VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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前話修正につき、書き直して、漸く投稿。
一応、次話への繋ぎが出来たので、詰まる事はありません。


第4の1話 アウトバレル到着

 「まさかストーンヘンジが、あんな欠陥要塞とは…」

「ああ、あれ。後から潰したんだよね、ログアウト施設」

「意味が解らん、何の意味も見いだせやせんな……」

 

武の苦笑。その種は辿り着いた公共ギルドの中央にある速報表示装置による検索結果だ。ゲーム世界とは言え、何らかの機械がないとログアウト不可能な開発者が気狂いな某ゲームの様に何処でも自在に画面表示出来る訳ではないのだ。

 

 「何でも良い。取り敢えずログアウト出来る場所探そう。感覚が現実世界とリンクされてるから眠いわ空腹だわで、ちょっと刺激されたら変なテンションでキレそうで自分が怖いんだ」

「あー、9時だしな。じゃ、各員怒鳴られて来い」

 

そう言って武が指でログアウト場所を教える。その先にはログイン・ログアウト管理棟と大きく書かれた看板が掲げられた大きな通路があった。ギルドの大きさからすると左程大規模ではないものの、人数自体は結構な量であり、係員も忙しそうだ。

 

 「あれ、態々運営が社員IDでインしてるんだよな。ゲームの中でガチ接客って凄いよな」

「あの御姉様方は多分本職だろ。バイトにしちゃあ、笑顔が綺麗すぎる。…営業の色が見えないのはアレだけど、見てて気持ちの良い顔なのは違いないし」

 

 

 「はい。ログアウトですか?」

「そうです、俺等三人で」

「では此方から~~~~~~~~~~~~~~」

 

若干長めの説明を必要な項目以外、半ば無視しつつ説明通りに操作する。すると一瞬視界が白塗りになり浮遊感の様で落下感の様な良く解らない状態に陥り――――――

 

「何時迄ゲームしてんの!?」

 

―――次の瞬間、妹の桜に怒られていた。

 

「え? …あー、ああ、うん。取り敢えず落ち着こうか。まあ何だ、言い訳させてくれ」

「良い訳ねぇ。葵さんとデートとか?」

「武も居るしな。ま、最初はデートでも良かったのかも知れないけどな、答えとしては」

 

言って顔を見やる。納得はしていないが椅子に座る程度には落ち着いている様だ。

 

「で、何時もの三人組? 何してたの?」

「うん、取り敢えずな。VAADIKUO(ヴァーディクト)が如何云うゲームなのかは知ってる?」

 

そう言って若干大きめの装置を指さす総十郎。「それでダイブしてたんでしょ」と呆れ気味に桜が言うが、それを宥める様に言葉を返す。

 

「まあな。で、内容は?」

「お兄ちゃんが父さんと機体の調整が、とかの話は。内容は専門用語の雨霰。何あれ?」

「存じ申さない、と。

…そうだなぁ。簡単に言うと自分の好きなロボットを作って、そいつで戦うゲームだ」

「まあ其処は前に兎さんお願いしたからね」

 

言われて「あ」と内心思うも、表には出さない総十郎。

 

「ま、兎さんにしろ猫さんにしろ、色々タイプを簡単に言い表す用語があるんだ。中量二脚だの重逆間接、軽量型タンク。中には軽砂タンとか略しすぎて何なのか分からない言い方もあるな。

 

 ま、ロボットの話は良いんだよ。一応説明するけど、機体の調節云々は、組み上げて終わりですよー、出撃しますよー、じゃなくて更に滅茶苦茶細かい設定が必要なんだよ。だから基本的には量産型が大量生産されてて、そいつを改造したりする訳だ。猫さんを動かす挙動設定で象さんを動かすには、大きさが違い過ぎて重心が云々の問題が発生するからだな。多分、桜の言う調節の話は、その辺りじゃないか?」

 

 「で、長期戦でもやってた?」

「只の長期戦なら事前にリーダーやギルドマスターに報告すれば予定合わせてくれるから、こんな事にはならないんだけどな。まあ、帰還中を狙われて襲撃されたお蔭で、ログアウトが予定時刻オーバー、ってな感じでさ」

「イレギュラーの排除に手間取ってたら夕飯食べ損ねてお母さん怒らせてる、って事か」

 

 

 

 

 

 

 それから数日した日曜日の事だった。この日、一人でプレイしていた総十郎は愛機のイクサーをチューンアップすべくアウトバレルを歩き回っていた。

大陸北西地域の南東に位置する竜変山脈の一部、周囲には南の渓谷もあって攻撃するには攻め辛い所に存在する。それもあってか商人プレイヤーですら中々警戒を解いて貰えない事さえ少なくないアウトバレルだが、ロシアやドイツのプレイヤーが多く活動する地域の玄関の一つでもあって、品揃えは多種多様である。

 

「おお、超高速ミサイル…って、え!? …途中迄はレールガンの弾として飛ぶんだ。爆発しないのか!?」

 

変態兵器第一号。レールガンで飛ばされるミサイル。初速が早い分、遠距離でないと旋回らしい旋回すら不可能でこそあるが、長距離から誘導機能の高い砲撃がされると考えれば、旋回で速度が低下しようとも、大きな問題ではない。又、ミサイル自体の加速性能も非常に高く、多少の減速ならトップスピードへ回復する事に苦労はなさそうだ。弾頭は徹甲弾なので、かなり凶悪だ。何故なら、速度に一定の信用がある以上、榴弾より威力を加速させ易い徹甲弾の方が有利だ。

 

「随分な兵器だ。 …あれ、スナイパーライフルなのにスイングアウト? …何だよ、この…弾、だよな?」

 

今度は不自然な程に長い弾薬が添えられた不思議なスナイパーライフルを見つけた。余りの長さにミサイルかと思ってしまうが、スラスターノズルや制御翼はない。一体どうやって攻撃するのだろう、と近くの看板に書いてあった説明文を読むと、弾薬の重量の大半はクラスター式の小型徹甲弾と極小粘着榴弾との事。着弾の衝撃で徹甲弾が内部加速装置(一般的な銃弾で言う薬莢)が作動し、至近距離でショットガンの様に敵装甲を粉砕、防御を打ち砕く為と相手の被弾面積全域に粘着榴弾をくっ付けての自動起爆。

 

正直な所、色々な意味で最悪だ。一発撃つ度に沢山弾薬を消費するのだから、財布的な意味でも最悪だし、撃たれる方からすれば、至近距離で炸裂する為、通常のショットガン以上の範囲と破壊力で一撃必殺を喰らう事になる。

 

「そもそもクラスター型のスナイパーライフルって発想に至る時点で頭可笑しい」

「あっらぁ、あららら~。そーゆー事言うんだ~。あー、はいはい」

 

 「誰です?」

「クレヴィ・ハヤウヤン。ローラシア連邦の開発局、局長よ」

 

振り向くと、頭が可笑しいと言われて若干機嫌が悪いのか、顔に不服の色が出ている女性が如何にも開発関係者的服装で立っていた。

 

「ローラシア連邦? …ああ、国名みたいなギルド名、ですか」

「ローラシアの名を知らないなんて。見た所、アジア人みたいね」

 

「龍禅 総十郎。日米陣営…日本系ギルドに所属してます」

「へえ。中国人ばかり言い寄ってたから。それに日本人は狙い目かなーってね」

「…」

 

女性に関しては、葵以外興味がない。なので総十郎は「あっそ」と言った具合に、スナイパーライフルへ目線を投げた。

 

 「…仮にも美人が言い寄ってるんだから、もうちょっと反応しなさい」

「自分でも驚く程、恋人以外に女性に興味がなくて。妹に言い寄られた時は、中々面倒でしたよ」

 

桜に言い寄られた、と嘘を言ってみる。するとクレヴィが「えっ!?」と引き気味の声を発する。

 

「きょ、兄妹に言い寄るとか…へ、変態なの!?」

「余り日本の変態性を嘗めない方が…―――あれ、何か凄い敗北感が…?」

 

 「え、えと。チームとかは?」

「あー、小隊ですか? …友人と恋人、何時も幼馴染の三人組で。でも今日は二人共忙しいんですよ。友人は他の高校に友達が居るらしくて、野球の臨時メンバーをやるそうで。恋人の方は、近所の神社で巫女さんバイトです」

「巫女って神聖な存在じゃないの!?」

「何時の時代ですか。…ま、言いたくなるのは分かりますけどね」

 

態とらしく肩を竦める総十郎。余りパントマイムをする方ではないが、相手が外国人ならテンションも多少変な事になる。只、VAADIKUO(ヴァーディクト)を始めてからは見慣れているので、自省に関しては強い。

 

 「独りなら、ローラシア連邦に来なさい! 今なら最新鋭機ヴィエルートⅢに乗れるわ」

「14式の不知火や今乗ってるイクサー型と、比べると大抵の同世代型は装甲がアレだけども。他で勝るなら『機体の乗り換え』は考えておこう」

 

 「そ、れ、よ、り、も!!」

 「恋人が居るって話聞いてます?」

「良いじゃない、友達って事で!」

 

腕を掴むクレヴィと、腕を掴まれてげんなりする総十郎。「だったら胸を当たるなよ」なんて愚痴を無視してクレヴィが元気に提案する。

 

「アウトバレルに支部のギルドが出来たの。ギルド転属、手続きしましょう」

「しませんよ。乗り換えは考える、って言いましたけどギルドの鞍替え迄考えるなんて言ってません。大体、今ちょっと暇なだけで、中韓陣営だって何時襲撃吹っかけたもんだか分かったもんじゃありませんよ!!」

 

そう言って掴まれた腕を強引に振って、拘束を逃れる。

 

「俺はイクサー乗りだ。ヴィエルート・シリーズの装甲軽視・機動力主義は大好きだが、近接戦闘力が皆無じゃ話にならない!!」

 

早足で後退する総十郎をクレヴィが早足で追いかける。

 

「どうしてよ。剣と銃じゃ絶対銃が強いじゃない」

「戦闘はリーチの違いが絶対的な強さじゃないんです。強いて言えば、機動力こそリーチと言えるんです。でも格闘適正皆無じゃリートなんかありゃしませんよ」

「元々ハイリスクな近接戦闘は捨ててるの」

「ハイリターンなのに」

 

 

 その後も何だかんだとクレヴィに付き纏われながら、総十郎は品確認と買い物を終了させて、愛機が待つ共有ハンガーへやって来た。

 

「総十郎。貴方、共有ハンガー一直線なんて…やっぱりフリーなの?」

「日本運営本部が運営するギルドに所属してます。只、少し前に援軍要請されまして。作戦が終了したんでギルドに戻る準備をしに、買い物してたんですよ。要請したギルド名義で多額の資金が報酬として支払われましたから」

 

 「アイツ等、ログインしてないのか」と呟きながらハンガー制御装置にカードを通す。

このカードはIDやメールアドレス、パスワード、その他沢山の情報が入っていて、パスワードを要求された際に入力を省く役割がある。消失と具現化がプレイヤーの意思で自由自在なので紛失の心配もない。

 

 カードの情報を認識して、制御装置の画面にクリアの文字が表示される。各部の関節や部品のスキャンが始まり、整備完了の表示が出る。各種性能項目を確認、頷いてタラップを駆け上がる。共有を前提としているタイプなので、機体次第では乗り降りの難易度が絶望的な事になる事も珍しくないが、それもあって背部ハッチ型の管制ユニットを採用した機体が少ない要因である事に違いはないだろう。

 

 胸部装甲が稼働装置によって前へ移動する。総十郎のイクサーは、コクピットハッチはレール機構が損傷した際、レール機構が内部で自動的に切り離されて、代わりに可動アームによる可動開閉に変更される。以前、損傷が原因でギルドに帰って来た人がチャットで大騒ぎした事が印象に残り、アウトバレルのハンガー施設に入るなり、改造したのだ。

 

 改造するには部品が必要だが、来た事もない場所の共有ハンガーなので部品格納容量は少なめで、派手な改造は出来ない。とは言え、この程度ならセットアップの内に入るだろう。

 

 「うーん、取り敢えずサブクエでも消化するかな」

「ならローラシアからの依頼受けてみない?」

「…どんな依頼ですか?」

 

溜息に「碌でもない依頼だったら如何しよう」と思いを込めて口から吐き捨てる。クレヴィは視線を投げても表情を変えず笑顔のまま。誘惑の色を疑わずにはいられないのは自分の性だろう、と何となく諦めや呆れに近い感情を吐息に混ぜて、中を覗き込むクレヴィから目線を外した。

 

「中国系ギルドでね、ローラシアの運営直属の輸送師団を襲う奴が居るのよ。規模は小さいんだけど、逃げ足が早くて敵わないのよねぇ、って事で依頼を送信してるのよ。数百万クレジットは固いわ」

「却下です。息抜きとか暇潰しですよ? そんな多額の報酬金じゃ、怪しくて俺みたいな人は食い付きゃしませんよ。武辺りなら反応良さげでしょうけども」

 

 総十郎の思考は会話とは違う方向に走っていた。クレヴィと一緒に居る所を葵に見られたら何を言われるか分かった物じゃない。其処で「ああ」と思ってしまった。だったら張り合う前に、その要因を潰せば良い、と。

 

「…葵、って言うんですけどね。あいつもVAADIKUO(ヴァーディクト)やってるんですよ。恋人で、砲撃が上手いんです。宜しいなら葵へのサプライズを用意したいんですが、何か良い砲知ってます?」

「…さあね。

 …何で急に恋人の事を?」

「日本人が狙い目、なんて言われたら警戒しますよ。龍禅家はハニートラップを対象諸共踏み砕いて進軍する一族です。それに俺に言い寄ったのを知られれば、葵より親父連中が何を言うか分かったもんじゃありません」

 

 「――まあ、狙い目云々は別としてもサブクエの稼ぎで言えばローラシアの依頼は難易度高めよ?」

「稼ぎには充分と?」

 

聞き返すと、答える代わりにクレヴィが端末を取り出して操作する。見せつけられたホロディスプレイには確かに、《推定難易度;高》とある。報酬額は3万。ある程度の被弾でも十分黒字になる。

 

依頼主:ローラシア連邦 中央兵団

報酬額:30000

依頼内容:敵機掃討

敵勢力:所属不明 確認機数;6

 

ローラシア連邦の中央兵団より依頼を発信する。アウトバレルより北上して10キロ、山脈を超えた場所にある我が方の隠しギルドや、その周辺に所属不明のVAADIKUO(ヴァーディクト)を確認された。

 

近日、我々は新型武器と試験段階の大型兵器をブロック分けした物を交換する手筈となっている。相手はアウトバレル支部のローラシア連邦開発局。問題は、開発局からの「他の大型ギルド勢力に嗅ぎ付けられた可能性がある」と言う報告。最近隠しギルド周辺に出没している不明機が、大型ギルド勢力の尖兵であるならば、一先ず排除する必要がある。

尚、所属勢力の解析は我が方の調査部隊が後に動く。受けてくれるならば、所属を探る必要はない。

 

報酬については奮発したつもりだ。是非、頼む。

 

 

 

 「…これさぁ、出すゲーム間違えてるだろ。絶対違うよな、これ……」

 

総十郎の顔が引き攣った。

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