ストパン1期1、2話→空母1隻、駆逐艦6、7隻
ブレパン2話→重巡1隻、空母1隻、駆逐艦4隻
後、ブレパンでは何故か三航戦の司令が中将だったり、三航戦の司令に設定されている中将が2人いたりする。
1944年9月、ドーバー海峡――
扶桑皇国海軍遣欧艦隊所属の空母――赤城型航空母艦“天城”は、約2日間停泊していた第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』基地の港を出港した。
同基地で受け取った機材と、戦闘隊長として第504統合戦闘航空団『アルダーウィッチーズ』に招聘されている竹井醇子扶桑海軍大尉をロマーニャへ届けるため、ガリアを経由して地中海方面へと向かう。
4月下旬。補給任務と反攻作戦参加の為、ブリタニア方面へ派遣されていた空母“赤城”を旗艦とする戦隊。その残存艦である陽炎型駆逐艦“雪風”もまた、天城に追随していた。
そして、天城には竹井大尉の他。501の解散に先んじて、帰国の途に就いた坂本美緒扶桑海軍少佐以外のストライクウィッチーズも乗艦している。
「わぁ~♪海風が気持ちいいねぇ、リーネちゃん!」
「うん、この潮の香り。なんだかホッとするね♪」
天城の甲板では、2人のウィッチが朗らかな表情で海を眺めている。扶桑海軍の宮藤芳佳軍曹と、ブリタニア空軍のリネット・ビショップ軍曹――通称“リーネ”だ。
心地好い海風に頬を撫でられ、芳佳は満足げに喉を鳴らす。
リーネの方は初めての空母乗艦だったはずだが、満更でもなさそうだ。
「あれ?あそこにみんな集まってるよ?」
何気無しに首を回らせた芳佳の視線の先に、同じく甲板まで出てきていたウィッチーズの姿があった。
リーネも、「あ、ホントだ」と輪を作って談笑している戦友達の姿を認める。
ミーナが竹井経由で艦長に頼み込み、なさ501のメンバーは揃って天城に乗艦隊させてもらえることになったのだ。
「お、芳佳とリーネかぁ」
話に混ぜてもらおうと、芳佳、リーネは小走りで駆け寄ってきた。最初に2人の存在に気付いたのはハルトマンだった。
「みんなで集まって、一体何をしているんですか?」
小首を傾げつつ、芳佳は仲間ひとりひとりの顔に視線を走らる。
改めて挨拶を、と竹井や天城の艦長がいる艦橋へ向かったミーナと優人――坂本不在時、彼は戦闘隊長を代行することとなっている――以外は揃っていた。
「ウィッチーズが解散した後、どうするかって話してたんだよ」
まずシャーリーが芳佳の質問に答え、バルクホルンが言葉を続ける。
「短い間だったが、力を合わせてやってきたんだ。気に掛けないほど、私は無粋ではない」
「トゥルーデはこう見えて心配症だからさ。離れ離れになるみんなのことが、心配で堪らないんだよ」
と、ハルトマンが横から茶々を入れてきた。相棒をからかいつつも、彼女は嬉しそうだった。
以前のバルクホルン――クリスの件を引きずっていた彼女なら、こういった集まりに参加することも、戦友達との別れを惜しむこともなかったことだろう。
宮藤兄妹のおかげで、バルクホルンは段々と良い方向に変わっていった。ハルトマンは、優人と芳佳に一生頭が上がらない心境だった。
「んなっ!?何を言うハルトマン!私は、そんなこと!」
「ん~?照れなくてもいいじゃん、トゥルーデ」
「うっ!……まったく、お前というやつは……」
クスクスと笑声を漏らすハルトマンにつられて、他のウィッチ達も微笑ましげに笑い出す。
とてもじゃないが、口でハルトマンに勝てる気がしない。バルクホルンは悔しげに歯噛みする。
「芳佳と優人は、この天城に乗ったまま扶桑まで帰るんだよね?」
「うん、そうだよ」
確かめるように訊くルッキーニの質問に、芳佳はすぐさま首肯する。
「帰ったら家の診療所のお手伝いと一緒に、治癒魔法の修行やお医者様になる為の勉強をするんだ」
「そうか。私もお前の治癒魔法で、この命を助けてもらったからな。お前とお前の兄さんには、今でも感謝している」
無茶な戦い方が元で負傷した自分を必死に助けてくれた宮藤兄妹に、バルクホルンは改めて感謝の言葉を述べた。
「その素晴らしい力で、多くの人達を救ってやってくれ」
「はい、ありがとうございます!バルクホルンさん!」
屈託のない笑顔を浮かべ、芳佳は元気良く返事する。その眩しい笑顔に見つめ返され、バルクホルンはポッと頬を染める。
「ところで、皆さんはこれからどうするんですか?」
「私はもちろん、ガリアで降ろして頂きますわ」
芳佳の質問に対し、真っ先に応えたのはペリーヌだった。
「ガリア貴族として、祖国復興の義務がありますから。大忙しですわ」
やれやれと肩を竦めるペリーヌだが、その表情から憂い等は感じられない。
これからは自由ガリア空軍のペリーヌ・クロステルマン中尉としてではなく、侯爵家の新たな当主としての日々を送ることになる。
パ・ド・カレーの新領主は、“高貴なる義務”を果たしていくことだろう。解放されたガリア、そして自らを慕う領民達の為に……。
「あ、あの……」
ペリーヌに続いて、リーネが口を開いた。僅かばかり逡巡する仕草を見せつつも、新たなパ・ド・カレー領主へ目線を定める。
「私もペリーヌさんと一緒に、ガリアに連れて行ってくれませんか?」
「えっ?あなたが、どうしてガリアに?」
ブリタニアウィッチの唐突な申し出に、ペリーヌは眼鏡の奥の目を丸くする。
リーネは、ブリタニア空軍戦闘機軍団隷下部隊所属の航空ウィッチ。といっても、彼女は基礎訓練を終えた後、いきなりたさ501へ派遣されたため、原隊には行ったことがない。
501が解散になった今、リーネはいよいよブリタニア空軍の原隊に配属されるか。或いは、ロンドンの実家へ戻るとばかり思っていた。
しかし、それがどうしたことか。彼女は自分にガリアへ連れて行ってほしいと言っている。
「私は、ずっとブリタニアを……みんなを守りたいと思って頑張ってきました」
リーネは、ガリア行きを希望する理由を語り始めた。彼女の碧い瞳には、決意の火が煌々と灯っている。
ガリア上空に存在していた巣が消滅した現在、ブリタニアが直接ネウロイの襲撃を受けることは無くなった。
そして、ブリタニア連邦内の優秀なウィッチを集めた部隊――第11統合戦闘飛行隊『HMW』等――が、前線に出られるようにもなった。
自分が戦わなくても、もう大丈夫。そう感じたリーネは、ブリタニア空軍のリネット・ビショップ軍曹としてではなく、リネット・ビショップというひとりの人間として出来る事をしていきたいと考えていた。
「……なので。私で良ければ、ペリーヌさんと一緒にガリア復興のお手伝いをさせて頂けませんか?」
「――っ!?」
リーネの想いは、ガリア奪還に次ぐガリア復興を悲願としているペリーヌにとって非常に嬉しく、また頼もしいものだった。
感極まり、瞳から涙を溢れさせてしまいそうなのを必死に堪え、パ・ド・カレーの新領主は掛け替えのない友人の手を取った。
「ありがとう、リーネさん!私こそ、よろしくお願い致しますわ!」
涙声になりながらも、ペリーヌは感謝の気持ちをハッキリと伝える。
「そうすると、お前達は除隊することになるのか……」
と、バルクホルンが少々残念そうな口調で言う。
「せっかく、ウィッチとしての実力もついてきたのに……」
「あ……ごめんなさい。バルクホルンさん達は、これからも戦い続けるんですよね」
バルクホルンの言葉で、芳佳はハッと気付いた。ガリアが解放されたものの、ネウロイとの戦いが終わったわけではない。取り戻すべき領土も、まだまだ存在する。
ペリーヌと同じく国を終われたバルクホルン達カールスラント組は、これからも祖国奪還の為にネウロイと戦い続けなくてはならない。
対ネウロイ戦の最前線たる欧州から遠く離れた――謂わば、安全圏と言える扶桑本国へ帰ることが申し訳なく思えた。
「ああ、そうだ。だが、謝る必要などない」
表情を曇らせた芳佳を気遣い、バルクホルンは彼女を励ましの言葉を掛けた。それはペリーヌやリーネへ向けたものでもあった。
「直接戦う以外にも、人々の為に出来ることはいくらでもある。それはお前達の選んだ道だろう?だったら、それに誇りを持て!」
「「「はいっ!」」」
扶桑、ブリタニア、ガリアの若きウィッチ3人から元気の良い声が返ってくる。バルクホルンは満足そうに頷いた。
「んで、そっちの2人とミーナ中佐はカールスラント戦線か。キツそうだなぁ~……」
ふと爆乳リベリオンウィッチが話に割り込んでくる。昨日、優人の件で堅物大尉を密かにライバル認定したシャーリーだが、それでバルクホルンとの仲が険悪になったり、一方的な悪感情を抱いたりはしなかった。そこが彼女らしいところだ。
「当然だ。それが元々、私達の目的だからな」
毅然とした態度で応えるバルクホルンを余所に、シャーリーはハルトマンへ目をやる。
「ハルトマン。ちゃんとバルクホルンの面倒見てやれよぉ~♪」
「ふふ~ん♪任しといて!」
ハルトマンは悪戯っぽく笑うと、親指をグッと立てて見せた。
「おいっ!逆だろ、それは!」
「そっかな?」
シャーリーは、すぐさま反論するバルクホルンを見てニヤリと口角を吊り上げた。
「そうだ!大体貴様が人の事を言えた義理か?リベリアン!私物扱いで複葉機を持ち込むような常識外れが何を言うか!」
バルクホルンの言う複葉機というのはウォーロック暴走の折、沈みかけた赤城から坂本とペリーヌを救出する活躍を見せたあの『シルフィー・ソードフィッシュ』のことだ。
近隣の基地で廃棄となった機体をシャーリーが連絡機という名目で入手し、私物化した雷撃機である。
シャーリーは、自ら整備したソードフィッシュを手離したくなかったらしい。艦長に直談判し、なんとか天城の艦内に格納させてもらっていた。
「いいだろ、別に。この艦は空母なんだし、着艦も出来るよ?」
「そういう問題か!」
「あはは……それで、シャーリーさんはどうするんですか?」
“グラマラス・シャーリー”と堅物大尉の相変わらずなやり取りに苦笑しつつ、芳佳は訊ねる。
「シャーリーはねぇ~♪アタシと一緒にロマーニャ行くんだよ!ロマーニャのパスタとピッツァ、食べてもらうんだからぁ!」
シャーリーの代わりにルッキーニが応えた。大好きなシャーリーに故郷を案内出来るので、とても喜んでいる。
「おう!楽しみですだなぁ♪ま、しばらくはロマーニャでゆっくりするさ♪」
「ちょ、ちょっと待て!リベリオン司令部から帰還命令は来ていないのか?」
「さぁ?聞いてないぞ」
と、事も無げに言うシャーリーに、バルクホルンは軽く目眩を覚えた。
規律を重視し、ある種の生き甲斐としているバルクホルンには、あまりショッキングな事実であった。
「し、信じられない。どうして、これで組織が成り立っているんだ?リベリオン、恐ろしい国かもしれん」
「ま、あんまり遊んでると、何処飛ばされるか分からないから。ほどほどにしておくけどね」
規律も規則も存在しない無法者の軍隊を想像して、頭を抱えるバルクホルンに対し、シャーリーはさばけた笑顔で応じる。
「え、ええと……サーニャさんとエイラさんはどうするんですか?」
堅物大尉とリベリアンのやり取りに苦笑気味なリーネが、取り繕うように話題を変える。
「エイラと2人でスオムス軍基地に行って、そこからオラーシャへ向こうルートを探してみようと……」
「ソウダゾ!サーニャは扶桑にナンカ行かないからナ!べ~っ!」
「へ?私、何か悪いことしました?」
自分を睨み、あっかんべーをするエイラの様を見て、芳佳は小首を傾げる。
「あ~……別に気にしなくてもいいと思うよ?」
「そ、そうですか……」
ハルトマンに言われ、取り敢えず芳佳は気にしないことにする。直後、わざとらしい咳払いが耳朶に触れる。
「扶桑と言えばですけど。坂本少佐とお兄さ……宮藤大尉はどうなさるか、聞いていらっしゃいませんの?芳佳さん」
咳払いはペリーヌのものだった。ガリア貴族の令嬢は、敬愛する上官立場がどうなるのか。それが気になって仕方がないらしい。
「え~っと……お兄ちゃんが、2人揃ってウィッチ養成学校の教官になるって言ってましたよ」
坂本はもちろん、優人も教官としては中々に優秀である。
501新人組である芳佳やリーネの指導において、実技を担当する坂本に対し、優人は主に座学を担当する。
「き、教官!?ね、ねぇ芳佳さん。その学校って、扶桑以外のウィッチでも入れるのかしら?」
「え?さぁ、私にはわからないですけど……」
「な、何とかならないかしら?その、あなたの推薦とか……」
「あ、あの……ペリーヌさん。ガリアの復興は?」
「くっ!そうでしたわ。口惜しい……」
リーネに言われ、ペリーヌは自分が何を優先すべきか再認識する。
心底の無念のようだが、ほんの一瞬とはいえ1分も経たずにガリア復興という目標が頭から抜け落ちてしまうのはいかがなものだろう。
ウィッチーズがガールズトークに華を咲かせている間に、入港予定のパ・ド・カレーが見えてきた。
「もうガリアに着くのか。早いな……」
ガリアの地を遠方に見据え、バルクホルンはどこか寂しそうに独り言ちる。
バルクホルン達カールスラントの3名は、ひとまずガリアに駐屯し、司令部からの命令を待つことになる。
これからの戦いでは、ブリタニアの戦い以上に気を引き締めなければならない。悲願であった祖国奪還はもちろん、自分の背後には、ガリアを復興を志すペリーヌとリーネ。そして、ブリタニアで療養中の妹がいるのだから……。
「考えてみれば、ネウロイとの戦いが終わった訳じゃないんだよな……」
シャーリーが、バルクホルンの隣にやって来た。堅物大尉言うところの“勝手気儘なリベリアン”は、先程までのお気楽さが抜け、真剣な面持ちとなっている。
「何を当たり前のことを言っている」
「いやさ。先に帰っちゃうみたいで、ちょっとね」
「仕方あるまい。ここから先は我々の問題なのだから……」
芳佳と似たようなことを言うシャーリーに、バルクホルンは身体を向ける。
「ペリーヌや芳佳、優人のように自分達のやるべきことをやる。それだけだろう?」
「あっははは!そりゃそうだ!」
バルクホルンの言葉を受け、シャーリーの表情に輝きが戻る。
「取り敢えず、あたしは休ませてもらうけどね~♪」
「お、お前は……501でも遊んでばかりだったくせに……」
501基地におけるシャーリーのフリーダムライフを思い出し、バルクホルンは改めて呆れる。
目の前のリベリオンウィッチは、自分の趣味――愛機のP51Dで音速突破に挑戦する他。ストライカーユニット、ソードフィッシュ、バイクの整備・改造――を優先し、軍務にはあまり関わらなかったのだ。
「でもさ……もし、また一緒に戦える事があれば。その時は力一杯戦うよ!」
「そうか。ああ、その時はよろしく頼む」
「…………ところで、話は変わるんだけどさ」
なにやら急に真面目な表情を作るシャーリー。彼女が口火を切るのと、ウィッチーズにミーナの集合命令が掛かったのは、ほぼ同時だった。
◇ ◇ ◇
10分前、天城艦内――
「はぁ……困ったわねぇ」
ガンルームにて、竹井は深い溜め息を零す。室内には、優人やミーナもいる。
正式な解散命令が下った501部隊の司令と副司令代理兼戦闘隊長代行の2人は、これから世話になる天城の艦長に挨拶するため、竹井と共に艦橋へ赴いていた。その帰りである。
「まったく、司令部も勝手だな」
と、優人が竹井に同調するような口振りでぼやく。口には出さなかったものの、ミーナも内心では彼に同意していた。
先程まで艦橋にいた3人は、艦長から総司令部の新たな命令を伝え聞いていた。内容は、竹井及び501への作戦参加命令だった。
ガリアにおけるネウロイの殲滅は認められたものの、カールスラントやヘルギガとの国境付近には、まだ多数の地上ネウロイが確認されている。
連合軍最高司令部は、ガリアが解放されて以降、欧州各地のネウロイの活動が徐々に沈静化し始めていた戦略的見地から、機に乗じて出来るだけ戦線を進めておくこと望んでいた。
ブリタニア、リベリオンの陸軍を中心とした地上戦力をガリアへ上陸させ、戦線の押し上げを試みる。
また、扶桑皇国海軍遣欧艦隊を中心とした連合軍海上戦力、カールスラント軍などが沿岸地域に展開、主力部隊の支援を命じた。
しばらくは快進撃を続けていた地上戦力だが、カールスラント国境――マジノ線直前にて、大型自走砲ネウロイの砲撃・敵航空戦力の奇襲を受けてしまい、前衛が壊滅。
ヘルギガ国境へ進出した別動隊も飛行ネウロイの襲撃に遭い、前進が困難になってしまう。
放っておけば、戦線を押し返されかねない状況下。連合軍西部方面総司令部は、最も前線に近い位置にいた天城及び旧501と竹井の作戦参加を決定。自走砲ネウロイの撃破と、ヘルギガ方面に展開している友軍への航空支援を命じた。
501は既に解放しているが、総司令部の言い分では『殆んどの隊員の原隊復帰前につき、指揮権は総司令部にある』とのこと。
「本当にごめんなさい」
竹井は申し訳なさそうな表情で2人に謝罪する。解散し、原隊へ復帰――一部は除隊扱い――するストライクウィッチーズの面々を気持ちよく送り出すつもりでいた彼女は、責任を感じていた。
優人やミーナはもちろん、一足先に扶桑へ戻った坂本にも申し訳が立たない。無論、竹井に責任があるわけではないが……。
「いいえ、あなたに責任はないわよ」
と、ミーナは軽く頭を振り、表情を曇らせてしまった竹井を励ます。
「それに上層部からの無茶な命令には慣れてるし……」
ミーナの話を聞きながら、優人は「急な作戦参加でも、マロニーやウォーロックよりはマシさ」と口に出しそうなのを堪えていた。
「でもそうなると、問題は他の子達よねぇ……」
「……なぁ、ミーナ」
可愛い部下達の事で、ミーナは物憂げな表情を浮かべる。眉を寄せて悩む隊長に、戦闘隊長代行は1つ提案を出した。
「なぁに?」
「天城は、もうすぐガリアに寄港する。作戦参加を希望しない連中は、パ・ド・カレーで降ろせないか?」
総司令部の命令に背くことはもちろん。連合軍地上部隊を見捨てる訳にもいかない。
せめて、除隊希望者だけでも巻き込むまいという扶桑海軍大尉からの上申である。
「……そうね、それがいいわ」
ミーナは一考したものの、優人の意見を受け入れる。次に竹井へ視線を走らせ、彼女にも確認する。
「竹井大尉、いいかしら?」
「はい、それで問題ありません。総司令部には、ガリア入港後に501へ通達したと伝えておきます」
「ありがとう。もちろん、私は参加させてもらうわ」
と、ミーナは作戦参加への意欲を示す。おそらくはバルクホルンやハルトマンも参加するに違いない。
彼女達カールスラント組にとっては、祖国奪還に繋がる作戦でもある。望むところだろう。
「もちろん、俺もな。上がった腕前見せてやるよ」
自信満々に宣言する戦闘隊長代行の言葉に、504の戦闘隊長を拝命している扶桑海軍ウィッチは、ニッコリと柔和な笑みを浮かべた。
「ふふっ♪ありがとう、頼りにしてるわ。“優くん”」
◇ ◇ ◇
時を現在に戻して、さらに5分後のガンルーム――
「よし!みんな集まったな!」
召集命令に応じたストライクウィッチーズは、即ちにミーナ達3人の待つガンルームへ移動した。
優人が全員の集合を確認すると、続いてミーナが総司令部の命令を伝えた。
「みんな聞いて!先程総司令部から、この天城及び私達ウィッチーズへ作戦参加命令がありました!作戦内容は、ガリアとカールスラントの国境付近に出現した大型地上ネウロイの排除と、ヘルギガ方面へ進出した連合軍地上部隊への航空支援です」
「えっ?ネウロイはガリアからいなくなったのではありませんこと?」
ペリーヌがキョトンとした様子で問い掛ける。二日前の501基地ブリーフィングルームにて、確かにミーナの口からそう聞いていたはずだ。
「そうね。でも、国境を越えたカールスラントには、まだネウロイの巣が存在しているわ」
「巣こそ無いが、ヘルギガやネーデルラントにも、多数ネウロイが跋扈している」
「他の占領地域から新たなネウロイがガリアへ再侵攻してくる可能性もあるの。そうなれば、元の木阿弥よ」
「そこで一番近くにいて体制の整っているウィッチ部隊。つまり、俺達と竹井大尉に指令が下ったということさ」
時折優人が合いの手を入れつつ、ミーナが説明を続ける。
話が進むに連れて、ウィッチ達の表情も真剣なものへと変わっていった。
「やれやれ、まったく司令部は勝手だね。いつものことだけど……」
「何を言うか!」
開口一番に不満を言ったハルトマンを、バルクホルンがすかさず叱咤する。
「カールスラント奪還作戦の先陣を切るようなものだ。私に異存はないぞ」
「私はそれでいいかもしれないけど。他の人はそうもいかないでしょ?」
バルクホルンをやんわり注意しつつ、ミーナはウィッチーズひとりひとりに視線を走らる。
「解散の報せを伝えたばかりで、本当に申し訳ないのだけれど……もう一度、みんなの力を貸してもらえないかしら?」
「今ネウロイを倒せるウィッチは、私達しかいないんですよね。だったら、私やります!」
「もう二度とガリアへ近づけさせるもんですかっ!この私の手で守ってみせますわ!」
「私も頑張ります!」
ミーナの問いに対し、まず芳佳が応じる。次にペリーヌ、リーネの順で作戦参加の意を表明した。優人やミーナが、パ・ド・カレーで降ろそうと考えていた除隊組の3人だ。
作戦から外そうとした一方で、心の何処かで彼女達が共に戦ってくれるのを期待していた優人は、我知らず口元に笑みを湛えた。
「…………私もやります」
と、サーニャが小さく手を上げ、控え目な声音で作戦への参加を希望する。
「えっ?サーニャさん?」
「ちょ、ちょっとサーニャ!ナンで、ツンツンメガネなんカに」
それぞれ異なった反応を示すペリーヌとエイラに、サーニャは自分の気持ちを伝えた。
「祖国を守りたい気持ちは私も同じ、私もウィッチーズだから……」
「……そうですわね。頼りにしてますわよ」
ペリーヌはサーニャに歩み寄ると、甲板でリーネにしたようにオラーシャウィッチの手を取った。
ガリアウィッチの柔肌の感触と体温が伝わり、サーニャは雪のように白い頬を赤く染める。
「もうっ!仕方ないナ!サーニャがやるなら、ワタシもやるゾ!」
幾ばくの嫉妬心をペリーヌに対して抱きながらも、エイラも作戦に志願する。
「ま、ここまで来ちゃったら、文字通り『乗りかかった船』ってやつだよな。あたしも付き合うよ」
「みんなでもっかいお仕事♪おっしごとぉ~♪」
シャーリーとルッキーニもやる気満々だ。結局のところ、ウィッチーズ全員が参加することとなったらしい。
ミーナと優人は満足げに、またはホッと安堵したかのように微笑んでいた。
一方の竹井は、ストライクウィッチーズの結束力の高さ。そして、仲間を思いやる彼女達の姿に胸を打たれていた。
自分が戦闘隊長になる第504統合戦闘航空団『アルダーウィッチーズ』も、こんな部隊にしたい。“リバウの貴婦人”は心からそう思う。
「よし!我々501は、ガリア・カールスラントの国境線に出現した大型地上ネウロイをはじめとする敵戦力の殲滅と、連合軍地上が展開しているヘルギガ方面へ航空支援に向かう!」
戦闘隊長代行が高らかに宣言すると、ウィッチーズから「はいっ!」と声を揃えて応えた。
西部におけるストライクウィッチーズ最後の作戦が始まろうとしていた。
◇ ◇ ◇
同時刻――
赤城型航空母艦4番艦“愛鷹”――カールスラント名“ドクトル・エッケナー”の甲板では、帝政カールスラント皇室親衛隊第1独立戦闘航空団『インペリアルウィッチーズ』第1飛行隊が発艦態勢に入っていた。
第1飛行隊は、グレーテル・ホフマン親衛隊大尉が飛行隊長を務める航空歩兵飛行隊である。飛行隊メンバーは、ホフマンを除いて5名。うち2名は予備要員であり、ホフマンが艦の防御を命じた上で待機させている。出撃するのは飛行隊長を含めて4名だ。
既に隊員達は携行火器のMP43を装備し、初弾も装填済み。ストライカーユニットも全機が魔導エンジンを始動させている。
彼女達の機体は、艦上ストライカーユニット『Bf109T-1型』。カールスラント国防軍にも配備されているユニットだが、こちらは親衛隊独自のカスタマイズが成されており、外見や名称が共通ながら性能は幾分異なっている。
これは『インペリアルウィッチーズ』に配備されている全てのユニットに言えることで、改造の度合いや性能の詳細を知ってる――知ることが許されているのは、親衛隊内でも限られている。
ホフマンは、漸くこの時が来たかと言わんばかりに薄ら笑いを浮かべていた。
「間違いありません!“例の個体”は巣を離脱!ガリア方面へ向かっています!」
耳に装着したインカムから状況を伝える部下の声が聞こえてくる。声の主は、親衛隊中尉のアンナ・ターレスである。
「ガリアへ?“件の力”を駆使して失地回復を狙うか?」
「しかし、ホフマン大尉」
我が意を得たりというようにホフマンは嬉々としている。そんな上官に対して不安を覚えたターレスが、戒めるように言葉を続ける。
「ヤツを鹵獲するのであれば、アインツベルン大佐がお戻りになられるまで待った方が――」
「そうしている間に逃げられでもしたらどうする?」
鬱陶しそうに部下の言葉を遮り、ホフマンは声高に続けた。
「“例の個体”がどんな存在であろうと、“件の力”がなければただの中型ネウロイに過ぎない!その程度の敵に大佐の手を煩わせては親衛隊の名折れだ!」
かような発言にますます不安の色を濃くするターレスだが、それ以上は何も言わなかった。
ホフマン相手に食い下がったところで無意味。彼女を制することが出来るのはこの世でただひとり。悠貴・フォン・アインツベルン親衛隊大佐だけだ。
「グレーテル・ホフマン!行くぞ!」
声と共に魔導エンジンの回転数が上がる。ホフマンの『Bf109T-1型』は甲板を滑走し、空へと飛び発っていった。
皆さんはRtBの第1話先行配信観ましたか?私は観ました!最高でしたよ!←語彙力不足
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