VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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第3の2話 ストーンヘンジへの救援

 大型輸送機に乗ってストーンヘンジへ向かう武、総十郎、葵の三人。

平日の放課後なので、善十郎は居ない。

 

 『各機へ通達、敵巨大航空機は大きな輸送機だ。

輸送だけではなく、爆撃機の性能も持ち合わせていると報告が入っている。

 

 諸君ら第29降下部隊の乗る輸送機は敵巨大航空機からの爆撃・砲撃に注意しつつ同航空機から投下される敵VAADIKUO(ヴァーディクト)部隊を迎撃、友軍施設ストーンヘンジへの敵部隊接近を阻止せよ。

 

既にストーンヘンジ側は劣勢ではあるがVAADIKUO(ヴァーディクト)部隊は数がある。

現地で彼らと連携すれば挟み撃ちも可能だろう。

 

 

 又、既に敵航空機にはストーンヘンジ駐留の特殊部隊が取り付いている。

対空・対地戦闘に於いて両驚異が排除出来た場合、今後敵軍の行動に大胆さは失われるだろう。

 

 作戦成功と、君達の検討を祈る。

第29効果部隊に武運あれ』

 

 『機長のレイドルトだ。

可能な限り高速・低空飛行で敵に突っ込む。

降下は手早くな、高度が取れなくなる』

 

作戦司令官の作戦説明の後、機長から注意される。

その後、オペレーターを担う女性が作戦開始を告げた。

 

『作戦時間、全機降下を始めて下さい』

 

 

 作戦開始と同時に、コクピット内の高度計の表示高度が下がる。

それと同時に足元の床が開き、機体を固定する装置が開いた床から機体が外に出る所迄下がる。

不規則に固定が解除され、そして自分の機体が固定を解除され、落下し始める。

 

ブーストペダルを蹴り付けて、ローラー制御のペダルの足に力を込める。

 

 

 眼前の光景を見せつけるモニターを睨み、高度が下がる中、トリガーボタンを入力する。

味方機の攻撃と合わせて、弾丸が敵機に食らいつき、ミサイルや砲弾と一緒に敵を倒す。

 

「武、葵は後方支援!

葵は敵前衛機、武は俺の援護だ!!」

『事前に打ち合わせた通りね、了解』

『任せとけ、総十郎がどう動くかなんざ知り尽くしてら!』

 

 三人が着地する頃には、味方機が次々と彼らの後ろから敵部隊へ突撃して行っていた。

味方に遅れない様に三人も突撃を開始、敵部隊へ攻撃を始めた。

 

 敵部隊は最初に降下していたVAADIKUO(ヴァーディクト)が背後の総十郎達救援部隊に気づいていたのだが、救援部隊の狙撃系VAADIKUO(ヴァーディクト)により、降下中の機体が次々と破壊されていた。

 

多くは『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』だが、中には明確に狙撃を命中させるプレイヤーも多数居た。

 

 

 そんな中、総十郎達三人は総十郎の改良したイクサーの機動性を活かして、敵部隊後衛中央に喰らい付いていた。

同じ輸送機で運ばれたVAADIKUO(ヴァーディクト)は一時的に同部隊所属機として専用リンクが貼られる。

各機被害状況、全体の損害率、同所属機の位置と様々な情報が共用される。

 

それを活用して、味方と距離が離れ過ぎない様に位置取った結果、敵部隊後衛中央部分近くに移動してしまったのだ。

 

 榴弾を装填したマシンガンを両手に、総十郎のイクサーが適度に暴れる。

二丁のマシンガンから放たれる榴弾は、ギルド内のパーツショップで販売している弾薬の中では、少し値の張る類だ。

その分、攻撃状況は非常に警戒で、敵を驚かせるには充分な様だ。

 

マシンガン自体も射撃精度を損なわない程度に、弾速強化が行われているので、全体的に凶悪なマシンガンと仕上がっているのだ。

 

 そんなマシンガンを二丁も持っているからか、総十郎機の撃破を優先する敵機も若干多い。

そして飛び出した所を武に狙撃され、致命的な隙が発生した所で、マシンガンに装備されている副火器装置によって高威力な粘着グレネード弾をプレゼントされてしまう。

 

「派手に吹っ飛んだな、総十郎!!」

『ああ、実在するライフルに装備されるグレネード弾を参考にして助かった』

 

 『二人共、中衛から一機離脱!

後衛の援護に入って来た』

『了解、どの道全て叩くだけだ。

行くぞ、多少の予想を超える程度の作戦なんぞ、実力で捻り潰す!

その上で、対策を練る』

 

 (何か総十郎、最近親父さんっぽいな…)

 

 

 葵のVAADIKUO(ヴァーディクト)は、機体名をテルマナと言う。

ドイツ系プレイヤー、及びギルドで愛用されている砲撃主体の量産機、アルテダをベースに改造した機体で、複数の規格の砲弾を一緒に装填出来るのが特徴だ。

普通、規格違いの砲弾に対応するとなると、多少被弾しただけで故障しがちで、建造費用も嵩張りがちだ。

 

又、設計難易度も高く、店で買うなら結構度胸を求められる高級品として扱われるのが一般的だ。

それを規格違いの砲弾を一緒に装填するとなると、大革命其の物だ。

 

 実の所、葵はその方面で有名で、割と沢山設計依頼があったりする。

彼女の手がけた設計図は、材料が一緒でなくとも出回るだけで市場が大賑わいする。

 

 「葵、中衛に燃焼弾一発!」

『もう接近してるのは殆ど後衛だよ?』

「だからだ、足を鈍らせろ。

後は味方に潰して貰える様に中衛の誰かをマークすれば良い。

入り込んだ距離のある奴を正確にマーク出来るのは砲撃機位だ」

『分かった』

 

直接的破壊力こそ皆無な燃焼弾だが、その見た目の派手さは、敵を驚かせるには充分だ。

又、熱は機体内部を侵食する、見えない刃でもある。

 

熱はこのゲーム、VAADIKUO(ヴァーディクト)に於いて重要な要素だ。

耐熱性は勿論、廃熱しても外気温度が高い砂漠等では、燃焼弾無しにオーバーヒートしてしまう。

正式サービス開始以降、何度も何度もアップデートしているVAADIKUO(ヴァーディクト)だが、熱や気温は初期アップデートで追加された概念である。

 

 燃焼弾と分かったのか、単なる砲弾の撃ち落としか、定かではないが燃焼弾目掛けて銃撃が殺到する。

しかし命中する事なく着弾、一気に大地が燃え上がる。

 

地面から広がった分、その熱量は凄まじく、次々と撃墜ログが追加される。

 

(防衛側の砲台に装填出来たら、敵側の被害がこれ以上になるな)

 

そんな要塞、攻めたくない。

総十郎は火炎系兵器の恐ろしさを理解した。

 

 

 

 暫くすると葵がマークした敵機を撃破しようとする味方機集団が、後方の脅威を排除しようとする敵中衛、後衛集団とぶつかり、乱戦が始まった。

それに伴い、敵攻撃部隊の右側に回り込むと総十郎達に驚いたのか、歓迎の弾幕が妙に濃かったので、すぐに後退した。

 

それでもテルマナの砲撃能力によって、多少引っ掻き回された右翼は、その進軍速度にブレーキを掛けた。

 

 「敵正面は味方防衛部隊との撃ち合いに巻き込まれる。

このまま敵攻撃部隊に付かず離れずで追撃、ダメージを蓄積させるぞ。

 

二人共、損傷と弾薬は大丈夫か?」

『損傷はそんなにない、弾薬ももうチョイ戦える位はあると思うぜ。

葵は?』

『燃焼弾4発、火炎弾2発が砲撃ユニットの弾倉に。

それ以外は、右は2式通常弾と3式信菅榴弾が4発ずつ。

左は1式通常弾が3発と5式クラスター・一号型榴弾が2発。

 

先頭弾は右が火炎弾、左はクラスター。

砲撃ユニットに装填してる方は、順番を変えられないから、どかすか撃てない。

それに、これが最後の弾倉』

 

テルマナの背中には幾つものコンテナがサブアームで固定されており、唯一サブアーム無しで背中に装備されているコンテナがあった。

恐らくは、背中のコンテナこそが『最後の弾倉』なのだろう。

 

 

 

 『拙い、敵前衛中央が突出し始めた』

「槍の陣か、このまま右側を通過して抉るぞ」

 

武の少し慌てた声。

反応して、操縦桿を軽く動かして頭部を動かす。

頭部に埋め込まれたレーザーソナーと複合連動カメラアイが敵を自動補足する。

 

補足した機影を画像認識、更に熱源称号を開始。

自動で行われた目標物識別行動が数秒で完了、敵部隊とシステムが認識する。

 

 「拙いぞ、本格的に拙い。

先頭の機体の大半が速度重視のスピード狂だ!!」

 

そう言ってペダルを蹴りつける総十郎。

速度メーターが一気に上昇、急加速に伴い体がシートに押し付けられる。

 

 「待てよ、総十郎!!」

 

武の機体が正面に躍り出る。

器用に移動方向を変えずに旋回して、高速バックを続けながら総十郎のイクサーの前に立ちはだかった。

 

『何だ、武』

 

「何だじゃない、お前どうする気だ!?」

『…』

 

静かに轟く息遣い。

 

 「おい!」

 

直後、ぶつからない様に減速していたイクサーが横に飛び出して加速する。

そのまま左側の崖の間にある僅かな上り坂をブースター全開のローラーダッシュで駆け登る。

 

暫く駆け抜け続けた後、ブースター全開のまま大跳躍した。

 

 

 「このまま前衛に突っ込む、援護しろ!!」

『え、援護ったって距離が遠くて滞空時間的に間に合わねぇよ!?』

 

 武の言葉を半ば流しつつマシンガンで速度特化の敵機目掛けて数秒だけ掃射する。

自分の存在をアピールしつつ、ブースターの耐熱ゲージを確認する。

二分間に及ぶ長時間のブースター使用はブースターに負担を与える。

()してや使っているのはエネルギータイプとは言え高出力型だ。

 

電力を消費するタイプが幾ら発熱が少なかろうと限度は存在する。

発熱量が少ない反面、耐熱性も低いので結局使える時間は短いのだ。

加えて熱に弱い分、対爆性も脆い。

 

ブースターとは得てして、そう言う物だがエネルギータイプは特にその傾向が強いのだ。

 

 

 警告音声が出る少し前にブーストカット、同時にブースターに直結してあるパイプの弁を開くボタンを押す。

数十秒間、ブースターが使えないが冷やさないと性能が劣化するからだ。

 

 補助ブースターだけで着地衝撃を和らげるも、推力不足で脚部損傷の警告が表示される。

総十郎自身、苦痛に感じながらも操縦桿を横に振るう。

補助ブースターの推力で加速を上乗せしつつ、味方要塞へ全速後退しながらマシンガンを掃射する。

 

突っ込んでいただけあって、中々に弾の食い込みが良く、跳弾が目立たない。

加えて敵の進撃速度にブレーキが掛かる。

 

 当然、行き成りとは言え敵集団の目の前に来たのだ。

直後から襲い掛かる弾幕を回避しながら兎に角敵をマークし続けて、表示ログの数を稼ぐ。

こうすれば、多少味方からの援護が入るだろうと思っての事だ。

 

 

 ドドォオ、ドドドォオン!!

 

突然、右から榴弾の嵐がやって来る。

目の前が爆炎によって遮断され、ディスプレイのログ表示が一気に青い敵の撃墜ログで埋め尽くされる。

 

『ハァアッハアッ、良い度胸してるぜ!!!

俺様が来たからには、てめぇの安全は確保されたも同然だぜ!!!!』

 

矢鱈テンションの高いプレイヤーの声だ。

言葉の激しさからして、英語が翻訳されているのだろう。

只、その声は何処かで聞いた事のある声だ。

 

『そら、足の速い連中を追い掛けな。

俺が引き受ける!!』

『馬鹿が、突っ込むなと言ったろうが…………』

 

未だ収まらない煙の前に躍り出た真っ白なタンク型の防御と火力を前面に押し出したVAADIKUO(ヴァーディクト)を別の機体が追い掛けて来る。

そのまま白亜のタンク型VAADIKUO(ヴァーディクト)と共に敵の迎撃を開始する。

 

 (やっぱあの人等の声知ってる、あのゲームで要塞を占拠してた火力馬鹿と先見の凄まじい人だ)

 

納得して、敵を追い掛ける総十郎。

 

 味方部隊と要塞は目前だ。

左側には一緒に降下して来た味方機が横から進軍部隊を抉ろうと弾幕を張っている。

一方の右側は敵巨大航空機の爆撃、砲撃の回避で大忙しだ。

特に援護が期待出来たであろう砲台の類は既に破壊され尽くされており、VAADIKUO(ヴァーディクト)部隊の負担が増える要因ともなっていた。

 

 

 正面から味方部隊による弾幕。

敵の突撃部隊の後ろにいると、流れ弾に被弾しそうなので右側に移動する。

 

 不意に先頭をブーストダッシュしていた敵の一機が姿勢を崩す。

背中のブースターが小さく爆発し、その衝撃か急ブレーキが意図せず掛かったからか、その機体は決定的な隙を作ってしまう。

弾幕によって蜂の巣にされたのは二秒未満の事である。

 

 『総十郎、急に突っ走りだして!

何か見つけたのか!?』

「武の狙撃だったのか。

 嫌、感に任せただけだ」

 

『感にって、おい!』

 

 「どうせお前と葵の援護があるんだ。

それに少数とは言え、見ろ」

 

総十郎が促した先には、弾幕を回避しながら要塞へ接近し続ける敵の姿があった。

 

『あの規模の弾幕を回避出来るとなると相当な機動制御システムを積んである筈だ。

恐らく試験型だ、あの動きは』

「単純にエースってだけじゃ?」

 

『違うと思う、何か引っ掛かる』

 

総十郎の通信に葵が同意する。

 

 

 『全軍に通達、敵巨大航空機、推力機能停止!』

「っ、あの巨大兵器か!」

 

突如、轟いた爆音に気づき頭上を見上げると黒煙の塊が空に見えた。

次いで機体の姿が見え、複数機のVAADIKUO(ヴァーディクト)が巨大な飛行機から飛び降りたのが確認出来た。

 

『敵巨大航空機、当要塞に向け進路確保!

全部隊、要塞前方に集結し、激突前に破壊せよ!!』

 

「おいおいおいおい、やばいって総十郎!!」

『突き進む、敵を追うとかの話をしてられる状況じゃないぞ!!』

 

総十郎のイクサー、葵のテルマナ、そして武の愛機のストラングの三機が敵突撃部隊の追撃を開始した。

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