とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
とある「えこ民」の物語 十四話
パーティを行った翌日の朝、私はまず自身の部屋に宛がわれていた場所から必要最低限の荷物を持ち、一緒に住んでいた皆に行ってきますの挨拶の後、エコ坊と共に4人との待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所であるギルド元宮前の広場に到着するも、4人はまだ来ていなかったようなので先に荷物を飛行庭に置くために呼び出して中で整理をすることにした。
そして、荷物の整理を終わらせて飛行庭から降りると、丁度4人も此方に到着したようで私に声を掛けてきた。
「ナナシさん、久しぶり!」
「ああ、久しぶりだねユスティ君。 他の皆もお久しぶり、元気だったかい?」
そう私が聞くと、他の子達も元気に挨拶をしてくれる。
元気がいい事は良いことだ、同時に彼らの事を若くていいなと思ってしまう。
今は私も若くなっているはずなのだが、やはり精神まではそう簡単には若くならないという事か……
私がそんな感傷に浸っていると、アムちゃんから話しかけられる。
「あの、ナナシさん? 大丈夫ですか?」
「ん? ああ、大丈夫だよ。 ちょっと君達の事が羨ましいなと思ってただけだから」
私がそう言うと4人とも首を傾げていた。
「私達が羨ましいですか? それはなぜ……」
「それはね、君たちはこれから冒険者になるだろう?」
「ええ、それはまぁ……」
「その後の冒険はきっと君たちにとってわくわくの連続になるだろうけど、私の時は如何に効率よく動くかとか、どうすれば一番いいかなんて事を真っ先に考えてしまって、冒険を楽しむということが出来なくなってるんだよ。 大人になったとも言えるんだけど、それがちょっと寂しくてね……」
そう私が言うと皆はまだ良く分からないのか、どことなく気の抜けた返事を返してきた。
まぁ理解されたら理解されたで、それもまた悲しくなってしまうが……
今のやり取りで場の空気が変になってしまったので、それを変える為にも皆に声を掛ける。
「それは兎も角としてだ、先ずは皆卒業おめでとう。 そして私に話があるという事は以前話したPTの事かな?」
その言葉に一番早く反応したのはフィロ君だった。
「それもあるんだけど、オイラ達他にも相談があって」
「相談?」
「うん、実はエコの事なんだけど」
彼がそう言葉を話すと、突然自分の名前を呼ばれたエコ坊は吃驚した反応を示す。
しかし、エコちゃんに対する相談か、もしかすると彼らも……
「エコってさ、アルマっていう人とはちょっと違うんらしいんだけど、職業に就くことが出来ないって言われてて、でもエコとも冒険したくて、何かいい方法ないのかなって……」
……やはりそうだったか。
エコちゃんが皆を想っていたように、皆もまたエコちゃんを想っていたのだろう。
他の子達もフィロ君と同じ想いなのか、此方を真剣な目で見ている。
昨日のエコちゃんの心配はまさしく杞憂だったという事だろう。
こちらとしても都合がいいし、昨日の提案を話してみるか。
「実は昨日同じようなことをエコちゃんに相談されてね、それでパートナー制度というものがあるから、それを使えば一緒に冒険することが出来るよ」
『パートナー制度?』
4人の言葉がそう重なる。
パートナー制度、ゲームにおいてはプレイヤーはクジや対人取引でパートナーを複数の同じ子を持つことが出来ていたが、現実に変わったことにより一部の例外を除き同じ存在が複数いるわけではなくなったので、その整合性を取るために生み出されたシステムなのだろう。
いくつかルールがあるが、その中でも特に重要なのはパートナー契約をする者同士の同意がないと成立しないことと、パートナーは一人しか契約できないことだろう。
これはパートナー候補となる者達が多いとは言っても精々150人前後しかいなく、またそのパートナー候補たちが一般的な冒険者よりも強力な存在であり、一か所に纏まるのを嫌った結果なのだろう。
同意の方は分かりやすいが、パートナーたちが物扱いされないようにという意味と、それでもしも武力行使に出られた場合、まず止められる存在がほぼいないからだ。
アバター達なら鎮圧できるだろうが、そもそもに置いてパートナー寄りの立場でもあるので一緒に暴れる可能性が高く、本当にそれが起きた場合は目も当てられない。
その可能性を防ぐ為のの保険という位置付けが近いだろう。
そう言った事を一部オブラートに包みこんで説明すると、皆納得したのか成程と頷きながら聞いていた。
「とまぁ、そんな感じの制度がある訳だけど、エコちゃんのパートナーを決める為にも皆がしたい職業を聞いてもいいかな?」
「俺たちの希望の職業ですか?」
「そう、エコちゃんは完全な前衛タイプだから希望の職業によっては役割が被ってどちらかのお仕事がなくなってしまうとか、そういったことがあり得るんだ。 私と組む場合はその心配はないだろうけど、やはり組むとしたら仲良しの4人のうちの誰かがいいだろうから、皆の希望を聞いてから判断したいって事だね」
私がそう言うと皆理解できたのか、そんなこともあるのかと驚いていた。
ゲームの場合ははっきり言って自分の好きな子を連れて行けばほぼ問題がなかったが、現実に変わったことにより冒険によって大怪我、最悪の場合死ぬ可能性も出てきた以上なるべく皆が安全になる組み合わせを選んだ方が良い筈だからな。
「俺たち全員これから職業に就くつもりだから実質希望だな。 俺は以前相談した時はまだ悩んでたけど、やっぱりソードマンになる事にしたんだ」
「私はやっぱり植物の事が好きなのでファーマーになる事にしました」
「オイラは結構就く人が多かったっていうスカウトに就こうかなって」
「ウチは敢えてドミニオンでは少なそうなウァテスに就いてみようと思って……」
ユスティ、アム、フィロ、リザの順にそう言った言葉を出していた。
スカウトは、素早い身のこなしを得意とするファイター職であり最終的には単体火力では最高クラスの純火力にして相手の行動を阻害するようなスキルも使えるようになる万能職。
ウァテスは、俗に言う回復職であり、更にバフとデバフを扱えるPTでは生命線となる職だ。
ファーマーは、バックパッカーと呼ばれる生産職の一つであり、アムちゃんが言ったように植物関連の他にポーションなどの薬品関係や、料理に裁縫による一部の防具も作ることが出来るなどかなり手広く活動する職である。
以前ユスティ君に解説したソードマンも併せて4職で考えると、先ずはファイター職志望であるユスティ、フィロとエコちゃんは役割が被っているため、一緒にするメリットがあまりないため除外。
残りの二人は純粋な戦闘職ではないがファーマーは最低限の自衛が可能であり、更に後々マリオネットを使った行動も出来るようになるため、パートナーとして組ませるとしたらPTの要となり得るウァテス志望のリザちゃんがいいだろう。
「それじゃあ、一応私の考えを言うけど最終的には皆で相談して決めてほしい」
私がそう言うと皆頷いてきたので改めて考えを話すことにする。
「私の考えとしては、どうしてもウァテス単体でモンスターに襲われた場合かなり危険になるから、護衛という意味でもリザちゃんと契約を結んだ方が良いと思う。 勿論さっき言ったように皆で相談してもっといい考えが出て来たらそれを採用したほうがいいけどね」
その言葉で皆が相談を始めたが、やはり前提知識がないので良く分からないというのが実情のようだ。
なので彼らにとある提案をしてみる事にした。
「あ~、皆ちょっといいかな?」
その言葉にアムちゃんが反応する。
「あ、はい。 何でしょうか?」
「皆先ずは転職をして来たらどうかな? そしてその時に担当の人に自分が就く職についての事を聞けば判断材料が増えると思うから、それから考えてみたらどうかな?」
「…………それもそうですね。 皆もそれでいいかしら?」
「そうだな、先にそっちを済ませちまおう。 それじゃあナナシさん、俺たちは一度転職を済ませてくるのでまた後で。 エコも後からな」
「うん! 皆行ってらっしゃーい」
そして皆転職を済ませるために一度解散することとなった。
その後、転職をした皆と合流し改めてパートナー契約の事を聞いてみると、私と同じようなことをお勧めされたと返し、最終的にリザちゃんとエコちゃんが契約を交わすこととなった。
そうして後はPTを組んで実際にクエストをこなすことにしてみた。
先ずは酒屋に寄りクエストカードとステータスカードを作成し、今回は討伐クエストである緑色の巨大な芋虫であるクローラーの討伐を引き受けた。
今回は特に場所の指定はされていなかったが、やはり初心者に縁がある場所という事で東アクロニア平原で討伐を行う事とした。
「さて、最初に言っておくが今回私は皆が危なくなるまで手を出さないでおくから、先ずは皆で頑張ってくれ」
私がそう言うと、皆当然とばかりに頷いていた。
「流石に5人も居るのにクローラーで手古摺る何て出来ないからな。 オイラ達も冒険者になったんだからバシッと決めるよ!」
そうフィロ君は意気込んでいるが、ちょっと危なっかしく感じるのも確かなので一応のアドバイスのようなものを送っておこうかな。
「いくらクローラーが気性が大人しいと言っても、モンスターであることには変わりないから油断はしないようにね。 それじゃあみんな頑張って!」
その言葉を聞くと皆頷き、そして一丸となってクローラーを探しに走っていく。
私はその後を最低限援護できるだけの距離を開けつつ着いていった。
そしてすぐに最初のクローラーを見つけ、それにユスティが一番槍とばかりに突撃していく。
クローラーに近づきつつ剣の鞘に手を掛け至近距離まで行くと一気に抜剣する、ソードマンのスキル<居合い>だ。
さらにフィロがタイミングを合わせて攻撃しとどめを刺していた。
そして次の獲物を探しに移動を開始して見つけると今度はエコちゃんが自分の番とばかりに突撃していった。
その突撃したままの勢いでクローラーと接触し、そのクローラーは数メートルほど吹き飛ばされそのまま動かなくなった。
流石は猪型モンスターのアルマ、その攻撃力の高さを存分に見せつける事となった。
その凄まじさに他の子達も一瞬呆然としていたがすぐに切り替えて行動していた。
その後も基本アタッカーをユスティとエコちゃんが務め、撃ち漏らしをフィロ、アムちゃんの両名が仕留め、攻撃を受けた場合はリザが回復するという形でバランスよく動き、最終的に私が援護する必要もなくあの子達はクエストを完了して見せた。
「みんなお疲れ様、私が援護する必要もなかったしやっぱり普段から一緒に遊んでたから息もピッタリだったね」
「俺たちも卒業するまで色々と練習とかしてましたから。 それでも、此処まで動けるようになってたとは思わなかったけど」
「冒険者としての職業に就くとその職業毎に多少の身体能力の上乗せがあるからね。 それで動けるようになったんだろうね。 それじゃあ皆、クエストの報告に行こうか」
そうしてクエストの報告をする為に皆で酒屋に戻る事となった。