許せない艦娘と三代目提督   作:キメラの玩具

1 / 3
 艦これ二次創作です。
 設定改変、独自解釈が多分に含まれます。
 シリアス、胸糞展開が予想されます。
 だいぶ長くなりそうです。
 作者は執筆初心者です。
 投稿は不定期になります。

 以上をご容赦ください。


第1章
提督が鎮守府に着任しました


 最初に彼女らに会ったとき、俺は聞いていた事前情報をかなぐり捨てた。

 大本営め、何が人の皮をかぶった兵器、だ。

 普通に笑うし、世間話もする。

 学生時代の女友達らと何ら変わらないじゃないか。

 

 それともあれか?

 高度にプログラムされた、青い狸型ロボットみたいなAIは感情や人格すら宿す、ということなのだろうか?

 だとしてもダメな眼鏡君よろしく普通に接しても何も問題はないだろう。

 

 ともかく、今日からこの鎮守府の提督として就き、彼女ら、艦娘の上官として艦隊を指揮する。

 提督としてこの座に就いたからにはやることは一つ。

 

 深海棲艦の殲滅。

 

 人類共通の敵であり、何より俺の復讐対象。

 

 ―提督が、鎮守府に着任しました。これより、艦隊の指揮に入ります―

 

 

 

「で?これは一体どういうことかしら?」

 

 俺が鎮守府に着任してから早くも一週間が過ぎた。

 

 猫撫で声で目の前に仁王立ちする彼女は叢雲さんという。

 俺がここに就くよりはるかに前から艦娘として活躍し、多くの武勲を挙げている。

 すでに改装は勿論、さらなる改装までも施している。

 着任時から秘書官、いや秘書艦として俺のサポートに回ってもらっているのだが……。

 

 彼女がペシッと俺の机に叩きつけた紙には我が鎮守府の一週間の各備蓄量増減の詳細が。

 

「随分とあの海域に戦力を注ぐ余裕があると思ったら何も分かっていなかったみたいね」

 

 そう、俺は南西諸島防衛線、通称1-4に現段階のフル戦力を注いでしまっていた。

 そのため、備蓄は右肩下がりの曲線を描いていた。

 

「重巡、軽空母の出撃までは保険とみなしてもいいわ。ただどうして既に攻略されつくした海域に陸奥さんや金剛さん、加賀さん瑞鶴さんまで同時に投入するのかしら?」

 

「い、いや!これは念のためといいますか!ほ、ほら、想定外の遭遇戦に備えて」

 

「言い訳しない!」

 

「はいぃ!」

 

 俺的には安全のためなら多少の消費はしょうがないと思ったんだが、叢雲さん的にはアウトだったようだ。

 

「いい?不意遭遇戦を心配してくれてるのは嬉しいわ。けど無用よ。何のために水雷戦隊が警備任務に当たっていると思っているのかしら。」

 

 ぐうの音も出ない。

 慣れていない、では済まされない体たらく。

 意気揚々と現場に飛び込んだはいいが、あまりにも周りを見ていなさすぎる。

 

「はぁ。新任で早く活躍したいのは分かるわ。ただ焦りすぎよ。戦局を見極め、戦力は注ぐべき時に注ぐのよ。それが艦隊運営のコツよ」

 

「すいません……」

 

「とりあえず戦艦、空母の方たちを編成から外しなさい。それで普段は燃費の軽い水雷戦隊で回しなさい。備蓄は有事の際のためにとっておくのよ」

 

 この戦争状態が有事ではないのか。

 これが後方との意識の差なのだろうか。

 だが指摘されたことはもっともだ。

 備蓄がなければ何もできないのは確かなのだから。

 

 

 叢雲さんは俺のフォローのために部屋を後にしていった。

 本来なら俺が自分で尻拭いをすべきなのだが、俺は叢雲さんから現場と意識を合わせるために近況をまとめた報告資料に目を通しておくように言われた。

 勿論、現状の戦局、戦争に至った経緯については大本営から知らされている。

 

 七年前、突如として海に現れた新種の知的生命体、現にいう深海棲艦が人類に宣戦布告、輸送船を襲撃するなどのテロ行為を開始。

 各国首脳は結託し、人類の総意としてこれに対し武力をもって対抗。

 だが予想外だったのは深海棲艦のあまりにも現実離れした身体能力と予想外に高い知能、それに規模。

 それゆえに多くの兵士が犠牲になり、兵器を奪われた。

 

 独自のテクノロジーを持っていた深海棲艦の攻撃は瞬く間に人類を海から退けてしまった。

 その上、奴らは攻撃の手を緩めず戦局は長期化。

 人類は徴兵制度まで用いたが、一般人に武器を持たせたくらいでは焼け石に水、むやみに男性人口を減らしただけだった。

  

 俺は一度、教官になぜ弾道ミサイルのような、いわゆる「焼き払う」武器を用いないのか尋ねたことがあった。

 その答えは簡単、無駄だったからだ。

 戦争開始直後、どこかの国が使用し効果を測ったことがあったが、その効果は薄かったと。

 

 奴らは虫のようで、焼いても焼いても減りはせず、「女王蟻」のいる拠点を叩こうにもそこはおそらく深海。

 また、核兵器、化学兵器の多用は、その効果が人類にも跳ね返ってくる。 

 だからどうしようもなく、局地戦になってしまうのだ、と。

 苦々しげに言った教官の顔がいまだ忘れられない。

 

 だが五年前から、一方的に圧されていた人類に転機が訪れた。

 彼女ら、艦娘の出現だ。

 彼女らの活躍は奴らとの戦局を五分にまで盛り返している。

 いや艦娘轟沈の例を聞かないあたり、有利に進んでいるとすらいえる。

 

 存在自体は秘匿扱いだったが、海で堂々と深海棲艦と渡り合う様は数々の噂を呼び、その容姿からかつての艦船の英霊が舞い降りた、などの迷信すら生まれる有様。

 事実、俺も彼女らのことをそう信じて軍に所属したバカの一人だ。

 まぁ結局、彼女らは奪取した深海棲艦のテクノロジーを応用した最新鋭の武器を装備した女性兵士だった。

 唯一違和感を覚えたのが彼女らが昔の大戦についてやけに詳しいことだが、おそらく勉強し知識を得たのだろう。

 

 過去の英霊云々関係なく彼女らは間違いなく今の英雄だ。

 俺は人類の希望に最大限の敬意を払おうと思っているし、そんな彼女らの指揮を任せられるなんて光栄極まりない。

 

 早く彼女らに認めてもらえる提督にならなければ。

 

 

 

「ヘーイ叢雲!新人さんはどうデスカー?」

 

 私が司令官の代わりに消費された各備蓄、特にボーキサイト補充のために各方面に指揮を飛ばしていたら金剛さんが紅茶を入れに来てくれた。

 まだ休憩には早いのだけれど。

 

「まだまだ甘ちゃんよ。基本知識はあるんでしょうけど、付け焼刃感が否めないわね。きっと徴兵組よ」

 

「あーそれは分かりマース。私たちを見る目がキラキラしてましたネー!街の人たちと同じデース!」

 

 そう、おそらく彼は私たちを英雄か何かだと勘違いしている。

 そこを指摘したこともあったが、同じ軍属として敬意を、などと話にならなかった。 

 過去も今も、私たちは兵器。

 英雄でも、ましてや人でも、ない。

 なれるはずが、ない。

 

 貰った紅茶はあの時と同じ味がした。

 

 

 

 特に知らされていなかったが、俺はどうやらこの鎮守府の三代目提督に当たるそうだ。

 手渡された資料だけでなく、資料室に赴き保管されている報告書を漁っていたら発覚した。

 だからどうというわけではないのだが。

 

 過去の提督は俺のような徴兵ではなくエリート様だったようだ。

 いや、徴兵の提督なんて稀有な部類は他にいそうにないが。

 自分が未熟なのは分かっているから過去の先輩方の戦術を学びたいのだ。

 もっと早くにこうするべきだったと、自分の間抜けさを呪う。

 

 報告書を見る限り、結構ハードな運営していると思う。

 単に俺が甘いだけなのかもしれないが、中破進軍や単艦突撃はよく使う手なのだろうか。

 中には大破進軍、無補給連続出撃なんて無茶までしている。

 さすがにこれは参考にならないが。

 

「あれ、資料室開いてる。誰かいるのかな?」

 

 読み進めていたら誰かが資料室に入ってきた。

 黒髪に犬耳のような跳ね毛、それに大人びた雰囲気。

 たしか時雨、といったはず。

 

「あ、どうも。時雨さん……でしたよね?」

 

「あは、さんはいらないし敬語もいらないよ。本来なら僕が敬語を使わなきゃいけないんだし」

 

「いえ!そんな恐れ多い……」

 

「もう、堂々としてよ。資料見てたの?」

 

「はい、過去の提督方から学ぼうと思いまして」

 

「……そっか。熱心だね。でも気負わなくていいよ。サポートなら僕らがするし。それよりも提督、さっき新しい艦が来たみたいだよ。そろそろ執務室に戻ったほうがいいよ」

 

 時雨さんは一瞬表情に影が差したように見えたが、気のせいだろう。

 もしくは要領を得ない俺に呆れただけか。

 

 それよりも新艦娘が着任したようだ。

 広げた資料を急いで片づけなければ。

 

「ああ、やっておくからいいよ。執務を優先してよ」

 

「っ!ご迷惑をおかけして申し訳ありません!」

 

「ふふ、気にしないで」

 

 また迷惑をかけてしまった。

 ほんとうに、どんくさい。

 大本営が俺に見込んだ「素質」とはなんだったのだろうか。

 

 俺は走って執務室に向かった。

 

 

 

 広げられた資料を片付けていたら、あの頃の報告書が出てきた。

 それにあの頃も。

 二人分の艦隊運営を見ていたみたいだね。

 

 ちゃんと、分かってくれたかな。

 僕たちを。

 提督、僕たちは、艦娘は。

 人じゃないんだよ……?

 

 それから僕は資料を片付けて、みんなと叢雲の指定した海域に出撃した。

 

 

 

 俺が執務室に着いたときにはもう彼女がいた。

 鮮やかな桃色の髪を後ろで纏め、一つのしわもない制服、そして容姿から考えられる年齢とは思えないほど鋭い眼光。

 

「あ、あの」

 

「不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです」

 

 食われ気味で返されてしまった。

 どうやら怒っているみたいだ。

 遅れたからか。

 

「す、すいません。遅れてしまって」

 

「結構です。司令、さっそくご命令を」

 

「と、とりあえず出撃はないと思います。叢雲さんのところには行きましたか?彼女が今日の秘書艦なので彼女に尋ねてみてください」

 

「……?司令が指揮を執っているわけではないのですか?」

 

「ええ、申し訳ありません」

 

 言ってて情けない。

 移動でもない全く新人の艦娘一人の指揮すら碌に飛ばせないとは。

 だが勝手な判断でまた叢雲さんに迷惑をかけるわけにはいかない。

 ここは遠回りでも彼女に判断をゆだねよう。

 

「分かりました。では、失礼します」

 

 そう残して彼女は部屋を後にした。

 

 

 

「……そう、分かったわ。しばらくは演習に回って頂戴。まだこの体に慣れないでしょうから、馴染むまでじっくりやって」

 

「了解しました」

 

 司令官、日和ったわね。

 これくらいの指示なら一人で出してもらいたいけれど、仕方ないのかしら。

 さっき結構へこんでいたし。

 

「秘書艦。質問をよろしいでしょうか」

 

「許可するわ。何かしら?」

 

「不知火……いえ我々は何なのでしょうか」

 

「え?」

 

 突飛な発言かと思ったら無理もない、か。

 目が覚める前の記憶とはあまりにもかけ離れた容姿。

 だいぶ進んでしまった時間。

 それでも求められたのは昔と同じ。

 

「私たち艦娘は兵器よ、昔と同じく。だからやることは同じ。敵の殲滅よ」

 

「なるほど。納得しました。不知火、これより行動に移ります」

 

 そう、それでいいのよ。

 私たちは兵器。

 司令官とのコミュニケーションもプログラム通りに。

 与えられた指令をただこなすだけでいい。

 

 無駄な思想はいらない。

 余計なものは自分を、仲間を傷つける。

 

 私たちは艦娘。

 ただの、兵器。

 




 誤字脱字等を発見したら報告は随時受け付けます。
 表現方法についてのアドバイスを下さると嬉しいです。
 つたない文章になりますが、生温かい目で見守ってください。
 どうぞ、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。