ? そう言えば僕エルゼに何も教わってないぞ!?
「せ、先生って……。そんなの……」
僕の軽口に顔を真っ赤にして俯くリンゼ、挿絵が欲しくなるくらい可愛い。
「で、僕は何からすればいい?」
「まずは基本的なことからです。魔法には属性があります。火、水、土、風、闇、光、無の7つです」
何かソシャゲみたいな属性だけど、1個だけ気になる物がある。無って何? 無を習得出来るの?
「少なくとも冬夜さんは水の属性を持っているのが昨日分かりました。なので、まずは他の属性がどうなのかを試そうかと思います」
「えっと、魔法には適性が必要で、いくら魔力があっても適性が無ければその属性の魔法は使えないんだよね?」
「そうです。ちなみに私は火、水、光の3つが使えますが他の4つの属性は初級魔法すら使えません。また、使える3つの属性も、火属性が得意で光属性が苦手です」
素養は全部生まれつきか、まあ分かりやすいといえば分かりやすいな。
「ところで火や水は分かるけど、光と闇、あと無って何?」
個人的に一番気になるのは無だけど、地味に光と闇も気になる。闇属性で主人公張れるのは遊○王くらいだし。
「光は別名を神聖魔法と言って、光を媒介した魔法です。あと回復魔法も含まれます」
レーザーとか撃てそうだ。僕もかめ○め波が!?
「闇は召喚魔法です、契約した魔獣や魔物を召喚して使役が可能です」
デュ○ルディスク作っとこうかな? 「○○召喚!」みたいなイメージで。
「無属性は他の6つに当てはまらない特殊な魔法が大半です。お姉ちゃんがこの属性の使い手で、身体強化することが出来ます」
成程、随分攻撃力が高いと思ってたけど魔法によるものだったんだ。
「無属性魔法以外は魔力と属性、そして呪文が揃って魔法が発動します。まずは適性を調べましょう」
とリンゼがポーチから魔石を取り出し、テーブルに並べる。赤、茶、緑、黄、紫、無色の6つだ。
「それぞれ火、土、風、光、闇、無の魔石です。まずは火からやってみてください」
「分かった」
さて、火は主人公属性……。なんてのはちょっと古いかもだけど、何だかんだ少年漫画好きな僕としては押さえておきたい属性だ。はたしてどうなるかなっと。
「火よ来たれ」
勢いよく魔石が燃えだした。すぐに手を放すと魔石の火が消えた。問題あるってこの調べ方!
「大丈夫です。魔力で生み出された火は他に燃え移らない限り出した本人は熱さを感じませんから」
「そ、それならいいんだけど……」
もう1度同じことをし、火を出す。確かに熱くはない、がでかすぎて他に燃え移りそうだ。やっぱ問題あるって。
「冬夜さんの魔力が大きすぎるんですね……。慣れればコントロールも出来る筈ですが、今はあまり集中せず、気を散らす感じでいけば抑えられるかもしれませんね」
「任せて、集中しないことは得意なんだ」
「……自慢できることではありませんね」
「うん」
両親や先生にはよく怒られたなあ、それももう無いと思うとちょっと寂しい。でも僕は生きている、生きているなら前を向かなくちゃ。失ったものばっかり見るより新しく得る物を見よう、前世では縁遠かった可愛い女の子をジロジロ見よう。思い出は綺麗だから大事にしまっておくことにして。
「とりあえず次は土だ」
変なタイミングで郷愁の念に駆られつつ、僕はそれをリンゼに悟らせないように次の魔石に手を伸ばす。
「土よ来たれ」
今度は魔石から細かい砂が流れ出す、テーブルの上にあふれて掃除が面倒臭い。
次は風。
「風よ来たれ」
風がテーブルの上の砂を吹き飛ばし、更に魔石まで吹き飛ばす。
次は光。
「光よ来たれ」
激しい光が僕を襲う。目が~、目がぁ~! とムスカ大佐気分。楽しい。
次は闇。
「闇よ来たれ」
すると気味の悪い闇が魔石の周りに漂い始める。闇のゲームは出来ない。
「6つの属性を使える方なんて初めて見ました……。私は3つの属性を使えますがそれでも珍しいんですよ」
リンゼが神妙な顔で僕に言う。どうやら神の加護は周りには少々盛り過ぎに見えるらしい。魔法属性特盛り男望月冬夜の誕生である。これで無属性まで使えたらどうなるのだろうか。
ってあれ?
「無属性魔法って、どうやって発動するの?」
無よ来たれとでも言うの? 終焉を呼ぶ感じ? ラスボス感全開だよ、もう正直自分のスペックはラスボスのそれだと思ってるのに。
「無属性は特殊で、これと言って呪文が決まっていないんです。魔力の集中と魔法名だけで発動できるので。例えばお姉ちゃんの身体強化だと、『ブースト』って唱えると発動します。他にも筋力を強化する『パワーライズ』、珍しいものだと遠くへ移動出来る『ゲート』なんてものもあります」
へえ、本当に色々あるんだな。
「……でも、自分がどんな無属性の魔法を使えるかなんて分かんなくない?」
「お姉ちゃん曰く、突然何となく魔法名が分かるらしいです。そして無属性魔法は個人魔法とも呼ばれていて、同じ魔法を使える人は滅多に居ません」
「じゃあどうやって調べるのさ」
「魔石を手にして何か無属性魔法を使おうとすれば、発動しなくても魔石が何らかの反応を示すはずです」
逆に言えば何も反応しなければ、僕に無属性魔法の適性は無いと。
まあ、とりあえず使ってみよう。
使うのはゲートにしよう。昨日みたいに歩かなくて済むなら便利そうだし、いや発動はしないのか。
とりあえずやってみた。
「ゲート」
突然、魔石から光が放たれ僕らのそばに、淡い光を持ったドア1枚ほどの大きさの半透明の板が現れた。魔力特性メガ盛り男望月冬夜がここに降臨した瞬間である。
「出来ちゃった……」
「……ですね」
僕の言葉にリンゼが茫然としながら答える。
僕がその板に躊躇なく顔を突っ込むと、次に視界に広がっていのは森と尻もちをついて目を見張るエルゼの姿だった。
「何してんのエルゼ?」
「な、何って……冬夜!? なんであんたがここに……!? ていうかそれ何!?」
「僕の無属性魔法」
「は!?」
驚くエルゼをよそに僕は一旦戻り、今度はリンゼを連れてこの森にやって来た。
「リンゼまで!?」
混乱するエルゼにリンゼが事情を説明する。どうやらここは昨日来た森らしい。エルゼが受けた採取依頼ってここでとれる物なのか。
「ゲートの魔法は一度術者が行った所ならどこにでも行けるそうです。恐らく冬夜さんはここを思い浮かべたのかと……」
思ったよ、間違いなく。にしても、一度行った所ならどこにでも行ける、ね……。
「はー、全属性使えるって……。あんた本当に人間?」
「そうですね、ちょっと怖いです……」
「ニンゲンダヨー、コワクナイヨー」
まあ神にいじられているから、ただの人間とは言えないけどさ。
ともあれエルゼの採取は終わっていたようで、これぞとばかりに一緒になって宿屋の裏庭に帰ってきた。
「行くときは2時間かかったのに、帰りは一瞬。便利ねこれ」
そう言うとエルゼは依頼を終わらせてくる、とギルドに行った。
僕はこの隙にトイレに行く、と言ってリンゼと別れもう1度ゲートを発動した。
目的地は、地球。だけど……
「帰れないか」
まあ、そんな甘い話は無いと思ってた。やっぱり思い出は思い出としてしまっておくしかないか。
戻るとエルゼが戻ってきたので、魔法を教えてもらうのも今日はここまでにして銀月でご飯を食べることにした。今日のメニューは何だろなっと。
冬夜「僕が魔法を発動、僕の反応は単調!(ラップ調)」