とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
2018/5/23一部修正
とある「えこ民」の物語 三話
鉄の扉を潜った後に狭い通路を進みその先にある扉を潜ると、そこには大広間があった、広間にはいくつかの物がある程度の間隔をおいて置かれている。
猫のぬいぐるみや金色の杯、アクアリウムに宝箱と色々ありまるで規則性がない。
そして入口より少し先にカウンターが存在した。
此処が「なんでもクエストカウンター」受付嬢たちの職場でありゲーム内においては2013年に開催された通年イベント『イリスと記憶の書架』でプレイヤーの拠点となった場所である。
カウンター近くには二人の人影が見える。
一人は縞模様のシャツにチェックのスカート、ヒョウ柄のジャンパーを身に纏い黒髪をサイドテールに纏めヒョウ柄の獣耳と尻尾を持つ女の子。
もう一人は黒色を基調としたエプロンドレスを身に纏い金髪のセミロングの髪に大きなリボンでおしゃれをし、背中に黒色の翼があり胸にピンク色のウサギののようなぬいぐるみに見える生き物を抱えた少女。
その二人が此方に気付いたのか声を掛けてくる。
「おや受付嬢さん御早いお帰りってお客さんです?」
「あら本当、依頼人さんかしらねウィリー・ドゥ?」
……一名は胸の抱えている生き物に話しかけているようだが。
彼女たちも
現在この二人と一匹しかいないが他にも数多くのアルマたちがここで暮らしている。
「ああ、いやこの者は混成騎士団の依頼で今日からここで預かることになった。 記憶喪失だそうでな自分の名前も分からぬので今はナナシと名乗っているそうだ」
改めて自らナナシですと名乗り二人に宜しくお願いしますと伝える、すると二人もこちらこそよろしくお願いしますと返してくる。
「しかし混成騎士団ですか、まるでこの間のエコみたいな話ですね。 その人も私たちと同じなんです?」
「いや、魂を見る限りはこの者はまごうことなき人間だ」
「でもそれじゃなんでこの人はここで引き取ることになるの受付嬢?」
「どうにもこの者はかつて我らを手伝ってくれた彼らの事を断片的にとは言え知っているらしい。 故に余たちの所でも大丈夫と判断したのであろう、そしてまだ確定ではないがアミスの教室に入学する事にもなる」
そう言って私の事について話し始める三人。
少々手持無沙汰になってしまったので先程バルルが話題に出した『エコ』について考える。
まぁ考えると言っても知っているのであまり意味はないが暇つぶしにはなるだろう。
その『エコ』というのは彼女たちと同じアルマ・モンスターでエコ坊・アルマ、茶色のツインテールと下半分茶色上半分若葉色のアホ毛にベージュ色のワンピース、エコ坊(現実で言うとウリ坊のようなもの)をディフォルメしたポーチを掛けた女の子であり、最初此処に来たときは無銭飲食した身元不明の子供を預かってほしいと騎士団員が連れてきたのが始まりだった。
最初はアルマであると認知されておらず皆エコの存在しない人間の両親を探すためにアクロポリスシティ周辺を東奔西走していたがある時とある商人から。
「ファーイースト方面から来た行商人の飛行庭から降りてきた少女によく似ている」
という情報を入手してその行商人を探すと以前なんでもクエストカウンターに依頼を出していた商人と判明。
その商人がまたファーイーストに商売しに行くからよかったらどうだい?
というご厚意に甘えて向かうと現地でイノシシ型モンスター2匹が暴れているという情報を入手、その2匹がエコの両親であり、無事に家に辿り着くことになるがその後、両親に助けてもらったアルマたちに恩返しとそれと先にアルマになった先輩たちに教えてもらいなさいと送り出され此処に舞い戻り、以降一緒に暮らして今は色々と勉強中という訳だ。
またエコには他にも特殊な事情があるがそれはまた追々話すとする。
あちらの話は一段落着いたようだ。3人ともこちらの方を向く代表としてバルルが話しかけてくる。
「受付嬢さんから話は聞きました。 私はバルル、其処の黒いちびっこはダークフェザーです、彼らを知っているという事は私たちがどういう存在かも知ってるって事でいいんですよね?」
その言葉にアルマの事は知っていると伝える。
ちびっこと言われてダークフェザーは最初子供じゃないもんとむくれていたが、吃驚した顔をし此方を見る。
そしてもしかして他の子達の事も知ってるの? と聞いてきたのでアルマ以外にパートナーとして出てくる人ではない者達の事も大凡把握していると答えると、流石にこれは受付嬢も予想外だったのか驚いた顔を見せる。
そうしてしばらく考え込んだ後こちらに話しかけてくる。
「恐らく騎士団の者たちは気付いておらんのだろうな。 気付く前にこちらに連れてきてくれて助かったという事だな。 下手にあやつらに知られると碌なことにならぬ可能性があるからな。 その事は誰にも話してくれるなよ」
受付嬢の心配も当然の事だ。
ECOのゲーム内で実装されたパートナーの内、何人かは『兵器』として『製造』された者や死後『兵器』として蘇ったり中には資源戦争の当事者たちもいるのだから。
もし万が一混成騎士団に知られた場合どう考えても碌なことにはならないだろう。
勿論私は絶対に彼らに話すことはないと伝えるとその言葉に安心したのか、受付嬢は安堵の表情を浮かべてそれは良かったと言葉を零す。
そしてようやくここに来た本来の目的を思い出したのかそういえばお主の部屋割りを決めねばなと言い、カウンター奥まで歩いていく。
奥の方にはまた扉がありその先が居住区らしい、扉を潜り先に進んでいくそして少し進んだ先の廊下には部屋割りが張ってありそれを見て開いている部屋を探しているようだ。そこでダークフェザーが。
「確か私の部屋の隣かエコの部屋の前が、開いていたと思ったけど違ったかしら?」
と言い確認してみるとその通りであり面識のあるダークフェザーの近くがいいだろうという事でそこに決定。
多少部屋が汚れていたので4人で力を合わせて掃除をして綺麗にしていった。
掃除が終わった後は3人にお礼を言うが3人とも気にしないでと言って笑みを浮かべていた。
そして少し休憩した後、受付嬢は二人に何やら頼みごとをして。
「さて次はアミスの所に向かわねばな、アミスの教室はアップタウンにあるから、まずはアップタウンに行くとするか」
と、私に話しかけなんでもクエストカウンターから出発する。
そして先程降りてきた階段を上り西稼働橋からアップタウンへ、そこからさらに進み黒の聖堂近くで止まる。そして徐に機械を操作し始める。
するとその機械から女性の声が聞こえる、どうやら通信機のようだ。
「アミス、余だ。 飛行庭の紐を降ろしてくれぬか」
その言葉に女性はちょっと待っててねと言い、少しすると太い縄の紐が降りてくる。
その先端には足場のようなものが用意されており紐を握り足場に乗ると受付嬢が女性に大丈夫だと声を掛ける。
するとゆっくりとしかし確実に紐が上にと昇っていく。
そして下の方がかなり小さくなって見えるようになると今度は上の方に
その木の幹の側面に入り口らしいものがあり其処に入ると次は箱型のエレベーターがある。
それに二人で乗り上に行くと、そこには結構な大きさの地面とそして小さい学校らしき建物、その前には火を纏った踊子風の服を着た褐色の女の子や巨大な本を空中に浮かべ其処に腰かける女の子。
他にも何人かおりその前で紅色コートと黒色のタイトスーツを纏った女性が授業をしている。
授業をしている教師の彼女こそがアミス。
特殊な出自の子、つまりアルマの子達の為の教室を開いている者であり、そしてゲームにおいては幾度か行われたチュートリアルの最終アップデートで彼女がプレイヤー達の先生役として選ばれ、この世界においては数多くの英雄たちを育てた名門学校の教師として名を馳せている。
彼女はこちらが来たことに気付き授業を中断して声を掛けてくる。
「いらっしゃい受付嬢ちゃん。 あら? そのお隣の方はもしかして、騎士団員さんが仰っていた方かしら? 初めまして私はアミス、お話は伺っていますよ」
そう言ってこちらに微笑みかける。
あの後アランが話を通したか、もしかしたらノールが早めに手を打っていたのかも知れない。
私も名前を名乗り少し話そうかと思ったが授業中だからそちらを優先すべきと思い、お話は授業が終ってからにしましょうと提案する。
すると彼女もその提案に乗って、それじゃあどうせだから授業を見て行ってください、と言い授業を再開した。
そしてしばらくして授業が終了しアミス先生に呼ばれる。
生徒たちが私を興味津々といった感じで見守る中、先生から今度から一緒に勉強することになる冒険者見習のナナシちゃんですみんな仲良くしてあげてね、と紹介をする。
私もその後に彼女らに向かって自分の口からも、ナナシです宜しくお願いしますと声に出す。
すると元気な声で宜しくぅ! やら宜しくお願いしますのじゃといった声が聞こえてくる、とりあえず嫌われているという事はないようだ。
そしてしばらく後、生徒たちがほぼ帰り終わった後に改めてアミス先生と話をする。
現状把握と今後の授業の為の話し合いだ。
今ここに残ってるのは
その名のように本型のモンスターのアルマだ。
つまりあの時腰かけていた本こそが彼女の本体となり、今は立っているので本は通常サイズに戻り左手に抱えている。
なぜ彼女が残っているかと言うと、彼女は受付嬢と並んで実質的なアルマたちのまとめ役だからだ、なので今後円滑に進めるために話し合いに参加しているという事だ。
「それじゃあナナシちゃん改めてお話ししましょうか。 聞いたお話では一般常識に穴があるという話だったけど、どういう感じなのかしら?」
「そうですね一般的に知られている歴史や世界情勢。 後は基本的な物価がわからない感じです。 逆に冒険者関連の事や英雄となった此処の教え子たちの事、戦闘知識、一般的に知られていないような歴史や秘術なんかは知っています」
「秘術ですか? それはわたしたちにも分かることはあるんでしょうか?」
「ブーフちゃんが関連してて分かりやすい事だと再現は出来ないし、するつもりもないけどロア関連の事かな?」
ロアとは物語から想いの力を使い生み出された存在達の事だ。
吸血鬼や狼男魔女や悪魔など多種多様なものたちがいる。その話を聞くとブーフは驚いた顔をする。
「ステラさん達の事を知っているんですか!」
「それだけではないブーフよ、他にもロアたちが協力した者達や我々が以前に修学旅行の時に引率兼護衛として雇った者達も知っているそうだ。 全く度肝を抜かされたぞ」
その言葉にブーフはもう言葉も出ないようだ、完全に絶句している。
因みにさっきブーフが言ったステラとはステラ・ロアという名前でアクロニアに古くから伝わるお伽話を元に生み出された存在だ。
その物語は人々の善き思い出はいつか星となって人々の元に戻ってくる、というお話でそれ故に彼女は人の想い出を具現化するという強大な力を有していた。
プレイヤー達の記憶をもとに他のロアたちや力を試すために試練を課した各世界の守護者たち、更には本来ラスボスであるハスターを【
するとアミス先生は悩んだ様子で考え込んでいる。
そしてしばらくすると意を決したようにこちらに問いかけてくる。
「つまりナナシちゃんは本当に一般的な知識がわからなくて、あの子たちについては凄く詳しく知っているって事でいいのかしら? そしてお金の相場だっけ、それについても分からないのよね?」
「そういえばそう言っておったな、それはどういう意味なのだ? 最低でも生活必需品ぐらいは分かるのではないか?」
そう言われるがこればかりはしょうがないと言わせていただきたい。
コチラはゲームによる相場しかわからない状態なのだ。
あの時は家具や着る物は基本クジ品などで比較的安値で取引されていたが、それでもインフレが進み靴下や服が一着1M(100万)以上の値が付いていたりイリスカードと呼ばれる一種の強化アイテムも課金品の性能がいいものは安くて一枚20M(2000万)、高いものになると一枚100M(1億)で取り引きされることもざらであった。
普通の金銭感覚で言えばまさしく買えるか馬鹿野郎と返すべきだ。
食事にしたって性能がいい生産品は10万ぐらいで売られている場合もあった。
とまぁこういう状態なので今の状態で私の金銭感覚は正常ですなんて抜かした場合、世の奥様方に助走付きで殴りかかられてその後魔女裁判確定だろう。
今はそのような金銭感覚の状態なので絶対に是正しないと不味いという事を、ぼかして伝えるとその場に沈痛すぎる空気が満ちる事となった、然もありなん。
しばらく時間がたちアミス先生たちが口を開く。
「た、たしかに あのこたちおかねいっぱいもってるとおもってたけど、そんなじょうたいになってたなんて……」
「まったくだ、よもそのようなこといっさいしらなんだ」
「う、んそうだね。わたしもしらなかった」
衝撃が凄まじすぎて全員声が震えている。
特にアミス先生のこの学校は基本募金並びに自費で賄っている。
その状態では当然火の車なので、受付嬢はなんでもクエストカウンターを運営し少しでも学校の運営費の足しにしようとしているのだ。
その横で実は卒業生たちがそんな状態だったと知ったのだからそうなってしまうのも仕方ないだろう。
これもある意味ゲームと現実の差異の弊害だろう、あちらでは卒業すると基本先生の教室には関われなかったのだから……
これは後に先生に聞いた話なのだが、あの戦いの後一部の卒業生が募金をしたり各国が資金援助の打診をしてきたらしい。
卒業生の方はどういう訳か目の前で霞のように消えてしまったそうだ、少なくとも帰還アイテムの消え方ではなかったらしい。
その事を解明できれば私の事やアバターたちの行方の手掛かりになるかもしれない。
そして国の方はある意味わかりやすい、英雄を育てたアミス先生を自陣営に取り込みたいのだ。
それを行うに見合うだけのネームバリューが今のアミス先生には存在するし、彼女に教育を任せることで国力の増大を期待できる、正に一石二鳥というやつだ。
そういう訳で迂闊に資金援助の話に飛びつく訳にはいかないという事だ。
そして少し落ち着いたのかアミス先生が口を開く。
「ええ、わかりました。 でも金銭感覚に関しては、受付嬢ちゃんのお手伝いや酒屋クエストをこなしながら各地で直に見てもらった方がいいと思うわ、そちらの方が実感できるだろうし。 それとこれはお願いなのだけどいま武具融合と強化の先生、イリスカードは研究している先生がいるのだけど冒険者としての職業に詳しい先生はいないの。 私も二次職までしかわからないからもし良ければ、その事を教えてくれたらうれしいなって思うの。 どうかしら?」
確かに私はそこの辺りは詳しいが、二次職のテクニカルジョブはギルド元宮でかつては厳しく管理されていたはずだ。
それに三次職に関しても結構な危ない秘密があったりするので先ずはギルド評議会長に相談したほうがいいだろうと伝える。
するとアミス先生は真剣な顔で。
「それならたぶん大丈夫と思うわ、この前評議会からの発表で二次職の全部の情報を開示するって通知が来たの。 それと同時にもし三次職の情報を持っている人がいたら提供してほしいって要請も併せてね。 それで一部の三次職の情報提供はあったらしいんだけどやっぱり情報が少ないらしいの」
なるほど今朝言っていたようにプレイヤーと言うかアバターたちが忽然と消えてしまって四苦八苦しているのだろう。
特にクジラ戦でDEMと共闘したとはいえあくまでそれは少数勢力でしかないし、戦争も終結していない。
その状態で一線級の戦力が行方不明、はっきり言って絶望的な状況だ。
もしドミニオン界が陥落したら次はエミル界だ。
タイタニア界は特殊な結界を張ってあるらしいがハスターの件である程度のダメージを受けているし、物量で攻められたら陥落する可能性がないとは言い切れない。
そのような状況ではなりふり構ってはいられないだろう、それならばと私が了承すると先生は笑みを浮かべ心底よかったという顔をする。
「でもそうなると今日はもうすぐ夕方になっちゃうから、明日私と一緒にギルド元宮に行ってもらってもいいかしら。 それとブーフちゃん明日は学校はお休みにするって伝えてもらえる?」
そう先生が言うとブーフは、はいと返事をした。
そして今日の所は解散となる。
私たち三人は先生にさようならと伝え、飛行庭から降りてなんでもクエストカウンターへ帰るためにダウンタウンに向かった。
『イリスと記憶の書架』
2013年に実装され一年を掛けてストーリーを追うことになる通称通年イベント。
各地で上演される紙芝居、そしてその紙芝居と同じような事件が起き、それをプレイヤーが調査することになる。
特にこの作品は人気が高く2015年に続編となるエンドコンテンツや書架イベント自体が永久実装された。
『エコ坊・アルマ』
伊藤いづも先生著のアーススターコミック「エミル・クロニクル・オンライン」の主人公として登場。
後に本家ゲームにパートナーとして逆輸入され、コミックが刊行されると読者全員プレゼントとして次話で登場するとある姿に変更できるアイテムが、またみんつく作品で晴れ着に着替えることが出来るアイテムも実装された。
CV:中島由貴
『飛行庭』
マイマイ島という場所にあるバオバブの大木を材料に使い制作される、個人所有の自宅兼移動手段。
バオバブの木自体に浮力があり、エンジンで敢えてその場の留めるように動かさないと際限なく上昇するという欠点を持つ。
基本的には冒険者は最低一台は所有し混成騎士団は武装した飛行庭を保有している。
プレイヤーの中には庭師と呼ばれる、所謂ハウジング勢が一定数存在していた。
「エミル・クロニクル・オンライン ハウジング」で画像検索すると、少量だが確認できる。
『二次職』
アミスチュートリアル以降は実質的に
一次職がチュートリアルで上がり切ってしまうため
プレイヤーが初めて運用し始める職業の区分
昔の設定で強力すぎるため
エキスパートとテクニカルに分け
テクニカル職はギルドに認められたもの以外は
封印されているという設定があった。