横須賀軍港を出港してから数時間、航空母艦赤城を旗艦とする遣欧艦隊は夕日に照らされて赤く染まった海上を航行している。
左舷デッキには芳佳がいた。すでに見えなくなった扶桑の方角を見詰めている。夕日の光の具合なのか、それとも家族や友人と離れることが悲しいのか、彼女の目は潤んでいるように見える。
「芳佳」
「お兄ちゃん!」
そこへ優人がやって来た、芳佳の表情が明るくなる。
「やっぱり、みんなと離れるのはつらいか?」
「うん。でも、みんなが送り出してくれたんだから、頑張らなきゃ」
「そっか、芳佳は強いな」
故郷を離れ、異国の地へ向かう芳佳のことを心配していた優人。しかし、思ったより元気そうな妹を見て安堵する。
「……そう言えば、初めてだよね?」
「うん?」
「お兄ちゃんと船旅」
「言われてみれば……」
優人は自身の記憶を辿る。過去の宮藤家の家族旅行は国内のみ、遠出をする際は鉄道を使用していた。
そして8年前、優人が海軍へ入隊、父の一郎は渡欧。芳佳は母や祖母と船に乗ることは何度かあったものの、優人や一郎とはなかった。
「みんなと離れるのはすごく寂しいけど。でも……」
芳佳は優人の腕に抱き着く。
「その代わりにお兄ちゃんと一緒にいられるから!」
「そ、そっか……」
向日葵のような眩しい笑顔の芳佳が優人の腕にすり寄ってくる。優人の頬に赤みがさしているのは夕日のせいだけでは無いだろう。
「仲が良くてなによりだな」
二人の元へ坂本がニヤケ顔でやって来た。
「あっ、坂本さん」
「何か用か?」
芳佳をスカウトした件が尾を引いているのか、優人は若干不機嫌な口調で応じる。
「整備兵がユニットのことでお前に話があるそうだ」
優人は坂本から連絡を受けると、芳佳に向き直る。
「悪い芳佳。ちょっと行ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい」
少し残念そうに優人を見送る芳佳。優人がデッキからいなくなったところで坂本が芳佳に話を切り出した。
「どうだ、赤城の乗り心地は?」
「はい、すごい快適です」
「そうか、だが快適なのは艦の上だけだぞ」
微笑んでいた坂本の表情が一変する。
「お前も知っているはずだ、ブリタニアが今どうなっているか」
坂本は説明を始める。
「大陸を制圧したネウロイと戦う最前線だ。そこにいく理由、本当に父上のことを確認するためだけか?」
真剣な表情で問い掛ける坂本に芳佳は俯きながら答える。
「ブリタニアには困っている人がたくさんいるんですよね?」
現在、ブリタニアはネウロイの侵攻によって陥落したカールスラント、オストマルク等からの難民で溢れかえっている。ブリタニア政府が手を尽くしているが受け入れ政策は十分ではない。路地裏に身を寄せている者も多く、その中には避難の途中で大怪我した人間や病人もいる。芳佳はこれらのことを優人から聞いていた。
「ああ、大勢いる」
頷く坂本。
「私守りたいんです。傷付いた人、病気の人、たくさんの人の為に私の力を役立てたいんです!お父さんと約束したんです!」
坂本に自分の胸の内を伝える芳佳。父との約束を果たしたい、自分の力で多くの人を守りたい、それも芳佳の願いだ。芳佳の気持ちを聞くことが出来た坂本は再び微笑む。
「坂本さん、何かすることはありませんか?掃除でも洗濯でも何でもやります!」
「よーし!その意気だ!」
坂本は二日前と同様に芳佳の肩を強く叩いた。
「はっはっはっはっ!!」
痛む肩を押さえる芳佳を余所に坂本は高笑いする。
◇ ◇ ◇
遣欧艦隊が横須賀を出航して約1ヶ月。ブリタニアにある第501統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズ基地。
基地の滑走路の隅にはデッキチェアが置かれている。そこにシャーリーとルッキーニが水着姿で寝そべっていた。シャーリーは彼女の愛称“グラマラス・シャーリー”の名に恥じないダイナマイトボディを、ルッキーニは日焼けした健康的な肌を惜し気もなく晒している。
「おぉ~!おかえり~!」
空を飛んでいたサーニャとエイラが降りてくる。シャーリーは身体を起こし、手を振って出迎えた。二人もシャーリーに向かって手を振り返した。
「相変わらず緊張感のない方々ですこと。そんな格好で……戦闘待機中ですわよ」
デッキチェアの傍にやって来たペリーヌが嫌味ったらしく言う。陽射しは肌に悪いからと日傘を差している彼女の姿はガリア貴族の令嬢らしい優雅なものだ。
「なんだよ~?中佐から許可もらってるし、解析チームもあと20時間、敵は来ないっていってたぞ。それに見られて減るもんでもな~い」
と、胸を張るシャーリー。豊かな胸がゼリーのように柔らかく揺れる。
「ペリーヌは減ったら困るから脱いじゃダメだよ~」
ルッキーニがシャーリーとペリーヌの胸を見比べながらバカにするように言う。しかし、胸のことならばルッキーニも人のことは言えない。
「大きなお世話です!」
憤慨したペリーヌが顔を真っ赤にして怒鳴る。
「まったく、間も無く坂本少佐がお戻りになります。そうしたら真っ先に貴女方の緩みきった行動について進言させて頂きます!」
「告げ口する気?感じ悪ぅ~」
と言って、再びデッキチェアに寝そべるシャーリー。
「ペッタンコのくせに~」
ルッキーニが畳み掛けるように続く。
「お黙りなさい!って、あなたにだけは言われたくありませんわ!」
キッとルッキーニを睨みつけるペリーヌ。するとルッキーニは思い出したように言う。
「ねぇねぇ、優人も少佐と一緒なんだよね?」
「ああ、何年かぶりに扶桑に帰ってたらしいな」
「扶桑のお土産持ってきてくれるかな?」
「あっははははは!ルッキーニ、優人にお菓子をおねだりしたもんな!」
と、ルッキーニとシャーリー。ペリーヌは優人の名前を聞いて不快そうに眉をひそめる。
彼女は坂本のことを崇拝とも呼べるほどに尊敬している。そのためか、坂本と親しく一番付き合いが長い優人に嫉妬している。もちろん、ペリーヌは上官であり、実力もある彼のことを坂本ほどではないものの、尊敬はしている。ただ、坂本が絡むとどうしても嫉妬心を抱いてしまうのだ。
「そう言えば、新人を連れてくるって……」
「新人!?どんな人!?」
思い出したように言うシャーリー。ルッキーニが目を輝かせながら反応する。
「確か優人のいも――」
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
シャーリーが説明しようとすると、彼女の言葉を遮るかのように敵襲を報せる警報が鳴り響いた。
「敵!?」
シャーリーはデッキチェアから飛び起きた。
「まさか!?早過ぎますわ!!」
ペリーヌは予報よりも早い敵襲に驚くも、すぐに日傘を畳んでハンガーへ向かう。先程とは打って変わり真剣な表情となったシャーリーとルッキーニも続いた。
◇ ◇ ◇
ブリタニアに向けて航行中の遣欧艦隊。芳佳はデッキブラシを使って甲板を掃除していた。甲板には他に優人や坂本、乗員が数名いる。
芳佳は赤城に乗船してから艦の仕事を手伝っていた。掃除、洗濯、料理等。特に料理は乗員達に好評だった。
この1ヶ月、芳佳は艦内の生活を忙しくも楽しく過ごしていた。坂本や乗員達との関係も良好なものになっている。
「う~ん。まだ見えないなぁ……」
芳佳はデッキブラシを杖のように着きながらお尻を突きだして前屈みになったり、背伸びしたりしながら赤城の進行方向を見ていた。
「ブリタニアまではあと半日はかかる。そう慌てるな」
「だって~!もうひと月ですよ!」
坂本の言葉を聞き、芳佳は軽く膨れっ面になりながら答える。目的地を目の前に逸る気持ちを抑え切れないらしい。
「スエズ運河を通れないことが地味に効くな」
ぼやく優人。より速く目的地に着けるスエズ運河を使ったルートが存在する。しかし、現在スエズ運河はネウロイの支配下にある。
「スエズ運河?」
「ああ、そこを通れれば20日ぐらいで着け……坂本?」
優人が芳佳に説明していると坂本の様子がおかしいことに気付く。彼女は右目の眼帯を外し、魔眼を発動している。優人は坂本が何を見ているかすぐに理解した。
「敵襲~!!12時方向!距離4000!」
坂本の叫び声が甲板に響くのとほぼ同時に赤城は戦闘態勢に入る。芳佳は何が起こったのかわからずにおろおろしている。
「て、敵!?」
「ネウロイだよ!」
優人が芳佳に教えるのと同時に赤城が正面上空の雲へ砲撃を行った。直後に雲の中から赤い光が一閃、駆逐艦に直撃する。ネウロイのビームだ。
「初風が!?」
大破した初風を見て叫ぶ優人。ビームによって切り開かれた雲からエイのようなシルエットの黒い飛行物体が現れた。
「あ、あれが……ネウロイ」
芳佳は初めてネウロイを見る。一撃で容易に駆逐艦を沈めたネウロイの力を目の当たりにして、彼女の目が恐怖に染まり、身体が震える。すると坂本が二人に声を掛けてきた。
「芳佳!お前は非戦闘員だ!医務室へ避難していろ!優人、妹を連れていけ!」
「了解だ!芳佳、行くぞ!」
「は、はい……」
自分の手を引く優人にどうにか返事をする芳佳。艦内では乗員達が慌ただしく動いている。芳佳は兄に手を引かれながら、揺れる艦の中を医務室へ向かって進む。
◇ ◇ ◇
目的地のブリタニアを目の前にしてネウロイの襲撃を受けた扶桑海軍遣欧艦隊。敵は大型が1機。駆逐隊が対空砲火で応戦するも、ネウロイの装甲や修復能力に阻まれダメージを与えられない。赤城の甲板では戦闘機隊が発艦の準備をしていた。
「何故ひと思いに攻撃してこない!!」
赤城の艦長、杉田淳三郎大佐は艦橋からネウロイを睨みつけていた。艦橋には彼の他に副長の樽宮敬嬉中佐。そして、ブリタニアを拠点とした欧州反攻作戦の調整のため、赤城に乗艦していた赤坂の姿もあった。
「我々を弄んでいるつもりでしょうか?」
と、樽宮。その気になれば簡単に艦隊を壊滅させるだけの火力を備えているにも関わらず、ネウロイは敢えて直撃を避けるようビームを撃っている。
樽宮の推測通りならネウロイは彼等扶桑海軍を敵とすら思っていないということだ。杉田は屈辱のあまり顔を強張らせる。
「杉田艦長、樽宮副長」
赤坂が二人に声を掛ける。
「全戦闘機隊の発進を急がせろ!それとブリタニアのウィッチ隊及び海空軍に応援要請!」
「「はっ!!」」
杉田と樽宮は赤坂の命令に従った。
◇ ◇ ◇
医務室へ到着した優人は芳佳を診察台に座らせた。激しい轟音と振動。芳佳は恐怖のあまり耳を両手で塞ぎ、目をぎゅっと瞑って震えている。
「二人ともいるか?」
医務室の扉が開き、坂本が入ってきた。芳佳はすがるような目で彼女を見上げた。
「なんだその顔は?情けないぞ。それでも扶桑の撫子か?」
(こいつの中の扶桑撫子はどうなってるんだ?)
坂本の発言に対し、優人は心の中でツッコミを入れる。
「でも……どうしても……震えが止まらないんです」
芳佳は弱々しく答える。坂本は「仕方ないな」と呟くと芳佳の目線に合わせて屈んだ。
「さぁ、顔を上げてこっちを向け」
「えっ?」
芳佳が顔を上げると坂本が頬に手で触れ、顔を近付けてきた。
「動くな」
坂本がそう言うと、耳が一瞬ヒヤっとした。何かを耳に着けられたのだ。
「インカムだ。それさえあれば、離れていても私や優人と通話が出来る。ただし、使うのは本当に困った時だけだぞ。いいな?」
「はい」
芳佳が返事をすると、艦が大きく揺れた。
「さぁて、私はもう行かないと。優人、先にいってるぞ!」
「ああ」
優人の返事を聞くと坂本は医務室を出た。優人は視線を芳佳に戻す。恐怖が拭いきれていないらしく、まだ震えていた。優人は軽く息を吐くと、芳佳に歩み寄った。
「!……お兄ちゃ――」
近づく優人に気付き、芳佳は顔を上げる。すると、何か暖かいものに包まれた。芳佳はそれが優人の腕だということがすぐにわかった。
「よしよし。恐いよな?」
「お兄ちゃん?」
「でも大丈夫だ。ネウロイは俺達がすぐにやっつけるから。そうすれば、この恐い時間は終わるから心配するな」
優人は芳佳を抱き締めながら子どもをあやすように言う。小さい頃、芳佳が怯えていた時、優人はいつもこうしていたのだ。
「……お兄ちゃん」
芳佳は優人の制服をぎゅっと握った。
「大丈夫、大丈夫」
優人はそっと芳佳の頭を撫でる。兄の温もりを感じ、芳佳は少しずつ落ち着いていく。
『宮藤大尉!早く甲板へ!』
伝声管から切羽詰まった様子の声が響く。優人は芳佳から離れた。
「じゃあ。俺はいくよ」
しばらくすると芳佳の震えは止まり、優人は離れる。
「お兄ちゃん……私は?」
「ここにいなさい。絶対に外へ出るなよ、ここなら安全だから」
「でも……」
芳佳は心配そうな表情で優人を見上げる。
「大丈夫!俺も坂本も強いから!ネウロイくらい楽勝だ!」
優人は芳佳に笑いかけながら言うともう一度、芳佳の頭を優しく撫でた。
「行ってくるよ。ちゃんとここにいるんだぞ?」
優人はそれだけ言って医務室から出た。その後ろ姿は欧州へ旅立った日の父のものとどこか似ていた。
(お兄ちゃん……死んじゃったりしないよね?)
芳佳は兄の背中を不安気に見つめていた。
◇ ◇ ◇
『対空砲火止め!回避運動中止!総員、戦闘機隊の発艦に備えろ!』
赤城の甲板では九九式艦上戦闘機で編成された戦闘機隊16機が発艦準備をしていた。その最前列には坂本と優人がいた。二人はストライカーユニット『零式艦上戦闘脚二二型甲』を履き、魔導エンジンを始動していた。優人は九九式二号二型改13mm機関銃を装備している。坂本も同じく13mm機関銃を持ち、背中には扶桑刀を背負っていた。
「優人、妹は?」
「医務室から出ないように言ってきたよ」
「そうか」
端的な会話をする坂本と優人。二人が空を見上げるとネウロイが赤城を見下ろすようにホバリングをしていた。
「奴め、誘っているのか?」
「すぐに叩き落としてやるさ」
優人は13mm機関銃を強く握った。
「坂本美緒!発進する!」
「宮藤優人!出るぞ!」
まずは坂本が次に優人が発艦した。戦闘機隊も二人に続いて順次発艦していく。その間にも駆逐艦『浦風』がネウロイの攻撃を受け、大破する。坂本は自分に続く、優人や戦闘機隊にインカムで指示を出した。
「ネウロイはコアを潰さなければ倒せん。全戦闘機隊はコアを探しつつ、敵の攻撃を撹乱せよ!私は奴の上に回り込む。優人、お前は私に着いてこい!」
「了解だ!」
『了解!』
優人と戦闘機隊のパイロット達は指示に従って行動する。左右に展開する戦闘機隊。ネウロイは坂本、優人に向かって、下面からビームを放つ。二人は集中砲火を交わしながら上昇し、敵の上をとる。
「上ががら空きだ!」
坂本は眼帯を外し、ネウロイを見下ろす。普段は眼帯で隠しているが、坂本の右目はネウロイのコアを見つけ出すことが出来る魔眼だ。坂本がコアを探し始めると、ネウロイの上面が赤く輝く、ビームを撃ってきたのだ。
「坂本!」
優人は叫ぶと坂本の前に出てシールドを張り、彼女を守る。
「大丈夫か?」
「ああ」
自分を心配する優人に坂本が答え、再びネウロイへ目を向ける。
「まるでハリネズミだ。コアがどこにあるかも落ち落ち調べられん」
「思ったより厄介だな」
優人は舌打ちをした。直後、二人を援護するため戦闘機隊がネウロイに接近し、機銃で攻撃する。
「迂闊に近付くな!」
優人が叫ぶのとほぼ同時に、数機の九九式が撃ち落とされる。パイロット達はどうにか脱出したようだ。
「言わんこっちゃない……」
優人は顔をしかめる。ウィッチやウィザードのストライカーユニットよりも大型かつ旋回性能で劣り、シールドも張れない戦闘機で大型ネウロイに挑むのはあまりに無謀だ。それでなくても、九九式艦上戦闘機の武装は対ネウロイ戦に使うには貧弱だ。
「コアは我々に任せて、お前達は後方支援を!」
坂本は戦闘機隊に命じた。
「坂本!俺が奴を引き付けるから、その隙にコアを探してくれ!」
「わかった、頼む!」
優人の進言を受け、坂本は彼に囮役を任せることにした。危険な役割だが、坂本は優人のことを信頼している、彼ならば大丈夫だと。優人はネウロイに接近し、13mm機関銃を撃ち込む。ネウロイは自分を攻撃してきた優人に狙いを絞り、多数のビームを撃ち込んでくる。
(よし!食い付いた!)
優人は笑みを浮かべ、ビームを回避しながら射撃を続けた。その間、坂本は魔眼でコアを探している。優人が引き付けいるお陰で、落ち着いて探せるのだ。
(きつい猛攻だな。だが……)
(私がコアを見つければ!)
二人がそう思った瞬間、複数の閃光が見えた。目をやると、後方支援を行っていた戦闘機隊が全機撃ち落とされていた。ネウロイにやられたらしい、しかし目の前のネウロイは二人が相手をしている。
「まさか!?」
坂本がそう呟いた瞬間、彼女に複数のビームが向かってきた。反射的にシールドを張る坂本、そしてビームのきた方向を見る。そこには最初に現れた個体と同形状のネウロイがもう一体いたのだ。
「もう一体だと!?」
「きついな……」
二人に驚く暇も与えず、二体のネウロイはそれぞれ優人、坂本に向かってビームを放つ。シールドを張って防御する二人、そのまま一対一の戦闘となった。
◇ ◇ ◇
「二人とも……戦っているんだ」
呟く芳佳。彼女は医務室の窓から外の戦況を眺めていた。兄と兄の友人がネウロイを相手に赤城や艦隊を守るため戦っているのに芳佳は何もできずにいる。
(私は何も出来ないの?。私だって……お兄ちゃんを、坂本さんを……みんなを助けたい)
薄暗い医務室の中で俯く芳佳。その時、カチャカチャという音が芳佳の耳に入った。音がした方へ目をやると、机の上で医薬品の入っている瓶が艦の振動によりぶつかり合って音を立てていた。机には他にも包帯、ガーゼ等が並んでいる。
(私は戦えないけど……これなら!)
芳佳は決意し、診察台から立ち上がった。
感想、誤字脱字報告待ってます。