VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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敢えて例えるならシューティングステージ。
ACFAで言う所のVOBです。

ミッション;大型巡航ブースターでアウトバレルへの最短ルートである渓谷を突破
備考;各地に配備されたレーダーに注意する事
敵勢力;レーダー一箇所につき高速飛行型4機程


第3の4話 危険な寄り道

 ログアウトする為、長距離をVAADIKUO(ヴァーディクト)で移動する事にした総十郎と葵は、後からストーンヘンジにログアウト施設がないと連絡を受けた武と合流、三人でセットアップ内容を相談して、セットアップ方針を決めた。

 

長距離を高速移動する為、背に腹はかえられぬと大型巡航ブースターを購入し、最低限の改造とシステムのアップデートを済まし、一時間程の時間が経過する頃には出発していた。

 

 『葵、総十郎。このまま東寄りの谷に突入するルートがある。其処に入るぞ』

『山を超える程の出力はない、ってのはアレだが…ま、それはそれで寧ろ迂回路だしな』

 

リンクシステムにより武一人の操作で、二人が見ている地図が表示を次々と変える。地図には各ギルドの防衛範囲が表示されており、可能な限り入らない様に移動する必要がある。例え日米共同戦線とは言え、大型ギルドでもなければ個人経営のギルドの防衛圏に入るのは好ましくなく、最悪の場合は戦闘となる。大型巡航ブースターで通常戦闘は不可能なので、武達が不利な戦いになる。

 

『谷のルートなら防衛領域に入って刺激する事はないんだよな?』

『嫌、一部レーダーに反応する可能性がない訳じゃない。活動距離の外だからと言って、中韓と戦っている中なら寧ろ、それ以上の距離にレーダー網を展開するのも自然だろうしな。

 

 それに、引っかかったら引っかかったで、如何やって説明すれば瞬間的に理解して貰えるか分からない。速度が速度だから一発ブースターに貰うだけで即死だしな』

 

そもそも、銃撃されてダメージを受けるのは、ゲームシステム上、「弾に当たるから」ではなく、「壁や何らかの物体と高速で接触する」からであり、飽く迄「衝撃が防御力を超える」から、装甲や機体が損傷を受けるのだ。例え一発しか被弾しなくても、その一発でブースターが故障すれば、「凄まじい速度で地面や崖に激突」する事になり、それは即ち「凄まじい衝撃」、つまり即死級の大ダメージを受ける事になる。

 

大型の外付けブースターは、大出力である程に冷却系や燃料タンクが肥大化する傾向に有り、総じて脆いのが特長だ。浪漫だと喜ぶプレイヤーも多いが、実際に使うとなると「冗談じゃない、改良しろ!」と言いたくなる。オマケにこのゲーム、意識をゲーム世界にダイブさせるバーチャル物なので、機体の揺れもあって体感速度が凄い事になっている。そんな状態で地面に叩きつけられたら、場合によっては冗談抜きで発狂しかねない。

 

 「…うん、最悪ブースターの爆発には耐えられる可能性はなくはないけど、その後を考えると、最終的には同じ結果よね」

『そうならない為にも、防衛範囲には注意だ。レーダーに関しては数が多すぎて把握できなかったから、祈るしかないけど』

『こんな体感速度で叩きつけられたらショック死しても寧ろ当然だろ…』

 

 

 暫く最低限浮力を得る為の翼を広げながら、推力任せにすっ飛んでいると、見えて来た谷にマーカーが表示された。武が事前に設定しておいたらしく、葵と総十郎は、それに従って操縦桿を僅かに傾けた。速度が速度なので自然と緊張し、操縦桿の操作も慎重にならざるを得ない。

 

「と、突入迄後4000!3700、3400、2600!!」

 

カウントし始める武だが、その声は緊張に満ちている。

 

「2300、1600、1300――突入!!」

 

叫んだ瞬間、先頭を飛んでいた総十郎のイクサーが谷に飛び込む。一瞬遅れてテルマナが谷に飛び込み―――次の瞬間には既にモニターの映し出す風景は崖であった事に気づき、一安心か、と息を付く武。

 

「一度入っちまえば、下手な動きをしない限り、ぶつからないよな」

『そんな悠長な事言ってると死ぬよ?』

「それはどう言う意味で?」

『ログインできないじゃない。後、この速度で事故ると精神的にも死ぬよね』

 

 

 そんな事を喋っていると、後方にレーダー反応が検出された。距離は遠いが徐々に近づいており、数も三つある。

 

「おいおい、拙いぞ」

『捉えた、三機だな』

 

かなりの速度で接近しており、崖にぶつかりそうな気配もない。自分達と違って「慣れ」が感じられる安定した操縦だ。

 

「多分、この辺の防衛レーダーに引っ掛かったんだろう。それで防衛隊が回された、とかが妥当だろうな」

『マジか、把握できないとは言え、早々に引っかかるとは』

 

総十郎の言葉に焦り声で武が叫ぶ。その間にも徐々に近づいてきつつある反応。

 

「武、葵。一応攻撃される可能性も考慮しよう。相手が話聞かずなら、説明する余地はない」

『け、けどイクサーは兎も角俺と葵の機体じゃ、後ろは少々斜角が足りないぞ?』

「それは…無理だな」

 

 『此方はアメリカ陸軍ギルド所属の第44駐屯防衛部隊だ。君達の所属と当地域への侵入目的をお聞かせ願いたい』

「あ、話の分かる人だったか。俺達はストーンヘンジへの援軍として回されたんだが、撃退した後にアウトバレルへの鉄道が使い物にならないと分かったんで、VAADIKUO(ヴァーディクト)で移動しようと思ったんだ。時間が掛かるから、こんな大層なブースター積んでるけど、そっちを攻撃する意思はない」

『了承できない。当地域は現在、所属不明VAADIKUO(ヴァーディクト)による運搬部隊襲撃事件が相次いでおり、現在は当ギルド、及び味方ギルド全体で警戒態勢にある。下手に飛んでいると無警告で発砲される危険性もあるので、アウトバレル迄移動するのであれば、このルートを使用してくれ』

 

提示されたルートは、少々大回りだが、確かにギルドが集中する地帯からは距離がある。とは言え、只でさえ距離があるアウトバレルへの移動なので、流石に武が不満の意を述べる。

 

『アウトバレルとストーンヘンジ、距離大分あるだろ?』

『その為に鉄道も用意してある筈だ。とは言え、資金難でギリギリ繋げた程度だ。あれ以上速度は出せない』

「5時間もかかるんじゃ話にならん、何にせよ迂回路へ入るぞ」

『わーったよ』

 

 

 『…目標、誘導ポイントへ進路を変更。ブースターを狙え』

 

その通信は、総十郎達が旋回して、予定ルートから外れた直後に行われた。

 

『了解。…ふふ、簡単に引っかかってくれたな』

『ああ、ノンエンブレムの俺達を疑わないとは、中々間抜けな奴だ』

『態々ボイスチャットではなく機体同士の通信だったんだ、気付く筈もない』

 

 

 

 

 「可笑しい、レーダー反応が増え続けてるぞ!?」

『あんの野郎、まさか米軍の名を騙った偽物じゃないだろうな』

『ちょっと待って、VAADIKUO(ヴァーディクト)…だけじゃない!?』

 

葵の叫び声と同時に砲弾が飛来、総十郎が回避と共に舌打ちする。

 

「そう言う事か、あの連中!!」

 

 

 『全軍、獲物を逃がすな。例のストーンヘンジ救済組だ、倒せば良い物が手に入る』

『第一ミサイル攻撃部隊、配置完了。攻撃を開始する!』

 

突如、眼前に凄まじい量のミサイルが出現する。それを認識した瞬間、総十郎が「高度を下げろ」と叫ぶが、避けたミサイルが崖に当たって崩落が始まる。

 

「連中、一体何処にこんな数のVAADIKUO(ヴァーディクト)を!?」

『でも、これだけ大規模に攻撃してれば…!!』

 

 「通常戦闘しようにもブースターが邪魔だ。かと言ってパージすると…」

『ああ、これだけの数に一瞬で包囲されるな。とは言え、このままブースターを使ってもな…』

「仕方がない、取り敢えず最大出力で強行突破だ!!」

 

『目標郡、加速』

『強行突破か、正面に部隊を回せ』

 

詳細は不明だが、彼らが敵である事は明確だ。何としてでも突破しなくてはならない。

敵部隊が正面に移動、苛烈な砲撃を開始する。それを回避、武が雄叫びを上げながらトリガーを引いた。

 

ドォウン!!

 

右肩に直撃、大型ビーム砲の照準がずれて、崖にビームが直撃する。すかさず放った二発目が頭部を直撃、敵機を後退させる。更に三発目を発射、別の機体の膝に直撃する。それを見た葵がテルマナの得意技である砲撃で中央の敵部隊を薙ぎ払う。

 

 三機が砲撃部隊の残骸を上を通過すると、生き残った左右の隊員が突破された事を報告し、追撃を開始する。しかし高速移動する標的を狙う撃つ仕様の砲撃型では、大型巡航ブースターの出力を最大迄上昇させた総十郎達を射程圏に捉える事は出来ず、結局は他の部隊へと追撃の任務を引き渡した。

 

 

 「っち、好い加減しつこいぞ!!」

 

操縦桿の先端にあるカメラ操作用のレバーを操作し、機体を振り向かせた総十郎。サイドモニターに照準表示が移動し、ロックサイト内のマーカーが敵の姿を捉える。ロックオン完了と共に60機関砲を一発発射、高速飛行用エンジンの右側に直撃させる事に成功する。

 

爆発により姿勢制御を一瞬失った敵機。制御を失った時間は一秒にも満たないが、狭い渓谷である事と高速飛行状態である事が災いして、そのまま突き出た岩に激突、大ダメージによるエンジンの爆発の追加ダメージを受け、更には物凄い勢いで地面をバウンドする度にゲームシステムの仕様のお陰で追加ダメージが入る。勢いが止まる頃には総十郎や仲間達は遥か彼方である。

 

更に岩に激突した仲間に振り向いた一瞬を総十郎に狙われ、60機関砲数発に飛行用エンジンに直撃、爆発による姿勢制御能力の損失と共に、推力不足による高度低下を伴い、失速して地面に叩きつけられてしまう。

 

 『ブラボー2ダウン、4もダウン――ぬご!?』

「そう言うのは通信じゃなくてボイスチャットだ」

 

誰が通信しているのかを一瞬索敵モードに切り替えた武のスナイパーライフルにより、胸部に直撃弾を貰ったVAADIKUO(ヴァーディクト)が綺麗な風穴を空けて墜落する。直後にもう一機を弾丸で貫き、失速を防ぐ為に加速する直前で、肩部装甲に内蔵していたロケット弾を発射、同時にサイドブースターで横に移動して、再加速を開始する。

態々、超低速型の普通なら廃産確定の駄目ロケットだが、余りの遅さ故に現状況下では寧ろ、浮遊機雷に等しい。避ける以前に認識する暇すらなく、結果的に自分から当たりに行った追撃者達が次々と墜落する。

 

 「低速ロケットって意外と高速戦闘だと結構鬼畜兵器なんだよな~」

『おま、武。えっぐいな』

 

 

 『ああ! 敵集団、追撃領域を突破!』

『これ以上の追撃は無理だ、撤退するぞ』

 

 

 

 

 無事に渓谷地帯を突破した総十郎達だったが、この時点で別の問題も浮上した。大型巡航ブースターの燃料が残り僅かなのだ。

 

「おい、二人の燃料は?」

『私も後一時間分』

『俺は…うわ、被弾エラーだ。やっべ、20分もないな』

 

総十郎の質問を受けてエラーに気付いた武がリンク機能を使って機体状況を知らせる。総十郎が見る分には確かに大型巡航ブースターを示す後方部分の大きなシルエットが赤くなっている。特に上の方の燃料タンクを示すシルエットが段々点滅の間隔を短くしている。

 

 「二人共。一時間飛べればアウトバレルに充分到達出来る。アウトバレルは日米陣営と中韓陣営の戦いに関係なく、色々なギルドが入りまくってるから、この近くで戦闘すれば無関係の勢力も刺激する事になる。だから俺は放置してくれ。襲撃される事もないだろうし、少数なら充分継続可能な程度に弾薬が残ってる」

『保証はない。それに、どの道破棄した所で所要時間が2時間になるだけだ。夕食は完全に逃したけどな』

「全くだ。あいつらめ、アウトバレルに着いたらオープンチャットで言いふらしてやる」

 

 

結局、武はアウトバレルに辿り着く迄、ずぅう~~~~~~~~~~~っと文句を流し続けるのであった。

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