とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
この物語において書きたかった噺の一つだったので早めに書きあがりました。
……此処は? 360度夜空が広がっている、あの夢の中の世界? でも身体を動かす事は出来ない。
此処は本当の意味での夢の中のようだ、紙芝居屋がいた所とまったく同じ風景だったのですごく紛らわしいなぁ。
それは兎も角として、夢の中の私? の前には二人の女性が立っていた。
一人は昨日の紙芝居屋だ、もう一人は栗色の一部の髪を三つ編みにしたロングヘアーの髪の両側に可愛らしいリボンと、頭の上には輝く光輪、どことなく聖職者が着る法衣のようなドレスを身に纏い、背中にも光り輝く翼を持つ天使のような少女だった。
あの時いたもう一つの人影はこの少女だったのだろう。
紙芝居屋が言っていたタイタニア種族の子なのだろうか?
でも何か私の中であの子はタイタニアではないと言う確信があった、何故なのだろうか。
その天使の少女が夢の中の私? に問いかけてきた。
「……本当に、いいんですね? ────さん」
彼女は今何と言ったのだろうか? よく聞き取れなかった、人の名前のような気もするが……
そして私らしき人物がいつの間にか返答を発していた。
「……構わないよ。 ────の世界と繋がる次元断層が閉じた今、────の想いの力で──────いた私は本来────運命だった。 だけど、────が起こしてくれた奇跡か私は────出来ている。 でも、もうそろそろ限界なのは確か。 本来だったらそのまま────のも吝かではなかったけど、────が、皆が愛したこの世界に危機が迫っているというのなら話は別」
私には所々聞こえない場所があったが、その言葉を発した後に彼女はさらに言葉を発していく、その中には私を驚愕させる言葉も混じっていた。
「それに、偶然とはいえこの世界の危機のうちの一つは、私が原因でもあるんだから。 私だけが、ハ────ラと────にはいかない」
その言葉に天使の少女は、悲壮な表情をしながら、どこか叫ぶように彼女に言葉を掛ける。
「でも! それは、貴女のせいでは…… 貴女も、────も、あの想いの力の暴走から、世界を護るために!」
「そう、世界を護るためには、あの時はああする事が結果的には最善だった」
その彼女の突き放した、まるで他人事のような言葉に天使の少女は更に言い募ろうとするが、それを紙芝居屋が止める。
「落ち着いて、
「ですけど、
ステ、ラ? 彼女がデスさんが言っていた私をアミスさんに預けるように頼んだ女性?
この事があったから、私は彼女に罪悪感を覚えたの? そして彼女は紙芝居屋をイリスと呼んだ、なら紙芝居屋の名前はイリスと言うの?
そう私の中で疑問がグルグルと回っているが、それとは関係なく三人の話は進んでいく。
「さっきのステラさんではないですけど、本当にいいんですね。 最悪貴女と言う存在そのものが只失われるだけという可能性もありますが」
「さっきも言ったけど構わない。 元々此の侭でも私は────のだから、失うものは何もない」
「でも、危険過ぎます!
人格が、失われる? それが私の記憶がない理由?
ステラの言葉に私は混乱を深めていく事になるが、それに対しての私らしき女性の返答によって現実に引き戻される。
「……それは、きっと大丈夫」
「何故大丈夫だと!」
「貴女達を、そして────を信じているから」
その言葉に、さらに言葉を発しようとしていたステラさんが止まる。
そして彼女はさらに言葉を紡いでいく。
「ステラ、貴女はハッピーエンドが大好きだと、皆をハッピーエンドに確かに導いてきた。 そして────は、アクロニアの民たちと協力して何度も奇跡を起こしてきた。 なら今度も心配しなくていい、貴女達が協力すればきっとどんな奇跡でも起こせるから」
これはきっと彼女の本心なのだろう、彼女達と、私が忘れてしまった、若しくは知らない人達を心の底から信頼しているからこその言葉なのだろう。
その言葉を発した彼女の存在がとても嬉しく、そして同時に何故かとても嫉ましかった。
そこでパンパンと掌が打ち鳴らされる、紙芝居屋、イリスさんだ。
「はいはい、そこまで。 ステラさん、貴女の負けですよ」
「……でも」
「デモもストもありません。 彼女の決意は固いですから、これは梃子でも動きませんよ?」
それに、と言う言葉を付け加えると、彼女は悪戯っ子のような笑みを浮かべ、ステラさんのおでこを人差し指で軽く押してさらに言葉を続ける。
「────さんが言うように、ハッピーエンドにしてしまえば良いんですよ。 この場には──の力の残滓が渦巻いていますし、貴女はそれをうまく扱える力がある。 さらに言えば私だって想いの力については詳しいんですよ? ステラさんだって知っているでしょう?」
「それは知っていますけど……。 と言うか貴女は想いの力については第一人者じゃないですか」
「その通り! この力の第一人者の私と、この力を────では最も上手く使えるステラさん、それにその力の器となるに最も適している────さん。 ほら、奇跡を起こす前準備としてはこれ以上ないものなんですよ」
そう言うと、イリスさんはステラさんの肩を掴むと自身に引き寄せ抱き締める。
そして子供をあやす様に、背中を優しく叩く。
「ステラさんが怖がっている事もよく解ります。 でも今までだって、ご都合主義だって言われるようなハッピーエンドを皆で掴んできたじゃないですか。 なら今度も奇跡を起こすんですよ! たとえ三文芝居と言われても、最高のハッピーエンドを、ね?」
その言葉と共に、ステラさんを抱き締めることをやめ、彼女を正面から見据える。
対するステラさんも先程まで僅かにあった瞳の中の不安感を打ち消し、真剣な眼差しを二人に向ける。
「……解りました、其処まで言うなら皆で掴んじゃいましょう! 本当の意味でのハッピーエンドを!」
「それじゃあ、儀式を始めましょう。 ────さんは、真ん中に立ってください」
そう言われて私らしき女性は指定の位置へと立つ。
そして儀式とやらが始まったのだろう、急に足元から光が溢れて、その光が複雑な図形、魔法陣とでも言えばいいのだろうか、を描き出す。
そしてその魔法陣が完成すると、あらゆる場所から、何らかの光り輝く力のようなものが、私らしき女性を目指して集まりだす。
これが想いの力、どこか暖かいような、でも冷たいような、そんな不思議な感覚が身を包む。
そしてここで私の感覚が遠くなってきた、この感覚は覚えている、私は夢から目覚めようとしているのだろう。
そこで不意にイリスさんが私らしき女性に語り掛けてきた。
「最後に────さん、恐らく貴女の人格と──は一時的に────となり、この力を使って──────────が────ることになりますが、その────に──はありますか?」
なんと言っているかがほぼ聞こえない、が恐らく私にとって大事なことなのだろう。
その言葉に彼女が答える。
「リオ、と。 そう────しいかな」
その返答を聞くと二人はどこか可笑しそうに微笑むと、ステラさんが語りかけてくる。
「なんですか、それ? ほぼ─────じゃないですか」
そう彼女が言ったところで私の意識は完全に途切れるのだった。