幕間の余白   作:シベリアンハスキー

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エンタープライズ:今までと

彼女は僕の世界に色をつけてくれた、そう言える

僕の世界はいわゆる灰色だった

 

特にやることも無く決められた学生生活を繰り返していた、いつしか何の面白みもない灰色の世界に生きていた

 

彼女は生徒会長で、いつかの春に就任の挨拶をしていたのを靄のかかった記憶が覚えている

 

その時はやけに綺麗な生徒会長だと、そう思っていたけれど、放課後のあの日、彼女は僕の世界を色鮮やかにしてくれた

 

これは灰色だった僕と灰色の彼女との物語だ

 

それは高校2年生の秋、普段は家に帰るところを少しだけ学校にいてみようと

 

帰宅せずに部活動で出払ったのだろう、誰もいない傾いた太陽がオレンジのペンキをぶちまけたような廊下を歩いてた

 

他の教室を横目で覗いてみれば、何人かでカードゲームをしていたり楽しそうに談笑する姿がそこかしこで見える

 

気がつけば廊下もつきあたりで、左に直角に曲がった先は理科室などの棟になっている

 

さすがにそちらは部活動で使用してるだろうと戻ろうとしたが段ボールを2箱抱えた誰かがこちらに歩いてくる

 

僕は無視しようかと思ったが、どうせこのあと帰るだけだ、どれ少し手伝ってあげようと考え、片方持ちましょうか、と尋ねた

 

我ながら良いことをしたものだと、今日はいいことをした分何かプラスになることがあるだろうと能天気に構えていた

 

良いことはすぐに帰ってきた、ありがとうという声を聞き段ボールの上半分を持つ、段ボールを運んでいたのは生徒会長その人だった

 

そこから僕と彼女は偶に学校内ですれ違うと挨拶をする程度の仲になった

 

生徒会長と挨拶するようになったとはいえ、すれ違って向こうが気づいてこちらにやぁ、と声をかけるくらいだ

 

友人はそれを生徒会長と知り合いなんてすごいなと驚く、曰く男女問わず人気ならしく受ける告白も多数なようだ

 

僕はそんな事はどうでもいいとばかりに元の話の続きを話した

 

別の日、たまたま読書感想文の課題が出たから僕は図書室に本を探しに行った、図書室の利用者は少なく司書の人も含めて両手で足りるほどだ

 

暖かそうな窓際を選び荷物を置く、探している本は読書感想文に使えそうな本を見繕う

 

椅子に体重を預けて本を読む本を読むのは元々好きなほうだだから何の気はなしにとったこの本の世界にのめり込んでいった

 

暖かかったからだろう背後から陽の当たるこの席で僕は少々微睡んでいた、重力に従い頭が落ちる衝撃で目が覚める

 

まだ眠いと訴える頭を無視しながら本と図書室内の時計を見る、最終下校時刻の足音が聞こえる時間帯だ

 

日もほぼ落ちて蛍光灯の灯りの室内に自分一人かと思いきや、いつぞやの生徒会長が斜向かいに座っていた

 

僕が呆気にとられていると彼女が

「いつぞやのお礼をさせて欲しくてな」

と本を読むのに使っていたのだろう眼鏡を外しながら微笑む

 

僕はそんなもの、単なる気まぐれだと言って帰る支度をし始める、途中で昼寝してしまったため曖昧な内容の本を借りに司書のいるカウンターへと足を向ける

 

彼女はゆっくりと帰る支度をし僕が借りるのを待つ

 

僕はなぜ待つのかと思いつつ借りて鞄に本を仕舞い彼女を見る、丁度彼女も支度が終わったらしくスクールバッグを肩にかけて歩いてくる

 

流石に日も落ちた後で彼女一人で帰すわけには行かないなと、彼女に帰りはどっち方面かと聞く

 

彼女は

「私は電車だから駅の方だ」

と、一応俺も電車通学組だから駅に向かうのは同じだと伝えるとそれは好都合だなと頷く

 

並んで駅まで歩く駅に向かう道中彼女は

「良く図書室は利用するのか?」

と聞いてきたが

 

僕はあれはたまたま課題が出たからと言い、それよりお礼を言われるようなことはしていないと、多少強引に話題を変えた

 

彼女も

「確かに、君にとってはそこまでの事じゃないだろう」

と言う

 

僕はそうだろうなとズボンのポケットに手を突っ込み少し大股で歩く

 

彼女は

「でも私にとっては嬉しかったんだ、一人で作業するものだと思っていたから」

と横に並ぶ

 

一人でと聞き返し歩幅を合わせる

 

曰く、そこまで大した仕事でもないからと一人で作業していたらしい

 

僕は彼女も意外と抜けてるところがあるもんだと思った

 

その事を伝えると自覚があるのかむぅ、と唸る

 

駅で彼女にどちらの方面かと聞くと彼女は下り方面らしく対向式ホームの最寄り駅では上り方面の僕とは降りるホームも違ってくる

 

じゃあ、と去り際に彼女は

「さりげなく車道側を歩く気遣い、良いと思う」

と意地悪めいた声色で良い下りホームへと消えて行く

 

僕は気付かれないと思っていたその行為に気付かれていたことに驚いた

 

それ以来彼女とは挨拶だけでなく時間があれば世間話をする程には仲良くなった

 

利用する気の無かった図書室も利用が増えて、偶に彼女と遭遇して帰る

 

そんな生活がそれなりに続き

 

彼女と駅まで歩いていると彼女が

「そういえば、私が君と付き合ってるのかと聞かれたのだが」

と切り出す

 

僕はははぁ、と気の抜けた声を上げる僕が彼女と?不釣り合いにも程がある

 

彼女は付き合うと言っても彼氏彼女と言うよりは…と話を進める

 

僕は不釣り合いだと感じつつ彼女とデートする姿を考える

 

彼女はまた

「そういえば」

と別の話題を切り出す

 

彼女と僕は今まで"君"だとか"なぁ"なんて呼んでいて名前を互いに知らない

 

彼女は少しは仲良くなったのに名前を知らないなんてと、残念そうにする

 

僕は名前を聞く前になんてことは言わずに、さっと名前を言う、彼女はそうかよろしくと言いそれから名乗る

 

どうやら彼女はエンタープライズと言うようだ

 

彼女に倣いよろしくと伝え空を見上げる、空は自然のグラデーションに色分けられ一番星が光る

 

彼女は

「星、好きなのか」

と聞く

 

僕はまぁまぁ、ねと濁しながら少し得意げに

"でも、ここは人の作る星が明るすぎる"

と詩的表現をする

 

彼女は普段ぶっきらぼうな僕しか知らないからか可笑しそうに吹き出す

 

僕は笑うなよと言いつつ駅の改札に交通系カードを通す

 

僕らはじゃあ、ここでと別れホームへと消える

 

僕はこの知り合いとの関係を好ましく思う、少なくともここ最近の学校へ向かう理由になりつつある





後編に続くのじゃ
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