VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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第4の2話 合流

 依頼を受け、早速指定座標へ向かった総十郎。其処で待っていたのは大きなトレーラーだった。丁度、積み込み作業中で、積み込まれようとしている、随分と大きなコンテナを拝める事が叶った。

 

 「確かあのコンテナが狙われてるんだっけか」

 

中身はスキャン出来ないが新型の武器が手に入るのなら、確かに襲撃側の動機も分かる。とは言え、本当に強奪目的かは怪しい。後から付け加えられた説明では、交換対象は大型兵器らしく、ギルドや壁だけの要塞に使う事を想定した類らしい。この手の大型兵器はトレーラー用パーツ組み込んだ乗り物を使用しないと移動させられない。その上、公式販売されている砲台やレーダーは大半が超重量なので、積載関係にも負担が大きいのが、移動の難点だ。

 

 (中身は分からない。それでも大型兵器の方か武器かは分からないとは言え、襲撃する価値がある。…嫌、価値じゃなくて必要性か?)

 

シートの脇にあるコンソールを操作してマップを開く。襲撃しそうな勢力のギルドに、目をやるが大半がマッピングしていない場所なので、結局不明瞭だ。

 

 マッピングとはプレイヤーが使える機能の一つ、マップに関する単語だ。プレイヤーが何らかの施設を使用せずに使える機能は、全て端末と呼ばれるアイテムによって成立している。葵の様に端末をカスタムして使い易くする事も可能で、VAADIKUO(ヴァーディクト)や武器、乗り物と違って構築に資金を使わない事もあってか、人によっては日々端末をカスタムし続けているプレイヤーも居る様だ。

 

中でもマップは非常に重要だ。取り敢えず表示させれば迷子にはならない。所属先のギルドや仲間の位置、攻撃経路や退避経路の表示も可能で、マッピング範囲内であれば、他のギルドに所属したプレイヤーやVAADIKUO(ヴァーディクト)の位置も表示される。マッピングするには歩く他なく、徒歩の場合は4メートル四方、乗り物ならば十メートルはゲームシステム上の仕様により確実にマッピング可能だ。VAADIKUO(ヴァーディクト)であれば頭部のセンサーやコンピュータの性能、移動速度によってマッピング範囲が異なる。高速であれば狭く、ゆっくりであれば広い範囲をマッピング出来る。

 

 マッピング範囲内に何かがあれば、以降はマップに表示される様になり、このゲームでの偵察ではマッピングの重要性が極めて高く、頭部フレームだけの販売だけでも、大規模な勢力せんが活発な地域では数百種類以上のマッピング特化型の頭部フレームが売買される傾向にある。

 

 (そう言えばマッピングの依頼なんて物も最近出回り始めたみたいだけど…)

 

別段、今から何処かを攻撃しよう、と言う訳ではなく水面下での牽制としての意味合いを含む様だが、マッピング屋は隠しギルドの天敵だ。複数のギルドが協力して構築する隠しギルドの場合は、得てして何かしらの物資が集まり易い性質であり、これを制圧した際の収入は大きくなり易いからだ。それこそ、今回の依頼に関しても開発設備だけ隠しギルドに設置して、秘密裏に武器を開発していたのだ。これを奪取可能となれば考え深いだろう。

 

 『出発する。各機、護衛を宜しく頼む』

 

いよいよ出発する様だ、と気合を入れた総十郎が操縦桿とペダルを僅かに傾かせる。ゆっくりとした足取りでトレーラーの横に付いたイクサーが、そのままトレーラーに合わせて歩行する。充分加速して歩行では追い付けなくなり始めた頃合いで、ブーストダッシュを開始する。見れば他の機体も中々隙のない動きでトレーラーにくっ付いている。

 

(成程、この緊張感。只の傭兵気取りじゃない。確実に何か素質を持った奴だ。民間人の緩さじゃない)

 

 

 

 一時間程移動し続けた。大分北の方へやって来た頃、北西に索敵反応が検出された。雇われの一人が「何か居るぞ」と言ったので左側のVAADIKUO(ヴァーディクト)達が前方左上を見やる。直後に「あれは何だ?」と聞こえたが総十郎は右側に居たので、何が何だか把握出来ない。

 

「誰か映像をリンクしてくれ」

 

連携用に使われるリンクチャットに自分の機体番号を張り付けて送信する。数秒すると、メインモニターの端にウィンドウが開かれ、黒いVAADIKUO(ヴァーディクト)らしき影が見えた。人影と言うには異質なシルエット。形から推測して重量逆間接か、と目星を付けた総十郎は、次に腕を観察した。胴体と被って解り辛いが、かくかくした形である事は見て取れた。

 

「重量逆間接に四角い腕…となると、機動型のスナイパーか?」

『だったら見える距離に居ない。精々遠距離戦闘型だろう』

 

VAADIKUO(ヴァーディクト)にもスナイパーライフルのカテゴリはある。が、狙撃と言うよりは遠距離戦闘型だ。引き撃ち向けの武器で弾速と精度に優れて居る為、距離が充分開けて居れば多少の機動戦紛いな戦い方も可能だ。只、人が使うスナイパーライフルと違い、飽く迄線距離戦闘に向いているだけで有視界距離の範疇でしかない。それに該当するのはスナイパーキャノンだ。

 

そもそも、遠距離系武器を持つ機体なら、近くには来ない筈だ。

敵の狙いが分からず、そもそも敵なのか如何かすら解からない。状況からして味方であるとは考え難いが、だから敵だと決めつけるには情報が少ない。それ以前に手に持つ武器が、内側の陰の中に隠れて、もっと近くでの映像でないと、装備すら不明瞭だ。

 

 突然、その重量逆関節のVAADIKUO(ヴァーディクト)が高跳躍し、ブースト移動しつつトレーラーの前にどっしんと着地した。その瞬間「全機構え!!」とローラシア連邦の護衛機が指示を出したので、70ミリ粒子加速砲を構えた。眼前に居るのだから減衰は考えなくて良い。それに総十郎自慢の大型荷電粒子装置に粒子加速装置を直結させた、贅沢な設計だ。オリジナルビーム砲の70ミリ粒子加速砲は、そもそも多少の減衰を想定しているので、減衰しない距離であれば、一撃必殺に偽りはない。

 

 

 「こいつ、正気なのか!?」

 

突然、黒い重量逆関節のVAADIKUO(ヴァーディクト)が突撃しながら両腕のショートガトリングガンを乱射し始める。が、トレーラーの護衛集団の方が数で勝っているので、当然ながら退いたのは重量逆関節の方だ。それでも尚攻撃の意思を持った重量逆間接機が、今度は左肩の装甲を開いてミサイルを放り出す。空中に躍り出たミサイルに火が点った瞬間、迎撃する為の苛烈な弾幕が解き放たれる。

 

突き進むミサイルを撃ち落とす為にガトリングガンを掃射するVAADIKUO(ヴァーディクト)が前に出る。一旦掃射を止めて背中の機雷投下装置を作動させ、上から機雷を放り投げる。投球装置によって投げられた機雷が、近接信管によって起爆し、ミサイルの一発を破壊する。思いの他、大規模な爆発が発生し爆炎が周囲の景色を塗り潰す。

が、それが広がった瞬間に光の砲弾が炎を貫く。総十郎のイクサーが70ミリ粒子加速砲を放ったのだ。

 

狙い自体は殆ど無きに等しい砲撃だったが、同じ様な狙いの第二射でさえも機体の近くを摺り抜ける。慌ててブースターを吹かすも、それを待った居た総十郎が、瞬時に操縦桿の先端にあるレバーを動かす。

 

「鎌に掛かったな」

 

一瞬で補正を終えた70ミリ粒子加速砲の牙が所属不明の重量逆間接に襲い掛かる。結果としては外れだったとは言え、思いもよらぬ方へ放たれたビームによって、照らされた機影に、護衛集団が一段と弾幕を濃くする。今度はトレーラーの自衛機銃も参加しての弾幕だ。

 

 流石に密度が濃すぎると判断したのか、重量逆間接はそのままレーダーレンジの外へと消えてしまった。

 

『やっりぃ! 野郎め、結局逃げやがった』

「如何だろうな。元々前に出て張り切ると言うよりは、遊撃型に見えたが」

 

前衛型と遊撃型では戦い方が違う。遊撃すると言う事は、色々な所から応援要請が来る度に戦場を移動する。それなりの機動力を求められはするが、機敏さよりも長距離移動での速度が重視される傾向にあり、場合によっては加速力重視型と速度重視型の二種類のブースターの装備さえ遊撃型には求められる。折角到着しても動きが鈍くて足手纏いでは無意味だが、だからと言って亀の様に移動して居ては、到着する頃には味方が全滅している可能性もある。

 

 『偵察の割には派手に暴れてた。度合い自体は大した事ないけど、威力偵察だとしたら本格的に殴って来そうだ』

『だったら殴り返せば良い。俺の300ミリビーム砲が轟くぜ!』

『そう言う問題じゃない、やっつけられても運送自体に支障が出るでしょ。

 …てか、300ミリィ!?』

『冗談だよ、300ミリもねぇ』

 

熱エネルギー系の兵器でもビーム兵器は桁違いに重い。重たい荷電粒子装置を沢山並べる要がある上に、相応の冷却装置も搭載しなければ、砲身がオーバーヒートしてビーム砲が内部崩壊を引き起こしてしまうからで、出力よりも収束率を重視しているビーム砲の方が多い。ホースから出す水で段ボールを貫こうとした際に、水量を増やすよりも勢いが良い方が貫通が簡単なのが良い例だ。

 

 

 『敵を片付けたんなら出発する。護衛部隊、今の様な感じで次も頼むぞ』

「了解だ、悩んで引き返すのもアレだしな」

 

 

 そうして暫くしていると目標の場所に到着した。遂に逆間接型以外の敵は現れなかったが、もしかしたら帰り際に攻撃される可能性もあるな、と一応ながら総十郎は警戒を解かないでいた。

 

 

 結局敵襲は無く、無事にラインバレルに戻った所で葵と武を見つけた。葵はトレーラーの予約を付けて来た所の様で、長蛇の列で二時間待っていた、と語った。総十郎が「お疲れだったな」と頭をポンポンと軽く叩くと、途端に顔を赤くして「子供扱いするな」と言ったっきり黙ってしまった。「子供扱いって訳じゃない」と愚痴を零す総十郎だが、不意に武の方を見ると「お前は何一つ分かってない」と一方的に呆れられた。

 

 「そりゃ妙な依頼だったな」

「まあ葵の予約したトレーラーに乗って中央地帯迄戻るんだ。要請があるから行先は北気味だけど、ラインバレルから機体の足で移動するには骨が折れるだろうしな。粘着されそうになる距離じゃない」

「だと良いけど。市場が騒がしかったから不安なんだよな」

「ああ、お騒がせ連中か」

 

要は盗賊団だ。只、お騒がせ連中と呼ばれる輩は、決まってラインバレルの様な中立的な拠点を襲撃するので嫌われ易い。

 

「盗賊団が来た訳じゃなさそうだけど。どっちにしろ厄介だろうし」

「関わる義理はないわな」

 

 ふと武のVAADIKUO(ヴァーディクト)が固定されているハンガーを見やる。装甲が煤けて破損している部分すらある。自慢のスナイパーライフルは姿さえ見えない。個しか何処かにセットしてあるのだろうか、とも思ったが火器に該当しそうな影を見つける事さえ出来そうにない。「まさか」と葵のテルマナを確認するが、此方は特に損傷して居ない。

 

「武、お前の機体、如何した?」

「ああ、さっき鉄道の整備用のトンネルの一部を占拠してた馬鹿共を排除する依頼から帰って来たんだ。狭い所で狙撃特化だからな、ガチタンに良い様に撃たれて前に出れずに困りながら、何とか全機撃破したんだ。…一応、敵のVAADIKUO(ヴァーディクト)は全部な」

「如何して含みのある言い方をするんだ?」

「まさかのまさかでさ。設置されてたセントリーガンに不意打ちされたんだよ。母機のVAADIKUO(ヴァーディクト)が転がっても稼働したままで」

「ああ、このゲームのセントリーガンは設置したが最期、破壊される迄母機にお構いなしに稼働するからな」

 

セントリーガンとは、コンテナから自立砲台を射出する兵器の名称で、コンテナを装備している機体が撃墜されようが通信妨害されようが、射出されたセントリーガンは破壊される迄稼働し続ける。因みに弾切れが発生した際は、延々と敵機の方に旋回し続ける。

 

 「トレーラーは何時乗るんだ?」

「20分後にアーサル砂漠側の市場に。だよな葵」

「…うん」

 

何処か紅くなった顔で、目を逸らしながら小さく葵が頷いた。

 

 「何時迄ご機嫌斜めやってるつもりだ。機嫌直せよ」

「総十郎、今お前が言ったら… ―――もう嫌だ…」

 

 

 トレーラーに乗る時間が来ると、三人共機体に搭乗してトレーラーに備え付けられたハンガーに機体を接続させた。揺れ対策が施されているので狭いコクピットの中に長時間押し込められる事になっても、窮屈さは余り感じなかった。

彼等の目標地点は、日米陣営と中韓陣営の戦闘が激化している、大陸中央部の北にある巨大な湖だ。各地に深い谷の底に流れる川の源流であり、地形的にも隠しギルドが建設されると厄介な要塞に成り得るからだ。敵にするには厄介な要塞ならば、味方にすれば頼もしい要塞だ。故に両者の戦闘は激しさを増す一方であり、両軍はログインペナルティが積もり始めた状況に焦りを感じている。

 

「到着後、アーノギルドに入る。他の戦力と合流して、周囲から砲撃するぞ」

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