とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
今後も時間はかかるとは思いますが、少しづつでも書いていくのでどうかよろしくお願いします。
私は挨拶が終わった後、生徒達の方に移動しようとするが、そこでデスさんが此方へと手招きするので其方に向かった。
「どうだ、リオ。 皆の前で挨拶をした感想は? 緊張したのではないか?」
「うん、やっぱりちょっと緊張しました。 でもデスさん、さっきなんで私を見て笑ってたんです?」
私がそうジト目で見ると、デスさんは軽く笑いながら答える。
「いや、何。 お主があの場でどう反応するかが楽しみだったのだよ」
「そういう風な笑い方じゃなかった気がしますが……?」
「そうむくれるな、折角に可愛らしい顔が台無しだぞ?」
と、デスさんは言ってくる、可愛いと言われるのは女の子として嬉しいけど、揶揄い交じりに言われるのは嬉しくない!
その表情がありありと出ていたのか、彼女は手を合わせて心底申し訳なさそうに、すまぬと謝ってきた。
流石に其処まで真剣にされたら許さない訳にもいかないかな?
「……解りました。 今回はこれで許しますけど、余りこういう事はしないでくださいね?」
「うむ、分かった。 肝に銘じておこう」
「それじゃ、改めてよろしくお願いしますね、先輩?」
そう私が言うと彼女は一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、意味を理解すると破顔し宜しく頼むと返してくれた。
そこでお姉ちゃんが見計らったように声を掛けてくる。
「はい、二人とも、仲直りできたかしら? それじゃ授業を始めるから、これからお喋りはしないようにね」
「「はーい」」
私とデスさんのその返事にお姉ちゃんは、大変よろしいと返した後に改めて授業を始める為に黒板がある場所に向かう。
私を含め他の生徒達もそれに倣いそれぞれ座っていた場所からその場所に移動する。
席順は特に決まってないようで、皆思い思いの場所に座っている、強いて言えば背の低い子を前の方に優先して座らせているようだ。
私はそこまで背が小さい訳じゃないので、前の方じゃなくても大丈夫そうかな?
生徒たちが座る端の方に移動して隣の子に挨拶する。
「初めまして、改めて私はリオ、宜しくね。 横座っても大丈夫?」
その子は、茶色の髪を二房に分けたポニーテールに纏め、頭に蜘蛛の巣に捕まった蝶のアクセサリーと、パンキッシュ調のワンピースを着た女の子だった。
「ええ、大丈夫よ。 わたしはタランチュラ、宜しくね」
そう言って彼女は此方に微笑みながら返してくる、良い人そうで良かった。
そうこうしているうちに全員の移動が終わったのか、お姉ちゃんが話し始める。
「それじゃ、今日はリオちゃんの初めての授業だから、復習も兼ねてこの世界に住んでいる大まかな種族と冒険者の職業に付いてお勉強しましょうね。 それじゃあ、タランチュラちゃん。 この世界に住んでいる4つの種族の人達について答えてみてね」
そう問われたタランチュラちゃんは、ハイと元気のいい返事をした後に立ち上がって、夢の中で紙芝居屋が説明していた種族達の事を話し始める。
という事は紙芝居屋が説明する時間がないといっていた4つ目の種族の事についても何か判るかもしれないのかな?
そう私が考えていると、その間に3種族の説明が終わったようで次がいよいよその種族についての説明が始まるみたい、ちゃんと聞いておかないと……
「そして4つ目の種族として、【
「はい、タランチュラちゃん良く出来ました。 ありがとうね、此処までで質問のある子はいるかしら」
その言葉を最後にタランチュラちゃんは着席する。
その横顔はどこかほっとしたような、そして誇らしげな感じがにじみ出ている。
この説明を問題なく出来てよかったと思ってるのかも知れない、凄く真面目な子なんだろうなぁ。
しかしDEMか、それが4つ目の種族の名前なんだ、そしてキカイとはいったい何なんだろう?
そう私が首を傾げていると、それに気付いたのかお姉ちゃんが私に話しかける。
「リオちゃん、如何したの? 何か今の所で分からないところがあったかしら?」
「それじゃあお姉ちゃん、キカイってなんですか?」
その言葉を聞いてお姉ちゃんはそういう事ね、と頷きながら私の質問に答えてくれる。
「確かに機械の事についても話しておかないといけないわね。 機械というのは、複雑な作業を人間の代わりにやってくれる装置全般の事を指すの。 主に鉄などの鉱物を加工したものや、その他にも色々な細かな部品が集まって出来ているの。 とは言っても、今の私達では再現できない物も多数あって、そういった物は過去の遺跡から発掘して、それを専門家の人達が修理して使っているの。 解ってもらえたかしら?」
成程、キカイとは作業を補助するための一種のサポーターのようなものなんだ、という事はDEM種族は誰かに創造された人造種族という事なのかな?
「はい、解りました!」
「疑問が分かったことで、先に進みましょうか。 それとリオちゃん、授業中の時は私の事は先生と呼んでね。 後、質問があるときは手を上げてね。 そうすれば私も何か聞きたい事があるって解るから」
「はい、先生」
そう私が返事をすると、お姉ちゃんは満足したように頷き授業を再開する。
「じゃあこの世界に住んでいる主要な種族についての説明をタランチュラちゃんがしてくれたから、次は冒険者についての説明を始めるわね」
そう言うとお姉ちゃんは、周りを見回して一息ついた後に改めて話始める。
「まずは基本的なところね。 冒険者というのは、簡単に言ってしまえば何でも屋さん、色々な人のお願いを聞いてそのお願いを叶える人達の事よ。 そのお願いも大きく分けて三つに分類されるの。 一つ目が特定のモンスターや危険なものを倒してという討伐依頼、二つ目が依頼主から荷物を預かって目的の所に届ける配達依頼、三つ目が特定の物や素材を集めてという採集依頼。 これらは総じてクエストと言われて、酒屋さんが経営しているクエストカウンターと呼ばれる場所で受けることが出来るわ。 一部特定の人が酒屋さんを介さずに個人で出している事もあるけど、その場合は基本的にその人に信頼されていたり、若しくは冒険者として有名になってる人に声を掛けるのが一般的ね。」
そう言い終わると、今度は黒色の鎧とドレスが合体したような衣を身に纏った女の子を支持棒で指名しながら問いかける。
「それじゃ、ネクロアーマーちゃん、冒険者が職業と呼ばれるものに就くことは知ってるわよね? その中の種類のうちの一つ、ファイター職について話してもらえるかしら」
指名された女の子、ネクロアーマーは立ち上がり待ってましたとばかりに得意げに話し始める。
「確かにファイター系の職業は僕が適任だね。 それじゃあ行くよ、まずはソードマン。 この職業は主に剣と斧を得意武器として、攻守ともにバランスの良い職業だ。 次にフェンサー、騎士だな。 此方は細剣と槍を得意武器として、ソードマンよりも防御に重きを置いた職業だが、攻撃が不得意という訳ではなくて物理攻撃の他にも一部魔法も使える万能職だ」
そこで彼女は一息置いて、自身を一度落ち着かせた後にさらに話を進める。
「その次はスカウト、この職業は爪手甲や短剣、後に短銃などを得意武器として素早い身のこなしや、各種トラップ、毒物の取り扱いなどに秀でた、所謂暗殺者とでも言うべきかな。 そして最後にアーチャー、弓や銃などを使って遠距離から攻撃する職だ。 他のファイター職と違い比較的安全な遠距離から攻撃は出来るが、当たり前だが矢弾を持っていないと攻撃できないのでその分持ち物を圧迫してしまうという欠点があるな。 こんなところだね」
「ネクロアーマーちゃん、良く出来ました。 それじゃ次にマジックユーザー職を、そうね」
お姉ちゃんは少し悩んだ後に、空中に浮遊している本の上に座っている女の子を指名する。
「ブーフちゃんお願いね」
「は、はい!」
その子、ブーフと呼ばれた女の子は、頭に王冠を乗せ、紅い肩掛けと一体化した白いワンピースを身に纏い、先程まで座っていた巨大な本がいつの間にか縮小し左手に抱えていた。
彼女は一度深呼吸をして気を落ち着かせた後に話始める。
「それじゃまずはウァテス系から、この職業は主に光属性、そして回復系統の魔法を得意とする職業です。 他にも補助系の魔法も覚えるのでPTの縁の下の力持ちとなる事が多いと思います。 次にウォーロック、此方はウァテスの反対で闇属性を得意として、そして最大の特徴として他のマジックユーザー職と違い物理攻撃でも活躍できる物理魔法共に出来る万能職です。 その次がシャーマン、地水火風4属性を操る皆が想像する魔法使いと言える職かも。 最後にウィザード、この人達だけちょっと特殊で、新生魔法と言われるあらゆる属性から独立した魔法を扱う職業で、また魔法攻撃や物理攻撃を防ぐバリアや状態異常を引き起こす魔法なんかも使えるトリッキーな職だよ」
「はい、ブーフちゃんもよく出来ました♪ それじゃ最後の種類であるバックパッカー職を……」
そう周りを見渡しながら、胸にリボンの付いた厚手のワンピースを着た女の子に声を掛ける。
「シャボタンちゃんにお願いしようかしら?」
「は~い」
その女の子は、元気よく返事をすると立ち上がってバックパッカー職について話しだす。
「ええっと、それじゃあまず初めにバックパッカーの人達は、基本的には戦う事よりも何かを作ったり、集めたりすることが得意な人達です。 バックパッカーも他の職と同じで4つの種類があって、まずはファーマーさん。 この人達は、主に植物を育てたり、お料理やお裁縫が得意だよ。 次がタタラベさん、鉱物を集めて金属へ精錬したり、武器や防具を作るのが得意だよ。 その次がレンジャーさん、この人達は何かを作るじゃなくて色々なものを集めるのが得意で、あと一緒に冒険する動物をはじめとするパートナーの力を一番引き出せるんだって。 最後がマーチャントさん、この人達は作ったり集めたりなんて事はあんまりできないんだけど、その代わり色々な商売が出来るんだ。 そしてお金で傭兵さんを雇ったりも出来るみたい。 こんなところです」
「はい、シャボタンちゃんありがとうね。 これで冒険者の職業に付いては終わりになるわね。 リオちゃんも冒険者を目指す場合は、まずは何かの職業に就くことをお勧めするわ。 一応ノービス、何も職業に就かない状態で冒険する人たちもいるけど、職業に就くことで自分の力以外に職業の力を得ることが出来るから、その加護がない状態での冒険はそれだけ厳しいことになるという事は憶えておいてね」
「解りました、先生」
職業に就くことで、普段の私よりも更に強くなることが出来るんだ。
それなら何かの職に就くことが普通だと思うけど、ノービスの人達はなんで職に就かずに冒険を続けているんだろう?
思わず私はそれが気になり、挙手してお姉ちゃんにその事について質問してみる。
「先生、そのノービスの人達はなんで職に就かずに冒険を続けてるんですか?」
「その事については、私も噂でしか知らないんだけど、なんでもノービスのままで冒険を続けて冒険者として成り上がる事で、特殊な職に就くことが出来るらしいの。 とは言っても、どういった職なのかはよく知らなくて、私が知ってる事も名前がジョーカーという事だけなのよね」
「……ジョーカー」
私は思わず口遊む。
切り札という名前を持った職業……? 待って、私は何故ジョーカーという名前が切り札という意味を持つと思ったの?
記憶が無くなる前の私はこの職業の事を知っていた? それとも何か別の要因が?
思わず考え込んでしまうが、今がまだ授業中だという事を思い出し考えることをやめる。
気にはなるけど、私一人で考えてもどうにもならないからお姉ちゃんと相談するべきだ。
その私の様子を疑問に思ったのか、お姉ちゃんが私を心配し話しかけてくる。
「大丈夫、リオちゃん。 どこか具合が悪いの?」
その言葉に頭を振って、私は返事を返す。
「ううん、大丈夫。 ちょっと気になったことが出来ただけだから。 お姉ちゃ……、先生、後でちょっと相談良いですか?」
「……えぇ、分かったわ。 それで、体調が大丈夫なら授業を続けましょうか」
「はい、先生」
その返事の後に、他の子達にもお姉ちゃんは改めて授業の再開を告げると同時に先程回答をした生徒達に着席を促す。
「それで、皆にそれぞれの職業の事について話してもらったけど、次は職業に就くための場所の事を話しておきましょうか。 基本的にほぼ全ての職業は、アップタウン中心にある【ギルド元宮】内の各職業ギルドで就くことが出来るわ。 例外として、ウォーロックがこの学校のすぐ近くの教会【黒の聖堂】、ウァテスが黒の聖堂の反対側にある教会【白の聖堂】で就くことが出来るの。 つまりアップタウンで冒険者になるのが一般的と言えるわね」
そういった後に、お姉ちゃんは私の方を見つめて更に言葉を続ける。
「そういう事だからリオちゃん、本格的に冒険者としてのお勉強をする前に場合によっては職業に就いてしまうのもありだと思うわよ」
私自身はこの学校を卒業した後に冒険者として活動すると思っていたので、その言葉に正直驚いていた。
そして次に疑問が湧いてきたので挙手してお姉ちゃんに質問する。
「え、でも先生。 先に職業に就いたら、勉強の内容とか変わってしまうんじゃないですか?」
「それなら大丈夫よ。 あくまでもこの学校は、冒険者として本当に基本的なところ、常識的な部分や全ての職業に共通する部分の知識を教えて、他は実地で冒険して勉強していくという形を取ってるから。 だから職業に関しても、正確には就くことを推奨してるわ」
成程、そういう事なら納得かな。
確かに全部の職業の事を細かく教えていたら、いくら時間があっても足りないかも。
「解りました、ありがとうございます」
そう私が答えると、お姉ちゃんは笑顔になりながら私に告げる。
「これからも解らないことがあったら、どんどん質問してね」
そう言った後に、皆を見回しながら更に告げる。
「リオちゃんだけじゃなくて皆もね。 それじゃ、きりが良いから今回の授業は此処までね、みんなお疲れさまでした。 最後にデスちゃん、号令をお願いできる?」
「承った。 それでは皆、起立」
そうデスさんが言葉を発すると皆が立ち上がる、私もそれを見て慌てて同じく立ち上がる。
そうして立ち上がると、タランチュラちゃんから小声で話しかけられる。
「この後、係の人が礼って言うから、その時に礼をしてありがとうございました、て言うの」
「うん、分かったよ。 タランチュラちゃん、ありがとう」
そう私もタランチュラちゃんに倣って、小声で返事を返す。
そのやり取りを聞いていたのか、それとも私にその事を教えるのを待っていたのか、やり取りを終えて一呼吸置いた後にデスさんは次の言葉を発する。
「……それでは皆の者、礼を」
『ありがとうございました!』
そうやって今回、私にとって初めての授業は恙なく終わる事となった。
そしてその授業後、他の生徒の子達が下校した後にお姉ちゃんから話かけられる。
「それじゃリオちゃん、行きましょうか」
「行く?」
「ほら授業中に言ったでしょう? 先に職業に就くのもありだって」
「そう言えばそうだったね。 でも私まだどの職業に就くか、あんまり考えが纏まってないんだけど……?」
そう私が言葉を零すと、お姉ちゃんは笑いながら私に告げる。
「なにも今日すぐに就く必要はないわ。 それに気になる職業はあるんでしょう?」
その言葉に私は首肯する事で答える。
「なら、その気になるギルドに行って、話を聞いてみると良いわ。 他の子達もそうやって自分がしたい事を見つけたんだから」
「そうなの?」
「ええ、そうよ。 冒険者に憧れた子達は、漠然と冒険者が格好いいと思ってなりたいな、って憧れて目指すのが殆どだもの。 だから大丈夫」
そうお姉ちゃんは私を安心させるように声を掛ける。
それなら大丈夫なのかなと思い、私はお姉ちゃんに職業に就くための場所に行く事を告げると、二人で飛行庭を降りてその場所である【ギルド元宮】に向かう事とした。