とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
「自分でも何かを残してみたい」そんな思いから生まれた本作品初投稿の拙い文ですがどうぞよろしくお願いします。
2018/5/23 一部修正
プロローグ
~エミル・クロニクル・オンライン~
とある「えこ民」の物語 プロローグ
かつてとある物語があった。
ハートフル・オンライン・RPGと銘打たれたMMORPG「エミル・クロニクル・オンライン」略称ECO。
2005年にリリースされたこのゲームは、他のオンラインゲームとは違い、ゲーム性や戦闘バランスではなくアバター性を重視して、また他にない特色として服飾ブランドとコラボするなどの独自色を打ち出し、装備箇所も細分化され、「頭」「顔」「胸のアクセサリー」「上半身並びに下半身服」「靴」「靴下」「背中」「エフェクト」「右手」「左手」と色々あり、その装備数は色違いを含めると一万種類を超えると言われ、髪型やアバターの顔も数多く、プレイヤー達をして自身と同じアバターを見た事がないと言わしめるに至っていた。
そしてプレイヤーが選べる種族も、プレイヤー自身が最初に降り立つエミル世界の住人で、人間と同じ見た目のエミル種族。
天界とも言われるエミル世界の平行世界タイタニア界の住人で、天使の輪と羽をもつタイタニア種族。
機械の侵略者との戦争で滅亡の危機に瀕しているドミニオン界の住人である、悪魔の羽と尻尾を持つドミニオン種族。
機械の侵略者でありながら人の心が芽生え、自らの種族に反旗を翻したDEM(デウス・エクス・マキナ)の4種族の中から選ぶことが出来るようになっていた。
またこのゲームにも一部のMMOと同じようにプレイヤーと一緒に冒険するパートナーが存在しているが、此方もまた独自色を打ち出し、リアルマネーを使って手に入れる所謂ガチャ製のパートナーの他にも、常設化したイベントをこなして手に入る、無課金パートナーも存在し、後期の無課金パートナーはガチャ制のパートナーにも引けを取らないほどの可愛さと強さを持つ子もいるほどであった。
だが盛者必衰、何事にも終わりは訪れる。
2017年5月15日プレイヤー達にとっては突然の8月31日サービス終了告知。
あるものはその突然の告知に悲しみ、またある者はゲーム内で「却下」「おことわりします」などの巻物を広げデモ活動を起こし、そしてある者は今出来る事をと署名活動や、クラウドファンディングの為の交渉を持ちかけたりしていた。
然しやはりと言うべきか、ユーザー達にサービス終了は止められるはずもなく時間は進んでいく。
だが運営自身も思うところがあったのか、ストーリーの完結編、ガチャ製パートナーの貸し出し、ストーリークリア後に挑戦できる新たなコンテンツの実装など、三か月の間怒涛のアップデートラッシュを行っていた。
そして運命の8月31日ゲーム最終日、多くのプレイヤーが集まり最後の時を迎えていた。
中には昔に引退していた者、終了告知を受けてこのゲームを知り、新たに初めた者までがおり、初心者の街であるアクロポリス、かつての貴族街と言う設定のアップタウン、そして貧民街である下町のダウンタウン。
アクロポリスの四方に存在する国家ファーイースト、ノーザン、モーグ、アイアンサウス。
その更に外に存在する都市、トンカとカーマインブリック。
モーグの先に存在する天まで続く塔から移動できる二つの平行世界、タイタニア界のアクロポリスであるエル・シエル、ドミニオン界の最後の砦であるウェストフォート。
またアップタウンから行くことが出来る夢の世界であり、ECOのマスコットキャラクターであるクマのぬいぐるみ『タイニー』が住むタイニーアイランド。
各々が思い出深い場所で過ごしており、チャットではそのサーバー内でならどこでも聞こえる
所謂世界チャットで運営に対する感謝の言葉、このゲームや自身のアバターへの別れの言葉などで彩っていた。
そしてここにもその中のプレイヤーの一人がいた。
その者はリング、他のオンラインゲームにおけるギルドやクランと言ったものに所属している者同士で最期の時を迎えていた。
その者達も他の皆と同じように、時々世界チャットで発言しながらゲームやリングで行っていた活動、狩り等の思い出を語り合っており、またふと目に入ったかつて引退したフレンドやSNSのフレンドを見つけては挨拶や、互いの想い出を語りあっていた。
そうして語り合っているうちに運営からのメッセージが訪れる。
今まで12年間エミル・クロニクル・オンラインをご愛顧いただきありがとうございました、そして0時を持ちましてサーバーをシャットダウンさせて頂きます、と。
そして0時が訪れるが……
サーバーが落ちない、チャットでは皆がロスタイムだと騒ぎ最期の言葉を残していく。
ありがとう、愛してる、またね、『タイニー』の名をもじってまたいに~、と……そうしてチャットに言葉を残していくうちにアバターが一人また一人と消えていく。
その中には当然リングの仲間やフレンド達も居て、次は私かと思い始める。
果たしてその通り順番が回ってきたらしく急にゲームが重くなった後画面がログイン画面に戻り、その中央には『ネットワークが切断されました』の文字。
一縷の望みを懸けて再度ログインしてみようとするも当然のごとくシャットダウンしているサーバーには繋がる訳もなく。
暫く呆然としていたが社会人であり明日も仕事がある身としては、いつまでもこのままという訳にもいかず就寝しようと思い行動する。
寝床に入るが今日は寝られるだろうか、明日の仕事は身に入るだろうかと心配しながらもいつの間にかうつら、うつらと意識が遠くなっていった。
ユサユサと体が揺さぶられる。
何か声も掛けられているようだ。
微睡みから目覚めるがまず明るいと感じるが、すぐに違和感を覚える。
カーテンが閉められている部屋にしては明るすぎると言う物だった。
そして私は『
元々一人暮らしのはずだし、昨日来客があったということもない。
すわ泥棒かと慌てて飛び起きるが、まず目に付くのが道だ、何故か道の往来にいるらしい。
そしてどこか見覚えがある風景だ、どこだったか。思考の渦に陥りそうになるが。
「やっと起きたかい?」
その声の主に向きかえり、すみませんと声を掛けようとして停止する。
まず目に付くのがどことなく中世のような恰好、頭は顔が見える西洋兜、顔は若い男性、歳は20代前半のように見える。
次に胴体、布製の服に鎧を纏っている。
ここまでならまだいい、まだコスプレで通用するだろう。
最大の問題である腰、長剣がそこにはあった。
鞘には納められているがその重量感と言いどう見ても本物に見える、どう考えても銃刀法違反であった、現代であるならば。
パッと見、危険人物ではあるが、ならば逆に何故という思考になる。
そもそも命を狙われる覚えもなし、仮にこちらを殺そうとするにしても何故起こす必要がある。
不合理極まりない。
さてどうしたものかと考えるも、またもや青年に声を掛けられる。
「えぇと、それで君はどうしてこんな所で寝ていたんだい? いくら此処が治安がいいと言っても外で寝ると風邪を引いちゃうし、自称【
……とりあえずこの青年が人が好い、又は天然っぽいのは分かった。
それと自称警備員とは何だ、警備員は自称するものではないはずだが。
それでもこちらの警戒感が伝わっているのか、青年も気を使って言葉を選んで発しているようだ。
取りあえずは会話を試みるべきか。
「ええ、私もそう思いますし、昨日確かに室内で寝ていた筈なのですがどういう訳かこんなところに……
それとすみませんが此処はどこなのでしょうか?」
そう言って改めて辺りを見回してみる。
知らないはずなのに既視感があるこの光景を。
取りあえず目に付くのは三つの大きな建物だ。
一つ目は真っ黒い建物、教会のようにも見える。
二つ目は一つ目の白いバージョンの建物だ、本当に色だけが違うように見える。
三つ目も白い建物だが、こちらはまるで宮殿のようだ、少なくともこの宮殿に関しては日本国の建物ではないはずだ。
まぁ日本の隅々まで見た訳ではないので、存在していることに気付いていなかった可能性もあるが……
だが次、青年が発した言葉によってその認識は正しかったという事は証明されることになる。
但しそれ以上の混乱を私に植え付ける結果にもなるのだが……
「ええ! 君、誘拐でもされたの!?でもその割には怪我や衣服の乱れもないし……
ああ、そうだった場所が判らないんだったね。
此処は自由交易都市の【
……通りで既視感がある訳だ、昨日も画面越しとは言え見ていたのだから。
違うそうじゃない、確かに現実にもアクロポリスという都市は存在していたが、今見えている建物からするとエミル・クロニクル・オンラインでプレイヤーが最初に訪れる
アクロポリスで間違いない。
ならばあの黒い教会は黒の聖堂、白い教会は白の聖堂、宮殿はギルド元宮か。
違うそうでもない、間違ってもいないがまず何故サービス終了したゲームの最初の都市にいるかだろうに。
「あぁ、君。 大丈夫かい?」
私のあまりもの狼狽え様に青年が心配してくれているようだ。
然し大丈夫かと聞かれても大丈夫じゃないです、と答えるしかないこの状況。
流石に声に出す訳にもいかないが。
「え、えぇ ちょっと混乱してしまって。 あの申し訳ありませんが、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、クトゥルフ神話という言葉をご存知ですか?」
もっと他に聞くことがあるかもしれないが、咄嗟に出た質問がこれだった。
因みにガンホー・オンライン・エンターテイメントはラグナロクオンライン、パズル&ドラゴンズで有名ではあるがエミル・クロニクル・オンラインの運営も行っていた会社である。
そしてクトゥルフ神話はエミル・クロニクル・オンラインがモチーフにした作品である、ハートフルどこ行った。
「ガンホーという言葉は聞いたことないかなぁ? クトゥルフ神話に付いては分からないけど、でもその名前って次元クジラと同じ名前だよね? エミル君達と、あの警備員さん達が追い返したっていう」
その警備員というのを、ってちょっと待て彼は今凄い事を口走らなかったか?
次元クジラと確かに言ったな、しかもエミル達と警備員、恐らくは協力者たちの力で追い返したと。
クジラ自体はECOの世界においては昔から存在していたが、直接決戦となるのは僅か三回、しかもエミル達と協力して事に当たるのはサービス終了前のアプデストーリー最終章の「決戦~つなぐ想い~」のみ。
つまりこの世界は少なくとも既に英雄たちに救われた後の世界なのか。
という事は先程から言われている警備員とは即ちプレイヤー達の事なのか?
ゲームにおいても、何もせずにアップタウンにアバターを放置している状態を「アップタウン警備員」と称していた。
そのことを彼が言っているのであれば辻褄が合う。
その時彼がハッとした顔をする、何かあったのだろうか?
「そういえばまだ名前も名乗ってなかったね。 僕の名前はアラン、混成騎士団北軍に所属してるんだ、君の名前も教えてもらっていいかな?」
そういえばまだ挨拶もしていなかったなと思い、名乗ろうとしてまたもや停止することになる。
今の今まで疑問にすら思っていなかったが
何故思い出せない?
先程まで部屋で寝ていただのなんだのと言っていたのに。
ゲームの事は思い出していたのに自分の事を思い出せないのはおかしいだろう。
そういえば自分の仕事は何だったか、家族構成、友人はどうだったか、そうやって考えていくと自分に関する事柄のみ思い出せないという事に気付いた。
「どうしたんだい?急に黙り込んじゃって」
そう彼、アランから声を掛けられる。
声色自体は優しいが少なからずコチラを警戒しているのが見て取れる、当然だろう片や路上で寝ていた不審者で名前を名乗れないときている。
そして彼は混成騎士団の騎士だ、そういった怪しい輩を捕縛するのもまた任務の一環だ。
しかし不味い、こちらは着の身着のままであり暴力沙汰とも無縁な人間だ。
何とか彼の警戒を解くしかないがどうしたものか……
今ここで沈黙しても彼からの不信感が増すだけだ、イチかバチか自分の名前を思い出せないと話すしかないか。
「いえ、実は先程から考えていたんですが、どういう訳か自分の名前を思い出せなくて」
「思い出せない? 自分の名前をかい?」
「はい、そうなんですよ」
「じゃあ、自分の職業は分かるかい?」
いえ、それもと言う前に彼の言葉で、私はさらに混乱する事となる。
「君、その恰好からして
ありえない、それが率直な感想だった。
勿論、冒険者の格好というのもそうだけど一番の問題は彼が成人したばかりと言ったことが。
確かに私は若作りだ20歳前後に見られることもある、確かにそういった意味では新成人と間違われる可能性もあるだろう。
但しそれは現代社会における話だ、これがECOの世界アクロニア尚且つエミル世界だと話が違ってくる。
このゲームはハートフルと謳いつつも、いくつか重い設定があったりする。
エミル世界はかつて高度機械文明だったが、ある時大規模な戦争が二回起こる。
一度目は資源探索用に作られていた天まで続く塔ともう一つ、現在所在不明だが地深く潜る回廊により、タイタニア界ドミニオン界が繋がり、エミル界の住人は当時世界の資源が枯渇しかけていたために両世界に侵略戦争を仕掛けることになる。
無論この戦争において裏の仕掛人が存在し、それが後にクトゥルフを嗾けてくるのだがそれはまた別の話、この戦争途中にタイタニア種族は背後関係に気付き、天まで続く塔を封鎖、鎖国状態に突入するがエミル、ドミニオン両種族は戦争を継続。
長い時相争うがその途中更に、今度は機械の侵略者DEMが乱入、これに対しエミル、ドミニオンは連合を結成し有志のタイタニアも少数参加しての三種族対DEMの戦争に発展、エミル界に関しては侵略阻止に成功するもののその結果文明が崩壊、そしてドミニオン界は未だ戦争中であり滅亡の危機に瀕している。
そしてここで重要なのは、未だエミル界は復興途上であり人員も足りないため成人年齢を遅くとも15歳、早ければ12歳という風に制定しているという事だ。
つまり、本来私はこの世界においては新成人に見られるという事はありえないにも関わらず現在、アランに新成人と思われているという事になる。
その事に気付いた時私はあわてて彼に
「すみません、鏡を持っていらっしゃいますか!」
と、詰め寄ってしまう。
彼は面食らった様子で
「い、いや。 持ってないね」
と、答えを返しつつ長剣に手を伸ばす。
思わず私はしまった、冷静さを欠いたと思いせめてと自分の身体を庇う動きをするが
「これで確認できないかな?」
と、言ってきた。
正直斬られるかと思ったが、彼が天然で助かったと言ったところなのだろうか?
逆に天然故に焦る事になった気もするが……
それは兎も角、剣を覗いてみると確かにピカピカに磨き上げられ、姿を見るのは容易そうだ。
しかし剣とはこのように反射するようなものだったか?
疑問に思いつつも自分の姿を確認して驚愕する。
見た感じ15歳くらいだろうか、髪は短めツリ目の東洋系の顔とは思うが、少なくとも自分の顔ではないと確信する。
そして今度は自身の身体を見てみる。
服装はECOの初期装備の半袖半ズボンに靴その姿に思わず。
「……これは一体?」
と口に出してしまったのも仕方ない事だろう。
彼も流石に事情を察してきたらしく片手を後頭部に動かし掻くような仕草をするが、兜のせいで掻ける訳もなく。
彼は剣を鞘に収めつつ。
「あ~、とりあえず駐屯所に来てもらっていいかな? 詳しく話も聞きたいし」
私は彼の言葉に頷き、共にアップタウン北稼働橋にある北軍の駐屯所に移動を始めた。
最期までご覧いただきありがとうございました。あとがきの方では基本的に用語解説をしたいと思います。
「エミル・クロニクル・オンライン」
キャラ原案 ブロッコリー
ゲームシステム ヘッドロック
運営 ガンホー
により2005年にリリースされたMMORPG。
女性にもプレイしてもらいやすくするために可愛く、温かい世界を主軸に制作された。
運営がプレイヤーと近い事でも知られていてみんつく(みんなで作ろう)イベントでは
お題を元にユーザーからイラストなどを集め、選ばれた作品は実際にゲーム内に実装されたりもした。
またエイプリルフールにハッチャケることでも有名で、その日限定の特殊BGMを製作したりゲームコンペ、アイドル人気投票などと言った限定イベントなどを行っていた。
「資源戦争」
プレイヤーが語ったエミル世界で起きた大戦争の最初の方、多くの悲劇を生み出したが同時に一部のパートナーキャラクター達は、この戦争がなければプレイヤーと出会うことはなかった。