ガンダムBF from the past   作:オリシロ

2 / 3
第2話 花恥じらうバンディット

「チクショー、なんでこんな目に…」

 

 他に行く宛もないのは事実でありこんなぼうっとした女の子が作ったものならなんとか勝てるかもしれないという半ばやけクソ気味な思惑で渋々フィールドの前に立った時、青い粒子がブァッと噴き上がり驚いたのも束の間に粒子は形を成しあっという間にジオラマが出来上がる。

 台座にナジオジの作ったGPベースとガンプラをセットすると何故か自分『ヨイチ』の名前とその下に恐らくこのガンプラの名前と思われるものが表示される。

 

「〘トルネード…ガンダム〙?…と、はぁ?」

 

 ナジと出てくるならともかく何故自分の名前が出てくるのか、そんな疑問など関係無しに手前に置いたガンプラが膝を屈めると凄まじい勢いでジオラマに飛び出していく。

 

「うわっ、ちょっ」

 

 焦りつつ、手元の球体に手を合わせ、飛び出したガンプラをつまづきながらもなんとか大地に立たせる。

 一息着き辺りを見回すと一面を山に囲まれた港町といった風情で本当にホログラムなのかと疑ってしまう程良くできている。

 そんな事を考えていると突如妙な警告音と共に正面のスクリーンが拡大され、高速道路の上、満月を背後に黒いガンプラの赤い目玉が此方を捉えていた。

 

『お、お母さん。マイチさんは初心者さんみたいだしこんな事出来ないよ…ちゃんと話し合うのはどうかな、なんて…』

 

 横あいのスピーカーから聞こえる可愛らしいアユナって子の声と共に黒いガンプラの目玉が右往左往しているのがはためには面白い。

 しかし、そんなかよわげな女の子が操っているガンプラは外套の様な者を被っているのか全体像がハッキリしないが明らかに此方より一回り大きくそのギャップは不気味に思えた。

 

『ゴタゴタぬかすなら今月はガンプラ買ってあげないよ』

 

『え、そんな!!』

 

 ガンプラの目の挙動が更に早く動き、明らかに動揺しているがその様子をみかねたのかサキさんが悪の女幹部の様にアユナさんに囁く。

 

『でも勝ったら、なぁんでも好きなもの買ってやるよ?』

 

 その瞬間、激しく動いていた光が消え、辺りは静寂に包まれ2機の間に点々とした町の光と月光が見守る中、再び赤い目玉が此方を捉えたが今度は明確な敵意がスクリーン越しに貫く様に届いた。

 正面に映るアユナさんの目、俺はこの目にずっと見覚えがある。勝敗を賭して闘うアスリートの瞳の奥で揺れる焔を微かに感じて身震いする。

 

「マイチさん……ごめんなさい…私は…強くなりたいんです…もっと…今よりも!」

 

 黒いガンプラが外套を自らの手で脱ぎ捨てるとその全体像が露になった途端、思わず息を飲んでしまった。

 そのガンプラは黒色を主体としながら所々に配置された暗い紅が返り血を彷彿させ、最も目を引くのは各所に積載されたバカでかい重火器からは逃がさない。絶対に斃す、といった意志がビリビリ感じられる。

 

「〘イフリート・ヴァンディット〙、『シンジョウ・アユナ』。行きます!」

 

 その言葉と共に此方の元に各所のランチャーポッドから放たれたミサイルがが立つすぐ前の丘を派手に消し飛ばした。

 

「おぁぁっ!?」

 

 衝撃で地面が崩れ滑り落ちるトルネードガンダムの視点は土砂で溢れ、混乱しながらもカーソルを武器に合わせつつ、何かこのとんでもない状況を打開できる武器はないかと期待したがその思いも虚しく表示されたのは現在手に持っている〘ビームライフル〙。

 

 しかし、その合いつの間にか、飛び上がっていた〘イフリート・ヴァンディット〙が満月を背に放つビームライフルが正確に〘トルネードガンダム〙のライフルを撃ち抜いた。

 

『な、なんじゃそりゃぁぁぁぁ!』

 

 そんな絶叫を余所に〘トルネードガンダム〙の至近距離に砲弾が着弾し、ヨイチのトルネードは跳ねあげられ無防備な姿を晒す。

 この無様な隙を見せたトルネードにヴァンディットの持つ大型ライフルが向けられていた。

 

「撃たれる!?どうにでもなりやがれぇ!」

 

 瞬間、トリガーが引き切られるより早く瞬く間に距離を詰めたトルネードの腕がヴァンディットのライフルを弾き飛ばし、ライフルから吐き出される光弾が夜空に飛び散って花火のようにジオラマの街とアユナの驚愕の表情を照らした。

 

『うそッ!あの距離からどうやって!?』

 

 両機はもつれ合いながら墜落し、港に大きな水柱が立ち昇った後、海水を雨の様に降らせた。

 

 先に立ち上がったのはヴァンディットだった。

 

 水に濡れて使い物にならなくなった全身の火器をパージしてライフルを荒々しく投げ捨てたヴァンディットは再びモノアイを発光させる。

 

「今の…アユナって子が躊躇ってなかったらもうこの勝負は終わっていた……けど…」

 

 

『うぅ…こんなんじゃダメなのに…』

 

 さっきの動き、目で追えないぐらい疾かった。

 それにあの反応速度に妙な違和感を覚えたが、何れにしてもアユナの飛び道具は全部釈迦にされてしまった。こんなヤツに。

 

「なにやってんの、アンタらしくないね?」

 

『でも…次は大丈夫』

 

 叱咤に萎縮しながらも、アユナのスイッチは既に切り替わっているのは我が娘ながら流石でアユナはやはりファイターとしてのセンスがある。

 〘イフリート・ヴァンディット〙、ヴァンディットの文字通りこの機体が使う武器と外装は今までに倒したガンプラの戦利品であり、それこそがアユナの歴戦の証でもある。

  

『え?』

 

 突如すっとんきょうな声をあげるアユナを見るとジオラマの港からほうぼうの体で這い出てきたトルネードガンダムはさすがナジの作品だけあって恐ろしく頑丈な様だが水から這い出るので精一杯といった風体でバランスを欠いて動きがぎこちない。

 

「ナジの甥ならもう少し愉しめるかと思ったけど存外骨が無かったね、早く終わらせてやりな」

 

『うん…』

 

 ヴァンディットは腰に差していたヒートサーベルの鞘を振り払い足下の水を弾きながら未だ水面から抜け出せずにいるトルネード目掛け迫る。

 

『これで、終わりッ!』

 

 つまらない罪悪感を振り払うかの様なアユナの言葉。

 全く無駄な時間をとられた。溜め息混じりに目を背けようとした。

 

『へへ、倍返しだッ!』

 

 腕を向けるトルネード、その前腕から露わになったガトリング砲から放たれる弾丸がヴァンディットに迫る。

 しかし、火器を全てパージしたヴァンディットの動きは軽やかでヨイチの奇襲から迫りくる弾丸の雨を華麗に掻い潜ってみせた。

 森林地帯に逃げ込むヴァンディットを追撃するトルネード。

 

 コイツ、水中で操縦を慣らしていたな。更に水場でもたついて見せたのは油断を誘って近付かせるためだ。

 それだけじゃない、既に動きがバトルを初めた時と段違いに良い。

 

「おもしろいヤツ…」

 

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。