ストライクウィッチーズ 扶桑の兄妹 改訂版   作:u-ya

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アニメ1期6話が長引いてしまっていますが、これを含めて後二話で終わります。


第23話「絶対凍結」

芳佳、サーニャ、エイラの三人がネウロイと遭遇したとの報を受け、指令室のミーナと坂本を除く501の隊員達が緊急出動していた。編成は指揮者の優人の下、バルクホルンとハルトマン、ペリーヌとリーネ、シャーリーとルッキーニでそれぞれロッテを組んでいる。

接敵予想空域に向け、ストライカーの航空灯を光らせながら夜空を飛んでいる7人のウィッチとウィザード。耳に着けたインカムからは未だにネウロイの歌が流れている。

 

「全員周囲の警戒を怠るな!何か見つけたらすぐに報告してくれ!」

 

S-18対物ライフルを装備した優人がウィッチ達に指示を出す。彼はサーニャに次いで夜間飛行経験が豊富なことから戦闘隊長代理に任ぜされた彼はミーナ、坂本の代わりに指揮を取っていた。この判断には優人より先任であるバルクホルンも賛成している。

 

『了解』

 

返事をすると、ウィッチ達は周囲に目を凝らす。レーダーこそ使い物にならなくなっているものの、最後に芳佳達を捉えた位置はおおよそ分かっている。

それにサーニャのフリーガーハマーが作る火球は遠くからでも十分目視出来る。ネウロイと交戦中ならば、三人の居場所を見つけることはそれほど難しくないはずだ。

 

(芳佳……サーニャ……エイラ……)

 

優人は心の中で三人の名を呟く、同時にS-18対物ライフルを握る手に力が入る。サーニャの能力、行動を模倣している今回のネウロイは今までとは明らかに異質。インカム越しに聴こえる歌はサーニャのメロディと似てはいたが、うなり声のように不気味なもの。美しい夜空に似つかわしくないそれは優人の心を不安に掻き立てた。

 

(俺がついていれば……くそっ!)

 

優人は二日前の夜にミーナに進言したことを後悔していた。夜間専従班は自分を含めた常時4人体制にしておくべきだった。芳佳はもちろん、サーニャやエイラもウィッチである前に年齢相応のか弱い少女。そんな彼女達を孤立に等しい状態にしてしまった。通信が繋がらない、正確な位置もわからない、ネウロイが他にどんな能力を備えているかもかわからない。

段々と大きくなっていく不安は、優人の脳裏に幾つかの映像を浮かび上がらせていた。5年前、ロマーニャへ発つ日に見た父の顔、修業中に届いた父の死亡通知とブリタニアの霊園に建てられた墓石。それらから連想される大切な人の死。優人は余計な考えを追い出すために頭を振った。

 

「三人とも……無事でいてくれ」

 

祈るように呟く優人。今日が父の命日であるためか、思考がややネガティブになってしまっていた。

 

「優人さん!あれ!」

 

リーネが声を上げ、見つけた何かを指差した。優人や他のウィッチ達がリーネの指差した先に目をやると漆黒の影がこちらへ向かってくるのが見えた。ネウロイだ。

 

「大型のネウロイ!?……こんな時に」

 

バルクホルンが唇を噛む。一刻も早く夜間専従班の元に駆けつけたいというのにとんだ邪魔が入ってしまった。

 

「総員!フォーメーション・ブラボー!正面の大型ネウロイを叩く!」

 

優人がすかさず指示を出す。彼も焦っているのか、声が上擦ってしまっている。

優人とウィッチ達は攻撃を仕掛けるために敵の上空へ移動した。眼下のネウロイは大型の輸送機、もしくは旅客機を思わせるようなシルエットをしている。両翼にプロペラらしきものが6つほどついているが回転はしていない。航空型のネウロイがレシプロ式のストライカーや航空機とは違った未知の原理で飛行しているということを改めて実感させらる。

 

「攻撃開始!」

 

優人は号令と共に右手を降り下ろして攻撃の合図をする。いつもは坂本やミーナがやってるように指揮を取る姿には扶桑海軍士官らしい貫禄が出ていた。

 

「了解!いくぞハルトマン!」

 

「うん!ちゃっちゃと片付けて三人のところに行こう!」

 

優人の指示を受け、まず前衛のバルクホルンとハルトマンが急降下しながら突撃、ネウロイに接近すると同時に二人が持つMG42が火を吹く。装甲は容易く削られ、ネウロイから大量の水蒸気が吹き出る。

MG42はリーネのボーイズライフルやサーニャのフリーガーハマーと比較すると1発あたりの威力は劣っているが、諸国の軽機関銃よりも速い連射速度によって短時間に多数の弾を目標へ叩き込むことが可能。高速で移動するために射撃時間の短い航空歩兵に重砲される。

射撃を終えた前衛の二人が上空へ離脱を始めると優人はシャーリー、ルッキーニの中衛ペアにも合図をしようと手を上げた。しかし、何故か優人は下ろすことなく固まった。

 

「なに!?」

 

優人は思わず驚きの声を漏らした。バルクホルンとハルトマンの攻撃を受けて相応に損傷したはずのネウロイが一瞬目を離した隙に元の状態まで再生していた。

 

「うじゅっ!?何あれ!?もう治ってるよ」

 

「ま、マジか!?」

 

優人に続いてルッキーニとシャーリーも驚愕する。バルクホルンやハルトマンの魔法力を付加した3挺のMG42による攻撃をまともに受けたというのに何事もなかったのように飛んでいる。優人はセオリー通りの一撃離脱戦法を中止し、ネウロイの分析を始める。

 

「リーネ!試しにあそこを撃ってみてくれ!」

 

優人がネウロイの上部中央を指差しながら射撃を指示する。

 

「は、はい!」

 

返事をするリーネ。夜間戦闘の経験が無いため緊張してしまっているのか、声が上擦っていた。しかし、初戦果以前とは違ってプレッシャーで実力が半減することはなく、指示された場所を正確に狙撃した。

 

「ダメか……」

 

優人の表情が険しくなる。特殊な儀式で威力を向上させた大質量の魔導弾を使用するボーイズライフルの銃撃を受けたというのにネウロイの装甲は石を投じた水面のように一瞬で元に戻ってしまった。

ネウロイもやられてばかりではなく、複数のビームを発射して報復を行う。優人やウィッチ達はシールドを張って防御した。4ヶ月前、ブリタニア近海で遣欧艦隊を襲ったネウロイのそれに比べれば大した火力ではなく、飛行技術の優れたエース級のウィッチならばシールド使わずとも回避可能だ。問題は魔導弾すらものともしない異常な再生能力だ。

 

「再生特化型ネウロイ……ということですの?」

 

「みたいだな」

 

ペリーヌの分析に優人が同意する。魔法力を付加した武器でも再生能力が低下しないネウロイは攻撃力や機動力の優れたタイプよりもよっぽど厄介だ。装甲を削り、露出したコアを破壊出来なければネウロイは倒せない。最悪、コアすらも再生する可能性がある。もしそうだった場合はウィッチやウィザードでも手に負えない。

 

「……とんだ誕生日プレゼントだな」

 

不安をやわらげるためか、優人は自分でも笑えないと思うような冗談を呟く。彼の額を一筋の冷や汗が流れていた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

その頃、サーニャの行動を模倣するネウロイと接触していた芳佳、サーニャ、エイラの三人は――

 

「ネウロイはベガとアルタイルを結ぶ線の上をまっすぐこっちに向かってる。距離約3200……」

 

「こうか?」

 

エイラはサーニャに指示されたコースに照準を合わせてた。

 

「加速してる。もっと手前を……あと3秒」

 

「当たれヨ!」

 

エイラはサーニャの指示に通りに狙いを修正すると心の中で3つ数えてロケット弾を数発連射、同時に大出力のビームが四人の真下を通過する。エイラが撃ち込んだロケット弾は炸裂して光球を生み出し、雲の海を照らした。

 

「外しタ!?」

 

エイラは雲の中を通過するネウロイの影を目で追いながら叫ぶ。

 

「いいえ、速度が落ちたわ。ダメージは与えてる……戻ってくるわ!」

 

「戻ってくんナ!」

 

再びネウロイ接近を感知するサーニャ、エイラははすかさずロケット弾を撃ち込んだ。しかし、ネウロイは見切ったかのように交わしてしまい、雲に穴が空いただけ

だった。

 

「避けた!?」

 

芳佳が思わず声を上げる。

 

「クソッ!出てこい!」

 

苛立ちながらも攻撃を続けるエイラ。最後の一発が着弾し、 悲鳴と爆炎を上げながら黒い影が雲から飛び出した。

 

「出た!」

 

芳佳とエイラが同時に叫ぶ。真っ直ぐ向かって接近してくるネウロイ。エイラは弾を撃ち尽くしたフリーガーハマーを捨てるとMG42を構え、ネウロイと正面から撃ち合いを始めた。

 

「エイラ、ダメ、逃げて!」

 

エイラの身を案じたサーニャが悲痛な声を上げる。

 

「そんなヒマあるカ!」

 

既に回避する時間が無くなっていたエイラはMG42を撃ち続ける。多数の銃弾を浴び、ネウロイの装甲は少しずつ砕けて破片となっていくが速度は大して変わらない。

 

「!」

 

三人の目の前に巨大なシールドが現れる。これは芳佳のシールド、膨大な魔法力を活かした彼女の得意技だ。その大きさが夜間専従班を守る。

 

「気が利くナ、宮藤!」

 

MG42を撃ちながら、エイラは感心したように言う。

 

「大丈夫!私達、きっと勝てるよ!」

 

「それがチームダ!」

 

勝利を微塵も疑わず、ネウロイに立ち向かう芳佳とエイラ。そんな二人を見て、サーニャの表情が変わる。

 

「サーニャちゃん!?」

 

さっきまで芳佳の背中に身を預けていたサーニャが芳佳の13mm機関銃を構えると、トリガーを引いた。 エイラとネウロイに集中砲火を浴びる。やがて、コアが剥き出しになり、とどめの一発が命中した。コアを失ったネウロイは爆風的に崩壊し、それによって発生した衝撃波の奔流が三人を襲うも芳佳のシールドがすべて防ぎきった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

芳佳達がネウロイを撃破する少し前、別のネウロイと交戦中の優人率いる増援組は攻撃を継続していた。しかし、いくら攻撃をくわえてもそれを上回る速度で再生してしまう。ネウロイとの戦闘……というよりイタチごっこは未だに続いていた。

 

「ダメだ!再生が速すぎる!」

 

BARの弾倉を交換しながらシャーリーが苦悶の表情を浮かべる。

 

「ハァハァ……キリがありませんわ」

 

ペリーヌも息を切らしている。

 

「優人!このままではジリ貧だぞ!」

 

バルクホルンがネウロイに向かってS-18対物ライフルを撃ち続けている優人に言う。優人の攻撃ももちろん効果がなく、ネウロイは時たまビームで反撃をしながら悠々と空を飛行している。舐めきったようなネウロイの行動に腹立だしささえ覚えた。

 

(もう……あれを使うしか……)

 

優人は周囲に目を凝らした。隊員達、特に夜間飛行の経験が無いリーネとペリーヌは緊張からか魔法力の消耗が普段の戦闘よりも激しい。残弾も心許なくなり始め、優人は奥の手の使うことにした。

 

「全員シールドを張ってそのまま動くな!」

 

優人はそれだけ言うとS-18対物ライフルを捨て、ネウロイに突っ込んで行った。一番優人に近い場所にいたバルクホルンが声を上げる。

 

「優人!何をするつもりだ!」

 

優人は何も答えず、連射されるビームを回避しながらフルスピードでネウロイに向かっていく。ほどなくして、ネウロイに取り付いた優人は装甲にゆっくりと手を触れる。それと同時に彼の髪や目が蒼く輝き出した。

 

「絶対……凍結!」

 

ネウロイに触れた優人の手が蒼白い光を発する。命令通り優人の後ろでシールドを張っていたウィッチ達は一瞬で夜空を明るく照らしたその強い光に思わず目を瞑った。

 

「――っ!」

 

一番最初に目を開いたバルクホルンの視界に飛び込んできたのは全身凍り漬けになっているネウロイとその少し上でホバリングをしている優人だった。他のウィッチ達も順に目蓋を開き、同じ光景を目にする。

 

「な、なんだ……ありゃ!?」

 

「ネウロイが……凍ってるよ?」

 

シャーリーとハルトマンが目を丸くしながら呟く。ネウロイは低温が苦手とされ、冬には活動も鈍くなる。しかし、丸ごと凍りついたネウロイを見たのは、おそらくここにいる501メンバーだけだろう。

 

「やったー!優人すごーい!ネウロイ、カッチンコチ~ン!」

 

全員が茫然とする中でルッキーニだけが大はしゃぎする。やがて、凍結の影響で飛行能力を失ったネウロイは海へと落ちていった。落下したネウロイは海面に接触した衝撃で粉々に砕かれ破片となり、海中に沈んでいった。これならば再生能力も関係ないだろう。

 

「はっ!ゆ、優人!無事か!?」

 

ハッと我に返ったバルクホルンが優人の身を案じて声を掛ける。

 

「ハァハァ……だ、大丈――」

 

優人は息絶え絶えの状態で大丈夫、と言おとするも途中で気を失ってしまう。同時に零式のプロペラも回転を止め、優人の足から脱げていく。海へと落ちていく愛機を追うようにして優人も落下していった。

 

「優人さん!」

 

「大尉!」

 

「あたしに任せろ!」

 

頭から落ちていく優人を見て、リーネとペリーヌが悲鳴を上げる。二人の悲鳴に反応するようにシャーリーが優人を追い掛け、急降下する。ユニットは無理だったが、優人のことは海面ギリギリのところで見事キャッチした。奇しくも落下からシャーリーに助けられるまでの優人の姿は音速を突破した際の彼女のそれと酷似していた。無論、服はちゃんと着ている。

 

「シャーリー……助かったよ……」

 

やや憔悴したような顔で優人は礼を言う。彼は所謂お姫様抱っこの状態でシャーリーに抱えられている。

 

「まさか、女の子にお姫様抱っこされるとは思わなかったけど……」

 

そう言って苦笑する優人にシャーリーがいつもの豪快な笑いを飛ばした。

 

「あっはははは!これでいつかの借りは返したからな」

 

右目を瞑ってウインクするシャーリー。眩しすぎるその笑顔に優人が軽く頬を染めていると他のウィッチ達が駆け寄ってきた。

 

「優人さん、大丈夫ですか?」

 

心配そうな顔をしたリーネが優人の顔を覗き込んで訊ねる。

 

「ははは……少し頑張り過ぎたかな?でも、大丈夫だよ」

 

「ねぇねぇ優人ぉ!」

 

今度はルッキーニがズイッと顔を寄せてきた。

 

「さっきのって何?」

 

「一瞬のうちにネウロイを凍らせてしまいましたわね」

 

ルッキーニとペリーヌが大型ネウロイを丸ごと、しかも一瞬で凍結させた優人の技に興味を示す。優人の固有魔法『凍結』のことは二人も知っているが、大型ネウロイ相手だと表面装甲を凍らせるのがやっとで完全に凍結させるほど強力なものではなかったはずだった。

 

「あれは『絶対凍結』って言って……まぁ、俺の必殺技みたいなものかな?」

 

ザックリとした説明をする優人にハルトマンが唇を尖らせた。

 

「そんなんあるなら、もっと早く使えばよかったのに……」

 

「そう簡単に使えるものではないんだ……そうだろ優人?」

 

バルクホルンが優人に荷担する。

 

「まぁ、魔法力の殆どを使うか――」

 

「あっ!……あれ見て!」

 

何かに気付いたルッキーニが優人の言葉を遮った。優人とウィッチ達も彼女につられて目をやると少し離れた場所に複数の発光が見えた。それはエイラがネウロイに向けて発射したロケット弾が生み出した火球だった。

 

「芳佳達か!?」

 

「向こうも交戦中みたいだね……」

 

バルクホルンとハルトマンが順に呟く。芳佳達三人は思ったよりも近くにいたらしい。

 

「よし!私とハルトマン、ペリーヌとリーネで引き続き救援に向かう!シャーリーとルッキーニは優人を連れて先に帰投しろ!」

 

「ちょっ……ちょっと待て!俺も行くよ」

 

戦闘隊長代理である自分を差し置いて指示を出すバルクホルンに優人が異を唱えた。するとバルクホルンは呆れたような顔をして優人を見た。

 

「その状態で一端の戦力のつもりか?」

 

と優人を指差すバルクホルン。

 

「あっ……」

 

自分の状態を再認識した優人が間の抜けた声を出す。今の彼には魔法力もストライカーもなく、シャーリーに抱えられてる。自力で飛ぶことも出来ない彼は芳佳達を助けるどころか逆に足手纏いだ。

 

「指揮は私が代行する。構わないな?」

 

「……わかった」

 

バルクホルンの言葉に優人は不満を呑み込むようにして小さく頷く。バルクホルンの判断が正しいのはわかっているが、優人は芳佳達のことが心配なのだ。ストライカーさえあれば今すぐにでも三人の元へ飛んでいくだろう。

 

「戦闘隊長代理の代行か……変なの……」

 

「うるさいぞハルトマン」

 

「はいはーい」

 

気の抜けた声で応じるハルトマンにバルクホルンは顔をしかめたがそれ以上は何も言わず、指名した三人を連れてフリーガーハマーの火球に向かっていった。

 

「さて……あたしらも行くか?」

 

「そだね」

 

「…………」

 

シャーリーの言葉にルッキーニは笑顔で、優人は無言で頷いた。

 

(気付かれてたかな?)

 

絶対凍結を使った優人は魔法力の消耗だけでなく肉体的にも精神的にも大きな負担が掛かっている。優人はバルクホルンがそのことに気付いているように思えた。

 

「身体は大切にしろよ」

 

と真剣な眼差しを向けるシャーリー。彼女も優人の負担に気付いているようだった。

 

(こいつら……エスパーかよ)

 

勘の鋭い友人達の気遣いに優人は苦笑いを浮かべた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

真下の雲に大きな穴が空いたところで奔流が止み、同時に歌が再びインカムに流れてきた。

 

「まだ聞こえる……」

 

エイラが呟く。

 

「何で?やっつけたんじゃ?」

 

確かにネウロイを倒したにも関わらず、歌が聞こえてくる。しかし、今聞こえている歌はネウロイのものとは違っている。美しいピアノの旋律だ。

 

「違う……これはお父様のピアノ」

 

そう言ってサーニャは、空を見上げながら片肺で上昇していく。

 

「そっか!ラジオだ!この空のどこかから届いているんだ!すごいよ!奇跡だよ!」

 

芳佳はハッと気付き、その奇跡的な体験に立ち合えた嬉しさではしゃぎ出す。

 

「いや、そうでもないカも」

 

とやんわり否定したのはエイラ。

 

「えっ?」

 

「今日はサーニャの誕生日だったンダ。正確には昨日カナ。」

 

「えっ?……じゃあ私達と一緒?」

 

キョトンとしていた芳佳はサーニャが自分達兄妹と同じ誕生日だと理解するまで少し時間がかかった。

 

「サーニャのことが大好きな人なら、誕生日を祝うなんて当たり前ダロ?世界の何処かにそんな人がいるんなら、こんなことだって起きるンダ。奇跡なんかじゃナイ」

 

「エイラさんって優しいね」

 

「そんなんじゃネーヨ、バカ」

 

芳佳と優人に褒められて恥ずかしくなったのか、悪態をつくエイラ。

 

「バカって……」

 

バカと言われて、顔をひきつらせる芳佳。しかし、不思議と嫌な気はしなかった。

 

「お父様……お母様……サーニャはここにいます。ここにいます」

 

サーニャは空の向こうにいる両親に語りかけていた。電波に想いを乗せるように、祈りを捧げるように。すると、サーニャを中心に夜空一面がオーロラのように輝いた。それはゆっくり広がりながら、地平線の向こうへ消えていった。

 

「お誕生日おめでとう、サーニャちゃん!」

 

芳佳はサーニャの誕生日を祝福する。すると、サーニャは芳佳を真っ直ぐ見つめた。

 

「あなたとお兄さんもでしょ?」

 

「えっ?」

 

「お誕生日おめでとう。芳佳ちゃん」

 

芳佳のことを自然と名前で呼ぶサーニャ。

 

「オメデトナ」

 

サーニャに続き、どこかさっぱりとした表情でおめでとう、と言うエイラ。

 

「……ありがとう」

 

二人からの祝福の言葉に優人は微笑み、芳佳は目尻に涙を浮かべながらも笑顔になっていた。

 

(帰ったらお兄ちゃんにも言わなきゃ……)

 

誕生日は嬉しい日だと改めて感じた芳佳は無性に優人と会いたくなっていた。




覚醒魔法を持っているのがブレイブウィッチーズの孝美お姉ちゃんだけで、覚醒魔法の設定も詳しく説明されていないので作者の妄想が多分に入ります。

ご理解下さい。
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