とある冒険者のキセキ  「元題名 とある「えこ民」の物語」   作:想いの力のその先へ

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九話

   とある『えこ民』の物語 九話

 

 アイアンサウスを出発し、街道を進み巨大な活火山である鉄火山を横に見つつ先を急ぐ。

 途中空中を泳ぐカラフルな魚型モンスターである「トロピカルフィッシュ」や、マグマのような身体を持つプルル「ラバープルル」に襲われる事もあったが、倒せない敵ではないのでそのまま倒し先に進んでいた。

 そうしてまた暫く進んでいると、前方に大きい橋が見えてくる。

 あの橋はアクロポリスとアイアンサウスの丁度国境地点であり、其処には南軍の兵士が警備をしていた。

 

「おや、あなたは。 行きは飛行庭で通られてたと思いましたが……」

 

「ええ、お仕事の都合で搭乗させて貰ってたんですが、帰りは無限回廊に寄ってみようと思いまして」

 

「そうでしたか、彼処はモンスターも結構強いので気を付けて」

 

 そう雑談をして私は南軍兵士と別れて先を急ぐ、あと少しでステップ砂漠に着く、そうすれば無限回廊は目と鼻の先だ。

 

 

 

 

 

 暫く進んでいると小高い丘の上に、正方形の建物が見えてくる、無限回廊の入口だ。

 入口には門番として此方も南軍兵士が駐屯していた。

 その兵士に今回の目的を告げると、心配されて、無理をしないように念入りなお願いをされた上で、中に入れさせて貰った。

 

「此処が無限回廊……」

 

 ゲームとしては幾度となく訪れていたが、まさか自分の目で直に見ることになるとは思わなかった。

 入口の大きさとは比較にならない程の内部の大きさであり、中のモンスター達もどことなく普段見るモンスター達より、更に精強に見える。

 そして私が入ってきた足下付近に、魔法陣のようなものが見える、これで階層間の移動や、脱出を行うようだ。

 脱出口を確認できた私はモンスター蔓延る上層を進んでいく、カードのトランプに手足と兜のように見える頭があるモンスター「アルカナファイター」に、先程までいたアイアンサウスにも生息していた赤紫色の全身がとげとげしいモンスター「カンカン」、他にもバウなどと言ったモンスターたちも襲い掛かってくる。

 今は丁度アルカナファイターに殴り掛かられていた、私はそれをバックステップで躱し、手に持つハルムで突きを繰り出すが、奴はそれを身体を此方から見て横にする事で躱す、元々がカードのトランプと大きさは兎も角、形状は同じく薄いため突きは掠りもしない。

 

「ちっ、面倒な!」

 

 その言葉に気を良くしたのか、此方に身体の正面を向いてまたもや殴り掛かってくる。

 だがこのタイミングなら!

 

「これなら躱せまい!」

 

 私はタイミングを合わせて奴に<ブラックウィドウ>を放つ、流石に奴も之には反応できなかったのか胴体に直撃し、倒れた拍子に胴体のトランプ部分から身体のパーツが全部取れて消滅する。

 そしてその消滅した後には、指輪のようなものが転がっていた。

 

「ふぅ、危ない危ない。 取りあえず拾って奥に進むか」

 

 この指輪のようなものはゲームではワープポータルを起動させるために必要だった、こうやってドロップする以上は無関係という訳でもあるまい。

 それを持って奥にあるであろう転移用魔法陣の下に向かう。

 何度かモンスターを迎撃しながら魔法陣の下に辿り着くと、先程拾った指輪が光りそれに連動して魔法陣も輝きだす。

 

「如何やら此処はあっていたようだな、これで先に進めそうだ」

 

 魔法陣に足を踏み入れるとさらに輝きが増していき転移が開始する、暫くすると輝きが収まり転移が完了したようだ。

 目の前には先程と同じような風景だが微妙に壁の配置が違う、多分2階に移動できたのだろう。

 そして早速歓迎とばかりに、モンスターたちが此方を襲い掛かってくる、全くもって嫌な歓迎もあったものだ。

 そうやって時に敵をいなし、倒し、時に逃げたりする事で階層を潜っていき5階に到着する。

 

「うわぁ…………」

 

 思わずそう声を出してしまった。

 目の前にいる、人の2.3倍はありそうなほど巨大な芋虫型モンスター「サンドクローラー」を見てしまったためだ。

 本来このモンスターはウテナ湖等にも生息しているのだが、此処にいる個体はそれよりも遥かに大きい。

 そんなものが急に目の前に見えたら、思わず声が出てしまうのも仕方ない事だろう。

 そしてその声に気付いたサンドクローラーはこちらを見据え、警戒しているようだ。

 またその警戒に気付いた他のモンスター達も、此方に向かってくる。

 出来れば多対一の戦闘は避けたいが、そうも言っていられる状況じゃない、何とか凌ぐしかない。

 

「全く少しは休ませてほしいな!」

 

 そう愚痴りながら、私は先ず向かってくる黄色い火の玉のように見えるモンスター「ブーピー」に先程覚えた<ブラックウィドウ>の上位魔法である<カオスウィドウ>を放つ。

 どうやら一撃で仕留めれたようだが、その魔法に反応した水色の馬型モンスター「ゼレブ」が此方に突進してくると同時に、熊型のモンスター「ブラックベア」も襲い掛かってくる。

 先に届きそうなブラックベアを殴り(ブロウ)飛ばした後、突進してくるゼレブにあらかじめ詠唱しておいた<ブラックウィドウ>を叩き込む。

 さらに追撃しようとした時に、足元が輝きだしていることに気付いたが、回避が間に合わない!

 私の周囲に雷が降り注ぐ。

 

「ぐぅ、油断したか。 やってくれる!」

 

 巨大サンドクローラーの魔法<サンダーストーム>だ、しかし奴自身の魔力が低いせいか運よくそこまでのダメージは貰わなかったようだ。

 こちらがダメージを負ったことで好機と見たのだろう、ゼレブがまた突進を仕掛けてくる。

 だが私はそれを逆手に取り、ゼレブに混乱を誘発させる状態異常魔法<マジックコンフュージョン>を仕掛けると、目が回ったのか先程殴り飛ばされて体勢を立て直している途中の、ブラックベアに盛大に突っ込み二匹とも戦闘不能になっていた。

 これで後はあのサンドクローラーを倒せば一息つけるだろう、そう思っていたのだが、いつの間にか近寄ってきていたキツネ型のモンスター「ローキー」が飛び掛かってくる。

 寸での所で気づいた私は身を屈め乍ら前方に跳ぶ事でこれを回避、何とか体勢を立て直そうとする。

 が、またもや真下の地面が輝きだす、またサンドクローラーの魔法だ。

 

「そうそう何度もやらせるか!」

 

 私はそう吠え、サンドクローラーに沈黙状態を付与する状態異常魔法<マジックサイレンス>を叩き込む、するとその効果で詠唱が中断し奴の魔法が不発に終わる。

 その隙にローキーが再び飛び掛かってくるが、それを躱しブロウで吹き飛ばす。

 今度こそ奴で終わりだろうが、時間をかけ過ぎると増援で来る可能性がある、なので走って近づきながら詠唱し、先ずは<ブラックウィドウ>を連射して奴にをぶつける。

 すると怯んだのか、後退しようとするがそれよりも私が接近するほうが早い!

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 そう気合を入れながら渾身のブロウを叩き込み、吹き飛ばして身動きの取れない状態にしてから<カオスウィドウ>でとどめを刺した。

 

 

 

 

 

 その後は近くでウロウロしていたアルカナファイターを倒して指輪を入手、急いで転移陣に向かい6階に転移して安全な場所で暫しの休憩を取る事にした。

 

「流石に少し痛いな」

 

 そう言いながら私は水筒の中に入れていたフルーツジュースを飲む、すると身体の傷が癒え、活力が湧いてくる。

 ゲームの方では回復剤としてはポピュラーだったから理解は出来るのだが、やはり少し不思議な気分になりながら、今度は魔力回復用のマジックキャンディを口に含むと自身の魔力が回復していくのが分かる。

 キャンディを舐めながら周囲を確認すると、あちらでもそうだったようにモンスターの構成が変わっている。

 アルカナファイターを兵士風にアレンジして槍を持っている「アルカナジャック」、水色の魚型モンスター「ケイブフィッシュ」、木製のねじまき人形な見た目の「モックー」、紅い熊型のモンスター「レッドビースト」現在確認できるのはこれくらいだ。

 確認の終わった私は、まだ口の中に残っていたキャンディをかみ砕いた後に飲み込んで、近くにいるケイブフィッシュから<ブラックウィドウ>で攻撃し、此方に釣り出して一匹ずつ確実に処理していく。

 

 

 

 

 途中何度か危険な場面もあったが、何とか10階にまで潜る事に成功していた。

 そして10階には5階と同じように超大型のモンスターが存在していた、そのモンスターはキラービー。

 その大きさは前にビーの巣穴で討伐したスティンガーと同等か更に大きく威圧感が物凄いことになっていた。

 また他にも赤紫のチョウチンアンコウに手足が生えて歩いている「ライギョー」に、紺色の蝙蝠型モンスター「カットバット」の姿も見える。

 正直な話、回復剤も心もとなくなっているし撤退すべきかと思案していた所、ライギョーが此方に気付きその素晴らしい健脚で、あっという間に此方に近づいてくる。

 私は慌てて迎撃態勢を整える。

 ライギョーはその速度のまま殴り掛かってくるので、その勢いを殺させないように回避する。

 するとライギョーはそのままの勢いで転んでしまったので、その無防備な背中に<カオスウィドウ>を撃つ。

 だが倒し切れず起き上がり此方に向かってくるので、再度唱えようとするが、その前にカットバットが此方に急速に近づき<サイレントグリーン>という沈黙付与スキルで攻撃してきた。

 少しの痛みと共に詠唱が不可能になってしまう。

 

「…………!!」

 

 一時的に詠唱が不可能になった私は、慌ててライギョーの攻撃を回避する。

 そうして仕切り直しをした後に、三度近付いてくるライギョーにブロウをお見舞いして黙らせ、カットバットに今度は攻撃を開始する。

 暫くお互いに物理で攻撃しあうが、どちらも回避するという展開が続くがその最中に私の沈黙が回復、その後は<ブラックウィドウ>の連打でケリを付けた。

 その後、私はこのままでは流石に危険だと判断しここから撤退することにした。

 

 

 

 

 

 近くの脱出用の転移陣に乗り無限回廊の入り口まで戻る。

 

「大丈夫でしたか?」

 

 そう門番の兵士が話しかけてくる。

 

「ええ、何とか。 流石に一人では厳しいものがありましたね」

 

 そう私が苦笑して返すと。

 

「でしょうね。 此処は本来PTで挑む場所ですから」

 

 彼も苦笑しながらそう返してくる。

 その後暫し二人で雑談した後に、アップタウンに戻る事にした。

 

 

 

 

 そしてその後、急いでアップタウンに戻ったがそこでアミス先生と出会い、すごく心配されていたようで。

 

「ナナシちゃん大丈夫だった!? 怪我してないわね」

 

 と、私の身体を確認して、よかったと安心した後に。

 

「ナナシちゃん? いくら冒険者と言っても無理をしたらダメだからね?」

 

 と軽く説教をしてくれた。

 そしてなんでもクエストカウンターに戻ると、受付嬢からは

 

「ナナシか、よく戻ったな。 無限回廊に寄っておったそうだな、中々にそなたも無茶をするな」

 

 苦笑交じりに言われてしまった。

 私が何故知っているのかと問うと。

 

「酒屋マスターから聴いておるよ、商人殿も挑戦的な若者だと笑っておったらしいぞ」

 

 という回答を頂いた、それでアミス先生も心配してたんだなと私が言うと、彼女はその話を聞きたがり、全部そのまま話すと顔を背け笑いを我慢しているようだった。

 そのまま話していると他の子達も戻ってきてお土産話などを話しといると、いつの間にか時間が遅くなってきていたのでみんな部屋に戻り休む事となった。




「無限回廊のモンスター達」

他の地域やダンジョンのモンスターよりも強い個体が多い。
そして一説にはかつて此処から出て行ったモンスターが野生化したのが、現在の各地のモンスター達とも言われている。
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