VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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第5の1話 突然の申し出

 

 「「「待て待て待て」」」

 

 転校生、大蔵からの提案に総十郎、葵、武の三人が異口同音に首を振って、慌てた様子で制止する。

 

 

 「だって仲良くなりたいし」

「だからって二人っきりで温泉旅行?お前、そりゃ結婚間近の婚約者のデートだろ。俺ら、会ったばかりでさ…」

「何、あんた尻軽なの?」

「あのさ、結衣ちゃん。ないわ、それは流石に…うん、端的に言って無い」

 

 思わず頭を抱えたくなる発言をした大倉に、三者三様の反論を展開する。

 

 「だって楽しいよ!」

「…人数が多い方がな」

 

 「え、待って。俺らも行くの!?」

「チャンスだろ、温泉に入る。それに俺だけ行ったら何されるか。これあれだよ、絶対ヤバい案件ぶっこむパターンじゃん、嫌だよ俺。武、俺との仲だから頼むわ、道連れが欲しいだけなんだよ」

「今『道づれ』つったよな!?ヤだよ俺!何されんの!?」

「大丈夫大丈夫、やばいお薬キメて人体実験されるだけだって」

「死ぬ!俺死んじゃう!」

 

 「…温泉だよ」

 

 途中から総十郎と武の漫才になっていた会話に、思わず大倉が突っ込んでしまう。

 

 「ねえ大倉さん。ウチの総十郎とは知り合いなの」

「ううん、直接会ったのは転校してから。でもお祖父様が『お前に相応しいのは龍禅の坊主だけだ』って」

「うん?その口ぶりだと俺と言うより、親父の知り合いか」

 

 態々髭を触る真似までしてみせる大倉の言葉を聞いて、総十郎が考察モードに入る。

 

 

 「龍禅君、お弁当美味しい!?」

「んー。うーん、ぬぅうん。…うん、不味くはない」

「結構悩むなオイ」

 

 余りの悩みっぷりに思わず突っ込んだ武に「美味いのは美味いんだが」と総十郎は飽く迄も歯切れの悪い様子を崩さない。

 

 「大倉、これはお前が?」

「うん、未来の旦那様の為に頑張ったよ!お母様が微妙な顔で味見してたのが、不安材料だったけれど」

「メシマズ属性は持ってないみたいで何よりなんだが…。これは…純粋に発展途上と言うよりは…」

 

 美味しい。美味しい筈だが何だか釈然としない。

 

 「因みに料理の師匠とか居るの」

「お父様が張り切ってくれたのだけれど…。その、あの人は勝手に調味料を投入しちゃって、勝手に味見して自爆したから、レシピの修正に時間がかかったのよ」

「味見してくれるだけマシだ。多分な」

 

 半分「聞かなければ良かった」と言う顔をして武が顔を逸らす。

 

 

 「で、肝心の予定だけど予定ってどうなってるの。まだ私達も何も決めてないから、融通は利くけれど」

「『私達』ってのは大倉ん家のご家族総出でお迎えでもしてくれるのか」

「うん、一族の皆が張り切って作戦会議してくれてるの!」

「い、『一族』と申されるか…」

 

 苦い顔をして武が総十郎の方を向く。彼自身、一族と言う単語には良い思い出がない。昔、軽い気持ちで龍禅邸の道場で修業に参加した際に「総十郎様のご学友をご指導できるとは」とは誰が言ったのだったか。結局、龍禅家に連なる弟子達に酷い目に遭わされた。

 

 「な、何だよ」

「俺知ってるぞ。お前、操縦してる時の動きが半分龍禅流の足運びになってるぞ」

「……武さん、それマジっすか」

 

 当人も気づいていなかったらしく、驚きを隠さないでいる。

 

 「そーじゅー?そーじゅー、操縦、そう、じゅ―――ねえ、何を操縦したって」

「ああゲームの話。VAADIKUO(ヴァーディクト)って言う…。ああ、あれに投資したって噂の『大倉』ってお前の家の事か」

「そう、やっぱりしてるんだ。運営さんがログデータを見つけたって、喜んでたよ」

 

 (こいつの家は一体何処までVAADIKUO(ヴァーディクト)に関与してるんだ)

 

 これだから金持ちは、とぼやくと「お前の家もだろ」と武が言うので「金の使い方が違う」と反論。その後は午後の授業の話題になった。

 

 「じゃあ、放課後!」

「放課後?…今日、剣道部に呼ばれてるんだけどな」

「まーた、助っ人?」

 

 元気に手を振る大倉を見送りつつ、総十郎が呟いた言葉に葵が「何時もの事だけど」と言いながら呆れる。

 

 「どの部活も今一心の中で盛り上がりが無いんだよな。体験入部してないのは帰宅部と演劇部だけだし」

「演劇部は兎も角、帰宅部に体験も糞もねぇだろ。帰るんだから」

「結局、その帰宅部にすら入ってない訳だけど」

「何かに入ったら一年間変更できないからな。だったら別に良いさ」

 

 そう言いながら教室に戻る総十郎と、それを追い掛ける二人。大倉はそれを廊下の窓から見ていた。

 

 (あの人の隣に私も――か。決められた相手にしては上出来かもね)

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