ストライクウィッチーズ 扶桑の兄妹 改訂版   作:u-ya

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誤解されたくないんで言いますが、私は現実のイギリスやイギリス軍及びそれをモデルにしたストパン世界のブリタニアが嫌いなわけではありません。

マロニーの設定やらなにやらを利用したら、結果的に扱いが悪くなってしまっただけで……


ブリタニアと言えば、優人とリーネの絡みが少ない気がする。


第49話「復活のラッキースケベ」

激戦の末、ウォーロック及びウォーロックに乗っ取られた赤城の撃破に成功したストライクウィッチーズは、一度は追い出された自分達の基地へ帰投していた。

我が者顔で居座っていたブリタニア空軍大将のトレヴァー・マロニーや彼が直接指揮を執っていたウォーロック隊の面々の姿はない。扶桑海軍陸戦隊に連合軍総司令へと連行されていったのだ。

優人やウィッチーズ以外の501基地要員はまだ戻ってきておらず、赤坂伊知郎中将を含めた扶桑海軍の将兵が数人、事後処理のために残っているだけだ。人員の激減した501基地に活気はなく、しばらくはゴーストタウンのようにシーンと静まり返っていたが、ウィッチーズの帰還により、ガヤガヤとまるでパーティーのような賑わいを見せ始める。

ミーナと坂本は、ウォーロック撃破やガリアの巣の消滅を報告するため西部方面総司令部の将官でもある赤坂が待っている応接室へ向かい、他のメンバーも各々別行動を取っていた。

 

「おいおい……嘘だろ?……」

 

夕食まで部屋で休もうと自室まで戻ってきた優人。ドアを開いた途端、彼は視界に飛び込んできた景色に愕然とした。

なんということか。部屋の窓側半分が、窓際に置かれていたベッドが、本がぎっしりと詰められていた本棚が、跡形もなく消し飛んでいたのだ。

原因はおそらく、先程優人達が倒したウォーロックだろう。ウォーロック隊の制御から外れて暴走したウォーロックは、付近を航行していた赤城をはじめとする遣欧艦隊に襲い掛かった。その際、赤城を狙って放たれたビームが基地宿舎へと流れ、上手い具合に優人の部屋を直撃したのである。

 

「俺が、一体何をしたと……」

 

他の部屋が無傷にも関わらず、自分の部屋のみが流れ弾の被害に遭っている。あまりに奇異で理不尽な現象に優人がガクッと肩を落としていると、ドーバー海峡からの潮風が吹いてきた。壁も無くなっているため、大分風通しが良くなっている。

もし季節が冬ならば間違いなく、寒風に晒されていたことだろう。優人は節が夏であることに心から感謝した。

家具は殆んど無くなっているものの、マロニーの解散命令の後に最低限の手荷物として赤城へ持ち込んでいた財布等の貴重品や制服等の衣類は無事だ。

ウォーロックと共に赤城も消滅してしまい、乗艦していた優人達4人の荷物も海に水没したものと思っていたが、ありがたいことに乗員達が退艦時に持ち出してくれていたらしく、夕方までには優人達の元に戻ってくるとのこと。

 

「ん?」

 

ふと床に視線を下げると、本が二冊落ちていた。拾い上げて確かめている。どちらも本棚で保管されていた優人の所有物。ビーム着弾時の衝撃で本棚から落ちたのか、この二冊だけは奇跡的に残っていた。

一つは以前芳佳と一緒に見ていた家族アルバム。軍への志願を決意した当時10歳の優人が、実家を離れる際に母――清佳から「私達は一緒に行けないから」と御守り代わりに渡されたもので、日夜厳しい訓練やネウロイとの戦いに明け暮れていた優人の心の支えになっていた。大切なアルバムのはずだが、芳佳を心配するあまり赤城へ持っていくのを忘れていた。

もう一つはカールスラント出版のかなり分厚い、ハードカバーの専門書。芳佳が試し読みをして目を回した本だ。これはバルクホルンと改めて友人になった直後に、友情の証として本人から進呈されたもの。「大切な友人であるお前に、我が祖国カールスラントの素晴らしさを知って貰いたい」ということだが、優人はこの手の専門書は読まないため本棚の肥やしとなっている。

 

「この二冊が無事だっただけでも良しとするか……」

 

優人はとりあえず、家族アルバムとカールスラントの専門書を収納へしまう。廊下側にある収納とチェストは流れ弾を受けることもなく、無傷の状態で残っている。

 

「……風呂、行くかな?」

 

優人は呟くと、収納の下部より桶を取り出した。この桶は優人の入浴セットのようなもので、中には温泉マークが描かれたハンドタオル、バスタオル、石鹸、そして何故かゴムのアヒルが入っている。

入浴セットを小脇に抱えると、優人はそそくさと部屋を出る。自分の部屋が消し飛んでいたという事実から一刻も早く目を逸らしたかったのだ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

同時刻、大浴場――

 

ミーナ・坂本を除く501のウィッチ達は大浴場に集まっていた。一度はペアやグループごとに別行動を取っていた彼女達だが、やはり年頃の女の子。戦闘で掻いた汗を流したいという気持ちが自然と一致し、示し合わせたかのように脱衣所で再終結することとなった。

 

「ひゃあああぁ!?」

 

「きゃあああぁ!?」

 

シャワースペースの芳佳とリーネが揃って悲鳴を上げた。501ウィッチの殆んどが集合している大浴場内に、二人の叫び声が木霊する。

 

「何ですの?急に大声を出すなんて、はしたな……きゃああああっ!?」

 

遅れてシャワースペースにやって来たペリーヌが不機嫌そうな表情で二人を見るが、彼女もまたシャワーの温水ハンドルを回した途端、同じ様に悲鳴を上げてしまう。

 

「なになに~?」

 

「お前達、一体どうしたんだ?」

 

ハルトマンとバルクホルンが、やや遅れて浴室に入ってくる。二人の入室と同時に四人目の叫び声が響き渡る。

 

「うじゅああああああぁ!?」

 

声の主はルッキーニだった。芳佳達三人とは違い、シャワーは浴びずに湯の張られた浴槽内へ飛び込んだ彼女だったが、すぐさま悲鳴を発して外へ飛び出した。

 

「ルッキーニ、どうしたんだ?」

 

「しゃ、しゃ、しゃ、シャーリーィ……お、お湯が……」

 

「お湯?」

 

ルッキーニの言葉に疑問符を浮かべつつ、シャーリーは右手を湯に浸けて見る。

 

「うわっ!?冷たっ!何だよ、水じゃんか!」

 

信じられない、といった顔をするシャーリー。いつも熱い湯で満たされている大浴場の湯船に、冷水が注がれていたのだ。

 

「こちらもですわ!」

 

シャワースペースのペリーヌが、身体を震わせながら告げる。温水ハンドルを回したはずが、シャワーベッドから注がれたのはお冷やのような冷水だった。

 

「こっちもで~す!」

 

「こちらもお湯が出ません」

 

芳佳とリーネも彼女の言葉を継いだ。冷水を頭から浴びてしまった三人の唇が、僅かに青く変色している。

 

「リベリアン、どういうことだ?」

 

バルクホルンが怪訝そうな面持ちで訊ねると、シャーリーは顎に手を当てながら分析する。

 

「あたしにもわかんないけど。もしかしたらウォーロックの攻撃でどっか故障したのかも……」

 

「ええぇ~!じゃあ、お風呂入れないのぉ~?」

 

シャーリーに告げられ、ルッキーニは心底ガッカリする。

流れ弾の被害を受けていたのは、優人の部屋だけではなかったらしい。

 

「まぁ、サウナがあるし。ワタシ達はそれでも問題ナイけどナ」

 

「…………」

 

入り口付近に立っているエイラの呟きに、隣のサーニャが無言で頷く。

風呂も好きだが、どちらかと言えばサウナを好む二人にとって、この故障はそこまで問題ではないようだ。

 

「じゃあ、今日は私もサウナにしようかな?サーにゃんと話がしたいし」

 

サーニャに向かって、ニヒッと歯を見せて笑うハルトマン。

 

「私は……いいですけど……」

 

「ホント!?サーにゃんありがとう!」

 

少々大袈裟に喜んだハルトマンは、ガバッとサーニャに抱き着き、頬擦りする。突然密着されたサーニャは真っ白な頬を軽く染めながら当惑する。

 

(さ、サーにゃん!?わ、ワタ、ワタシだって……サーニャをそんな風に呼んだことナイのに……)

 

自分の預かり知らないところで、ハルトマンがアダ名で呼ぶほどまでにサーニャと親しくなっていた。間近で二人のスキンシップを見ていたエイラは、焦りと嫉妬心から身体をカタカタと震わせる。

 

「あっ!だったらアタシもサウナ行く~っ!」

 

右手を頭の高さまで上げたルッキーニが、ピョンピョンと飛び跳ねて自己主張する。水風呂におもいっきり飛び込んで身体を冷やしてしまったというのに、彼女は元気一杯だ。

 

「ルッキーニが行くならあたしも行くよ!そうだ、サウナで我慢大会でもしないかい?」

 

「「さんせ~い!」」

 

「おい!まずは風呂の故障をミーナと少佐に報告するべきだろう!」

 

能天気なこと言うシャーリー、ルッキーニ、ハルトマンの三人をバルクホルンが若干強めな口調で咎める。

 

「もぉ~っ!トゥルーデってば、ノリわる~い!」

 

「うじゅ……つまんな~い」

 

ハルトマンとルッキーニが、あからさまに不満そうな顔をする。二人に続いて、シャーリーが反論する。

 

「相変わらずお堅いな。ガリアの巣も消滅したことだし、少しは肩の力を抜きなよ」

 

「巣が無くなっても、残党がまだガリア領に潜んでいる可能性がある。我慢大会などしている場合か、気を弛めるな。それに以前優人から聞いたことだが、扶桑には『勝って兜の緒を締めよ』という諺あるそうだ。これは勝ったとしても油断せず、さらに用心せよと――」

 

「もしかして、我慢比べして負けるのが恐いとか?」

 

ニヒヒッと悪戯な笑顔を浮かべたシャーリーが、バルクホルンの長口上を遮った。

 

「なっ!?そんなことはない!カールスラント軍人の忍耐力を舐めるな!」

 

「言ったな?ならやってやろうじゃんか!どっちがより長くサウナに居られるか勝負だ!」

 

「いいだろう、吠え面かくなよリベリアン!」

 

互いの視線をぶつけて火花が散らせるバルクホルンとシャーリー。そんな二人をハルトマンが呆れ顔で見据えていた。

 

「またやってる……」

 

「シャーリー頑張れ~!負けるなぁ~!」

 

勝負事に大はしゃぎのルッキーニが、シャーリーを応援する。

 

「芳佳ちゃん、私達もサウナに行ってみる?」

 

と、リーネが提案してみる。芳佳は眉間に皺を寄せて「う~ん」と唸った。

 

「私、サウナ苦手なんだよねぇ……あ~あぁ、お風呂入りたいなぁ……」

 

「冷水風呂になんて浸かったら風邪を引いてしまいますわよ?へくしっ!」

 

冷水を被って風邪を引いてしまったのか、ペリーヌが可愛らしいくしゃみをする。

彼女も芳佳同様、サウナが好きでない。リーネはサウナ浴が苦手な二人のために、さらに別の提案をする。

 

「じゃあ男性棟のお風呂は行かない?あっちは温水が使えるかもしれないよ?」

 

501基地にはウィッチ宿舎の大浴場とは別に、少々簡素な風呂が男性棟にも造られている。こちらは当基地に勤務する男性陣はもちろん、補給物質の輸送等でブリタニアを訪れた各国軍の将兵にも解放されている。

普段なら男性棟はウィッチの立ち入りが禁止されているのだが、基地要員が一時的に出払っている今なら入浴時に男性と鉢合わせる心配もない。ミーナも大浴場の給湯設備が故障しているという事情があれば、許してくれるだろう。

 

「そっか!」

 

その手があったか、と目を輝かせる芳佳。

 

「そうしよリーネちゃん!ペリーヌさんも!」

 

「えっ?……あっ……ま、まぁ冷えた身体を温めなくてはいけませんし。あなた達にお付き合いして差し上げますわ」

 

自分が誘われるとは思ってなかったのか、少々当惑気味のペリーヌ。しかし、満更でもなさそうだ。

 

「男の人達もすぐに戻って来ると思うから、急ぎましょう」

 

「うん!」

 

リーネの言葉に頷く芳佳。脱衣所から服を持ち出すと、三人は身体にタオル巻いただけの格好で男性棟に向かった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

同時刻、基地男性棟――

 

「ふあぁ~っ!」

 

人がいないはずの男性棟。その風呂場に優人の姿があった。浴槽に張られた熱めの湯に肩まで浸かりながら盛大な欠伸を漏らす。

 

(男性棟が空いてて助かったな……)

 

入浴セットを片手に、はじめは宿舎の大浴場へ向かっていた優人。しかし、大浴場は既に仲間のウィッチ達が使用中だったため、男性棟の方で入浴することにしたのだ。

今回はちゃんと『ウィッチ入浴中』の札がかかっていたため、生まれたままのウィッチと鉢合わせずに済んだ。

 

「…………」

 

優人は湯気の充満した浴室内をじっと見渡してみた。ウィッチ宿舎の大浴場に比べて、広さは半分程度と狭く。サウナも併設されておらず、天使像のようなアンティークもない質素な造りだ。

それでも大人数がゆったりと入浴出来る程度の広さと設備は確保されている。大浴場もそうだが、この風呂場を一人占め出来る優人は、ウィザードであることを差し引いてもかなり贅沢である。

 

「そろそろ出るかな?」

 

大分身体が温まり、疲れも癒された。逆上せる前に出ようと思ったその時、背後でガラガラと戸の開く音がした。

 

「よかったぁ、こっちはちゃんとお湯が出るみたい!」

 

「男性棟って初めて来たから、なんか新鮮だね!」

 

「そうだね芳佳ちゃん、ちょっとドキドキするかも……」

 

「……え?」

 

優人は一瞬ぽかんとする。乱入してきた二人の声はどちらも女性のものだ。

 

「やれやれ、殿方達の住居を見学したくらいではしゃいでまぁ。これだから庶民は困りますわ」

 

さらに三人目の声が聞こえてくる。どれもこれも聞き慣れた声で、優人は声に釣られて振り返ってしまった。

 

「「「へっ!?」」」

 

湯気越しに三人の少女の姿が浮かび上がり、優人と彼女達は互いをはっきり認識した。

優人の視線の先にいたのは最愛の妹である宮藤芳佳、そして実妹同然に可愛がっているリーネとペリーヌの三人だった。入浴するつもりで入ってきたため、当然ながら三人とも裸である。

発展途上で起伏の少ない芳佳の身体が、瑞々しい白肌を持つペリーヌのスレンダーな肢体が、発育が良過ぎるリーネのグラマラスボディが、一斉に優人の視界へ飛び込んでくる。

不幸中の幸いというべきか、濃い湯気のおかげで大事な部分はかろうじて隠されている。

 

「お、お兄ちゃん……何で?」

 

「何で、って……お前達が大浴場を使ってるから、こっちに来たんだけど……」

 

そう答えながら優人は前へ向き直り、芳佳から視線を外す。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「あっ、あの……」

 

時間が止まったかのように静まり返る浴室内で、何か言わなければと優人が口を開く。が、次の言葉が思い浮かばず、すぐに口を噤んでしまう。

 

「ご、ごめんお兄ちゃん!」

 

「お兄様!失礼しましたわ!」

 

固まっていた芳佳とペリーヌの顔が一気に赤く染まり、二人はだっとのごときスピードで一目散に立ち去ってゆく。

浴室には先客の優人と、依然固まったままのリーネだけが残され、室内に再び静寂が訪れた。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……あのさ」

 

「ひゃっ!?」

 

沈黙に耐えられなかった優人が意を決して声を掛けると、リーネはビクッ身体を跳ね上げた。

 

「開けっ放しだと少し寒いから……閉めて貰える?」

 

「は、はい!」

 

リーネは上擦り気味の声で返事をすると、ガタッと勢い良く戸を閉めた。ただし、自身の身を浴室側に置いた状況でだ。

 

「何でこっち側にいたまま閉めるんだっ!?」

 

「……あっ」

 

自分の失態に半歩遅れて気付いたリーネが、間の抜けた声を漏らす。

何を血迷ったのか。リーネは芳佳達のように脱衣所へ逃げるのではなく、全裸の男がいる浴室へ入ってしまった。

直接見ていた訳ではないが、優人は物音と気配で状況を察している。

 

「…………」

 

「…………」

 

三度沈黙に支配される浴室。どうすればいいのかリーネはもちろん、優人にも分からない。いっそ悲鳴を上げて逃げてくれた方が楽だった。

 

「あ、あの……お隣いいですか?」

 

「えっ?」

 

「御一緒してもいいですか?」

 

優人は己の耳を疑った。サーニャ程ではないが、恥ずかしがり屋で引っ込み思案なリーネが、大胆にも自分との混浴を希望しているのだ。

 

「実は、優人さんと二人きりでお話がしたかったんです。こういう時でもないと無理なのかな、って……」

 

確かに優人は普段、芳佳や年長組と一緒にいることが多い。不仲というわけではないが、リーネとの交流は他の仲間達に比べて少ない方だ。

 

「俺は構わないけど……」

 

「けど?」

 

「襲われるとか考えないのか?」

 

「――っ!?」

 

リーネの肩がビクッと跳ね上がる。無論、優人にそんなつもりはない。

 

「ゆ、優人さんなら大丈夫って……信じてます」

 

リーネは勇気を振り絞り、優人のいる浴槽へ歩み出した。爪先から入り、ゆっくりと身体を湯の中に沈め、優人の隣に腰を下ろした。

 

「…………」

 

「…………」

 

またもや沈黙。これではリーネではなく、優人の方が逃げ出したくなる。

優人はリーネの方へチラッと視線を送る。いつも三つ編みにしている淡いブラウンの長い髪が下ろされ、少し大人な印象を受ける。

見とれていると、いつの間にかリーネの豊かな双丘を捉えてしまい、優人は慌てて目を逸らした。

 

(な、何食ったらリーネの歳であんなに育つんだ?)

 

リーネのように抜群のプロポーションを誇る美女が全裸で自分のすぐ隣にいる。そんな状況下で、性欲を押さえつけていられる自分自身に、優人は感心していた。

 

「あ、あの……」

 

沈黙を破ったのはリーネだった。

 

「お風呂の邪魔してごめんなさい。どうしても優人さんとお話がしたくて……」

 

「気にするな。けど、急にどうしたんだ?」

 

「その……優人さんは、いつも私のことを気にかけてくださってますから……お礼が言いたくて」

 

「そんなの俺だけじゃないよ。ミーナ中佐に坂本少佐、それに他の奴らだって……」

 

「で、でも……優人さんは、何て言うか。お兄ちゃんみたいで、話してると安心するっていうか……頼りに出来るっていうか……」

 

恥ずかしさに身体をプルプル震わせるながら、リーネは感謝の気持ちを必死に伝えようとしている。

 

「ははっ!リーネみたいな美人にそこまで言われるなんて……光栄だな」

 

「び、美人だなんて……大袈裟ですよ……」

 

謙遜するリーネだが、彼女は誰もが認める美人である。街を歩けば100人が100人振り返るだろう。

 

「謙遜するなよ、お前は美人で優しいだけじゃない、いざとなったらカッコ良くて頼りになるベテランウィッチ顔負けのスーパールーキーだ」

 

ニッコリと微笑み掛ける優人。照れ臭いのか、リーネは頬をほんのり赤く染めて俯いた。

 

「あ、それと……優人さんにお願いがあります」

 

数秒経って顔を上げたリーネが、今度は頼みごとをしてきた。

 

「ん?」

 

「出来るだけ……出来るだけ芳佳ちゃんの側にいてあげてください」

 

赤面していたリーネの表情が、急に真剣なものへと変化する。

 

「芳佳ちゃん、優人さんのことをとても頼りにしてるんです。芳佳が優人さんの話をしない日は無いくらい……」

 

「…………」

 

「芳佳ちゃんはとっても強い子ですけど、すごく繊細な女の子でもありますから……」

 

そこまで話してリーネは口籠った。勢いに任せて話していたのか、優人に告げる適切な言葉が思い付かないようだ。

 

「心配するな……」

 

リーネの言わんとしていることを察した優人は、穏やかな表情で語り掛ける。

 

「ウィッチを続けるにしても、実家の診療所を継ぐにしても。俺はあいつか一人前になるまでは、見守るつもりだからさ」

 

「優人さん……」

 

期待通りの返事を聞くことが出来たリーネは、パァッと笑顔になる。

いつの間にか、二人の心にあった羞恥心は消え失せていた。

 

「さて、逆上せる前に上がろうか?リーネ、お先にどうぞ」

 

「はい、お先に失礼します……」

 

そう言って湯船から立ち上がるリーネ。彼女の身体を直視してしまわないように、優人は視線を別方向へ向ける。

 

「きゃぁああっ!?」

 

脱衣所に向かうリーネが突如悲鳴を上げた。何故かは分からないが床に石鹸が落ちており、気付かず踏んでしまったリーネは、背中から倒れそうになる。

 

「危ない!」

 

リーネの危機に気付いた優人が、背後から彼女を抱き止めようとすぐさま立ち上がり、両手を伸ばした。

 

むにゅん!

 

「へ?」

 

「…………あっ」

 

リーネと優人は揃って間の抜けた声を漏らした。優人は、自分の方へ倒れてくるリーネを受け止めることには成功したが、まずいことに彼の両手はリーネの双丘をガッシリ掴んでしまっていたのだ。

 

「え、えっ~と?これは?」

 

理解が追い付いていない優人は、何気無しに両手の指を動かし、双丘の柔らかさです質量感を味わっている。

 

「あ……あ……ああぁ!」

 

一方リーネは、突然のことにフリーズしていた思考が回復し始めていた。

自分の置かれた状況を正しく認識するのに2秒もかからず、同時に今の今まで耐えていた羞恥心が爆発する勢いで解き放たれ、彼女の顔はこれ以上ないほど紅潮した。

 

「いやぁああああああっ!!」

 

「ぶへぇええ!」

 

ブリタニアウィッチの強力な肘鉄が、優人の顔面にめり込んだ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

30分後、芳佳の部屋――

 

顔面に手痛い一撃を食らった優人は、芳佳の部屋を訪れていた。顔にできた痣に治癒魔法を掛けてもらっている。

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

ベッドに腰掛ける優人に、リーネがひたすら平謝りを続けている。

 

「大丈夫だから。事故みたいなもんだし、気にしないで」

 

苦笑気味に大丈夫だと告げる宮藤兄妹だが、リーネの謝罪は止まらない。

 

「お兄ちゃんの言う通りだよ、リーネちゃんは悪くないんだから」

 

「でも、怪我をさせたのは私だから……何かお詫び出来ませんか?」

 

心底申し訳ないといった表情のリーネ。優人は「う~ん」と少しだけ考えた後、一つ頼みごとをした。

 

「だったらお茶淹れてくれる?紅茶が飲みたくなってさ」

 

「は、はい!分かりました!」

 

リーネは頷くと、駆け足で厨房へ向かっていった。

 

「ねぇ、お兄ちゃん……」

 

治療を終えた芳佳が、優人に声を掛ける。

 

「ん?」

 

「お風呂でリーネちゃんと何話してたの?」

 

「さぁ、なんだったかな?」

 

わざとらしく惚ける優人に、「むぅ……」と頬を膨らませる芳佳。しかし、何かを思い出したのか、すぐに別の話題に切り替えた。

 

「そう言えば、さっきお兄ちゃんの部屋をみたんだけど……」

 

「うっ……」

 

考えないようにしていた部屋の件を持ち出され、優人は顔を歪めた。

 

「今日の夜どうするの?何処で寝るの?」

 

「あ~……ミーティングルームのソファーで横になるかな」

 

「そんなのダメだよ!」

 

ソファーで一夜を過ごそうとする優人の考えに、芳佳はすぐさま反論した。

 

「ソファーじゃ疲れ取れないし、怪我の治りも遅くなっちゃうよ!」

 

「て言われても……ここまで回復しといて医務室のベッドを使うのも気が引けるしなぁ……」

 

「じゃ、じゃあ……」

 

芳佳は軽く一呼吸おいてから優人にある提案をする。

 

「今日は、ここで寝たら?」

 

「えっ?」

 

「だから、その……」

 

芳佳は顔を伏せ、モジモジしながらも言わんとしていることをはっきりと告げた。

 

「私のベッドで一緒に寝ようよ!」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

~おまけ『セールスマン トレヴァー・マロニー』~

 

マロニー「コアコントロールシステムはブリタニアで生まれました。扶桑の発明品じゃありません、我が国のオリジナルです。しばし遅れを取りましたが、今や巻き返しの時です」

 

作者「ウォーロックは好きだ」

 

マロニー「ウォーロックがお好き?結構、ではますます好きになりますよ。さぁさぁ、どうぞ!ウォーロックのニューモデル『ウォーロックII』です。素晴らしいでしょ?ああ、仰らないで。先代と同じく、半自律型自動兵器。でもウィッチなんて魔法が使えるだけで、生意気だし、反抗的だわ、手柄を独占するわ、ろくなことはない。シールドも強化してますよ?巨大ネウロイのビーム攻撃も大丈夫。どうぞ始動させてみて下さい」

 

作者「…………」←コンソールを操作して、ウォーロックIIのジェットエンジンを始動させる。

 

マロニー「いい音でしょう?余裕の音だ!出力が違いますよ!」

 

作者「……一番気に入っているのは」

 

マロニー「何です?」

 

作者「ネウロイ化だ」勝手にネウロイ化させる

 

マロニー「ああっ!何を?ああ待って、ここでネウロイ化しちゃダメですよ!待って!止まれ!ぎゃああああああああぁ!!」←ビームで消し炭になる

 

作者「…………」ニヤリ




上記のおまけは声優繋がりで思い付いた『コマ○ドー』パロネタです(フォレスタルの吹き替え声優がマロニーと同じ秋元洋介さん)。まぁ悪ノリです(笑)


一期編は次回で終了し、閑章(後日談&番外編等々)を挟んだ後に二期編へ突入する予定です。

じれったく感じられる方もいらっしゃるとは思いますが、良ければこれからもお付き合い下さい。


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