光の粒子となって消えた先には、玉座に座っているモモンガさんが見えた。
(お!ちょうど原作が始まる前ってところか)
てっきり、すぐに憑依するものだと思ったのだが、異世界に転移するまでお預けのようだ。
ん?モモンガさんの後ろで原作開始を秒読みしていると突然モモンガさんがしゃべり始める。こんなの原作になかったはずだが?
「もし神様がいるのだとしたら、俺の願いを叶えてくれないか。どこの誰でもいい、消えてしまうぐらいならこのナザリックを頼む!悪の組織でも正義の味方でも何でもいい。また再びこのナザリックを…アインズ・ウール・ゴウンを世界に轟かせてくれ!」
…ああ、なるほど。神さまも粋な計らいをしてくれる。
まさか、俺がアインズ様から正式に受け継ぐ事ができるなんて、夢にも思わなかったぜ。
俺は今この瞬間…本当の意味でナザリックをモモンガさんから受け継ぐことができたような気がした。
0時00分00秒
サービス終了の時間が迎え、ようやく原作が始まろうとしていた。
俺は、今日この日までナザリックを支え続けてきたモモンガさんの願い事を聞き届けてあげることにした。
(その願い確かに聞き入れた。君の…いや、君達のナザリックは俺が受け継ごう。世界中の知性を持つありとあらゆる者に知らしめようじゃないか。絶対不変の伝説アインズ・ウール・ゴウンの存在を!)
え…?と後ろを振り向くタイミングで俺がモモンガさんに憑依する。
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モモンガさんの意識が現実にログアウトした。その代わりとして、このオーバーロードの体には俺の意識がログインしました。体の具合を確認しよう玉座から立ち上がろうとすると、アルベドが急に迫ってきた。
「どうかなされましたか?モモンガ様」
ふわりと女性特有のいい匂いが鼻腔をくすぐる。
「ど、どうしたんだ?アルベドよ!?」
とりあえずモモンガさんはこんな口調だった筈!
「先程まで、ここには誰かに話していたようでしたので。もし、もし何かあるのならばこのアルベドにお話してください。この矮小な身でございますが、モモンガ様のためならば如何なる命令も聞き届ける所存でございます」
「えっ!?い、いや!?大丈夫だぞアルベドよ!?」
やばい!普通に現実でこんな美人に迫られることなんて無かったから心臓がバクバクいってる。まあ、骸骨なんで心臓は無いんですけども。
とりあえず、次になんて言えばいいのだろうか?本来のモモンガさんならばなんて言うのだろうか?胸を揉ませろ?
いや~!それはない!ここはゲームの中じゃないっていうのは原作知識を持ってるから知ってるし、分っててそんなことするのはタダの変態じゃないか!?
あれじゃないこれじゃないと思考し続けていると、傍に控えていたセバスが助け舟を出してくれた。
「失礼ですがアルベド様。少々モモンガ様に近寄り過ぎではございませんか?…モモンガ様も少々お困りになられているご様子でございますし」
「ああっ!!!セバス!それはどういう意味ですか!?」
何がアルベドの琴線に触れたかは知らないが、セバスとアルベドの間に一発触発の雰囲気のが流れ出ていた。
これはイカン!?ナザリックを任されて早々に、仲間割れとか洒落にならないから。
「落ち着けアルベドよ!セバスの言う通り少し近すぎる。私はもう少しおしとやかな女性が好みだぞ」
「おしとやか!?申し訳ございませんモモンガ様!」
アルベドは慌てて2,3歩後ろに下がる。
「よい、お前の行動は全て私を心配してのことだ。それを理解しているからこそ、お前のすべてを許そう」
その言葉を待っていたといわんばかりに、先程までのテンションが一気に下がり。
「…ありがとうございます。…ならば、これから私が申すことも許してくれるでしょうか?」
え…?なに!?アルベドがこんなにシリアスになる展開なんてそうそうないよね?それもこんな原作が始まった直後はヒロインならぬヒドインを演じていたはずなんだけど?
俺が口を開こうとする前にセバスが一歩前に出て先ほどよりも鋭い視線をアルベドに飛ばす。
「アルベド様!一体何を言うおつもりですかな?事と次第によっては守護者統括であるアルベド様とて容赦は致しません!」
再びアルベドとセバスの一発触発の雰囲気のが流れ出る。ちらりとセバスと共に控えさせていたプレアデス達を見てみると、彼女らもこの状況にオロオロと取り乱している。
それが逆に助かった。人間慌てたときは、自分以外の慌てた人を見ると安心して冷静さを取り戻すことができる。
「よせ、セバスよ!先程言った通りアルベドの全てを私は許そう。何でも話すがよい」
その言葉に、アルベドは深々と頭を下げる。数秒後、意を決したように頭を上げ口を開く。
「大変申し訳ございませんが、貴方様はモモンガ様ではございませんね!!?」
たった一言…アルベドの放ったたった一言がこの玉座の間を凍てつかせた。
「あ…いや…それは…」
まさかこんなにも早くバレるとは思はなかった。何か間違ったことをしたのか?
いや…、だがよく思い出せば、アルベドは原作でもタブラに変身したパンドラズ・アクターを見破っていたしな。
俺が考えを纏めていると、唐突に背筋が寒くなった。
その原因だと思われる方に視線を向けようとした瞬間に、この玉座の間に“ドオォォォン”と強烈な炸裂音と突風が巻き起こる。
「アルベド様…いや、アルベド!!!貴方は急に何をおしゃるのですか!?その言葉はいささか不敬がすぎますぞ!いくらモモンガ様がお許しくださろうと、私は許すことができません。いくら後でモモンガ様のお怒りを買うことになったとしても、今この場でアルベド!貴方を断罪させてもらいます」
「そう、ええ…それがこのナザリックにいる者として当然の考えよね。この地を去られた至高の41人の中で、最後までこの地に残られた唯一の御方を貶めるような発言など、認めていいはずがございません」
「そこまでわかっているのならば、何故あのようなお言葉を!?もし、もし貴方のせいでモモンガ様が他の御方々のように去られてしまったら…その場合はどうすおつもりなのですか!!!答えなさいアルベド!!!!!!」
決して構えた拳を下げず、アルベドの一挙手一投足に全神経を集中させている。恐らく、次にアルベドが不敬と取れる発言をした瞬間に、すぐさま攻撃するためだろう。
「その場合はこの守護者統括という地位を返上し、このナザリックから去る…いえ、命を投げ捨てるつもりです。ですが!それでも私は…今この玉座に座っている御方をモ「もうよい!よせ、アルベド!セバス!」
カーンとギルド武器スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを地面に叩きつける。
危なかった。セバスはもう既にアルベドの目の前まで拳を振りぬいていた。
もし、後もう少し止めるのが遅れていたならば、アルベドは死にはせずとも大怪我を負ってしまっただろう。
「アルベドよ、先の質問に答えよう。だが、ここで話すのはイカン。この事は守護者各員にも伝えるべき案件だ。故にアルベドよ、お前に命令を下す。第四と第八を除く全ての守護者を第六階層の闘技場に集めよ!そしてセバス!お前には地表の調査を任す。それと、ついでに少し頭を冷やしてこい」
「「はっ!」」
アルベドとセバスは先程までの険悪な雰囲気を一切見せず、与えられた命令をこなすため、すぐさま部屋を出る。
そして、部屋に残ったプレアデスに先程のセバスが暴れた後始末を頼み、玉座の間を後にする。
(はあ、何これ辛すぎるんだけど!?てっきり転生した後は玉座にでも座って雑魚蹂躙パターンで楽々なんて考えてたんだけどな。やっぱり、現実は厳しいぜ…)
ひとまず呼び出した本人が一番最後なのはどうなのだろうか?っていうか、守護者全員がそろっている場に偽物の俺が登場するって考えるだけで胃が痛い。
「ええい、やめだやめだ。ネガティブ思考禁止!そうだよ、俺は今はこのナザリックを支配する王!絶対支配者アインズ・ウール・ゴウンなんだ!いざとなれば神様から貰った特典を使えばいいだけのことだしな!うん、それで万事オッケー!」
そうと決まれば決意が揺るがぬうちに闘技場まで移動しよう。すぐさま転移の魔法を使用して移動する。
「お、おぉぉ!これが魔法か!?やばい!マジで異世界に来たって感じがする!」
興奮で舞い上がりそうになったが、その感情を搔き消すようにスキルが発動する。
「っち!原作のアインズ様もこのスキルに助けられていたけど、嫌ってもいたな。これがパッシブスキルの厄介なところか」
闘技場に着くと、アニメで見ると生で見るのとの差を思い知らされる。作られた夜空と言われてもまるで違いが分からないレベルの完成度に言葉を失う。現実でもこんな星空は滅多に見たことがない。
あまりに綺麗な星空に言葉を失っていると、貴賓席から双子のエルフがこちらに向かって走ってくる。
「モモンガ様!本日はどのようなご用件で?」
「アウラか、実はここに守護者たちを呼んでいる。後しばらくすれば皆が集まる予定だ」
え~!と不満そうな顔をするアウラ。恐らく原作通りシャルティアが来るのが嫌なのだろう。
だが、原作知識にばかり頼りにしていてはならない。実際に、さっきはアルベドとセバスが戦闘を開始するという事態が起きたのだから、この先は自分の頭で考えて動かなければならない。
そう改めて決意したその時、闘技場内にゲートが開かれる。
いよいよだ、こんなにも初っ端から正体をバラす事になるなんて思いもよらなかったけど、既に頭の中でストーリーは出来上がっている。
もう何も怖くはない。