それとも今書いてる所が原作沿いだから。いや、単に文章が意味不なだけか……
ブリタニア空軍大将トレヴァー・マロニー率いるウォーロック隊の手に落ちていた501基地は、扶桑海軍中将赤坂伊知郎が指揮する遣欧艦隊陸戦隊によって、完全に制圧されていた。
基地のあちこちでは、陸戦隊員に四式自動小銃や一〇〇式機関短銃を突き付けられたマロニー配下の将兵達の姿が認められる。皆、両手を頭の後ろで組み、床に膝を着いていた。
ウォーロックが扶桑の艦を攻撃した事実があるからこそ、遣欧艦隊は、このような強行手段に出ることが出来たのだ。
すぐにでも艦隊司令長官殿の命で基地内の徹底的な調査が行われ、マロニーや彼の一派が行ってきた悪事の数々は一両日中に露見するだろう。
(西部方面総司令部内の派閥争いは、赤坂中将の勝ちみたいね……)
バルクホルン、ハルトマン共に格納庫へと向かって走っていたミーナは、基地の場景を横目で見据えながら心の中で呟いた。
すぐ隣ではバルクホルンが、これまでのマロニー一派の行動をしたり顔で解説していた。
「つまりだ。優人がネウロイと接触する旨の作戦を提案し、芳佳は基地を抜け出してまでネウロイと接触しようとした。だから奴らは慌てて尻尾を出した、って訳さ。分かるだろう、ミーナ?」
「うん、はいはい」
分かりきっていること力説されて、ミーナは苦笑気味に応じる。次にバルクホルンはハルトマンへ話を振った。
「だろ、エーリカ?」
「あぁ~、もう私の知ってるトゥルーデじゃない~……」
バルクホルンの熱弁にゲンナリとするハルトマン。本人は否定するだが、確かにハルトマンの言う通り普段のバルクホルンは、ここまで多弁でも知的でもない。
やがて格納庫前に到着する三人だが、そこには先客がいた。
「う~ん……」
「…………」
先客の正体は、打ち込まれたH鋼を見上げるエイラと、逆に足元へ視線を下げているサーニャだ。
貨物列車でロンドンへ向かっていたはずの二人が、封鎖された格納庫の入り口を前にして途方に暮れている。
「エイラさん!サーニャさん!」
気付いたミーナが声を掛けると、二人はほぼ同時に振り返る。
エイラは、ミーナ達の姿を見るなり「あっ!」と少し驚いたような声を上げる。基地へ引き返したのは自分達だけで、他は誰も戻っていないと思ったのだろう。
「お前達、何で戻って来たんだ?」
バルクホルンに問われたエイラは、頬をほんのりと赤らめ、しどろもどろな口調で理由を話し始めた。
「あっ……えーっと、あの……れ……列車がサ。ほら、二人とも寝てたら始発まで戻って来ちゃって~……あ、うぅ……仕方ないから、ここの様子でも見ようかナァ~、って……。ナァ、サーニャ?」
「今、芳佳ちゃんと優人さんが戦ってる。私達、二人を助けに来た」
「うわああぁっ!サーニャ、オイッ!」
サーニャに同意を求めるエイラだったが、素直なサーニャはすべて正直に話してしまった。
「素直じゃないなぁ~」
顔を真っ赤にして狼狽えるエイラを見て、ニヤけるハルトマン。
「私達も同じよ」
「えっ?……」
ミーナの発言に過剰反応したバルクホルンは、慌てて振り返る。
「ち、違う!私は違うぞっ!」
「そうかなぁ?優人と芳佳のことが心配で仕方ない、って顔していたよ?」
ムキになって否定するバルクホルンを、ハルトマンがからかった。
「し、していない!断じて、そんな顔はしていない!デタラメを言うなハルトマンっ!」
バルクホルンは子どもみたいにプイッとそっぽくと、両腕を組んでみせた。エイラほどではないが、彼女の頬も紅潮している。
「そんなことよりさ」
「すぐに始めましょう」
ハルトマンとミーナに促され、バルクホルンはH鋼で塞がれた格納庫の入り口へと歩み寄る。
「ふぅ……」
軽く一息を吐くと、バルクホルンは魔法力を発動させる。使い魔であるジャーマンポインターの耳と尻尾が出現すると、H鋼を両手で掴んだ。
「ぬうううううううううぅっ!」
バルクホルンの固有魔法は『怪力』。基本能力である身体強化能力やその持続力が他のウィッチ・ウィザードのものより遥かに高くなっている。バルクホルンは、この魔法を活用し、力業で格納庫の入り口を抉じ開けるつもりだ。だが、彼女の力を持ってしても数トンはあるであろうH鋼を持ち上げることは容易ではない。
(両腕で不足ならば!)
バルクホルンは、まるで抱き着くかのように身体をH鋼に密着させ、腕だけでなく全身の力を使って引き抜こうとする。
H鋼に押し付けられた豊かな胸がムギュッと潰れて横に広がり、いつも以上に存在感をアピールしている。もしここに宮藤兄妹がいれば、二人の視線はひしゃげて形を変えたバルクホルンの胸に釘付けになっていたことだろう。
「ぐううううううううううぅっ!」
歯を食い縛り、全身全霊で力を込めるバルクホルン。やがて地面に突き刺さったH鋼は、ジリジリと動き始めた。
「うおおおおりゃああああああああああぁっ!」
18歳の乙女のものとは思えないほど逞しい叫び声と共に引き抜かれたH鋼は宙を舞い、一瞬遅れて滑走路に叩きつけられた。
◇ ◇ ◇
同時刻、ドーバー海峡――
ウォーロックの攻撃により、さらに船体を傾ける航空母艦『赤城』。
衝撃で艦から振り落とされそうになったペリーヌは、なんとか左手で甲板の端を掴み、同じく海へ落ちそうになっていた坂本の身体を右手一本で支えていた。
「しょ、少佐!大丈夫ですかっ!?」
坂本の手をしっかりと握ったまま声を掛けるペリーヌ。
「もういい、ペリーヌ!離せ!」
甲板からぶら下がった状態で人一人を支え続けることなど不可能。なんとかペリーヌだけでも助かるようにと、坂本は自分の手を離せと命じる。
「そ、その命令だけは……絶対に聞けません!」
501へ入隊して以来、ずっと坂本のイエスマンだったペリーヌが、初めて命令を拒んだ。
「坂本!」
「ペリーヌさん!」
優人と芳佳はなんとか二人の救出しようとするが、ウォーロックがそれを許さない。土砂降りのように激しく降り注ぐビーム群によって、二人は足止めされていたのだ。
優人は自分がウォーロックの攻撃を攪乱し、その隙に芳佳を赤城へ向かわせようとも思ったが、どうも読まれているらしい。どちらも逃がすまいと、ウォーロックはビームによる攻撃をまったく緩めようとしない。
「くっ!この鉄屑があああぁ~っ!」
「でやああああああああああぁっ!」
邪魔立てするウォーロックに向かって、優人は憤然と吼えながら20mm魔導弾で報復する。芳佳も兄に続いて、12.7mm×99弾を連射する。
「ん?……なんだ!?」
ふと自分達の零式ともウォーロックのものとも異なるエンジン音を耳で捉え、優人はハッとなる。エンジン音が聞こえてきた方へ目をやると、赤城に向かって飛んでいくオレンジ色の機影が認められた。
「シャーリーのソードフィッシュ!?」
優人は一瞬自分の目を疑った。だが、軍用機とは思えない派手なカラーリングの機体と側面に書き込まれた『GLAMOROUS SHIRLE』という文字を見間違えるはずがない。
シャーリーに頼まれて何度か整備を手伝ったことのある彼女のソードフィッシュが、赤城に向かって弧を描きながら、すぐ近くを飛んでいるではないか。
「ルッキーニ!」
ソードフィッシュの操縦席に座るシャーリーが、後部座席のルッキーニに声で合図する。
「イェイ!ジャジャジャーン!」
後部座席より立ち上がったルッキーニはすぐさま魔法力を発動、使い魔である黒豹の耳と尻尾を出現させる。
「る、ルッキーニちゃん!?」
芳佳もソードフィッシュの存在に気付き、座席から立ち上がったルッキーニへ目を向ける。
予想外な形で現れた二人の仲間。宮藤兄妹が唖然としていると、ウォーロックが突然現れた新しい獲物を追いかけて急降下し、ビームを乱射した。しかし、シャーリーは卓越した操縦技術で、ビームの雨を掻い潜り、赤城へ接近する。ストライカーユニットだけでなく、こちらの腕も確かなようだ。
攻撃によって出来た隙を突き、宮藤兄妹がウォーロックへ集中砲火を見舞う。銃弾は背面に命中し、ウォーロックは破片と黒煙を撒き散らす。
「ペリーヌ!」
「も、もう駄目……」
一方、赤城ではペリーヌの限界が近づいていた。そこへソードフィッシュを追い越したウォーロックが急接近、沈みかけている赤城へさらにビームを放つという追い討ちを仕掛けた。
「きゃああっ!」
被弾による振動で手が甲板から離れてしまい、ペリーヌは坂本と共に海面へ落下していく。
「ああっ!」
「クソッ!」
芳佳と優人は、落ちていく坂本とペリーヌ慌てて追うが、二人の位置からでは間に合わない。
「きゃあああああぁっ!」
「くっ!……ペリーヌっ!」
悲鳴を上げるペリーヌ。坂本は咄嗟に彼女を自分へと引き寄せ、庇うように抱き締める。
(少佐……)
ペリーヌも反射的に坂本の背中へ手を回した。ギュッと目を瞑り、来るであろう海面激突時の痛みと衝撃に備える。
絶対絶命の状況にも関わらず、ペリーヌは幸福を感じていた。敬愛する上官の腕に抱かれるのなら、このまま死ぬのも悪くない。不謹慎と思いつつも、この時ペリーヌは心からそう思っていた。しかし、彼女も坂本も死ぬことはなかった。
シャーリーのソードフィッシュが、落下する坂本らの真下へ滑り込み、二人を受け止めたのだ。
「よっしゃああああああぁっ!ナイスキャッチ!」
二人の救出に成功したシャーリーは、歓喜の声を上げる。
「おっかえりぃ~♪」
ソードフィッシュの後部座席にすっぽりと納まった坂本とペリーヌを、ルッキーニが笑顔で迎えた。
「やったぁ~っ!」
「あいつら最高だっ!」
グラマラス・シャーリーとフランチェスカ・ルッキーニによる神業レベルの救出劇を目にした宮藤兄妹も欣喜雀躍する。優人に至っては思わずガッツポーズするほどの喜びようだった。
感動の余韻に浸る兄妹の心に水を差すかのように、ウォーロックはビームを撃ち込んできた。
「芳佳、危ないっ!」
「はっ!?」
ウォーロックの不意討ちに気付いた優人がシールドを張り、ビームから妹を守る。
「空気読めよ、このガラクタがっ!」
優人はウォーロックへ向かって吐き捨てると、芳佳と共に身を反転させて、己の敵と改めて向き合った。
「あとはこいつだけだ!さっさと片付けて、基地に帰るぞ!」
「はいっ!」
優人と芳佳は銃の弾倉を交換すると、再びウォーロックへ向かっていった。
◇ ◇ ◇
再び、501基地――
「はぁ……はぁ……」
正門でロールスロイスから降りたリーネは、基地内の森を駆け抜け、格納庫付近まで来ていた。
(待ってて、芳佳ちゃん……待ってて、優人さん。今行くから……)
自信を失っていた自分に戦う勇気をくれた親友。新人である自分をいつも気に掛け、温かく見守ってくれていた兄のような先輩。今度は自分が二人を助けるんだ。
息を切らしながらも走り続け、やがて森を抜けたリーネは基地の滑走路に到着する。
「リ~ネ~!」
リーネを出迎えたのは滑走路に着陸するシャーリーのソードフィッシュと、その上から手を振るルッキーニ。
そして、ストライカーユニットを装備したストライクウィッチーズの仲間達だった。
「あ……ふわぁあ!……」
リーネは思わず表情を綻ばせる。マロニーの策略によって一度は解散し、二度と会えなくなることも覚悟していた第501統合戦闘航空団のメンバーが、再びここに集まっていた。
そのことが嬉しくて嬉しくて。喜びのあまり疲れていたことも忘れ、リーネは格納庫へと駆け出した。
「わぁ、来た来たぁ!」
リーネに向かって、両手を振るハルトマン。
「遅いぞ、リネット・ビショップ」
と、バルクホルン。いつも通りの厳しめな口調だが、その表情には優しげな笑みが浮かんでいた。
「おかえり」
と、声を掛けるミーナは、まるで家に帰ってきた我が子を出迎える母親のようだ。
「あなたが最後よ」
「はい!」
仲間達の元へ駆け寄りながら、リーネは快活な声で答えた。
◇ ◇ ◇
再び、ドーバー海峡――
宮藤兄妹と、ウォーロックの死闘は続いていた。散々攻撃を受けたにも関わらず、ウォーロックは今だ健在。戦闘中に手に入れた自己修復能力により、破損した装甲は新品同然に修復されている。燃料や弾薬を使い切る様子もやはりない。暴走開始直後と比較して、反応速度も上昇している。
一度は優位に立ったウィザードとウィッチの兄妹は、次第に追い込まれていく。
「きゃあぁっ」
ウォーロックのビームが、芳佳の右脚のストライカーユニットを掠めた。被弾したストライカーは黒煙を上げ、プロペラの回転を止める。
「芳佳っ!」
優人はバランスを崩した芳佳の右手を咄嗟に己の左手で掴み、右腕のみでS-18対物ライフルを構えて発砲するも、重量ある対物ライフルの片手撃ちは容易に回避されてしまう。
「芳佳、大丈夫か?」
ウォーロックに視線を向けたまま、優人が問い掛ける。
「はぁはぁ……。うん、大丈夫」
芳佳は、いつぞやのサーニャのように片方のストライカーのみを失っていた。
慣れない片肺飛行でも、どうにか態勢を立て直したようだが、ウォーロックとの戦闘で息が上がるほどまでに魔法力を消耗している。それに芳佳はもちろんだが、優人の方も残弾が心許なくなっていた。
一気に畳み掛けるつもりか、ウォーロックはビームの威力を維持したまま、機関銃のように連射してきた。時間の経過と共に主兵装であるビームもより強力なものへと進化していたのだ。
芳佳を庇うようにしてシールドを展開する優人だが、長くは保ちそうもない。
(くそっ!なんとか芳佳だけでも逃がせないか?)
優人が必死に考えを巡らせていると、遠方より飛んで来た一発の銃弾が、ウォーロックの脚部に命中した。推進機を脚部ごと破壊されたウォーロックは、自らのコントロールを失い、赤城の船体に激突。共に海中へと沈んでいった。
「はぁはぁ……やった」
「ああ、間一髪だったけどな……」
一度は死を覚悟した宮藤兄妹。勝利の喜びよりも、ウォーロックが倒されたことに安堵していた。
「芳佳ちゃん!優人さん!」
狙撃を行ったのはリーネだった。彼女の固有魔法『射撃弾道安定』は、魔法力で物体を動かす念動力を弾丸に作用させ、発射速度や威力の向上及び射程の延伸を行う長距離狙撃向きの魔法だ。その力を込めたリーネの一撃がウォーロックを撃墜したのだ。
「あ、赤城が……」
「沈んでいく……」
艦長の杉田をはじめとする乗員達は、救命艇から赤城の最期を見届けていた。その表情は、悲しみに暮れていた。
「お待たせ!」
「芳佳~!優人~!」
背後から聞こえてきたシャーリーとルッキーニの声に優人と芳佳が振り返ると、ストライカーを装備したストライクウィッチーズの面々が駆け寄ってきていた。
「みんな!」
駆けつけてくれた仲間達に、芳佳は笑顔を返した。
「二人とも、よく耐えたな」
親友と愛弟子に称賛を送る坂本。
「かなりギリギリだったんだぞ。まったく……」
優人は額の汗を拭い、「やれやれ」と溜め息を吐いた。
「これは必要なくなったようだな」
抱えている芳佳のストライカーに目をやりながら、バルクホルンが呟いた。
「そうでもナイかも……」
ウォーロックが倒され、誰もが戦いの終わりを実感する中、タロットカードを見据えたエイラが独り言ちる。
彼女が手にしているのは、『タワー』のカード。タロットにおいて、正位置・逆位置のいずれにおいても凶とされている唯一のカードだ。
「「えっ?」」
リーネとサーニャが頭に疑問符を浮かべながら、エイラに振り返る。
「ホラ、見て」
エイラがカードから海面へ視線を移すと、その先で巨大な水柱が上がる。海の中から“何か”が浮上しようとしていた。
「な、何だ!?」
「一体どうなっているんだ!?」
「何だ、あれは!?」
「……まさか」
目の前で起きた異変に赤城の乗員達は色めき出す。唯一冷静さを保っていた杉田は、じっと海面を見つめていた。
やがて水柱が消え、巨大な“何か”が海中から姿を現した。圧倒的はらな存在感を放つそれは、鯨にしてはあまりに大き過ぎる。
「なっ!?赤城!?」
優人は驚愕のあまり声を上げる。“何か”の正体は、たった今ウォーロックと共に沈んだはずの扶桑海軍航空母艦『赤城』だった。しかし、ウォーロックの攻撃による損傷は一切見られず、艦の外観も以前とは明らかに違っている。
船体の殆んどが禍々しい漆黒に変色し、甲板や船底の一部は赤く輝いている。全体的にハニカム構造で覆われた姿は、まるでネウロイか暴走状態に陥ったイリスやウォーロックのようだった。
「あ……ああ……」
目を見開く芳佳。リーネに撃墜されたはずのウォーロックを、赤城の艦首部分に見つけたのだ。
「ウォーロックが……赤城と!?……」
変わり果てた赤城の姿に、坂本は言葉を失う。どういった原理でこうなったかは不明だが、ウォーロックは衝突した際に赤城と融合。倒したはずの怪物が、新たな力を手に入れて地獄の底から蘇ってきた。
戦いはまだ終わらない。完全に浮上したウォーロックは、自らの復活を宣言するかのように不気味な雄叫びを上げた。
どうか感想、誤字脱字報告をよろしくお願い致します。