VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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 色々妄想してたら膨らんだので具現化しました。
文章にしてみると、思いの外上手く表現出来たと思います。


第1の2話 悩みと激化の影

 

 ―――「ぬうううううおおおおおおおおおお!!!」

弄りに弄り倒したイクサーのコクピットで善十郎が雄叫びを上げながらブーストペダルを蹴った。パーツショップと言うVAADIKUO(ヴァーディクト)設計用パーツの店で購入した、凡庸形戦闘長刀が出力型VAADIKUO(ヴァーディクト)、黒鉄一式の左肩に深く食い込んだ。

 

 一方の黒鉄も食い下がらまい、とブースターを更かして右に脱出、土埃を上げながら左手に持つマシンガンを乱射する。

 

「やりおる、おりおるがなぁッ!!」

 

被弾しながらも回避行動を取らずにブースターを更かして突撃――――――――――かと思われたが、実際は斜線から微妙に左に移動していた。

 

馬鹿な、と慌てる相手パイロットを尻目に善十郎が右操縦桿の出力ボタンを押しながらトリガー入力する。出力キーの入力によって、位置固定が解除された操縦桿が前に押し出されて、それに呼応してジェネレーターが唸りを上げる。

 

 バギィインッッ!!

 

耳障りな大音量の金属音と、大量の火花と共にマシンガンのトリガーユニット諸共黒鉄の左腕が両断される。そして斬撃の最後の部分が、そのまま横っ腹に直撃、姿勢制御を失った黒鉄がアリーナの土を抉りながら仰向けに倒れ込む。

 

『バイタルデータより気絶と確認。試合終了、龍禅善十郎の勝利。模擬戦を終了します』

 

「何じゃ、ゲームの世界でも気絶しよるか」

 

 『親父』

 

総十郎の呆れ声が通信回線を通じて流れて来る。

 

『相手のパイロット、気分悪くなったらしい。シミュレーターから出た瞬間、インターバルセンターに駆け込んでログアウトしたらしい。あんまり本気出しすぎるなよ、親父は喧嘩とかゲームには滅法強いんだから』

「模擬戦とは言え、本気を出さねば向こうにも失礼じゃて、ぬははははは!」

『はあ…』

 

 

 

 翌日、学校から帰って宿題を終えた総十郎が、ふと時計を見やると夕食迄はまだまだ時間があった。外に出るには多いが、遊びから帰るには少し早い時間帯。パソコンを起動させて、VAADIKUO(ヴァーディクト)の公式ページへアクセスする。IDとパスワードを入力して、プレイヤー専用ページへ向かう。

 

 此処で行うのはVAADIKUO(ヴァーディクト)の設計だ。

何もゲームにログインせずとも、機体を設計する事は出来る。今購入出来るパーツをクリックして、回転させたり引き伸ばしたりしてVAADIKUO(ヴァーディクト)の設計を進める事にしたのだ。

 

 

 「むう、嵩張るなぁ」

 

今やっているのは飽く迄設計だけ。だが建造するとなると、設計図のパーツ全てを購入しなければならない。

最も、ガレージにしまってあるパーツは名前が緑色で表記されるので、その分の費用は浮く。

 

 

だが、高い。建造費用が思いの外高い。

 

 

「内装だけでも既存のジャンク品にするか? 一応数が揃えば、分解して新型が作れる訳だし…」

 

ショップに並ぶパーツは通常パーツ、内装パーツ、関節パーツに分かれる。通常パーツは縦横に回転、収縮や引き伸ばしパーツの特性毎の特別操作が可能で、これで形を加工して組み合わせる事で、VAADIKUO(ヴァーディクト)の大体の部分は完成する。

 

細く、小さくすると防御力が低下するが、工夫すれば飛行力学に沿った滑空出来るVAADIKUO(ヴァーディクト)も設計・建造可能だ。それにパーツ同士が干渉すると、干渉部分が大きい程、性能向上率が跳ね上がる。

 

最も、重量も嵩張るが、防御特化にするのであれば、問題は資金だけだ。

 

 

 関節パーツは太さと長さ、回転は出来るが、関節機構自体を弄る事は出来ない。

しかも変な形にすると運動速度が低下するばかりか、『関節の可動機能が発揮出来ません』とエラーが出るのだ。設計状態を記録する事は出来ても、エラーを抱えた機体の建造は出来ないので、弄るのであれば相当苦労する種類のパーツだ。

 

その分、関節パーツは元の数が恐ろしく多い。一応性能毎にショップで検索すれば、ある程度絞る事が出来るので、武器や機体に合う関節パーツを充てがうのが殆どだ。

 

 

 

 今、総十郎が悩んでるのは、ジェネレーターと言う内装パーツの事だ。

機動力を確保したいので、エネルギーブースターを採用したのだが、出力特化型のジェネレーターが高すぎるのだ。

 

性能バランスだけで言えば同じ様なジャンク品は幾らでもあるが、性能が所謂《ゴミ》、《廃産》なので使う人は居ないだろう。現に総十郎も使おうとは思っていない。

 

唯、実は買おうか買わないかで迷っているのは、素人からすれば意外かも知れない。内装パーツだけの特殊加工、その名も《分解》。文字通り分解して、内装パーツを部品単位にする加工操作だ。

 

 

 

 しかし、現実は意地悪である。

 

 

「くっそぉぉ~~~~~~~~~~~~~………………!!!!!! 分解設備たっけ~~よぉおお!」

 

内装パーツを分解、更に分解した部品を格納する《分解設備》の購入費用は所持金の約9倍。稼ぐだけなら2ヶ月みっちりプレイすれば良いのだろうが、実際は弾薬費や修理費が嵩張るので、より長い期間が必要になる。それ等が必要のないアリーナは精々出費が発生する《通常ミッション》の半分も賞金が出れば良い所。

 

高ランクのアリーナに出場するには、通常ミッションで成果を上げるか、低ランクアリーナから上り詰めるかの二択である。

 

 

「こうなりゃ、イクサーから直接持って来た方が…」

 

そう思って性能検証画面を開く。結果は適性が低いらしい。発電出力は必要量の70%程度。電力容量は動き回るには後5割は欲しい。何より、若干重い。

 

 総十郎が設計しているのは高機動型だ。

単に《高機動型》と言っても、『どの様な性能が望ましいか』はプレイヤーの性格や戦術で異なる。速度に特化した機体、旋回性能に優れた機体、姿勢制御に秀た空中戦主体の機体等、どれも『機動力が高い』と言えるのだ。

 

 「うーん――うん?」

 

あれ、と思って分解設備のスクロールバーを一番右に移動させる。其処にはお粗末とすら言えない様な、性能値の分解設備があった。

 

「…うん、ないな」

 

ジェネレーターの分解だけで2週間を要するらしい。これなら機械に任せず、手作業で分解した方が確実に早い。しかも性能が「酷いにも限度があるだろう」と言いたくなる低さなのに、電力食いである。

 

「四つ並べても普通消費が5万とか超えねぇよ!! しかもストックが2つしかないって、事実上分解出来ねぇじゃんッッ!!」

 

 

内装パーツは性能が低い程部品が多く手に入る。どれだけ高性能なパーツでも余程性能が高くないと3つは下らない。と言うか、最近公式ページで、こんな質問がった。

 

―分解で手に入る最大数は幾つでしょう?―

 

答えは「最大数の上限は設定されておらず、システムが性能を評価する」であるのだが、もう少し具体的にするならば、最高級の物だと殆ど1つしか部品が出ない。

つまり分解するだけ損する事になる。しかし、部品は性能が非常に高く、売れば元の内装パーツの訂正価格に迫る。それだけでは儲けにはならないが、高性能な部品を使ったオリジナル内装パーツは各素材の大体70%に及ぶ部品で構成されているのだ。大体必要な項目全てを揃えるには、5つは部品を使用する必要がある。

 

しかし各内装パーツの70%が5つも加算されれば、当然素材となった内装パーツを容易く凌駕する品が完成する。そうすれば、高性能な程高く売れると言うが、このゲームの売値の大体のシステムである。

 

同時に誰かが自分の内装パーツを売れば、一個限りでこそあるが品並びに加わる。

敵を撃破すれば、スコアが手に入るのでスコアを貯めつ受ければ、利用出来る施設も増える。

 

その中で最も利用価値のある《工場》は自分のオリジナルパーツを大量生産できるのだ。材料の安定供給の為に、月に一度大金を払わねばならないが、飽く迄ゲーム内のお金なので、凄腕であれば無課金でも充分利益が出る。

 

 

 「せめて改造さえ出来ればなぁ…」

 

うーん、と総十郎が腕を組んで悩み始めた時だった。

 

 

 

 ―――――――――ムニュ。

 

 

その感触は、椅子の背凭れに凭れ掛かった際に後頭部から感じた物である。

 

「ん!?」

 

深い思考に入ろうと半ば無意識的に閉じた目を開いて感触の正体を見破らんと、総十郎が椅子を回転させた。

 

 「何悩んでるの?」

「悩んでるの、じゃなくて!!

あ、ああ葵、おまっ――いつの間に背後に!? えちょっ――ドアは!?」

 

動揺しながら、いつの間にか立っていた葵の後ろを見やる。ドアは一見閉まってる様に見えるが、少しだけ開いているのが見えた。

 

 「お義母さんが総十郎呼んでも反応なかったんだもん、ノックしても無視なんて酷いよぅ…」

「とは言うが、お前何時だと…?」

 

そう言って顔だけ時計へ向けた。窓の向こうでは太陽が床に付こうと、今日最後の一番仕事である夕暮れを演出し始めた。

 

 「で、宿題したの?」

「終わったからVAADIKUO(ヴァーディクト)の設計をしてるんだろ…」

 

「ふーん、新しいの作るんだ」

 

葵の返しは声音こそ、随分素っ気無かったが目線は、パソコンへと集中していた。

それに気づきつつ総十郎が口を開く。

 

「ジェネレーターの設計に手間取ってるんだ。一から作ろうにも色々大変だしイクサーの奴を流用するにも出力が足りない」

「ビーム兵器を比較的乱発できたり重量級の砲を二つも持ってながら普通に動ける出力なのに?」

「所詮《比較的》なだけだ。どちらかと言うと出力特化型が欲しい。

まあ、重さが嵩張ると、動き回れなくなるから自粛するけどな。TE撃ちまくる訳じゃないし」

 

撃つ度にエネルギー消費するんじゃ管理が面倒だ、と総十郎は嘆きも声音に含めた。

 

 

 「で、取り敢えず夕食は? 今からじゃ微妙に間に合いそうにないし」

「うん、今日はお泊り」

 

「ふーん。  ……一応訊いておく。何処に?」

「此処」

 

葵が床を指差す。

 

「ウチに? …桜の部屋なら相手はいるが…―――――――」

「この部屋、総十郎の部屋でしょ?」

 

 

 ―――――――――――――――――――――ガタン ガタガタン!!

 

「お、俺の部屋!?」

 

驚きの余り椅子から滑り落ちる総十郎。

そして椅子が総十郎を追う様にして、彼の横へ倒れた。

 

 

「何驚いてるの?」

「驚くわ普通! お、おお女の子が何言ってんの!? 馬鹿なの、おおお襲われたいのか!?」

 

その言葉を聞いた葵が「ふうん…」と意味有りげに総十郎の前へしゃがみ込む。そのまま両手を総十郎の左右に置いて、体を総十郎へ近づける。

 

「私、早いトコしないと総十郎襲っちゃうよ?」

 

 見る見る内に総十郎の顔が真っ赤になり―――――――――――――――色々な意味で意識が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 ―――――――――同日、午後11時。

VAADIKUO(ヴァーディクト)のサーバ空間内で一機の白い機体がザウーナ砂漠を走っていた。

 

 

「目標、ナドゥルツォーネ中央支部ギルド所属部隊…捕捉」

 

正面には標的となるVAADIKUO(ヴァーディクト)部隊が東へ進行中である。ドイツ陸・空・空軍総合VAADIKUO(ヴァーディクト)ファンクラブ『ナドゥルツォーネ』が運営すギルドの部隊。早い話がリアル軍人を相手にする訳だ。

 

 

 「リンク開始」

 

コクピットの天井にある無数のスイッチ郡の内、三つを切り替え、次いで左側のタッチパネルディスプレイを操作。ディスプレイに予め作戦エリア周辺に埋め込んであった数々の索敵装置からの受信状況が表示され始める。

 

 「ドイツに俺達の技術力見せつけてやる」

 




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