気をつけましょう。
総十郎が後ろから、善十郎が前から中韓陣営と戦っている中、この作戦に遅れて参加しに来た葵はアリーナで勝ち取った、様々な高級パーツ、高性能パーツを使って建造した
―――ドォン!!
――――ドッカアアアアアアアン!!!
今回は遠距離砲撃兵装を装着し、攻撃に参加する。
只管遠くから強力な砲撃を続ける訳で、これはこれで一首のチキン戦法だ。
最も、彼女の場合はアリーナのトップで並々ならぬ実力者達を上位ランクから蹴り落とすだけの力がある。
「次弾…クラスター爆撃弾が切れた?
……被害は…ああ、前衛が綺麗に吹っ飛んでる」
一部乱戦になっていない敵の隊列を狙って撃っていたので、穴の空いた隊列の所から、日米勢が一斉に入り込み、内側の被害が拡大している。
乱戦を想定していない中衛、後衛にも戦力が到達し、次々と中韓勢が撃破されている。
更に取り敢えずの気持ちで後衛部分にも撃っていたのが影響しているのか、兎に角混乱し、一部の
撤退という様子はなく、単純に敵前逃亡らしいので、マークして味方に連絡する。
次に何処を狙おう。
そう思って弾薬のディスプレイを確認していると、突然近くで爆発が起こった。
自分と同じ攻撃方法を取った味方機が、遠距離砲撃を食らったのだろうかと考えつつ、機体を下がらせる。
「遠距離攻撃合戦が終わりつつあるって言うから、この攻撃を試そうと思ったのに。
でも、壊滅状態なだけで全てを撃破したとは、何処にも書いてなかった…かな?」
一旦戻って換装のついでに戦況マップでも見ようか、と思いながら爆音と揺れを感じて顔を青くする。
「な、何今の!?」
―――「ぬ、ぬうおおお!?」
マシンガンを両手に持ち、背中にガトリングガン用バックパックを背負って、再び前線へ向かっている途中、善十郎は凄まじい光景を目の当たりにした。
一機の重量二脚型
其処から放たれた砲弾が着弾、凄まじい規模の大爆発を引き起こしたのだ。
しかも、その時にチャットログ画面に大量の
(た、たった一撃で…機動突撃部隊が壊滅じゃと!?
……何と言う…何と言う威力なんだ!!)
そして気づく。
「待て、何故奴は此処迄突出出来ておる!?
み、味方…奴の味方は何処に!?」
警告音に合わせてジャンプ、背後が爆ぜる。
着地に合わせ、ブースターを吹かし、着地衝撃を緩和、ローラーダッシュを続ける。
「お主か!!」
砲撃角度から方向を推測、その方向に敵砲撃機を発見する。
だが、崖の遥か上だったので素直にマークする。
これで敵の位置が味方機全てに伝わる筈だ。
マークした途端に、連続砲撃が突き刺さる。
葵の砲撃が鋭く突き刺さり、砲撃を中断させたのだ。
「マーカーって結構重要…ねっ!」
両手で構えた大型の狙撃用に改造した超電磁砲を発射、見事敵砲撃機に命中する。
砕けた上半身と下半身が別々に転がりながら爆発し、撃破のログがログ表示に刻まれる。
「いっちょあっがり~!」
――中韓陣営との最初の大規模線は日米陣営の勝利で終わった。
それ以降、日米陣営は各ギルドによる、目標ギルドの偵察や小規模な戦闘を繰り返した。
「中国で内戦?」
そんなニュースを総十郎が耳にしたのは、登校前の朝食を取っている時だった。
「知らんのか、この騒ぎを。
何でも今、
貴族と言う明確な階級制度こそないが、事実上の各差が激しくなり、上級階級と下級階級とで各地で大騒ぎになっとる…と」
総十郎に新聞を渡しながら「ゲームさながらじゃなあ」と善十郎が呟く。
「仮想空間でのゲーム。
それ故の高価で、明確なゲーム革命が始まった今、世界情勢の真ん中を陣取っとるのは企業連合。
お陰で日本の経済は、企業連合を中心に釣り上がっとる。
韓国としても反日でどうにもならん以上、
「高がゲームで」
「なーにも知らんのよのぉ総十郎。
アメリカは
じゃが、企業連合は国からの要請を突っぱねとるし、国の要請自体無い様な規模でしかない。
同盟や国連絡みの要請を例外する、『あの三原則』がある以上、それも仕方なかろうて。
まあ、憲法でもなければ法律でもないから、破った所で法的な痛さはないんじゃがの」
「…
「ほれ、
でなければ、『完全な仮想空間』なんぞ態々実現する意味もない」
バーチャル系ゲーム自体はアメリカも必死に開発や研究を行っていた。
だが、人間の脳から送られる指令は、不完全な物理演算システムには、余りにも難解だった。
それに対し、
「ある程度の方向性の数値と反応さえあれば、後はそれをコマンド入力としてゲームシステムに取り入れるだけ…。
そうなれば、実際は普通のゲームで、キャラクターを動かす為のシステムと何ら変わらん。
最も、それに気づけただけでも功績じゃろうて。
他の連中は、プレイヤーの体を再現して、筋肉が云々やっとるから、そりゃあ無理があると云う物。
まあ、当然十年以上のデータ取りは必要じゃったし、ゲーム全隊も規模故、20年も歳月を要した。
それだけの価値とクオリティーは認めんとな」
「でも何で、そのシステムを欲しがるんだ?」
「そりゃあバーチャルシステムがあれば、完全な実戦が出来るじゃろ?
軍隊なんかじゃ人の殺し方も覚えにゃなん。
実際殺しても問題ないとなれば訓練用として、どの国も欲しがるに決まっとろう」
母と妹は何の話なのか、さっぱりである。
「はあ、これ作れって何なんだ?」
登校途中、途中迄道が同じだった桜に無理矢理渡されたスケッチブックの中を見ながら、校門を通る総十郎。
(兎さんロボって…。
実用性あるのか?)
作る気はないが、取り敢えず考える。
実用性無き機体等、彼のポリシーに反する。
――浪漫、素敵性能とは実用性の対比である――
――よって実用性無き浪漫とは、浪漫ならず――
――浪曼無き実用性とは「ジミ」である――
――如何なる浪曼を満載しようとも、地味な機体には性能・見た目共に敵わぬ――
――地味とは無駄を排し、実用性のみを追い求めた究極の機体であり、よって見た目はダサい――
――見た目のダサさと実用性・戦闘力は無関係であり、これに通ずるは必要性の特化である――
――必要性とは即ち戦闘力である――
――一方で戦闘力は必ずしも必要性・実用性である訳ではない――
――但し必要性なくして実用性・戦闘力は有り得ない――
―――以上を以て構築される機体は、戦略を求めるべし―――
これが総十郎のポリシーである。
「本当に作るとしたら耳は集音センサーやレーダーにすべきか?
…枠の関係上、タンク型や四脚型には出来ても完全な動物形態には出来ないんだよなぁ…」
暫し考えるか、とも思ったが、取り敢えず「学校が先だ」と結論づけて思考を切り替えるのであった。
放課後、山田武は悩んでいた。
自分の乗る
裏側にローラーを持った四脚狙撃型だ。
肝心のスナイパーライフルも度重なるテストで納得出来る性能になった。
それ所か所属ギルドの機体開発部から設計図が欲しいと言われた位だ。
問題は近接戦闘能力に不安がある事だ。
剣を持てば良い訳じゃない。
腕部――それ以上に機体全体のスペックバランスとの相談が必要なのだ。
例えば、砲撃全隊の機体を作ったとする。
普段の武器を取って剣を持たせても、元々が砲撃型ならば剣を振る事を想定していない。
設定挙動の問題もある。
設定挙動とは機体を動かすコクピット内部の作り込みの際に設定する項目の事だ。
操縦桿をどれ位傾ければ、どの程度機体が動くか、或いはペダルを踏んで歩く設定にするのか、それともブースターに割り有り当てるのか、様々だ。
機体はオリジナルでも、此処を面倒臭がって量産型から引っこ抜いたり、設計図を買ってコクピット・ブロックだけをコピーしたりするプレイヤーも多い程だ。
「あ~、完全に接近戦の事忘れてたあ~~。
でも今から武器だけ作ってもなあ…。
だー、又あの挙動設定地獄かよォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!
うぼぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
――ピ~~ …ボスッ!!
「あ、まーたインターフォン潰れたの?」
客は総十郎と葵だった。
「よう、機体の方は大丈夫か?」
「大丈夫じゃね~よぉぅ。
近接戦闘忘れてて、挙動設定地獄が再来しそうなんだよぅ」
「おいおい、何してるんだ?
お前らしくないミスだな」
「あ、そーちゃん!!」
奥から若い女性が駆け寄った。
「元気してた~!?」
「ぶぼぉふっ!?」
「あ、おっぱい窒息」
行き成り抱き着かれた総十郎の息が詰まる。
それを見た武が変な呟きをすると同時に、葵の目が湿った陰湿な物に変化した。
「姉ちゃんの悪い癖が出た」
武が溜息を付きながら頭を抱えた。
「
「えー、良いじゃない。
そーちゃんは減りませーん」
二人の間に火花―――否、度を越して激しい電撃がぶつかり合う。
「おーい、出来れば電撃のぶつ、ヴェビャッッ!!?」
奇っ怪な声を上げて、脇の間を通過した電撃に驚く武。
廊下に置いてある電話と電話台に二人の電撃が直撃、尚も壁や床を焼く電撃がふすまを切り裂いた。
「物理的被害出るって何?
超能力か何か――って言うか超能力以外の何者でもねぇ…」
武は思った。
多分この人達が出している電撃は
「で、二人は何しに来たんだ?
単純に『遊びに来た』ってのも良いけど、運が悪かったとは言え、これだけ被害が出ちまうとなぁ」
「あ~、武が
葵は和菓子作りの件で。
丁度目的地が一緒だし、じゃあ一緒に…って」
「ああ、母さんも楽しみだとは言ってた。
でもな葵、お前一人じゃないけど被害額は割と洒落にならないよ?」
「ごめん、ほんとにごめんなさい」
「後後ろで嫌な笑顔やってる姉ちゃんも同罪だからな?」
「武、裏切るの!?」
「あんたは元々加害者側だろ…」
パソコンでのアクセスではログインは出来ない。
だが、最近アップデートで挙動確認が可能になった。
試しにパーツショップで剣を買って来て、挙動確認を始める武と総十郎。
だが、『剣を振る』動作を設定していないので、何処をクリックしても思い通りに振れない。
今度は『突き』も試すが、一応腕を伸ばす迄は問題なかった。
問題が発生したのは、腕を伸ばした後だった。
手首の関節が剣を使う事を想定していないので、持った剣をプロペラの様に回転させる事は可能だが、『剣を突き出す』動作に必要な『手を内側に曲げる』事が出来ない構造である事。
前方に向ける必要のないダガーも、一応使えない事はないが、禄な攻撃にならない動作だったので、やはり無理と判断。
腕を少し弄れば装備可能であろうパイルバンカーも、この問題を理由に一時却下となった。
「ダガーは分かるけど、何でパイルが駄目なの?」
「腰が入ってないと腕を伸ばしただけじゃ、全然リーチが足りないんですよ」
後ろから質問した夜宵に答え、総十郎がマウスを操作、設計図をコピーし素早く腕を改造して、動作確認の所をクリックする。
すると、攻撃目標に向かって
次に、別のウィンドウを開き、武器紹介の中からパイルバンカーをクリック、動画を再生する。
「ほら、釘が突き刺さてるでしょ?
腰の関節が重要なんですよ、突きですからね。
パンチと同じで、腰を据えないと伸びが悪いんですよ。
仮に充分射程圏内でも、腰の関節が可動する事で、釘がより深く突き刺さるんです。
突き刺さた状態の釘…特に爆裂式パイルの場合は、敵の内部に侵入した釘=爆弾です。
多少爆発力が小さかろうが、内部から吹っ飛ばされちゃ、装甲は無意味です。
最も、防弾性に優れた装甲なら、そもそも内部深くに突き刺さる様な事態を回避できます。
無論、余程優れた防弾性の装甲ならば、ってのが現実です」
「ま、機体の全重量とスピード…に、パイルを打ち出す速度が上乗せされるからな。
腰の関節の性能は勿論、ブースターのパワーが高ければ、その分機体を突き動かすエネルギーが大きい。―――――となれば、釘を突き刺す勢いも増す。
推力のバランス次第だけどな」
「そう言えば、パイルバンカーにブースターを付けた馬鹿が居たな…。
お陰で威力は十二分になったけど、肩や肘に膨大な負荷が掛かる欠陥品でさ」
「パイルバンカーなんて当たれば威力は気にいなくて良いだろ?
大半が内部爆発型だし、突き刺さるだけでも凄まじい威力だってのに」
「ねえ、それより改良は?」
「「あ」」
結局武の
特化性能型なら、寧ろ気にしなくて良い忘れ物。
とは言え、特化型はそれ以外の全てが弱点なのが困り所。
幾つか種類別の特化仕様の数が揃っても作戦が練れないと普通に組み上げた方が楽です。
でも、戦闘は地形の関係上廃産機が活躍する事も極稀にあります。
只、戦闘規模では予想するのは困難な部分が多いですが、戦術・戦略規模であれば、古来より続く『戦い方』があります。
最も、この小説のゲームは、『戦い方』を根底から覆す機体を作る職人プレイヤーが多いので現実世界以上に『闘い』の自由度が高いです。