追いすがりながら放つ弾丸を巧みに躱すヴァンディット。
しかし開けた場所に出た瞬間、見失ってしまった。
『お返しですよッ!』
背後を振り返る隙もへったくれもなく強烈なタックルに吹き飛ばされるトルネード。
密林の影からヌゥッと姿を現すヴァンディット。
ガトリング砲を放とうとするもカラカラと力ない音が鳴るばかりだ。
『弾数くらい考えて撃たないとダメですよ?ヨイチさん。』
邪魔な木々を腕でへし折りながら近付くヴァンディットに戦慄を覚え、カーソルからビームサーベルを選択する手の甲に頬を伝う汗が落ちた。
『組むの好きです、眺めるのも好きです、でもやっぱり一番好きなのは』
腕部から射出されるビームサーベルを手際よく掴み背後から伸びるケーブルに接続するヴァンディット。
『お互いの死力を尽くした接近戦です…もしかしたらヨイチさんとなら…私も本気で…』
ヴァンディットが飛び掛かる瞬間目の前に淡く青い光が溢れ、目の前のジオラマと今迫り来ていた殺気を綺麗に洗い流してしまった。
「お母さんッ!!」
呆然としているとスイッチを切ったサキさんに対して初めて反抗的な態度のアユナさんを見た。
「良い余興だったよ、合格。」
しかしそれに構わず、サキさんから投げ渡されたものを不意に見つめる。
「朝御飯食いたきゃ7時に下りてきな。」
状況が飲み込みきれずポカンとしている俺にオズオズとアユナさんが声をかける。
「あの、さっきは…色々ごめんなさい。これからよろしくお願いしますね。」
「やった?そ……っかぁ。あ…そうだ、アユナさん」
力が抜けてへたり込む俺にそう言ってペコリと頭を下げてサキさんを追いかけていくアユナという女の子の後ろ姿を見て妙案が浮かび呼び掛けるとアユナは振り返り不思議そうな顔をした。
「ご挨拶の代わりにナジオジのガンプラで気に入ったものがあるなら好きなもの持ってっていいよ。」
そう言い終わらない内に目が小さい少女の様に輝き、天真爛漫な表情は何だか尻尾があったなら猛烈にに振り回さんばかりに喜びを表現していた。
「ナジさんのガンプラを!?ありがとうございますマイチさん!!」
そう言い終わると同時に階段を駆け上がっていくアユナさんの後ろ姿を見送りながら内心笑いが止まらなかった。
「ザマァ見やがれナジオジめぇ、アンタがいけないんだぜぇ」
多分だけどアユナという女の子は片付けている内にナジオジのガンプラに関心が移ってしまい掃除どころでなくなり、明かりを点けるのも忘れて魅いっていたのだと思う。
管理人の娘さんのご機嫌伺いになり、尚且つナジオジの荷物にスペースをとられる事はない、甥の生活の為ならばナジオジも目を瞑ってくれる……だろう。
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「これもいいなぁ、でもいっぱい持ってっちゃうのも悪いなぁ」
一望堂から外に出るとナジオジの部屋からアユナさんの幸せそうな声が聞こえる。
すっかり陽は沈み、殆ど真っ暗で丘の下にある町の光とちらほらと道路を走る車の光だけが唯一の光だった。
新生活1日目から一悶着してしまったがようやく俺の新しい生活が開かれた。
「うし、これからだな…」
そう呟きボーッと辺りを眺めているとまだ肌寒い潮風を受け大きくくしゃみをすると身震いしてしまいそそくさと一望堂に戻る事にした。
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「はぁ~、今日は楽しかったなぁー、武器は幾つか駄目になっちゃったけど…こんなに良いもの貰っちゃったし」
風呂上がりの髪をタオルで吹きながら何度注意しても下着姿のまま風呂場から出てきたアユナは宝の山を眺めニヘへとさっきから普段から締まりのない表情を更にふやけさせている。
「アユナ、あのヨイチってやつをどう思う?」
ピタッと髪を拭く手が止まり、ヴァンディットを手に取りながらアユナは先程から一転した声音を帰す。
「あの動きは初心者じゃ絶対出来ないと思う。トルネードも凄いけど…あの人は普通じゃないよ」
やはり先程のバトルでは相当に不完全燃焼だったらしく、アユナはイフリートヴァンディットを手に取るとおもむろに手入れを初めだした。
「そうか。ナジが言うだけの事はある、か。」
『サキ、俺の甥っ子を頼んだぞ!ヨイチに昔なんか気にすんなって教えてやってくれよな。俺もその内に帰るから頼んだ!じゃあなバイビー!』メッセージは以上で…
「………バカ…」
留守電に残されたメッセージが不意に頭をよぎり飲み過ぎた事を後悔しつつガンプラ弄りに夢中になっているアユナを尻目に大きく欠伸をした。