とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
とある「えこ民」の物語 十五話
ユスティ君達が晴れて冒険者となり初のクエストをこなしてその日は解散とし、翌日からも精力的にクエストを行い少しづつ冒険者としての力を磨いていた。
そして数日後、冒険者として最低限の力量は身についたと判断して、初めての私自身がPTに参加してのクエストを行う事となった。
「それでユスティ、今回のクエストの事は頭に入ってる?」
「ああ、大丈夫。 今回はウテナ湖でバウとサンドクローラーを討伐だよね」
サンドクローラー、その名の通り砂色をしたクローラータイプのモンスターだ。
ウテナ湖自体が砂漠地帯に近いために、擬態として進化した種なのだろう。
「その通り、そして近くにはモンスターと戦っていると加勢してくるコッコーやコケトリス、土蜘蛛といったモンスターもいるから気をつけてね」
土蜘蛛は文字通り蜘蛛型のモンスターで、コケトリスはコッコー型の上位モンスターであり土属性の魔法を使ってきたりもする。
今回の討伐目標よりかは高位のモンスターではあるが、特に問題はないだろう。
「もし、襲ってきた場合は私が対応するし、慌てなければ皆でも十分に討伐可能なモンスターだから、冷静に対応すれば大丈夫だから気負わないようにね」
その言葉に皆ほっとした雰囲気を出している。
そしてその雰囲気のままフィロが話し出す。
「オイラ達でも倒せるんだ。 結構強くなったって事なのかなぁ」
「そうなのかもしれないわね、ナナシさん実際の所私達って今の実力ならどこまで行けるんでしょうか?」
そうアムが質問してきたので、改めて考えてみる。
現状ウテナ湖ならまだ問題ないだろう、そしてそれよりもモンスターが弱いアクロニアの各平原も問題はない。
逆にさらに進んだ場所だとどうだろうか?
各国の国境である各岬やモーグとの渡航港がある軍艦島までなら、ダンジョンに潜らなければ何とかなりそうな気もする。
「そうだね、結構ギリギリだけど各国の国境付近までなら何とかなるんじゃないかな。 そして国境を越えるとモンスターの強さがガラリと変わるから現状だと厳しいかな?」
「それって強くなってるんか? それだけ聞くとウチとしては微妙なんやけど……」
そうリザは疑問を呈していたが少なくとも、ゲームにおいては嘗て初心者キラーとして君臨していた金色のブリキのおもちゃのようなモンスターであるブリキングRX1や、空を飛ぶ魚型モンスターのフライフィッシュ相手に勝てそうというだけでも一般人よりも強くなっているのは確かだろう。
その事を説明してみると、全員釈然とはしていないながらもそういうものなのかと納得していたようだ。
「後は、そうだね。 私も含めて皆がある程度強くなったら、無限回廊にも行ってみたいね」
「無限回廊? それは一体どういう処なんですか?」
「エコ知ってる! ずぅっと地下まで続いてるダンジョンなんだよね、ナナシ!」
「ああ、そうだよ。 そしてかつての古代ハイエミル人や、最近改めて発見された後は英雄と呼ばれたあの子達が修練場として通った場所でもあるね」
その答えにエコ以外の皆が驚いていた。
本来隠されるような情報ではないが、存在する場所がステップ砂漠であり、尚且つアイアンサウスに向かう道からは若干外れているためあまり知られていないのだろう。
「まぁ近場にもそういった修練場があるという事だからね。 あの場所は色々な意味でお世話になる事になると思うから、頭の片隅に留めておいてね。 それじゃあ改めて出発しよう」
そうして皆でウテナ湖へ向けて移動する事となった。
アクロポリスより東平原に出て、そこからさらに南下していくと目的の場所であるウテナ湖に到着する。
道中は襲い掛かって来るモンスターもおらず何の問題もなく到着するが、ウテナ湖付近では早速バウの群れに遭遇し此方を認識すると集団で襲い掛かってきた。
「早速のお出迎えというやつだな、慌てずに戦おうか」
私はそう言うと<カオスウィドウ>を牽制として放つと同時にユスティ達がバウに向かって駆けだす。
バウたちはそれを見て回避するが、その所為で此方に対する勢いを失い、その隙をつき接敵した皆が各々の攻撃を開始する。
ユスティが<居合い>を、アムとフィロが<ブロウ>を、そしてエコが父親譲りのハイパーチャージで一気呵成に攻め立てる。
私もまた<マジックスロウ>でバウの動きを鈍らせ、皆が攻撃をしやすいように援護する。
暫くするとバウたちの数は減ってきたが、その時リザが遠方から此方に向かってくるモンスターに気付き、私に方向を指さしながら教えてくる。
「ナナシさん、何か遠くからモンスターがこっちに向かってきてる」
その言葉に反応し指をさされた方向を見ると確かにモンスターが此方に向かってきていた。
その姿はディフォルメされた蜘蛛のような姿のモンスター、土蜘蛛だった。
「戦闘音に気付いて此方に向かってきたと言った所かな。 私が対処するから、リザは皆の援護をお願い」
「了解や、頑張ってな」
「そっちも頑張ってね」
そして私は土蜘蛛との戦闘を開始する。
手始めとばかりに土蜘蛛は飛び掛かってくるが、私はそれを余裕を持って躱すと同時にハルムを
空中で殴られる形となった土蜘蛛は少し殴り飛ばされるが、すぐに体勢を立て直し着地する。
その立て直している間に私は既に詠唱していた<マジックスロウ>を土蜘蛛に対し放つが、あちらはそれをレジストし此方に向かってくる。
「……まぁ本来状態異常魔法はレジストされる可能性は高いからなぁ」
そう私は独り言ちて<カオスウィドウ>を詠唱して土蜘蛛を引き付けて放つ。
土蜘蛛は咄嗟に回避しようとするが、もう目前にある紫色の魔力弾を回避できるはずもなく直撃する。
直撃した土蜘蛛は一瞬怯むがすぐに此方に突撃を開始する。
私は2撃目を放つがそれが如何したとばかりに脇目も振らずに此方に突撃し続ける、肉を切らせて骨を断つという奴だろう。
「やれやれ、ウォーロックは近接も出来るが得意という訳ではないのだがな……」
そのまま接近戦に移行するが、その後は基本避けることを重視し隙を見てハルムを振るってカウンター攻撃をすることにした。
そしてしばらくその攻防を繰り返していると、土蜘蛛が少し後退した。
だがそれは逃げる為の後退ではなく、此方に最後の突撃を掛けるために後退したように見える。
そして土蜘蛛が身体前身に力を溜めていた時に不意に後方に人影が見えた。
その人影は手に持った剣を勢いよく横薙ぎに振り、その一撃が直撃した土蜘蛛は両断されることとなった
「大丈夫ですか、ナナシさん!」
その人影はユスティだった、彼の後方から他の子達も駆け寄ってきているのが見えた。
如何やらバウの群れは撃破できたようだ。
「ああ大丈夫、助かったよユスティ」
「ならよかったよ、でもナナシさん結構苦戦してた?」
「苦戦していたというよりは安全策を取っていたって所だね。 まだまだクエストは途中だから余力は残しておきたいし、いくら接近戦が出来るとは言え専門ではないから気を付けるのにこしたことはないからね」
「それもそうか、接近戦を出来るとは言ってもナナシさんはスペルキャスターだったね」
「そういう事」
その言葉で納得したのかユスティが何かを言ってくることはなかった。
そしてその後皆と合流して今度はサンドクローラーを討伐するために、先に進むこととした。
そのまま先に進むと遠くにサンドクローラーの群れを発見し、さっそく討伐する事とした。
先程のバウとは違い足はそこまで早くないので、私とリザで只管魔法を撃ちこみ、それで撃破出来なかったモンスター達を他の4人でとどめを刺す、というサイクルであっと言う間に撃破、クエスト達成と相成った。
「なんと言うか、さっきとは違って近くに他のモンスターがいなかったから、あっという間に終わってしまったね」
私がそう言うとアムが頷きながら疑問を声に出す。
「そうですね、しかしこんなにもモンスターの居場所は偏るものなんですか?」
「私の知っている限りでは、特定の場所で特定のモンスターばかりを狩っている場合偏ることもあるが……」
あと他に可能性があるとしたら、何らかの存在を追って大移動している場合だが、もしかしたら……
「皆ちょっといいか、暫く周囲に散開してモンスターの群れがいないかを調べよう、もしかしたら誰かが襲われているのかもしれない」
その言葉に皆が驚きながらも頷き、先ずは近場を調べることにした。
その後すぐにバウの集団に襲われている馬車をエコが発見、皆を呼び戻した後にすぐさま討伐する事となった。
バウを討伐した後に、襲われた馬車の持ち主と話すとその方は商人であり、今回取引でアイアンサウスに行った帰りにこのウテナ湖を通っていたら先程のバウの集団に襲われたらしい。
護衛を雇わなかったのかと聞いてみたところ荷物を馬車に乗せていた往路の時だけ護衛を雇い、復路は馬車も軽くなっているのでモンスターを振り切れると思い雇わなかったようだ。
その話を聞いた私の感想は色々と軽率すぎるというものだった。
まず足が速くなったとはいえモンスターにはそれ以上の速度で行動できるような種も存在する事、また魔法を撃てるモンスターも存在しており、馬車を破壊される可能性は十分すぎるほどにある事、さらに言えばモンスターを引き連れて逃げる行為、所謂モンスタートレインを行って他の人間を死なせた場合は殺人罪に問われる可能性も十分にある事、その事をその商人に伝えると今更ながら事の重大さに気付いたのか顔を蒼くしていた。
その後、その商人が私達にアクロポリスまでの護衛を依頼、私たち自身ももう帰るだけだったのでこれを受諾し共に帰る事となった。