VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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ハイテンション親父、善十郎に連れられてVAADIKUO(ヴァーディクト)へ降り立つ総十郎。
荒野を抜け、漸く愛機を手に入れたが…。


第1の1話 矛の姿

 あれから数時間歩いて漸く二人はギルドと呼ばれる巨大施設へ辿り着く事が出来た。

 ギルドとは、各勢力が持つ基地であり街である。

今回辿り着いたギルドは本部でもなく、最前線でもなく、中間より手前に位置するギルドであった。

 

 ギルドに到着すれば、最初に待つイベントがある。

言わずもがな『初期機体』と呼ばれる機体を無料で入手できるのだ。

 

 

このゲームのロボットはVAADIKUO(ヴァーディクト)と呼ばれる。

大きさは5メートル前後で、基本はブースターや各種脚部等が揃っており、それをカスタマイズするのだが、それは飽く迄基本。

 

その上で装甲を廃したり、追加ブースターを装備させたり、装甲を追加させたりが出来る訳だが、ブースターの開発は勿論、追加装甲の形状は無論、基本フレーム自体を改造する事も出来る。

 

 『初期機体』はイクサーと呼ばれるVAADIKUO(ヴァーディクト)だ。

機動力がそこそこ高く、積載量も余裕があるので初期機体の割には火力の追加が容易であるのと、チューンアップや改造に対する拡張性に優れていて、オリジナル機体の殆どがイクサー系統であったりもする程だ。

 

基本性能が高い水準出揃っている反面、装甲は若干強い程度で、序盤であれば被撃墜率(やられる側)も高く、三次元的高速機動の敵には対応し切れない事も多いが、電子能力が高いのでロックオン能力を司るFCS(火器管制システム)を交換すると、ほぼ阻害なく実力が発揮出来るのも良い点だ。

 

 武器は70ミリ粒子加速砲と呼ばれる大型ビーム砲と60ミリ機関砲と呼ばれるマシンガン、8-1式近接戦闘長刀と呼ばれる重心が自機に近くて、連続攻撃に適している刀がある。

70ミリ粒子加速砲は距離減衰の激しい熱エネルギー兵器の中で、最も減衰し難いビーム系であり、その威力はVAADIKUO(ヴァーディクト)を圧倒する筈の大型兵器さえ、一撃や数発で撃沈可能な代物で、その射程と精度の高さ故に長距離砲撃にも適している。

 

欠点は発光量が多いので、夜だと物凄く目立つ事と、割と重量が嵩んでいる事である。

余剰出力の高いイクサーなら未だしも、完全オリジナル機体の場合、意外と機動力と余剰出力のバランスが噛み合わない事も多く、イクサー系統以外では余り見慣れない。

 

加えて出力維持が難しく、多少出力を下げると途端に廃産と呼ばれる武器の仲間入りである。

余剰出力の足りない機体に装備させるには、出力を下げるのが手っ取り早いのだが、それだと減衰率が高くなり過ぎて、仮に至近距離で直撃弾を儲けても、ライフル程度の威力にしかならないのが問題だ。

 

 60ミリ機関砲は反動が少なく、軽量腕部でも充分制御出来るのが魅力だ。

弾速が若干遅く、ある程度の接近が必要になるものの、マシンガンの割に口径が大きく、鉄鋼推力弾、別名『運動エネルギー型ロケット弾』や小規模な爆発ではあるが特殊ガス榴弾等も使用出来たりと、対応弾種が多く多武装化を回避するには打って付けの武器だ。

 

一方でマシンガンでありながら、であるが故に整備性が悪く、チーム規模の運用なら余裕はあるのだが、個人規模である事が多い序盤では売り払われる事も多く、費用部品数の多さからジャンクショップでは意外と高値で買い取って貰えたりもする。

 

 8-1式近接戦闘長刀は連撃を重視した自機寄りの重心の刀だ。

速度を乗せれば凄まじい威力を発揮する為、イクサー以外にも主に高機動型や機動特化型のVAADIKUO(ヴァーディクト)に見られる。

 

欠点はどんなに磨いても切れ味維持に限界がある事。

射撃武器やパイルバンカーと違って弾薬費は生じないが、それ等以上に整備費が嵩むのが玉に傷だ。

 

 「ぬぉおおおおおおぁああああああああああ!!!

開発段階からイクサーのデザインは優れているとは思っとったが、此処に来て更にブラッシュアップされておるでは無いかぁあああああああああああ!!!!!!

最高だ、釘谷、山城、礼月次ぃいいいいい!!!!!」

(地味に最後の人開発担当者じゃねェか…!?)

 

 

 ――――――――うおおおおおおおおお、行けぇええええええええ!!!!

 ――――――――負けるなぁああああああああああ!!

「「お?」」

 

不意に聞こえて来た歓声に善十郎と総十郎が目をやる。

其処には何やら人だかりがあった。

 

 「あの、何の騒ぎなんですか?」

「アリーナだろ。

知らないって事は新規プレイヤーって事か?」

「ええ、そうなんです」

 

「アリーナなんぞもあるのか」

ふむ、と人だかりの方へ歩き始める善十郎。

二人が漸くアリーナの席を確保して座ってみると、確かに二機のVAADIKUO(ヴァーディクト)が赤いゲートと青いゲートから一緒に出て来た。

 

 『青コーナーァアッッ!!

西連地 雪ィいい!!』

 

――――――――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

――雪ちゃーん!

 

『赤コーナーァアッ!

日向 葵ぃいいいいいいいいい!!!!!!!』

 

――――――――新人だ。

――あいつ、さっき迄初期クラスのアリーナに居た奴じゃねェか!?

――一時間で登り詰めたのか、このランクに!?

 

「葵!?

先にログインしてたのか!?」

「ぬお、嫁が出陣しとるならお前も出陣せねば!

 …しかし流石に乱入する訳にもいかんし、機体もなぁんにも弄っとらん」

(親父が自粛!?)

 

 葵の機体は見たばかりではイクサーのままだ。

一方西連地と呼ばれたプレイヤーの機体は、イクサーの親戚とも言える装甲寄りの序盤気体とも呼ばれる、イクサーと並んで長く使われる事が多い機体、エヴォルデァ。

 

白いイクサーと紅色のエヴォルデァ。

 

『何と日向選手の初ログインは数時間前!

数時間前にして此処に登り詰めて来たと言う事は、各試合の平均所要時間は約2分!

場合によっては一分で切り抜けたかもしれません。

 

私はこのランクでしか実況していないので分かりませんから、休憩時間に成ったらログアウトがてら同僚に訊いて来ます!!

 

 さぁて、実況と審判を両立させて来た私ですが、もうハイテンションです。

早く試合の開始を宣言したい物です、ねえ皆さぁん!!』

 

――――――――うおおおおおおおおおああああああああああああああああ!!!!!!!

 

『しぃいかし、アリーナの試合には予定があります。

未だDランクの試合が始まらないとの事です』

 

途端に残念がる観客。

 

 『あ、皆さん朗報です』

急に棒読み気味に言う司会者。

『Dランクの試合準備が整った様なので、我々Sランクも始めましょう』

 

―――――――――始まるぞ!!

――待ってたぜ!

――今日こそ西連地の連勝止まるぜ?

――どうせ西連地様の97勝目に決まってる。

――お前良く数えられるよなぁ…。

 

 『両者試合準備を始めて下さい。

準備が出来たらコーナーの色、ゲートに合わせた色のシグナルをお願いしま――あ、青出ましたね~。

赤も…あ、今点灯しました。

 

では、何秒カウントで始めましょう?

…十秒カウントですね』

 

 カウントが始まり、観客が数を数える。

それが0になった瞬間、両者がブースターを吹かして発砲を開始したのであった。




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