連載初期に諸事情で中止(路線変更)となったワイト島編を書かせて頂きます。
その節はご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした。
1944年9月初め、ブリタニア・第501統合戦闘航空団基地――
「ミーナ、呼んだか?」
朝食後。部隊司令直々のお呼び出しを受けた優人はドアを二回ほどノックした後、ノブを回して部隊長執務室へ入る。
「優人、来てくれたのね?」
基地司令用デスクの向こう側に座っているカールスラント空軍中佐――ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが、柔らかな笑みを浮かべて優人を迎える。
大抵の男ならば、その聖母を想わせる彼女の笑顔に頬を染めて見とれてしまうことだろう。しかし、優人はミーナと顔を合わせた瞬間、背筋にゾクリと悪寒が走った。
基本的に穏やかで優しい性格のミーナ。滅多なことでは怒らないが、一度怒らせるととんでもなく恐い。隊のウィッチ達はもちろん、優人自身そのことを嫌と言うほど理解している。
先日。とある冤罪からあやうく粛正(ミーナ曰く、去勢)されそうになっており、以前より優人の中に存在していたミーナに対する恐怖心が一層強くなった。
そのため、出来れば優人はミーナと室内で二人きりにはなりたくなかったのだ。
「どうしたの?私の顔に何か付いているのかしら?」
自分を見つめたまま固まって微動だにしない優人に、ミーナは不思議そうな顔で訊ねる。
「あっ!いやいや、何でもないよ。それで何の用?」
ハッとなった優人はそう誤魔化すと、呼び出された理由を訊いた。
「あなたには、本日の夕方から数日間ワイト島へ行って頂きます」
言い渡された辞令に、優人は目を丸くした。
「ワイト島、って。えっ?このタイミングで……まさか、また左遷?」
「だから、数日よ。一時的な出向のようなもので、用が済みしだいすぐに戻って来てもらうわ」
ミーナは右手で眉間を押さえ、呆れたように軽く息を吐いた。
「何だ、そうか」
左遷の類いではないことに優人はホッと安堵するが、何故正式な解散命令を待っている501部隊からわざわざ別の部隊、それも僻地に配備されている二線級の部隊へ出向するのかという疑問が残る。
「ワイト島には傷に良く効く温泉が湧いています。なので、あなたには現地で湯治を行って貰います」
優人が問い掛けるよりも先にミーナが答えた。どうやらワイト島でゆっくり温泉に浸かり、人型ネウロイとの戦闘でできた傷を癒してこい、ということらしい。
しかし、いくらワイト島がネウロイの襲撃が殆んどない僻地とはいえ、湯治目的の観光地のように利用してしまっていいのだろうか。
「それって、軍の命令というよりは旅行の斡旋じゃないのか?」
「あなたのお父様や赤坂中将が、大怪我したあなたのことを随分心配しているのよ」
「……さいですか」
そんなことだろうと思った、と言わんばかりに優人はミーナから視線を外し、呆れたように虚空を見つめる。
「向こうにいる間は有給扱いにして貰えるそうよ。せっかくの御厚意なんですから、ありがたく受けたら?」
「俺は健康そのものだ」
と、嘯く優人。確かに大量の破片が胸に突き刺さっていた割には元気そうだが、そんな優人の言い分にミーナは眉を顰めた。
「嘘……朝食の時に、痛そうな顔をして度々胸を擦っていたじゃない?それにたまに痛み止めも飲んでるわよね?」
「……バレてた?」
自身を諌めるようなミーナの口振りに、優人は苦笑する。
「ええ、うふふ♪」
ミーナは口元に手を当てて、クスクスと上品に笑う。さすがは母性溢れる501のお母さん役といったところか、隊員達のことはなんでもお見通しらしい。
「で、どうするの?」
「了解、命令に従いますよ中佐。俺が怪我したままだと、気にするやつらがいるからな」
と、肩を竦める優人。“気にするやつら”とは、おそらく芳佳と坂本のことだろう。二人は優人が負傷したことに対し、未だ責任を感じているのだ。
「よろしい。あっ、そうそう!」
連絡を終え、ミーナは優人を退室させようとする。が、直後に何かを思い出した。
「何だ?」
「私がいないからって、悪いことしちゃダメよ」
「おいおい、俺が何をするって?」
軍人という立場にも関わらず、基地内に隠れ家を作ったりと、自由過ぎる生活を送っているルッキーニや禁固刑の経験があるハルトマンやシャーリーならいざ知らず、自分が何をやらかすというのか。優人は甚だ心外だった。
ミーナは唇に右手の人差し指を当て、「う~ん」と考える仕草を前置きしてから答えた。
「自身の立場を利用して、基地の娘達にちょっかい出したりとか……」
「…………」
ワイト島分遣隊隊長の階級は中尉、優人よりも下だ。つまりは、基地内における最高階級者としての立場を利用してウィッチ達に不埒な真似をするなと、そういうことだ。
ミーナは冗談のつもりで言っているのだろうが、優人はある意味では前科持ちの身であるため、笑い飛ばすことも反論することも出来ず、居心地悪そうな表情でミーナから目を逸らす。
「ごめんなさい。それと、あなたに個人な頼みがあるの」
急に真剣な眼差しとなったミーナ。優人が視線を戻すと、彼女はおもむろに口を開いた。
「実はラウラさんのことで……」
◇ ◇ ◇
数分後、基地本部廊下――
「優人」
「ん?」
ミーナと分かれて執務室を出た優人。茶でも飲もうと食堂に向かって廊下を進んでいると、誰かに声を掛けられた。
「ああ、バルクホルンか」
声の主はバルクホルンがだった。彼女は何やら頬を紅潮させ、呼び止めたはずの優人から気まずそうに目を逸らしている。
「どうした?なんか用?」
「ミーナから聞いたんだが、お前は数日間ほどワイト島へ行くそうだな?」
「そうだよ。悪いな、俺だけ湯治に行くことになっちゃって……」
「い、いや。そのことでお前を咎める気はない」
そう言ってバルクホルンは頭を振る。
「迷惑ついでに留守の間芳佳のことを頼むよ。ほっとくとまた何かやらかしそうだから」
ははは、と乾いた笑い声を出す優人。基地を離れるにあたり、一番の心配事はやはり妹のことだ。
マロニーの件で多少は懲りただろうが、それでも心配になってしまうのが親心ならぬ兄心というものだ。
「もちろんだ。実は、私からもお前に一つ頼みたいことがだな……」
「もしかして、ラウラのことか?」
「なっ!?」
ズバリと言い当てられたバルクホルンは、驚きのあまりに一瞬言葉を失った。
「何故それを!?」
「ミーナからも同じようなことを頼まれたからな。やっぱり、心配か?」
優人に問われると、バルクホルンは左右に2、3度目を泳がせた後に小さく頷いた。
「それで?具体的には?」
「……あいつに、伝えて欲しいことがあるんだ」
バルクホルンは赤面した顔をゆっくりと持ち上げ、罰が悪そうに告げた。
◇ ◇ ◇
その日の夕刻、ワイト島分遣隊基地――
「ふぅ~……」
夕日の下。優人は湯船に肩まで浸かり、小さく息を漏らす。
少し前にワイト島分遣隊と合流した優人は、部隊指揮官の勧めにより基地の温泉施設で入浴中だ。
501基地の大浴場とは違い、天然温泉で尚且つ海を眺めることが出来る。
「海が見れるなんて、軍事基地というよりは観光地みたいだな」
景色を眺めながら、優人は素直な感想を述べる。ワイト島分遣隊の指揮官にして基地の責任者である角丸中尉によれば、部隊の解散後はウィッチ・ウィザードの保養施設としての再利用が検討されているらしい。
確かにワイト島の温暖な気候と湧き出ている天然温泉は、日頃から軍務に終われている航空歩兵の心身の健康やモチベーションの維持に役立つだろう。
「…………」
ふとにこやかだった優人の表情に影が差す。その視線は、かつて混成中隊のウィッチ達と共にイリスと戦った空気へと向けられている。
優人と出会って間も無く、彼女達は暴走したイリスの手で虐殺されてしまった。あの時、自分が臆することなく戦っていればと後悔しなかった日はない。まだまだ未熟であった当時の自分が全員を守れたと思うほど自惚れてはいない。しかし、行動を起こしていれば何人かは助けられたかもしれない。
(後悔、先に立たず……か)
優人はフッと自嘲気味に笑って立ち上がる。目蓋を閉じ、戦死したウィッチ達に黙祷を捧げた。
「ま、また一緒にお風呂に入るんですか?」
「……え?」
ふと入り口の方から羞恥心を孕んだ女性の声がする。優人は気の抜けた声を漏らした。
「良いじゃない!一緒に入った方が楽しいでしょ?」
「あんたって強引すぎ……」
さらに二人分の声が聞こえてくる。どちらも女性のものだ。
(……デジャヴ?)
数日前にも同じことがあったような。この後どうなるか、ある程度は予測出来たはずなのに、優人は声に釣られて振り返ってしまった。
「あれ?」
「「へっ!?」」
視線の先にいたのはワイト島分遣隊に属する3名のウィッチだった。
王立ファラウェイランド空軍のウィルマ・ビショップ軍曹。ペリーヌと同じく自由ガリア空軍に所属するアメリー・プランシャール軍曹。そして、シャーリーと同様にリベリオン陸軍第8航空軍に所属している“フラン”ことフランシー・ジェラード少尉。
無論、入浴するつもりで入ってきたため三人とも裸である。
「「「「………………」」」」
あまりのことに思考を停止させた四者は、無言のまま互いを見つめ合う。
分遣隊の面々は文字通り微動だにしないでいたが、さすがというべきか優人は三人の美人顔に向けた状態で己の顔を固定しながらも視線のみを下方へ動かしていた。
例よって男の性に逆らえず、アメリーとフランの発展途上で慎ましやかな肢体。シャーリーに勝るとも劣らないウィルマのダイナマイトボディをチラチラと観察する。
「きゃあああああぁ!!」
思考の復活したフランは顔を真っ赤にして叫ぶと、床に置かれていた手桶を優人に向かって思い切り投げ着けた。
ガンッ!
「あがっ!」
鈍い衝突音を伴い、桶は優人の頭部に見事直撃する。痛みと衝撃が頭蓋骨を通して脳まで到達し、優人は気絶した。
◇ ◇ ◇
数十分後――
食堂には優人とワイト島分遣隊のウィッチ達が、テーブルを囲むようにして集まっていた。
一時とはいえ、同じ屋根の下で共に暮らすこととなった優人のために歓迎会を開いてくれるとのこと。優人も彼女らも、既に自己紹介は終えている。
「あっはっはっ!ごめんなさいね!ウィザードのあなたが来ていたことをすっかり忘れちゃって!」
と、お気楽に笑いながら謝るウィルマ。所属する軍は異なるが、彼女はリーネの実姉である。妹と引っ込み思案な妹と違って行動力の塊のような性格をしている。
「ごめんなさい!あ、あの……頭は大丈夫ですか?」
「まぁ、なんとかね」
クスンッと涙目になりながら自分を心配するアメリーに、優人は大丈夫であることを伝える。
「二人共!謝る必要なんてないわよ!」
と、一人だけ御冠なのは桶を投げつけてきた張本人であるフラン。頭にタオルを巻いていた入浴時とは違い、鮮やかな赤髪が可愛らしいツインテールに結ばれている。
「で、でもフランさん」
「こいつはあたしたちの……は、は、裸を見たのよ!胸なんて、特に凝視して!被害者はむしろこっちじゃない!」
どうにも怒りが治まらないらしい。フランのこういった気の強いところは少しペリーヌと似ている気がする、と優人は密かに思う。
「まったく、なんでこんなド変態がうちに来たのよ!」
「ど、ド変態って……」
そこまで言われるとさすがにへこむのか、優人はガクッと肩を落とした。
ちなみに優人は、この他にもエイラから痴漢やらエロ藤やら呼ばれている。
「フラン、それはちょっと言い過ぎ」
「そうよフラン。あれは不慮の事故だったんだから」
オストマルク空軍少尉のラウラ・トートと扶桑皇国陸軍中尉の角丸美佐がフランを窘める。
ラウラは501部隊の設立メンバーの一人で、角丸はリバウ基地にいたことがある。そのため、優人とは顔見知りだ。
「な、何よ!みんなは、あたしが悪いって言うの!」
「まぁまぁ、しばらくは一緒に暮らすんだし。仲良くしましょうよ」
「あ、頭を撫でるなぁ!!」
ウィルマに子ども扱いされ、憤慨するフラン。彼女の怒りの矛先がウィルマの方へ向くが、慣れているらしいウィルマは上手く受け流している。
一方、アメリーはどうしたらいいのか分からず、オドオドしている。彼女のこういったところは、501に来た直後のリーネを連想させる。
「宮藤大尉、本当に申し訳ありません」
ワイト島分遣隊の隊長である角丸が頭を下げて部下の非礼を詫びる。
「いや、俺も悪かったし」
「ところで、大尉は何故こんな辺鄙なところに来たんですか?」
と、ラウラが随分と単刀直入に訊ねる。
「まぁ、角丸中尉と同じだな」
そう言って優人が角丸に目をやると、彼女は「そうですね」と笑顔で首肯する。優人はさらに詳細を説明する。
「少し前に、ネウロイの攻撃を受けて墜落しちゃってさ。その時の怪我が癒えきってないからここの温泉を――」
「墜落!?怪我!?大丈夫なんですかっ!?」
“墜落”や“怪我”という単語に過剰反応したアメリーがズイッと優人に向かって身を乗り出す。
「大丈夫だって。ちょっと下がってくれる?」
苦笑しながら後退を促す優人。アメリーが間合いを詰めたため、彼女と優人の顔は互いの鼻先が着きそうなほどに近付いていたのだ。
「あっ……ごめんなさい。うぅ……」
異性に向かって、不用意に顔を近付けてしまったアメリーは恥ずかしそうに俯きつつ、後ろへ下がる。
「まぁ、ざっくり言うと。ここには湯治のために来たんだよ」
「嘘っ!!」
先程までウィルマに弄られていたフランが、怒声を上げながら割り込んできた。
「本当は、501部隊でウィッチの着替えやお風呂覗いたから左遷されたとかでしょ?」
「うっ!……」
フランの容赦の無い一言が、優人の心にグサッと刺さる。彼女の中で優人は完全に変態扱いである。
まぁ不可抗力とはいえ、優人には覗きの前科や覗きよりもよっぽど重い罪状が複数あったりする。
「そんなに落ち込まないで、はい!飲み物どーぞ!」
「……ありがとう」
ウィルマが優人を励ますと、ようやく彼の歓迎会を兼ねた夕食が始まった。
◇ ◇ ◇
夕食後――
歓迎会が終わり、優人はウィルマ、アメリーと共に宿舎の廊下を闊歩していた。
「あ~食べた食べた。どう?私とアメリーの作った料理は?もちろん美味しかったでしょ?」
ウィルマは歓迎会の料理で満たされた腹を撫でながら訊ねる。何気に主役である優人よりも多く食べていた。
「ああ、良かった。二人は料理上手だな」
そう言うと優人はアメリーの方へ視線を走らせた。
「アメリーが作ってくれたデザートのケーキなんて、最高だったよ」
「そんなっ!……でも、喜んで頂けたのなら嬉しいです」
優人に褒められたアメリーは気恥ずかしさから頬を赤く染める。
謙虚で照れ屋なアメリーを愛らしく思った優人は彼女の頭に手を伸ばし、ややオレンジがかかっているブロンドの髪を優しく撫でてやる。
「ふぇっ!?」
するとアメリーは可愛らしい悲鳴と共に顔をより紅潮させ、モジモジと小さくなる。
その初な反応がとても愛くるしく、守って上げたくなる保護欲のようなものを掻き立てられる。
「宮藤大尉!ストライカーの整備、完了です!」
三人が談笑しながらハンガーの前を通りかかると、整備兵が優人に声を掛けてきた。
優人と共に501基地からJu52輸送機で運ばれてきたストライカーユニット『零式艦上戦闘脚二二型甲』の整備が終わったらしい。
「ありがとうございます」
優人は愛機の整備を引き受けてくれた整備兵に軽く会釈し、謝意を述べる。
「あら?ユニットまで持ってきたの?」
養生のためにワイト島を訪れた優人が、何故ストライカーユニットや機関銃まで持って来ているのか。ウィルマは発進ユニットに固定された零式へ目を向けながら不思議そうに訊ねる。
「一応、数日間はワイト島分遣隊の所属になるからな。哨戒はもちろん、戦闘や訓練にも参加するよ」
「で、でも……無理したら、怪我の治りが遅くなっちゃいますよ?」
アメリーが心配そうに優人の顔を覗き込んだ。
「実は殆んど治りかけてるんだよ。でも、501と原隊の上官が心配してね」
ははは、と乾いた笑い声を上げる優人。すると、少しだけ眉を寄せたウィルマが彼を窘める。
「だとしても気を付けなきゃダメよ?怪我も病気は治りかけが肝心なんだから」
「わかってるよ。これでも診療所の息子だぞ?」
優人はそう言うと、ハンガー内に足音を響かせながら発進ユニットへと歩を進めていった。
「今から飛ぶの?」
背後から近付いてきたウィルマが訊ねる。
「ああ、一度この辺りの空を飛んでみたいんだ」
「もう陽は沈んでいますよ?」
と、何やら心配そうなアメリー。
「夜間哨戒の経験もあるから、夜の飛行も問題ないよ」
「そうじゃなくて……」
そこまで言うと、アメリーは途端に口篭り目を伏せた。
「どうした?」
優人は訊くがアメリーは俯いたままで何も応えない。心無しか、身体が震えているように見える。
「妙な噂があるのよ」
見兼ねたウィルマがアメリーに代わって優人に説明する。
「噂?」
「少し前からブリタニア南東部の空を未確認航空機が飛行している、って噂」
「未確認航空機って……ガリアの残存ネウロイか?」
優人が己の分析を混えて訊き返すと、今度は黙り込んでいたアメリーが応じた。
「幽霊です」
「ゆ、幽霊?」
アメリーの口から飛び出た予想外の解答に、思わず優人は訊き返した。
「そうです!幽霊です!ダイナモ作戦の時に戦死した兵士が、無念から空を徘徊しているんです!絶対そうです!」
頭を抱えて萎縮したアメリーは、感情に促されるままに叫ぶ。幽霊が苦手なのか、彼女は涙目になりながらカタカタと震えていた。
「まぁ、私たちも直に見た訳じゃないんだけどね」
あははは、と顔を引きつらせて笑うウィルマは、さらに詳細を説明する。
「実際に遭遇したウィッチの話だと……幽霊はカールスラント製の古い航空機に搭乗した三人組の男性で、奇声を上げながらウィッチを追い掛けてくるらしくて――」
「と、とにかく!」
ウィルマの話を遮るように、アメリーが口を挟んだ。
「幽霊みたいな得体の知れない存在がブリタニアの空を彷徨いています!危険です!夜に飛ぶのは辞めた方が!」
「大丈夫だよ」
と、優人は幽霊(?)に怯えるアメリーを安心させるように微笑んだ。
「近くを飛んでくるだけだし。幽霊が出てたって、戦うなり逃げるなりするさ」
「何なら一緒に行ってあげましょうか?」
ウィルマがニィッと笑いながら優人をからかう。
「夜トイレに行けない子どもじゃないんでね」
優人は皮肉混じりにそう返すと、自身のストライカーユニットが固定されている発進ユニットへ駆け寄る。ストライカーを履いて魔法力を流すと魔導エンジン『栄(マ)二一型』が回転を始め、ユニットゲージに格納された九九式二号二型改13mm機関銃が出てきた。
ふと隣から別のエンジン音が聞こえてくる。目をやると、ウィルマが自身のスピットファイアMk.IIを始動させていた。
「お供させて頂きます、大尉殿」
ウィルマはユニットゲージから取り出した銃器を振りかざし、茶目っ気を孕んだ口調で上官である優人に対し進言する。
彼女が手に持っているのは、ペリーヌも使用しているブリタニアのブレン軽機関銃Mk.Iである。
外見上は扶桑皇国陸軍及び皇国海軍陸戦隊等で運用されている九六式軽機関銃や九九式軽機関銃とよく似ているため、優人はこの銃に対して多少の親近感を抱いている。
「哨戒ルートは頭に入っている。案内は必要ないぞ?」
「ガリア解放の英雄様を1人で飛ばせるのは気が引けるもの。美女と夜空の旅っていうものいいもんでしょ?」
と、ウィルマは右目を瞑ってウインクする。
「そりゃ、断れないな」
優人は苦笑混じりに応じると、さらに言葉を続けた。
「それじゃあ、エスコートをよろしく頼むよ。ウィルマ・ビショップ軍曹」
「了解しました、宮藤優人大尉!」
ウィルマは右手を額にかざしてビシッと敬礼し、にこやかな笑顔で応じる。
「じゃあ、行ってくるよ」
優人はアメリーに向かって軽く手を上げると、ハンガーの入り口へ視線を移した。
「宮藤優人、発進する!」
「ウィルマ・ビショップ、行くわよ!」
愛機と共に発進ユニットからハンガーの外へ向けて射出された二人のベテラン航空歩兵は、滑走路を高速で滑った後に漆黒の空へと飛び立っていった。
「お気をつけてぇ~!」
ハンガー前まで移動したアメリーはブンブンと大きく手を振り、二人の大先輩を見送った。
◇ ◇ ◇
同時刻、ワイト島基地宿舎・ラウラ、フランの部屋――
「まったく、何なのよアイツはっ!」
自室に戻った後も腹の虫が治まらないフランは、自分の寝床である二段ベッドの一段目でドッシリと胡座を掻いていた。
「まだ言ってる……」
上の段から下を覗き見るように顔を出したラウラが、呆れを湛えた視線をフランに向ける。
「あったり前でしょ!?あんなド変態!上官でなければすぐにも撃ち殺してやるわ!」
そう言って、フランはサイドアームのM1911A1を取り出し、強く握り締める。
「あれは不可抗力。大尉はとても良い人」
「フンッ!どうだか!」
ラウラの言うことが信じられない、とフランは苛立ち混じりに鼻を鳴らす。
「あんなのと一緒に暮らさなきゃならないなんて……ほんっと最悪よ!」
「…………」
優人を罵倒し続けるフラン。これ以上は何を言っても無駄だと感じたのか、ラウラは軽く溜め息を吐くとシーツに身体を倒す。それから一分もしないうちに寝息を立てた。
こうして、扶桑のウィザードとワイト島分遣隊のウィッチ達の数日に渡る共同生活は幕を開けたのだった。
例によって、キャラの再現度がかなり微妙orz
しかし、今度は!今度こそは、途中で投げ出したりしません!多分……←
感想、誤字脱字報告をお願い致します。