本文が2000文字ちょっとと短いうえに、オリ主の優人や他のキャラは一切登場しません。
程良い湿度が保たれた白く清潔なバスルームで、一人の少女がシャワーを浴びている。シャワーヘッドからは、自分好みに湯温と湯量を調整した湯が降り注ぎ、シミ一つ無い白く極め細かな肌を伝ってタイルへ流れ落ちてく。
“息を呑むほど美しい”という表現は彼女のために存在する、と言っても過言ではないだろう。少女の容貌はそれほどまでに秀麗だった。
背中まで伸ばしたサラリと流れるような艶のある黒髪、大きな瞳、スッと通った鼻筋、桜色をした形の良い唇。170cmという女性としてはかなりの高身長に、膨よかな胸部、キュッとくびれた腰部、スラリと伸びた手足。
服を着ていても下の線がよく分かるほど起伏に富んだ発育良好な身体は19歳という年齢に似合わない大人の色香を感じさせる。
俳優かモデルと言っても十分通用する美貌の持ち主は、
シャワーを終えると隣室の床に身を躍らせた。髪と肌をバスタオル越しに撫でながら、裸身を晒したまま室内を見回す。
彼女は今、ブリタニアでも有数の一流ホテルに滞在している。宿泊中の部屋はホテルの最上階に存在するスイートルーム。足首まで沈むほど深く、柔らかい絨毯。光量を抑えてシックな雰囲気を演出している照明。清涼感ある香水の薫り。その他、調度品も全て一流の物が揃えられていて。フロアも広く、大変居心地がいい。
「ふぅ……」
軽く息を吐いた少女は、ベッドの上に無造作に置かれていたバスローブに身を包む。
部屋に備え付けられているドレッサーの椅子に形の良い尻を降ろし、バスローブと同じくベッド上にあった新聞を手に取った彼女は、一面を飾っている記事に目をやる。
その記事は、第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』のガリア解放を讃えたものである。彼女らがネウロイの巣を破壊し、ガリアの大地を取り戻したニュースは瞬く間に世界中の知るところとなった。
連合軍最高司令部の発表を機に、各国の報道機関が報道合戦もかくやという熱気を持って、情報を全方位に向けて発信したのである。
ウィッチーズ、ネウロイの巣に勝利す――
統合戦闘航空団、ガリアを奪還――
連合軍、人類の勝利へ向かって大きく前進――
誰もが不可能だと信じて疑わなかったネウロイの巣の破壊、占領された地の奪還という快挙を魔法力を有した十代の少年少女達が成し遂げたのだ。
ネウロイが侵攻する度に連合軍が敗戦・後退を繰り返していたこともあってか。初めのうち、このニュースを耳にした人々は何かの冗談ではないかと訝んでいた。しかし、事実と知るや否や彼等は歓喜を持って朗報を受け入れた。
圧倒的な戦力を以て自分達人類に仇なす存在――不倶戴天の敵ネウロイに対して、連合軍が反撃の一矢を見舞ったのだ。ウィッチとウィザードが正義の鉄槌を下したのだ。
『最早ネウロイなど、恐るるに足らず』
『いずれ連合軍が撲滅するだろう』
『そして、世界に再び平和が訪れるのだ』
人々は高揚していたが、それは素人目による楽観的な早計と言えるだろう。ネウロイ側は、カールスラントやオスマルクに複数の巣と相当数の兵力を有しており、高い学習能力や新しい巣が出現する可能性も相俟って侮ることは出来ない。
だが、新聞やラジオ等のメディアを利用した連合軍のプロパガンダ戦略が功を奏し、世界各国において勝利への機運や戦場で活躍する航空歩兵の人気が一層高まり、軍に志願するウィッチ・ウィザードの人数は増えつつある。
「…………」
少女は無言のまま記事を見つめる。掲載されているストライクウィッチーズの写真のある一点――扶桑皇国海軍から派遣された部隊唯一の航空ウィザードを……。
「もうすぐ……もうすぐよ……」
写真に映るウィザードの顔を右手で撫でながら、少女はコケティッシュな唇を動かして言葉を紡いだ。
「もうすぐ会えるから、もう少しだけ我慢して……」
心の底から沸き上がってくる感情を抑えられず、少女は恍惚とした表情を浮かべた。そして、想い人に会ったらどうするかを夢想する。
まずは彼の胸に飛び込み、自分が何者かを教えなければならない。最後に顔を合わせた時から十数年も時が過ぎてしまっている。女らしく成長した自分が誰か、すぐには気づけないはずだ。きっと驚くだろう。
ひとしきり再会の喜びを味わったら、今度は地面に押し倒してしまおう。彼の服を剥ぎ取って、そのまま存分に愛し合おう。周りに人が居ようが構わない。全身全霊で彼を感じたい。
近い将来、現実になるであろ――少なくとも、彼女本人はそう信じている――夢想に浸る少女が頬に熱を灯してうっとりしていると、ドアの方からコンコンとノック音が聞こえきた。心地好い想像を遮断され、現実に還った少女はドアへ疎ましげな視線を向ける。チッと小さく舌を打ち鳴らし、ドレッサーの引き出しに新聞をしまうと、椅子から立ち上がる。
誰が来たかは分かっている。このスイートルームは、宿泊部屋であると同時に、その人物との密会場所でもあった。少女は服に着替えることなく、バスローブのままドアへ歩み寄りノブを回した。ドアの向こう側で待っていたのは、彼女とは親子ほど歳が離れているであろう初老の男性だった。
「やぁ」
高そうなスーツを着こなした男性は、少女に向かってニッコリと微笑み掛ける。彼は紳士然としているが、少女の身体を舐め回すように視線を走らせ、下心見え見えに彼女を品定めしている。
「お待ちしておりました」
少女は不快感を圧し殺して密会相手をスイートルームへ迎え入れた。男性の腕に飛び付き、魅惑的な作り笑顔を向ける。それは人を誘惑し、堕落させる悪魔の笑みそのものだった。
※この作品は『ストライクウィッチーズ 扶桑の兄妹 改訂版』です←
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