男性用のベルトはベルトのままでいいのかな?
赤城の機関部に侵食していたウォーロックのコアは、内部へ突入した宮藤兄妹に破壊された。ハニカム構造で覆われた姿に変貌していた赤城の船体は、本来の外観を取り戻し始める。それに伴い、周囲に展開していた子機群も自然消滅する。まウォーロックとの融合によって一時的に備わっていた飛行能力を失い、赤城は雲の下へとゆっくり降下していた。
やがて船体が雲を抜けると、眩い光を放った後に白い破片となって四散する。空には爆発音が響き渡り、破片はキラキラと輝きながら海へと降り注いだ。
「やったな」
赤城の消滅を見届けたシャーリーは、宮藤兄妹がコア破壊をやり遂げたことを確信する。彼女は口元に薄い笑みを湛え、感慨深げに呟いた。
「あっ!?優人と芳佳だ!」
海へ降っていく破片を呆然と眺めていたルッキーニが真っ先に宮藤兄妹の姿を見つけた。優人と彼に抱えられている芳佳に向かって、ブンブンと元気良く手を振る。
「勝っ……た?……」
「ああ、勝った。お前の機転のおかげさ」
そう言って優人は、芳佳を抱き締める腕にさらに力をこめる。
消滅した赤城の破片が白い花弁のように宙を漂い、その中心にいる宮藤兄妹の勝利を祝福しているようだった。
「芳佳ちゃん、優人さん」
宮藤兄妹の元へウィッチ達が集まっていく。一番最初に辿り着いたのはリーネだった。
「やった!やったよ、芳佳ちゃん!優人さん!二人がやっつけたんだよ!」
喜びのあまりリーネは、二人に抱き着いた。同時に豊かなに実った二つの果実が、二人の顔面へ強く押し付けられる。
「リ、リーネ……ちゃん。く、苦しい……」
「ちょっ……リーネ。い、一旦離れ……ムグッ!」
突き出された大きな胸によって鼻と口を塞がれ、宮藤兄妹は揃って窒息しそうになっていた。心地好い感触ではあるが、このままでは気絶してしまう。
芳佳はもちろん、男である優人は呼吸だけでなく理性の方も危ない。
「ふん」
三人のやり取りを見て、ペリーヌは呆れたように鼻を鳴らす。プイッとそっぽ向く彼女だが、その表情には穏やかな微笑が浮かんでいる。
「えっ?……あれは?」
ペリーヌは何かに気付き、ガリアの方角へと目を向ける。その視線の先に見えたのは、数年間に渡り我が物顔でガリアの上空に居座っていたネウロイの巣が散っていく光景だった。
「ネウロイの巣が……」
「…………」
消滅していく巣を茫然と見つめる坂本とミーナ。部隊を預かる二人の心には、どんな想いが過ったのだろう。
「消えていくぞ!」
「ん~……勝ったぁ!」
常にブリタニアを危機に晒してきた――自分達の攻略目標でもあったネウロイの巣が消滅。シャーリーとルッキーニは欣喜雀躍とする。
「ガリアが……私の故郷が、解放された……」
国を追われて以来、どれだけこの日を待ちわびていたことだろう。祖国奪還という願いが成就したペリーヌは、金色の瞳に嬉し涙を浮かべた。
「すごい、すごいよ芳佳ちゃん!」
「……うん」
図らずも、ネウロイの巣を撃破するという人類初の快挙を成し遂げ、リーネは大はしゃぎだ。対して芳佳は気の抜けた返事をする。
自分達の勝利を心から喜ぶウィッチーズの中で、何故か芳佳のみが浮かない顔をしている。
「もうネウロイと分かり合う機会が無くなった、って思う?」
「え?」
耳元で囁かれた声に振り返ると、優人が芳佳に向かって優しく微笑んでいた。
「ほら、そんな顔しない。生きていれば、必ずチャンスがくるさ」
芳佳の複雑な心境は優人に容易く見抜かれていた。妹想いの兄には、すべてお見通しのようだ。
「……そっか。そうだよね」
芳佳は強く頷くと、優人に微笑み返した。
「……終わったな」
「ええ!」
坂本の言葉に頷くと、ミーナはどこかさっぱりとした表情で帰投命令を出した。
「ストライクウィッチーズ、全機帰還します!」
『了解!』
激戦を潜り抜けたストライクウィッチーズは、自分達の家でもある基地へと帰っていった。
◇ ◇ ◇
同時刻、第501統合戦闘航空団基地――
扶桑皇国海軍遣欧艦隊陸戦隊によって一時的に占拠された501基地。その応接室では艦隊司令長官の赤坂伊知郎中将と、ブリタニア空軍戦闘機軍団司令官兼第一強襲部隊『ウォーロック』司令のトレヴァー・マロニー大将が面会している。
ソファーに腰掛けた赤坂は、ウォーロック隊から押収した資料に目を通していた。資料にはウィッチーズを陥れるため、マロニー一派が行ってきた裏工作の数々が記載されている。
「事実をねじ曲げた官邸及び連合軍総司令部への報告、マスコミへの偽情報のリーク、ウィッチーズに好意的な新聞社や雑誌社に対する嫌がらせ、501へ支給されるはずの物資の隠蔽、予算の横領及び目的外使用……」
資料の内容を簡潔にまとめ読み上げながら、赤坂はテーブルを挟んだ向かい側のソファーに腰を下ろしているマロニーへ視線を走らせる。
ブリタニアにおけるストライクウィッチーズの権限を削るため、マロニーは様々な裏工作を行ってきた。ウィッチーズへの予算削減も、優人が負傷した際に保管されているはずの輸血用血液が見当たらなかったのも、すべては彼の仕業だったのだ。
さらには、イリスの開発陣の一員であった石威紫朗を己の配下に引き込み、必要な機材や鹵獲したネウロイのコアをはじめとする様々な開発資材を与え、秘密裏にネウロイの研究を行い、ウォーロック0号機を完成させた。
501から横領した資金を注ぎ込んでまで完成させたウォーロック0号機だが、皮肉にもウィッチに代わる新戦力なると期待していたウォーロックは暴走し、航空母艦『赤城』をはじめとする遣欧艦隊所属艦艇を攻撃したことで、政敵である赤坂に付け入る隙を与えてしまった。
「あまりに露骨な遣り口だ、滑稽にすら思えてくる」
赤坂が嘲笑気味に言うと、マロニーは射殺さんばかりの鋭い目付きで彼を睨み返した。
「それで私の弱味を握ったつもりかね?」
マロニーはバァンとテーブルを力任せに叩き、憤然とソファーから立ち上がった。
「私は……私は誰よりも人類の勝利の為に尽力してきたんだ!ウォーロックの開発もそのいっ――」
「あなたの頭にあるのはブリタニアの繁栄と、その中心で実権を握っている御自身の姿でしょう?」
激昂して反論するマロニーだったが、赤坂は木で鼻を括ったような態度で彼の主張を一蹴する。
「いずれにせよ、あなたは一連の騒動の責任を取らされるでしょう。連合軍最高司令部はあなたを501の上官から解任し、デッター大将やハリス大将からは糾弾され、ブリタニア軍上層部からは戦闘機軍団司令官として地位と権限を剥奪される」
アーチボルト・デッター大将に爆撃機軍団司令官のアーサー・ハリス大将。同じブリタニア空軍大将でありながら指揮権を巡って対立関係にある二名の将官を持ち出され、マロニーは思わず渋面を作った。
「チャーチル卿はもちろん、あなたの考えに理解を示しているチャールズ・ポータル空軍参謀総長も助けてはくれないでしょうな。もう誰の庇護も受けれない」
多大な権力有する軍の将官であっても、国という名の組織からすれば、下っ端の兵士同様使い捨ての駒に過ぎない。都合が悪くなれば簡単に切り捨てられてしまう。
「……それはどうだろうな?」
怒りを湛えていたマロニーの表情が一変し、不敵な笑みが浮かび上がる。
「曲がりなりにも、ウォーロックはガリアのネウロイを殲滅したのだぞ!それも単機でだ!これだけの戦果を無視することなど誰にも出来まい!さらにネウロイの研究を進め、完璧に制御する方法を見つけ出すと約束すればチャーチル卿も――」
「ああ!そう言えば!」
何かを思い出したらしい赤坂は、声高に語るマロニーの言葉を強引に遮った。やけに芝居がかかっている赤坂の言動に、マロニーは不快感を覚えた。
「あなたが内通者としてから当基地に潜り込ませていた兵士を聴取したところ、大変興味深いことは証言してくれましたよ」
赤坂は一呼吸おいてから、さらに話を続けた。
「あなたの命令で、宮藤大尉のストライカーユニットに細工を施した……と」
そう告げられたマロニーの瞳に僅かながら動揺の色が走った。
人型ネウロイとの戦闘中、優人のストライカーは突然不調をきたした。そのせいでシールドを張り損ねた優人はネウロイの攻撃を受け負傷、生死の境をさ迷うこととなった。なんと、それすらもマロニーの企みだったのだ。
元々のガリア反抗作戦はノルマンディー上陸後、ブリタニアに駐留する連合軍の主戦力を囮にし、守りが手薄になった巣に501部隊を突入させ、優人の覚醒魔法『絶対凍結』によって巣のコアを凍結、機能停止に追い込むものだった。
しかし、扶桑海軍主導の作戦を快く思わなかったマロニーは、基地に潜り込ませた部下に優人のストライカーユニットへ細工をするように命じた。作戦の切り札である彼を戦死に見せ掛けて殺害しようとしたのである。
回収された優人の零式の残骸を調べていたシャーリーも、この事に気付きかけてはいた。が、芳佳の脱走やマロニーによる501部隊の強引な解散などでバタバタしていた為に、真相には辿り着けなかった。
「他国の、しかも大戦前から同盟関係にあった国の士官を姦計によって抹殺しようとした。この事実が明るみになればどうなるか……幸いにも、知っているのは今のところ私のみですが?」
「…………何が望みだ?」
番犬が唸るような声でマロニーは問う。今の彼は『人を呪わば穴二つ』という扶桑の諺の良い見本だ。
「あなた方が開発したウォーロックやコアコントロールシステム、並びにネウロイ研究に関するデータをすべて引き渡して頂きたい」
「なっ、なにっ!?」
法外な条件を出されたマロニーは思わず声を上げる。空軍大将自らが指揮し、途方もない時間と労力を注ぎ込んで行ってきたネウロイ研究の成果を無償で提供しろと言うのだ。
「冗談じゃない!」と怒鳴り返してやりたい、というのがマロニーの本音だろう。だが、弱味を握られている彼には他に選択肢などなかった。
「条件を呑んで下されば、我が遣欧艦隊の航空歩兵を抹殺しようとした件は墓まで持って行きましょう」
そう言ってソファーからゆっくりと腰を上げた赤坂は、テーブルを迂回してマロニーの傍らまで歩み寄る。
「色好い返事を頂けますね?」
赤坂はマロニーの肩にそっと手を置き、念を押した。直後、廊下へと続くドアがバァンという大きな音と共に開かれた。
「長官!」
扶桑海軍の制服を着た男性が、血相変えて部屋に飛び込んできた。赤坂の副官を務める扶桑皇国海軍中佐――西野勤(にしの つとむ)だ。
「なんだ西野?話が終わるまで入るなと――」
「石威紫郎が、逃亡しました!」
「……なに?」
◇ ◇ ◇
同時刻、501基地近隣――
基地のある小島とブリタニア本島南東部を繋ぐ石畳の道を一台の車が猛然と疾走していた。カールスラント軍の小型軍用車輌『キューベルワーゲン』だ。
数日前。バルクホルンとハルトマンの二人が、ロンドンの病院に入院しているバルクホルンの妹――クリスの見舞いに向かった際に使用していた車輌だが、運転席でハンドルを握っているのは現在空にいるはずのウィッチーズでもなければ、連合軍の将兵でもない。扶桑人の男性だ。
およそ軍用車には不釣り合いな研究用の白衣を羽織る身体は、まるで食べ物に飢えているのかと思うほどに痩せ過ぎな体格。肌に至っては不気味なほどに青白く、同じ色白でもエイラやサーニャの持つ透き通るような美しい白肌とは大分印象が異なる。
「クソッ!」
キューベルワーゲンを運転する扶桑人男性――石威紫郎は、悔し紛れに吐き捨てる。
マロニー一派共々、遣欧艦隊陸戦隊に拘束された石威だったが、軍属であっても軍人でも戦闘員でもない彼や他の研究員はブリタニア軍の将兵らに比べて監視が緩く、海軍兵が1名ずつ付けられるのみであった。
そこで石威は、拳銃機構を仕込んだカールスラント製のバックルを使い自身を見張っていた海軍兵を銃撃、監視兵が所持していた一〇〇式機関短銃と基地に置かれていたキューベルワーゲンを奪い、基地から逃走したのだった。助手席には海軍兵から奪取した一〇〇式機関短銃一挺と、筒状のガラスケースが一つ置かれている。
ガラスケースの中身は、ウォーロックの動力・制御に使用されていたものよりも小型のコアが納められている。サイズが小さくとも歴としたネウロイのコアである。しかし、その輝きはどこか弱々しかった。
(何故……何故なんだ?何故ウォーロックは暴走した!?)
石威は、心中で自問自答と思案を何度も繰り返していた。既にウォーロック暴走のショックから立ち直り、今の彼は心は苛立ちと屈辱で満たされている。
暴走したイリスの事例を教訓に、まずパイロットが操縦する有人式から遠隔操作式の無人機へ変更し、暴走防止策としてコアにリミッターを施し、理論上制御可能な数値まで出力を調整した。
出力調整に伴いコアの動力源としての性能は大幅に低下したが、人型から飛行形態への変形機構やブリタニア産のジェットエンジンを採用したことで最高飛行速度は亜音速に達し、攻撃力の向上させるために大型ネウロイと同等以上の破壊力を有するビーム兵器を主兵装として採用した。
そして対ネウロイ戦の切り札である新兵器『コアコントロールシステム』の搭載によって、周辺にいる敵ネウロイに対し、コアを同調・制圧することで指揮系統を統括し支配下に置くことが可能になり、単機ないし少数のウォーロックのみで多数のネウロイを一挙に殲滅することが可能となった。
ウォーロックは単体での戦闘力を含む、あらゆる面でイリスを遥かに凌ぐ傑作機となった。いや、傑作機となるはずだった。だが、イリスの時と同様ウォーロックは暴走してしまった。
いくら考えても原因は分からない。ネウロイ群のコアと同調したことでウォーロックに自我が芽生えたのか。いや、それより少し前にウォーロック隊が命令を出す前にコアコントロールシステムを自力で起動するなど、指示を待たずに行動していた。
(いや、考えるのは後にしよう。まずは扶桑海軍の追っ手を振りきらなくては……)
石畳から本島の田舎道に差し掛かったところで、石威は頭を切り替える。なんとしても逃げなければ、絶対に捕まる訳にはいかない。
(マロニー以上に狡猾な赤坂伊知郎のことだ。5年前、私が犯した罪についても調べ上げているはず……)
石威は忌々しそうに「くっ!……」と顔を歪めた。しかし、悪いことばかりではない。
5年前から肌身離さず持ち歩いていたネウロイのコアは回収出来た。今までの研究で得た知識や技術、開発に関するあらゆるデータ等も、すべて石威の頭に入っている。自分一人とコアさえあれば十分研究は続けられる。
扶桑海軍の追跡を逃れた後は、大西洋を越えてリベリオンかノイエ・カールスラントへ渡ろう。向こうにも、マロニーのようにネウロイのテクノロジーを利用した兵器に興味を抱く戦争屋が必ずいる。そういった輩に上手く取り入り、研究に必要な物を用意させればいい。石威はそう考えていた。
(次こそ……次こそは必ず、ネウロイの力を制御してみせる……)
心の中で再起を誓うと、石威はギュッとハンドルを強く握り直した。その時だった。
「歴史に名を刻むのは宮藤ではなく、わた……うわぁあああっ!?」
突如、一筋の赤い閃光が上空から降り注ぎ、キューベルワーゲンを掠めるようにして地面に着弾した。車体が大きく跳ね上がり、キューベルワーゲンは横倒しに転倒する。
「ぐっ!……い、一体?」
車外へと投げ出された石威は、地面へ強打した痛みに耐えながら身体を起こし、よろよろと立ち上がる。
「コアは!?」
ハッとなった石威はすぐさま周囲を見回し、自身の研究に欠かせないサンプルであるコアが入ったガラスケースを探した。
「あっ!?あぁ……くそっ!?」
ガラスケースはすぐに見つかったものの、地面に叩き付けられた衝撃で中のコア諸共破損してしまっていた。コアがなければネウロイの研究も、新たな兵器の開発も出来ない。
絶望に顔を歪ませる石威の前に、人の形に似た“何か”がスゥッと降り立った。
「――っ!?ひ、ひぃいいいいいっ!!」
悲鳴を上げ、石威は腰を抜かした。彼の眼前に現れたのは、ウォーロックの初陣時に撃破された人型ネウロイの片割れであるウィザード型のネウロイだったのだ。
ウォーロックの攻撃によるダメージが残っているのか、身体の左半分近くを失った痛々しい姿となっている。胸部装甲の再生も不完全で、弱点であるコアが露出していた。
「き、貴様は……ウォーロックに。何故生きているっ!?」
怯えきった表情で問い掛ける石威だが、ウィザード型ネウロイは何も答えない。
そもそもネウロイである彼(?)が、石威の言葉を理解しているのかも分からないし、ネウロイに言葉を使った会話が出来るのかも不明である。
「ひっ!……くっ、来るな!」
にじり寄るネウロイ。本能が石威に『逃げろ』と訴えかけてくる。だが、身体が言うことを聞かず、逃げるどころか立ち上がることすら出来ない。尻餅を着いたまま後退る石威を、ウィザード型ネウロイは同じペースで追う。
必死に距離を取ろうとする石威だが、尻を着けたままの状態では逃げられるはずもない。近くに立っていた木の幹へと追い込まれ、石威は逃げ場を失う。
しばらくの間、ウィザード型ネウロイは睥睨するように石威を見下ろしていた。ウィザード型ネウロイには、人間のような表情など存在しない。しかし、石威には彼(?)の顔が同胞を実験台として利用してきた自分に対する怒りに満ちているように見えた。
やがてネウロイは右腕をゆっくり持ち上げ、先端を石威に向けて突きつけた。内蔵されたパネル状のビーム砲が赤く輝き始める。
「じっ……慈悲を……」
恐怖で歯をカタカタと鳴らしながら、石威は必死に許しを請う。
「た、頼む!私はこんなところで死ぬ人間ではないんだ!君達の仲間を実験に使ったことなら謝る。私は……そう!私はただ、私なりのやり方で君達を理解しようと……」
見苦しく命乞いを続ける石威の右手に何か固いものが触れる。チラッと目をやると、一〇〇式機関短銃が傍に落ちているのが見えた。ガラスケース同様、横転したキューベルワーゲンから放り出されたらしい。
(占めた!)
逆転の切り札を手にした石威は、粘り気のある笑みを浮かべた。
一〇〇式機関短銃は十四年式拳銃と同じく、比較的威力の低い8mm南部弾を使用している。だが、相手は人型とはいえ小型のネウロイで、深い傷を負っている。弱点であるコアはほぼ丸出しになっており、この距離ならば狙いを外すこともない。
石威は素早く一〇〇式機関短銃を手に取り、ウィザード型ネウロイのコアに銃口を突きつけた。
「死ねっ!このモルモットがぁ……」
一〇〇式機関短銃から射出された多数の銃弾を浴び、蜂の巣となった人型ネウロイの姿をイメージして石威は引き金を引こうとする。しかし、ウィザード型のネウロイは、それよりも速くビームを発射したのだった。
断末魔すら上げる暇も無く、綺麗に眉間を撃つ抜かれた石威紫朗。力の抜けた両手から一〇〇式機関短銃が滑り落ち、それに続いて身体も地面へ倒れ込んだ。
モルモットにされた仲間と、ウォーロックにやられた妹(?)の敵を討ったウィザード型のネウロイは、それで力をすべて使い果たしたか、白い破片となって消滅した。
◇ ◇ ◇
10分後――
ウィザード型ネウロイによって石威が殺害された現場には、逃走した彼を追ってきた遣欧艦隊陸戦隊の一個小隊が展開していた。
転倒したキューベルワーゲン、中身と共に破損したガラスケース、そして額を撃ち抜かれた石威の死体。陸戦隊員達はそれらを調べることで、ここで何が起きていたのかを解明しようとしている。
「赤坂長官!」
「ん?」
陸戦隊に紛れ、直々に調査を行っている赤坂の姿も認められた。陸戦隊員の1人に呼ばれた赤坂は、やや早歩きで彼の元へと歩み寄る。
「何だ?」
「これを……」
若手の陸戦隊員は、赤坂の質問に答える代わりに自らが発見した物体を指差した。それは先程消滅したウィザード型のネウロイが遺していったコアだった。
どういうわけか。ネウロイが消滅したにも関わらず、コアのみが奇跡的に残っていたのである。
「これはとんだ拾い物だな……」
赤坂はコアをじっと見据えた後、フッと口元を緩めた。
分かりにくいかもしれませんが、マルキス・バックル・ピストルを出しました。リベレーターがあるんだから、バックルピストルがあっても不思議じゃないですよね?
コアコントロールシステムでネウロイと同調したことが原因でウォーロックは暴走した、みたいな話をよく聞きますが、よく観るとコア同調前から勝手なことしてるんですよねぇ……
感想、誤字脱字報告をお願い致します。