VAADIKUTO   作:エグ・エルード

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ログアウトが超絶面倒です!!


第3の3話 ストーンヘンジ到達

 『っぐ、機体が!!』

言い終えると同時に打ち抜かれた特殊部隊の最後の機体が、そのまま落下する。

ストーンヘンジの防衛砲台の斜線に侵入、背中に放談が直撃し、その下の対空機銃を機体重量で破壊してしまう。

そのまま機銃の爆発かVAIKUO(ヴァーディクト)の方か、定かでない内に大爆発が起きた。

 

 「今の爆発は!?」

「それよりも手ェ動かせ!補給を続けねぇと出せる機体が減ってんだぞ!?」

 

「ああ、次が来る、次のお客様だぞ!」

「駄目だ、補給が間に合わない!!」

「此処は補給所だ、修理は向こう!」

「資材が足りねぇぞ、追加ァっ!」

「クレーンが少なすぎて作業が追い付かん!」

「ええい、こんなポンコツハンガーじゃ如何にもならん、第2補給所もあるってのに!!」

 

補給所は第1、第2、第3補給所の三か所、前線より下がった所に臨時補給班が4班出ている。それでも次から次と作業が終わらぬ内に前線から沢山のVAADIKUO(ヴァーディクト)達が戻って来る。

 

順番待ちで溢れかえり、お蔭で前線で戦うプレイヤー達から応援要請が引っ切り無しに行われ、オペレーター役のプレイヤーが涙目で対応している。

 

 『補給班、第1補給班は無事か!?もう少し場所を下げてくれ、敵の砲撃型が突っ込んで来て抑えられん!

その位置では3分後には射程圏内だ!!』

「ふざけんじゃねぇ、もっと踏ん張れよ!」

『ばっか言うんじゃねぇ、数が多過ぎて何処でも似た様な感じなんだよ!さっきからボイスチャットが煩くて適わん、応援要請の大合唱してんだ!』

 

 「班長、後三分で敵砲撃型VAADIKUO(ヴァーディクト)の射程圏内だそうです。此処で作業してたら補給中のVAADIKUO(ヴァーディクト)も俺達も吹っ飛んじまいます!!」

 

苦虫を噛み潰した様な表情で担当の通信兵が叫んだ内容は、補給班の班長の顔を青くさせるには充分だった。

 

「も、もうちょい待てないか!?今から準備しても後7分は必要だ」

 

班長とは別の作業員が泣きそうな表情で訊ねる。

 

「そんなに悠長にやるな、消し飛ぶぞ!!」

 

 別にゲームなので、吹っ飛ばされても二か月間ログインできないだけだ。しかし、此処の空気は現実世界の戦場その物であり、残り数割の民間人プレイヤーが空気に呑まれ、「自分は死ぬんだろうか?」と震え始めた。

 

 

 ―――ドォオン!!

――畜生、撃墜ログだ、誰かやられたぞ、散会しろ!!――

 

「く、来る」

「今のは近かったぞ」

 

 直後、作業場の中央に天井を貫通した砲弾が着弾、派手な爆発と共に悲鳴が上がる。

 

「貴様等腰が弱すぎる、度胸持たんか!」

 

爆音や悲鳴を凌駕する勢いで班長が怒鳴り、作業再開を命じる。

 

「逃げる準備だ、30秒で支度だ。それ以上ちんたらすんじゃねぇ、ハンガー全部片付けろ!!」

 

 

 

 『敵補給所、砲弾命中』

『砲弾命中を観測、更に周囲のVAADIKUO(ヴァーディクト)散会を確認』

『了解、次弾装填せよ。装填弾、尚も同じく』

『同砲弾再装填了解、再装填開始』

 

中国勢のVAADIKUO(ヴァーディクト)が3機。

彼等は主戦場から西――侵攻ルートから左に離れた、ストーンヘンジの防壁の向こう側が見える高台に居た。

 

 「再装填完了――ぬっ!?」

『アヴェリャ1、何があった!?』

「状況不明、撃たれたらしい!」

 

慌てて機体を下がらせて、アヴェリャ1が映像倍率を操作して敵を探す。しかし自分を撃ったと思える様な機影は無く見える機体は混乱するVAADIKUO(ヴァーディクト)ばかり。

 

「糞ったれ、間違いなく角度からして超長距離関節射撃だった筈だ。センサーでは真上から被弾した筈、相当な距離の筈だが…―――駄目だ、地形的に丸見えの筈だ。何でいないんだよ、畜生が!!」

『一旦下がれ、恐らく敵はまだお前の狙える位置に居る――あ!?』

 

「居る筈だ」と続くべき言葉が妙な声と共に雑音に紛れて、結局通信が断絶する。突然の断絶に彼も仲間も動揺してしまう。

 

 

 「!?」

 

咄嗟に操縦桿を引っ張りながらペダルを蹴る。

殆ど蹴り飛ばすつもりで蹴ったのだが、其方が早かったのか警告音が先だったのかは不明だ。それでも、直撃は回避できた。

 

 

 「砲撃機では―――」

 

 ミサイル制御装置を使って制御した小型バギーがワイヤーの力で岩場を駆け上がって来た。その姿に唖然とするアヴェリャ1へ突撃しながら、多連装ロケットランチャーに装填されたロケットを一斉発射する。

 

精密砲撃の為にしゃがんでいたので若干動作が遅れ、それが原因でロケットの大半が左肩や左胸に直撃する。

 

 「ぐううおおおおあああああああ!!!」

 

 反撃しようと、突撃砲を発射するが、それより先に自爆装置を作動させ、機体が吹き飛ばされる。

 

 崩れ始めた岩場に取り付こうとするも、崩壊が早く脚部が破損している事もあって、飲み込まれるばかり。結局地形崩壊による大きな土煙の一部を、機体の爆発によって少しだけ吹き飛ばすに留まった。

 

 

 『こ、此方ヴォウ・フォン1。

何の爆発だ、狙いが…駄目だ、移動する』

『ラグジューベチーム、レッドダウン。砲撃支援部隊の稼働率が低下する!』

 

『た、っく、おいおい、さっきから支援砲撃が止まっちまってるぞ。

此方突撃部隊、アーシャン4。敵迎撃部隊、尚も迎撃続け―――だあ、僚機が一機撃墜されて坂を転がってる!!』

 

『砲撃部隊、支援稼働停止。突撃部隊の全チームは現時刻を以て本作戦の失敗とする。

全軍撤退、アシャヤン大隊は突撃部隊の位置迄移動し、撤退支援を開始せよ。

 

砲撃部隊は正面攻撃陣形と合流、後衛の砲撃に参加せよ』

 

 

 

 『中韓陣営所属機、距離を取り始め…これは撤退、か?

敵機全部後退を開始、繰り返す、敵部隊が後退を開始』

『宜しい、全迎撃部隊の被害報告を待つ。

それ以外の部隊、及び援軍部隊のストーンヘンジ防衛領域内への回収を急げ。

 

 それと…増援部隊、全機ストーンヘンジへ入れ。

展開中の迎撃部隊は移動力の欠如した味方機の回収を急げ』

『総十郎、葵、要塞に入ろうぜ』

『了解だ、待たせるのも悪いからな』

 

 

 ストーンヘンジの正面門は結構大きい。此処は防衛戦力展開の要で、迎撃部隊のVAADIKUO(ヴァーディクト)が出入りし易い様に作ってある。逆に攻撃側の侵入を防ぐ為にエレベーターはクレーン式で、それを使わない限り正面門に到達できない。

 

迎撃砲台が密集していて、ミサイル対策のフレアやチャフを放出する対空攪乱装置も多数配備されている。

 

 とは言え、今回は巨大な航空機投入による大規模爆撃により殆ど役割を果たせなかったが。

 

 門を潜ると最初に巨大な要塞砲が出迎えてくれた。

300ミリ口径の対大規模進軍部隊攻撃用超電磁砲だが、構築中に攻撃されたので出番が遠のいただけとなった。周囲には対ミサイル迎撃砲台が並んでいて、対地ミサイル可動ポッドも配備されていた。

 

 中央格納庫には沢山のハンガーが揃っており、弾薬庫とクレーンが直通している。

大型軍事施設に良くある、迅速な補給を求めた形態であり、VAADIKUO(ヴァーディクト)と言うゲームの戦略や戦術の必要性を物語る各種進化の一つだ。中央格納庫周辺には臨時補給部隊の為の地下格納庫の入口が幾つもあり、段々道幅が狭まりつつある。

 

 総十郎達、増援部隊に用意されたのは臨時外部部隊駐留所――要塞の東側だ。

周りが切り立った崖で囲まれていて、沢山の砲台に睨まれている。裏切りを想定しての事らしいが、同時に駐留所へと続く外部への道が整備されており、普段から道路として使用されている様だ。

 

 反面、敵に道を作る事で攻撃ルートを明確化し、一箇所に集まった敵を要塞の火力でフルボッコにする目的の構造でもある。

 

 事実周囲には偽進行ルートとして道路やトンネルが展開しており、意地悪な場所に地雷や機雷放出装置が埋められている。

 

 

 「はあ、此処の格納庫も地下に食い込み気味なのか」

「ああ、何でもスペースを下げて砲台の視界を出来るだけ拡大する目的だって話だ」

 

見張り塔が矢鱈と立派で背が高いのは、視界を広くするのが目的だ。中央格納庫の真上にある見張り塔は高性能な監視カメラやセンサーの集合体で、ほぼ全てが迎撃設備に直結している。仮に誰もログインしなくても、今回の様な大戦力を投入しない限り、下手に部隊を投入するだけプレイヤーのログイン権をゴミ箱に入れるに等しい。

 

 

 「俺達は暫く此処が拠点になる。武、葵もだけど駐屯地から出るなよ。特にストーンヘンジに入ろうとしない方がいい、喧嘩になったら面倒だ」

「うん」

「大丈夫だって、入らないって」

「宜しい」

 

 そう言って、時計を見る。

 

「おう、6時か。飯時だ、ログアウトするぞ」

「6時なら私も」

 

 ふと、総十郎が振り向く。

 

「武は?」

「俺はタイマーがあるし、夕食は7時なんでな」

「うーい、了解だ」

 

 「じゃ、ログアウト施設探そっか」

「だな、とっとと帰っちまおう」

「――んな上等なモン、ストーンヘンジにゃねえよ」

「「え?」」

 

 後ろから言われた言葉に振り向く。其処には腕組みをしたツナギ姿の男性がいた。

 

「ストーンヘンジってのは作戦遂行する為の施設だ。此処の連中は特にそうだ、出撃準備と防衛、後は周辺地域の監視。それにスペース割ってるし、他は最低限その場凌ぎしか用意されてない。

 

 ログアウトしたいなら、アウトバレル迄地下鉄が伸びてる。あの街なら機体の調達やログインもアウトも出来る施設が揃ってる」

 

 「アウトバレル?あー、そう言えば公式サイトの紹介にそんなのあったな」

「公式サイトぉ?ありゃ駄目だ、公式だから嘘は無い…が、情報が少なすぎる。あれを鵜呑みにしたらフィールドのど真ん中ででっかい地雷踏んづけちまうぞ?」

「えーっと、有難うございます」

 

 

 大柄な男性の指差す方へ歩くと、――アウトバレル急行線――と大きく書かれた看板があった。その下には出入りする人々で溢れ返っており、気の弱い人なら一発で諦めかねない勢いである。

 

 「切符って…ねえ券売機とか切符入り場的な物がないよ?」

「そこの柱で待ってろ、駅員に聞いてくる」

 

 武がそう言って、その場を離れる。残った二人は壁際へ移動するが、戦いに参加したプレイヤーが多かったのか、利用者が非常に多いので、少し動くだけでも苦労する。

 

 「あー、砲撃型乗りませんかー?砲撃手の人いませんかー?」

 

声のする方を見ると、小学生らしき子供が二人大声で砲撃系の仲間を探している姿を見つけた。片方は古典的な欧米人の容姿で、もう片方は西洋的な遺伝を思わせるハーフであろう容姿の持ち主だった。

 

 (あれも英語なのかな?凄いなー、今時の翻訳って。自動音声とかじゃなくて、声其の物の言語を変えられるなんて)

 

 

 「おーい、切符入り場元から無いってさー!」

 

 そんな事を総十郎が考えていると、大声を出しながら武が戻って来た。

 

 「そう、無料なの?」

「あの人に訊いた後に公式サイトで無料開通の情報があったのを思い出した」

「えー、何よー。―――あ、武はストーンヘンジにログアウト施設があるって思ってるんじゃ…」

「今、メールした。メールっつうかチャットだけどさ」

「ああ、良かった」

 

 安心した所で、いざ電車へ乗り込む二人。非常に長い行列だったのだが、二人の顔は並んでいる間に最初程元気ではなくなっていた。

 

「皆さーん、乗車券をお配りしますので並んでくださいねーー」

 

――ふぇええ、二時間待ちぃい!?――

――っざっけんじぇねぇっ、何処をどうふざけたら五時間も待たせるとか言う結論になるんだよ!!――

――実質明日じゃねぇか!?――

――おいおい、学校に遅刻するとか言うレベルじゃねぇぞ!?――

――リアル世界に帰るだけなのに朝帰りとかバッカじゃねぇの!?――

――朝帰りなだけ良いじゃん、俺なんか昼だぜ?――

 

 前の方から怒声に次ぐ怒声。不安を強く感じた総十郎は知らず知らず、葵の手を力強く握っていた。

 

 「VAADIKUO(ヴァーディクト)で移動しよう、これじゃ話にならない」

「え、あ――あ、うん。で、でも電車の速度次第では待っといた方が良いんじゃない?」

 

 そんな葵の言葉に、総十郎は無言で電光掲示板を指さした。

 

――最高速度、時速90キロ アウトバレル到着迄の所要時間;5時間――

 

「昼帰りとか叫んでる奴がいる中で、所要時間5時間とか書かれちゃうと乗る気が消え失せる。それに時速で約90キロなら、ぶっちゃけガチタンの方が高速移動できる」

「そ、そうなの?」

「知ってるか、ガチタンの平均速度って時速120キロだって。因みにブースターを使わない通常移動での速度だ、テルマナやイクサーならもっと短い時間で到着できる」

「う、うん」

 

 

 結局電車には乗らない二人であった。




2017・06・04
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