とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
とある「えこ民」の物語 十一話
先程私達にお願いがあると言ったル・フェイ・ロア、彼女に詳しい話を聞いてみるとファーイーストの南にあるかつて此処が王国だった時の王城、現在はアンデッドモンスターの巣窟となっている名前もそのままの「アンデッド城」、其処に何らかの異変が起きているらしい。
その調査をしたいが、流石に一人だと危険なので協力してほしいとの事だった。
「ではル・フェイさん、どんな異変までかはまだ分からないという事でいいんですね?」
「ええそうよ、今分かってるのは精々アンデッドモンスターが、少し騒がしくなってるくらいかしら?」
……あの基本のほほんとして、ほとんど襲い掛かって来る事もないアンデットモンスター達が? 精々活発に動くのがスケルトン系しかいないはずなのに、そのモンスター達が騒いでいる? 割と大事ではないか、それは……
これはちょっと、放置して戻ってクエストとして処理する時間はないかも知れないな。
「私はこれは正直、大事件が起きてる可能性があるんじゃないかと思うから手伝うつもりだが、二人はどうする? 先に戻って受付嬢に報告しに行くというのならそれでもいいと思うが」
「魔女の頼みだからな、僕も残らせてもらう。 それに魔女がそこまで気にしているという以上、確かに大事になってるかもしれないしな」
「では小生も残らせてもらうです、それにネクロアーマー? そんなこと言いながら、実際には『これで戦闘できる口実が出来た、やった』とか思ってないですか?」
その言葉に、思わずと言った感じでネクロアーマーは顔を逸らす、正直だなおい……
「な、なな何を言ってるんだ、そんな訳ないだろう! 魔女がどうしてもというからだな!!」
…………どもりすぎだし、全く誤魔化せても居ない、そして件の魔女さんを見てると何故か顔をニヤニヤさせている。
「あら、騎士様。 私は確かにお願いとは言ったけど、どうしてもとは言っていないわよ?」
くすくす笑いながら、そう言ってきた。 まさかの梯子外しである、その言葉を聞いたネクロアーマーはあわあわ、と慌てだした。
これだけリアクションがいいから、揶揄われるんだろうなぁ……
此れはもう助け舟を出してあげないと可哀想だな、とそう思い皆に声を掛ける。
「ああ、兎も角だ、皆でアンデッドの城に行くでいいんだね?」
「そ、そうだな! みんなで行くんだ!」
そこまで必死にならなくてもいいだろうに、ネクロアーマー…… また揶揄われるぞ。
だが、飽きたのか満足したのか、或いは流石にやり過ぎたと思ったのか、二人は此方に話を合わせてきた。
そしてその様子にネクロアーマーは、ほっとしていた。
この子、実は小動物がアルマ化した存在なんじゃなかろうか…
まぁ二人とも笑いが漏れそうになっているのだが……
「ええ、そうね。 ナナシさんは何の職業に就いているのかしら」
「私はウォーロックですよ、ル・フェイさんと同じ後衛です。 一応前衛も出来ますが、このメンバーならそのままの方がいいでしょう」
「でしょうね。 騎士様、ドラッキー、という事だから前衛は任せるわね」
「わかった、この僕に任せてもらおう」 「小生も了解です」
打ち合わせが終わった私達は、そのままアンデッド城に向かう事にした。
ファーイーストの南にある穀倉地帯、アンデットの城はその先にある。
其処は如何にもな感じの暗い土色に、それには似合わぬ具合にしっかりとした城壁、枯れた木々が其処らにあり、リヴィングデッド系のモンスター「ルブナン」と「イヴィルデッド」、ゴースト系の「レッサーゴースト」と「ゴースト」、スペクター系の「レッサースペクター」と「スペクター」、骨の弓兵「スケルトンシューター」と大男の見た目の「アベンジャー」が各地を徘徊していた。
そしてこのモンスター達、侵入者を見つけたら問答無用で襲い掛かってきそうなほどに、気が立っているようだ。
「…………確かにこれは異常事態だな、魔女」
「そうでしょう騎士様。 何が彼らを苛立たせてるのかが分からないけど、放置しておいていい事なんて、なさそうだもの」
「しかしこれは…… 調査と言っても、見つからずには不可能そうだな」
「小生も流石にこの状況では厳しいかもです」
さて如何したものか、と物陰に隠れて4人で話し合う。
私の攻撃魔法は全部闇属性だから、モンスターも闇属性である以上、ダメージとしては期待できない。
まぁ攻撃に関しては他3人に任せるとしても、流石に何も考えずの片端から撃破というのは下策中の下策だ、かと言って誰かが囮になると言っても回復職がいない以上危険すぎる。
八方手塞がりかと思ったときに、アンデッドモンスター達が騒がしくなる。
「ナナシ、あそこを見てちょうだい」
ル・フェイに小声で囁かれ、その方向に目を向け私は驚愕する、其処には灰色のメカニカルな肌に感情を映し出さない瞳、DEMが其処には存在していた。
「何故DEMが此処に……?」
「流石にそれは分からないけど、これがアンデッドたちが騒がしかった原因みたいね」
そうル・フェイと二人で話していると、アンデッド達とDEMの戦闘が開始される。
アンデッド達がDEMに攻撃を仕掛けているが、その攻撃はDEMに対して有効打になっておらず、煩わしいとばかりにDEMがその腕に装備している爪を振るうたびに、逆に蹴散らさせる始末。
時々、イヴィルデッドやアベンジャーが取り押さえることに成功しているが、すぐに振りほどかれて反撃で倒されてしまう、端的に言って、DEMの相手にもなっていなかった。
いくら此処のモンスターがエミル界では弱い方と言っても、これでは……
「いくら何でも、一方的過ぎるなコレは。 ル・フェイさん、此処にはDEM以外におかしい感覚とかあるかい?」
「? いえ、特には何も感じないわ」
ドミニオン界においては、DEM側に有利に働くような特殊な結界が張ってある状態だったと聞く、かつてのDEM-ドラゴンとの決戦時に中和結界が張られたらしいが、それと同じタイプの結界があるのかと思ったが……
となると、あのDEMが特別性なのかもしれない。
「このままでは、どうにもならないか…… ならば敢えて、奇を衒ってみる必要があるかな?」
「どうするつもり?」
「モンスター達に加勢する、乱戦になる可能性もあるが、敵の敵は味方と思ってくれるかもしれないからな」
その言葉を聞いた3人は驚いた顔をする。
当然だ、正気の沙汰ではないからな、たが一応勝算はあるつもりだ。
今あのモンスター達はDEMで手一杯の状況だ、その状況で同じくDEMに攻撃している陣営に、わざわざ手を出す余裕などないはずだ。
希望的観測でしかないが、このままだと倒せない可能性もあるし、その倒せなかったDEMがファーイーストに移動したら詰みだ。
ならば結局やってみるしか方法がない。
「とは言っても、危険な賭けだからな、発案者の私がまずは仕掛ける。 3人は援護と、もしも三つ巴なった場合は、退路の確保をお願い」
「いえ、小生もそれに参加させてもらいます。 その方が、もしもの時のカバーが効きます」
そうドラッキーは此方に向かって宣言する、これは梃子でも動きそうにないな。
「……わかった、私が言っても意味がないとは思うが、無茶だけはしてくれるなよ」
「本当に意味のない言葉ですね」
そうドラッキーは笑いながら言う、やれやれ、いくら勝算があるとは言っても、分が悪い賭けには違いないのだから、余り巻き込みたくなかったのだがな。
一方モンスター達とDEMの戦闘は、未だにモンスター勢が手をこまねいている状況だった。
敵にまともにダメージを与えられないのだから、どうしようもないのだが、それでも挑み続ける。
しかし一瞬、攻撃の波が途切れてしまう。
好機と見たDEMが反撃に映ろうとするが、その時黒色の魔法弾が直撃する。
「ちっ、やはり闇属性か。 <カオスウィドウ>が効いちゃいない、ドラッキー行くぞ!」
「了解です、小生にお任せあれ!」
そう言いドラッキーは、私の背後から飛び出していく、その行動に虚を突かれたのかDEMは一瞬動きを止める。
その隙を見逃すはずがなく、ドラッキーは影縫いの術でDEMを拘束する。
それをチャンスだと思ったのか、モンスター達は私達を無視し、またもや群がっていく。
「ネクロアーマー、ル・フェイさん、大丈夫そうだ!」
「了解した!」 「ええ、今行くわ」
二人もこちらに駆け寄ってくる、そしてその時にル・フェイに一つ確認をする。
「ル・フェイさん、貴女は火属性の魔法は使えるか!」
「あなたたちとの魔法とは違うけど、炎を出す事は出来るわ」
「そうか! なら私が奴を
そう話している間に、モンスター達は一進一退の攻防を続けていた。
まずは、あのモンスター達をDEMから引き離す必要があるか。
ここで下手にモンスターを攻撃して、三つ巴になるのは避けたいが……
「ネクロアーマー、君は確か元々死霊系モンスターの区分だったよな?」
「確かにそうだが、それがどうかしたのか?」
「なら、前線に突撃した後、あのモンスター達に此方の指示するタイミングで、一度後退するように伝えてくれるか?」
「それはいいが、あいつらが此方の言う事を聞くかは分からないぞ」
「それでも、やらないよりはマシだ」
「わかった。 言うだけ言ってみよう」
彼女は私の提案に乗った後、攻撃に参加する。
やはり彼女が同じ死霊系だからなのか、もしくは構う暇がないからなのか、攻撃の対象にはなっていないようだ。
そしてすぐに彼女から、大丈夫だというサインが来る。
「ドラッキー、皆が離れたタイミングでまた影縫いを頼む」
その言葉に静かに頷くドラッキー、それでは行くか。
「ネクロアーマー! 始めてくれ!」
その言葉を聞いて、彼女は周りのモンスター達に合図を出す。
するとモンスター達は、少しづつDEMから間合いを開け始めた、そしてそこでドラッキーが影縫いで動きを封じ込めると同時に、私もあらかじめ詠唱しておいた魔法<マジックフリーズ>で氷漬けにする。
それを見たル・フェイは自身の魔力を練り始める、そしてその魔力をDEMの足元まで送ると、其処から巨大な火炎が吹き上がる。
氷漬けになっているDEMが躱せるはずもなく直撃し、一瞬にして氷は解け、それでも全く勢いは止まらずに、DEMを焼き続け、その熱風は此方にまで漂ってくる。
そうして焼き続けた炎が消えると、DEMの身体からは火花と煙が出ており、暫くするとそのまま倒れ伏す。
その後も起き上がるのではないかと、皆で警戒していたが、一向に起き上がる様子が無いため、撃破できたと確認できる。
「……如何やら何とかなったようね? ナナシ」
「ええ、何とかなってよかった。 見事な魔法でした、ル・フェイさん。 ドラッキーとネクロアーマーもありがとう」
「小生もヒヤヒヤでした」 「久しぶりに緊張感のある戦いだったよ」
周りのアンデッドモンスター達も、ピリピリとした緊張感を霧散させる。
やはりあのDEMが原因だったという事か、然しなぜこんなところにいたのだろうか?
まぁ何はともあれ、先ずは撃破できた事を喜ぼう。
「ああ、そうだネクロアーマー。 彼らにお礼を伝えておいてくれるか?」
「そうだな、伝えておくよ」
ネクロアーマーにお願いして礼の言葉を伝えて帰ろうとすると、何故かモンスター達は入り口まで見送りに来てくれた。
そりゃあ、共闘してたとはいえ、フレンドリーなモンスター達だ。
そして私達はファーイーストに帰還した。
「騎士様、みんなありがとう。 私は今回の事を自警団に報告するつもりだけど、あなたたちはどうするの?」
そうル・フェイは此方に聞いてきたので。
「私としては、一刻も早くアクロポリスに戻り、この事を混成騎士団に報告すべきと思う」
「僕も同じ意見だけど、飛行庭を取りに行く時間ぐらいはあるんじゃないのか?」
「そうですね、ネクロアーマーが言う通り庭を貰っていった方がいいと思うです。 混成騎士団報告の時に飛行帆を貰えれば行動範囲も広がるはずですから、ナナシさんに依頼してる以上騎士団も出し惜しみはしないかと」
飛行帆、本来飛行庭はそのままの状態だと、移動速度はすこぶる遅いのだが、それとモーグ炭という燃料を乗せることで、庭単体での各地に移動が出来るという装置だ。
確かに今後の事を考えるなら、飛行庭が機動力を持つというのは色々な意味で便利になる。
それに庭事態も嵩張るから、職人さんの所にいつまでも置いておくと迷惑も掛かるか。
「よし、それじゃあ飛行庭を受け取ってからアップタウンに戻るとするか」
「そう、それじゃここでお別れねナナシ。 またどこかで会いましょう」
「ル・フェイさんもお元気で」
「ル・フェイでいいわよ、お姉さんでもいいけどね♪」
「流石に恥ずかしいので、お姉さん呼びは遠慮させてもらうよ。 それでは、また」
「ええ、またね」
そう言って私達はル・フェイと別れ、ファーイーストから出発した。
「…………さて、報告も終わったしこれからどうしようかしら」
「そういえばナナシ、あの子からは主たちと同じ力を感じたわね。 玉藻も不思議な子とあったって言ってたし、情報交換しに行った方がいいかもしれないわ」
「ファーイースト王国」
かつてファーイースト地方で栄えていた王国。
ある時、王妃が謎の病で異形化、その後その影響か王国民たちも死亡したり、アンデッドモンスター化したという。