VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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アップデートが戦場を――戦闘を――戦術を――戦略を――戦争を激化させるッッッ!!!


第3の1話 アップデート

 日米陣営VS中韓陣営の戦いが始まって数週間。

VAADIKUO(ヴァーディクト)プレイヤーを震撼させるアップデートが行われた。

VAADIKUO(ヴァーディクト)単位の戦闘を潰さず、それ以上に激化させる艦艇の追加だ。

 

艦艇用パーツ数万個をVAADIKUO(ヴァーディクト)設計と同様のツールで組み合わせる。

違いは艦体と言う一枠で建設する事だ。

 

 

 

 「で、行き成り輸送艦造ってお前は一体何個大隊運ぶんだ?」

「あー、あはははは…………、おっき………………すぎ?」

「ああ、デカすぎる」

 

葵が造ったのは、VAADIKUO(ヴァーディクト)格納用ハンガー40個、武器コンテナ120個分の武器・弾薬庫を備えた超大型輸送艦である。

 

 「しっかし、本当に大きいな」

新しく設立された大陸南部のギルドにある、大規模軍港では次々と艦艇が建造されては出航する。

そんな中、特に大きなドックを一隻で一杯にしてしまった葵の輸送艦。

余りの大きさに、入って来た他のプレイヤーも唖然としていた。

 

「でっけえ」

「輸送艦建造って聞いたけど、こりゃ戦艦みたいな威圧だな」

「かっけぇ」

 

大半は余りの巨大さに圧倒され、物言わぬ生ける屍状態だが、屍状態から復帰したり何の影響もない者は、口々に感想を呟く。

 

 

 「そもそも、ドイツ勢力と戦うならまだしも、中韓陣営に海沿いのギルドって無いぞ?」

「基地としてはね」

 

葵はそう言いながら、端末を取り出す。

 

「おいおい、何だこれ?」

「え、このアップデートって艦艇だけじゃないよ?

私が付けたのは通信、チャット、ギルドデータベースのマップと連動した広域戦況アップ表示機能」

 

「こんなに小さい機械で、リアルタイムの戦況を把握出来るのかよ……。

戦況をリアルタイムで、って時点で普通じゃ考えられないけど、それでも今迄はギルドのマップユニットに行かないと見れなかったってのに」

「ま、小さい分、データベースから送信された《戦況の結果》しか見れないんだけどね」

「充分チートだって」

 

 葵が表示させた広域マップの西の端っこの方に、幾つか小さなギルドがあった。

だが、何故か主要ギルドと違って、一切の勢力表示が周辺に表示されていない。

 

「この辺のは全部工場。

機体、武器、弾薬を大量生産してるの。

工場防衛の哨戒チームと、運送班の護衛位しか来ない。

護衛に至っては、運送班に付きっ切りだから、定期的にしか来ない。

 

攻撃を仕掛けるのは、時間制限はあるけど楽よ。

一応周辺には隠れギルドっぽいのがあるけれど」

「《隠れギルド》?

ああ、防壁だけのか」

 

隠れギルドとは、ゲームの正式サービス以前から存在する物だ。

ギルド用の防壁だけ構築するので、ギルドに置ける機材や施設の一切が設置不能な代わりに、集合場所としては充分だ。

しかも、ゲームシステム上、ギルドではない為、広域マップでも表示されず、隠れ家として最適である。

 

各ギルド名義でギルド以外の所に防壁を構築するのは限界があり、所属プレイヤーの活躍によって蓄積されるギルドポイントで、ギルドマスターだけを対象といた、公式フォーラム上のショップで上限開放を、各規模毎の消費ギルドポイント数に応じて、解放する事が出来る。

複数のギルドが同盟を組み、これを利用した要再構築に励むギルドマスターが多い中、皆が皆同盟を組めたり組む訳ではなく、単体のギルドでも防衛に役立てるのが《隠れギルド》だ。

 

防壁しかない為、広域マップの仕様上《ギルドとして機能している物》以外であれば、目視で探すしかない。

地形に合わせて設置すれば、優位性は一気に跳ね上がる。

 

単純な溜まり場だとしても、身を守るには充分だ。

 

 

 大陸の西の端の方には、韓国系ギルドが集中しており、長距離偵察遠征班によれば、隠れギルドも多いそうだ。

 

「隠れギルドの事を考えれば、かなり重要なギルドがあったり、重要な地域である可能性が高い。

勢力表示がないのは、単純にギルドにマスター以外所属してないだけだしね。

隠れギルドに隠れてば、余程の数が密集してない限り表示されない。

 

実際はギルドの平均的所属数よりも遥かに大きな勢力が潜んでいる可能性が高いって訳」

「成程な、大勢力相手に戦うのなら一度に大量の兵力をぶっ込むのが手っ取り早いって理屈か。

この辺、結構平原が続いてるし作戦を練ってマスターに提案すれば良いんじゃないか?」

 

「したけど、返事らしい返事がないのよね。

まあ、戦力戦の戦線維持する必要あるから、分かり易いメリットがないと駄目かな?

後は単純に忙しすぎるだけとかね」

 

 戦場で将軍に任命されたプレイヤーが全軍に指示を出せる。

只、歴史的観点から《将軍》が何なのか、と言えばどちらかと言えばギルドマスターこそが将軍なのだ。

ギルドマスター自身は出撃は可能だが、その重要性故自らの出撃は出来ない。

 

そう言うルールが明言された訳ではないが、撃墜された際のペナルティ(一ヶ月ログイン不能)が余りにも大きすぎる。

一か月間も将軍が留守では作戦展開規模で不具合が発生し、敗因になりかねない。

 

 

 「戦艦とか出始めてて、他の国のプレイヤーが戦争に介入しそうだから、日米海軍枠を作って新しくギルドを設立するみたい。

海上戦の最前線基地で、途中の幾つかにもギルドや要塞が建造されるって」

「成程、他の連中からすれば稼ぎには好機って訳だ。

 けど、この日米同盟自体、現実世界上の国家間の繋がりを強くするのが目的だろ?

その為の戦争に他国が介入して、問題にならないのか?」

 

「国名義の軍勢じゃなくて、ギルド単位なら相手の国に文句言っても仕方ないからね。

それに、個人単位で活動するプレイヤーも結構多いよ?

見返りに多量のお金とギルドポイントを要求する傭兵」

 

「ああ、レイヴンスタイルか。

格好良さじゃプレイ方式随一だけど、難易度も随一だからやる人は少ないだろ?

実際、そう言う動画はアップされては打ち切りだからな。

 

今の所、ヤビーバって名前で活動する日本人プレイヤーがインド人とタッグ組んでる動画が7本目アップしたけど…」

「何処迄続くか、って?

20本上がれば上々よ、レイヴンスタイルだなんて」

 

 

 「二人共、大変だ!!」

二人で話している所に、大慌てで武がやって来た。

相当長い距離を走って来たのか、かなり息が荒れていたが深呼吸する暇もなく、大声で要件を伝えた。

 

「中国が………たっ、大量のギルドポイントを使って…………ちょ、超巨大飛行空母を建造しやがった!!」

 

その報告に総十郎や葵だけならず、他のプレイヤーも驚愕する。

 

葵が慌てて広域マップを確認すると、先程迄表示されていなかった筈の、大勢力が表示されていた。

その行き先は米国陣営最大の大要塞、ストーンヘンジであった。

 

 

 プレイヤー達が大慌てで走り回る中、サイレンや警告音に混じりながら各所に設けられた放送用スピーカーから被害報告や指示が次々と発せられる。

 

『敵巨大航空機、尚も本要塞へ飛行中!!』

『第87機動砲撃部隊、反応消失』

『同部隊強制ログアウトメッセージ、受信しました!!』

 

「これで機動砲撃勢力は3割を失ったか。

大凡被害総額は8千万ドル…………。

幾ら何でも、これ以上課金は出来んぞ」

 

ログインせずにパソコンからゲーム内通信にアクセス、オペレーターチームの班長を担う中年の男性が額に嫌な汗を垂らす。

 

「っく、合衆国の経済力に物を言わせた課金だ。

大統領に回して貰った資金を、これ以上減らせるか!!

 

 第29独立部隊のメンバーは!?」

『今日ログインする班は今出撃準備が整いました!』

 

「簡素な作りで良い、敵航空機よりも高い高度を飛べる輸送機はないか!?

最悪、機体にブースターを取り付けろ!!」

 

VAADIKUO(ヴァーディクト)にハイパーブースター!?

あ、あれなら確かに高度は確保出来ます。

 

し、しかしハイパーブースターは試作型しかありません、実用性皆無ですよ!?』

「かっ飛ばせるならかっ飛ばせ!

今使わんとストーンヘンジが落ちるぞ!」

 

『りょ、了解。

全機、ハイパーブースターの準備を開始します』

 

 

 

 ハイパーブースターとは現在米国陣営が開発の、VAADIKUO(ヴァーディクト)に超推力を齎す巨大な追加ブースターである。

その圧倒的推力の要求を満たすべく、ブースターはエネルギー消費型ではなく燃料消費型が採用され、開発が始まった。

只、大出力に耐えうるブーストジェネレーターユニット構築に必要なゲーム内資金の要求額が余りにも高く、そのハイコストっぷりを理由に改良すらままならないままの未完成品である。

 

点火すれば要求通りの推力を生み出しはするものの、低出力化と高耐久力化を行ったユニットでは推力による負荷に耐えられるギリギリの耐久力しか実現できない。

それ以下の出力では、その巨大さ故の重さが原因で、一気に速度が低下してしまい意味がなくなってしまう。

小型化しても推力不足に悩まされ、普通の飛行パックになってしまう。

 

加えて、そのギリギリさ故、極めて不安定で起動した瞬間、或いは飛行中に突然、大爆発が発生しかねない。

 

 

 (――とは言え、他に対抗策がないのは他がなぬ事実、か)

愛機に乗り込んだ彼は、米海軍の戦闘機隊の隊長を務める軍人である。

故に状況と実行可能な対策に思考を走らせる。

 

やはりハイパーブースター以外で高々度へ突入するのは難しい。

高度だけであれば輸送機を飛ばせば良いが、手配抜きで考えても色々無茶がある。

普通のゲームならクリック一つで済むだろうが、このゲームはリアル過ぎるが故に格納庫から輸送機を引っ張り出さなければならないからだ。

 

定期整備の必要こそ実装されない要素ではあるが、どの道加速時間や上昇時間を考えると無理がある。

此処は無理矢理にでも大推力で空を突っ切るのが一番だ。

 

 

 モニターから見える景色では、作業班に配属されたプレイヤー達が駆け回ってる。

装備枠で建造されたとは言え、その要求スペックを満たす為に必要な大きさになった為、クレーンの動きもやや鈍い。

恐らく巨体であるが故に重さが災いのだろう。

 

「緊急対応性には乏しいか…!!」

 

 回線を開いた通信音声が耳に入る。

兎に角煩いのは指示の量が多いのか、作業班の怒鳴り声故か。

 

『ハイパーブースター、取り出し完了!

このまま接続に移行、セットアップ後はそのままカタパルトへハンガー移動』

 

通信音声と共に、軽い衝撃。

それと同時にディスプレイにハイパーブースター装備確認の文字。

 

「ハイパーブースター、システム接続確認。

ジェネレーター出力上昇確認、エンジン回転速度加速中。

推進剤燃焼準備完了、燃焼開始」

 

ディスプレイにカタパルト接続の表示が出た後、ゆっくりとペダルを踏む。

それに呼応してシートの奥から力強い唸り声が振動と共に伝わり始める。

 

「燃焼室、圧力維持。

出力上昇に合わせて圧力自動調整プログラムを起動」

 

『ハイパーブースター起動を確認、カタパルトチャーイングを開始する』

 

カタパルトのレールを走る脚部固定装置を進ませる為、レールの左右にあるガスパイプにガスが送り込まれる。

その間も敵航空機による被害が発生し続け、爆炎が見ると共に次々とログアウトログが増える。

 

 (早く…!!)

 

赤いログで埋まりつつあるログ表示枠を睨みながら、立ち込める焦りを抑え込む。

だが、非情な攻撃は続き、遂には揺れも強まり始めた。

 

 

 『カタパルト、ガス圧力規定値に到達。

チャージング完了、発進して下さい』

 

「っ! ―――3番機、出撃するぞォッッ!!」

 

全力でペダルを踏み込む。

同時に圧倒的な迄の強い負荷が襲い掛かる。

 

 カタパルトを飛び出す直前、視界を潰す明るさを感じた瞬間に操縦桿を引く。

視界を取り戻す頃には、モニターの映像にある高度計が既に上昇を表していた。

 

 

 『第29独立部隊、全機ハイパーブースターによる発進完了。

データリンクによる機体異常報告無し、順調に上昇中』

『敵巨大航空機、ハイパーブースターによる上昇を妨害する事目的と思われる砲撃を開始。

レーザーと思しき光を観測、同時に大熱量を検知。

推定威力は9万以上!』

 

3機目掛けてレーザー砲撃。

だが、遠すぎる為かどんな距離でも一瞬で到達するのが強みのレーザーは若干ずれた空を照らす。

幾らレーザー兵器と言えど、狙いが定まらなのでは強みの光速も無意味だ。

 

 「とは言え、流石に距離を詰めれば言ってられんか…ッ!!

隊長、チャフを使いましょう」

『この距離をレーダーで捉えられてる訳ないだろ。

カメラ系をFCSに直結したタイプだろう』

 

「レーザー砲です、撃つ度に視界を失いますよ?」

『…………それもそうか

合わせろ、チャフ!』

 

沢山のレーダーの反応を鈍くする重金属粒子の詰まった無誘導推進弾が一度に放たれる。

飛行中にコンテナを開き、チャフを展開する事で効果範囲と効果時間を強化し、性能を最大限に引き出すチャフロケットだ。

 

 『全射出装置、対光学兵器妨害弾を装填、一斉発射せよ』

 

その通信の直後、敵巨大航空機前方目掛けて無数の小型ロケットが発射され始める。

発射装置の両脇にある排煙口から凄まじい量の白煙が飛び出し、大地を真っ白にする。

 

白煙の海から飛び出したロケットの弾頭が炸裂、特殊粒子が空を灰色にする。

 

『な、何だ!?』

 

『地上からも支援する、兎に角引き付けろ!!』

『防衛兵器の数割は対空兵器だ、届く筈だ』

「馬鹿言うな、射程で届いても遅すぎる!」

 

 反論を無視して、ミサイル等が発射される。

それを迎撃する為にレーザーが照射されるが、前方に展開された特殊粒子によって急速減衰してしまう。

 

 『一番乗りぃいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

敵巨大航空機の上を陣取った隊長のVAADIKUO(ヴァーディクト)がハイパーブースターをパージ、対空砲火を物ともせずに巨大航空機へブースターを吹かす。

 

 ドォオン、と轟音を上げたのは隊長がパージしたハイパーブースターであった。

偶然にもハッチに激突して内部に突っ込んだらしく、内側から爆ぜたのか揺れが大きかった。

直後に連続して見に覚えのない撃墜ログが連続してたので間違いはないだろう。

 

 『空母だったって本当だったんですね』

2番機が対空ミサイルの発射管目掛けてハイパーブースターをパージ、対空機銃を破壊しながら荒々しく着地する。

 

『今、何故かVAADIKUO(ヴァーディクト)を撃墜した事になったからな。

ログの量からして、中身は残ってる筈―――ほらな』

 

別のハッチが開き、弾丸が飛来する。

しかし発砲開始と同時に機能が停止する。

3番機がリニアガンで敵機を破壊、そのままエレベーターで上がって来た敵VAADIKUO(ヴァーディクト)をハイパーブースターをパージしながら踏んづけて着地する。

相当衝撃が大きかったのか、そのVAADIKUO(ヴァーディクト)は一瞬で残骸へ変身した。

 

 『3号機、敵航空機上面装甲に着地。

パージしたハイパーブーターが上面装甲に展開し始めたVAADIKUO(ヴァーディクト)部隊を突っ切って炎上中。

 

この飛行機は爆撃機の類ではない可能性もあり』

『此方管制塔、敵部隊展開了解。

同航空機より効果ポットを多数確認した、その可能性に同意する』

 

 管制塔の返事が帰って来たのは可変型VAADIKUO(ヴァーディクト)が変形しながら装甲上に着陸した時であった。

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