とある冒険者のキセキ 「元題名 とある「えこ民」の物語」 作:想いの力のその先へ
とある「えこ民」の物語 六話
なんでもクエストカウンターに戻り夕食後ドラッキーと話していたクエストの事を受付嬢に改めて聞いてみる。
「ふむそうか、しかしお主は明日からアミスの所で勉強もあるしそれに今の所はこちらは人出も足りておる。 今すぐに何かを頼むことはないであろう」
その後受付嬢が何か小さく呟いていたが私にはよく聞こえていなかった、彼女は何か誤魔化すように咳払いをした後にまた喋りだす。
「まあ兎に角そういう事だから気持ちだけを受け取っておく、余が手を借りたいときは改めて声を掛けるからその時まで酒場クエストをこなして腕を磨いておいてくれ」
「わかりました、とりあえずは他事を優先させてもらいますが何かあったら言ってくださいね。 可能な限り手助けしますから」
「うむその時はよろしく頼む」
そのあと翌日からはアミス先生の授業に参加して放課後には酒場クエストをこなすという日々を繰り返し私自身、自分が少しづつ強くなっているという事が実感できていた。
新たな魔法こそはないがスキルは複数覚えており、鈍器や短剣をうまく扱えるような知識を身につけたり通常よりも力強く武器を敵に叩きつけるスキル「ブロウ」も習得した。
そうしてさらに数日した夜のご飯が終わった後に少しエコちゃんと話そうとしていた。
「エコちゃんちょっといいかい?」
「あ、ナナシだ! どうしたの、エコに何か用事?」
「うんちょっと話を聞いてみたくてね、時間は大丈夫かな?」
「大丈夫だよ! もう宿題は終わらせてるの! ここでお話しするの?」
「ここはちょっと邪魔になりそうだから談話室の方に行こうか」
そうして二人で移動しようとしたがミニードゥ・アルマが興味があるらしく一緒に話がしたいらしいので三人で談話室の方に移動する。
談話室に着いた後三人で座り当たり障りのないことから話し始める。
「エコちゃん学校は楽しいかい?」
「うんすごく楽しいよ!」
そう言って今日は皆とこんなことをした、そしていっぱい楽しいことがあったと終始ニコニコしながら話し続ける。
それを私とミニーは時々相槌を打ったりして会話を楽しんでいく。
そしてしばらく会話に花を咲かせるとエコちゃんがそういえばと言った感じでこちらに声を掛ける。
「そういえばナナシはエコに聞きたいことがあるんじゃなかった?」
「そうだったわね、ミニーも気になるのよぅ」
「ああ、そうだね。 エコちゃんの学校の休みの日が何時かを聞いておきたかったんだ」
「「休みの日?」」
「うん、この前エコちゃんの友達のユスティ君達とお話をするって約束しただろう。 私も余裕が出てきたしそちらが休みで都合がいい日があればお話ししようかと思ってね」
「あ! そういえばそうだった! 休みの日はあるけど皆の用事が分からないから明日聞いてみるね!」
「お願いするね」
そう言うとエコちゃんは明日も学校だからと部屋に帰っていく、そして部屋に二人きりとなりミニーに声を掛ける。
「ミニーちゃんも今日はありがとう」
「な、何のこと言ってるのかさっぱりわからないのよぅ!」
彼女は此処の中でエコちゃんと一番仲が良い、なのでここ数日一緒に暮らしているとはいえエコちゃんが人間と二人きりで会うのを心配したのだろう。
そしてそのことを指摘され恥ずかしくなったのか顔を赤くしている。
「と、兎に角! お礼を言われるようなこと何もしてませんから!」
そう言って彼女は足早に自分の部屋へと戻っていく、私もこれ以上此処にいる必要はないので部屋に戻りゆっくりと休むことにした。
その翌日酒場クエストの依頼を達成しなんでもクエストカウンターに戻ってくると、エコちゃんは私を待っていたのか見つけるとこちらに駆け寄ってくる。
「ナナシお帰り! ユスティ達に聞いてきたら皆、三日後なら大丈夫って言ってたよ!」
「そうか、ありがとうエコちゃん。 それじゃあ三日後にどこ集合にするか」
「ここは駄目なの?」
「一応ここは職場だしなぁ……」
そこで受付嬢を見かけたので聞いてみると。
「エコの友達を此処に呼んでの話し合い? ふむ、まぁ良いのではないか? 此処は我らの家でもあるのだしエコも友達を家に呼べないのは寂しいだろう」
「わぁい! うけつけじょーありがとー!」
「ありがとうございます」
「なに構わんよ。 それに余としてもそなた等の話というのが気になるしな、この前の冒険者云々の話なのであろう?」
「ええ、そうですよ。 あんまり長く待たせると可哀想ですからね、聞いてみて答えられる範囲であるなら答えようかと思いまして」
そういった会話があって時間は進みユスティ君達のと話し合い当日、六人以外にも何故かいるアミス先生とアクロニア学院の講師であるロバート先生。
一体何が如何してこうなった。
アミス先生はどこか期待と困ったような顔をしながら
「ごめんなさいナナシちゃん、私も冒険者の情報には少し興味があったの。 私自身冒険者志望だったけど身体が弱くてなれなかったしあの子達の話を聞けるかもしれないと思って」
「とりあえずは分かりました。 でも彼らの話は色々と刺激が強すぎて、恐らく話せるにしても大分内容が限定させる可能性がありますが……」
「それだけでもいいの。 ありがとうナナシちゃん」
「それでロバート先生は何故此処に?」
そう言って黒髪に眼鏡を掛けたドミニオンの男性に話しかける、このロバート先生も実はなんでもクエストカウンターのお得意様の一人で以前のロア騒動の時に依頼をして以来、何度かこちらに仕事を回してくれているそうだ。
「ああ、僕は君に興味があってね。 新進気鋭の冒険者なんて言われてる君がどんな話をするのか、興味があったんだよ」
……初めて聞いたのだが私はそんな風に呼ばれていたのか?
ただ単に出来る仕事をしていただけなのだが。
「本人の所には意外とそういった評判なんかは届かないものだからね。 君は仕事が早くて知識もルーキーと思えないほどに深いからそういった感じに言われているんだよ。 だからこそ彼らがお話を聞きに行くと言ってたのに御同伴させてもらったのさ」
なるほどそういう事だったのか、しかしそういった理由とは言えいきなり教師同伴になってしまった彼らが哀れでもあるが、エコちゃん以外の四人すごく緊張してるし……
「あ~、うんとりあえずお話を始めようか。 それで皆は何か聞きたいことがあったんだよね? それを聞かせて貰って私が答える形にしようか」
と、提案してみると四人で話し合いを始め、そして覚悟が決まったのかタイタニアの少女アムちゃんが此方に質問してくる。
「私は植物が好きなので冒険者の職業ファーマーを志望してるんですが、ロバート先生以外の先生からは魔力が高いんだからスペルユーザー職のウィザードがいいんじゃないかって。 それで実際に冒険者であるナナシさんに相談してみようと思って……」
ふむ進路相談みたいなものか、実際にコミックの方でもそういったことを言っていたことを思い出す。
因みにさっき彼女が言ったファーマーという職業はそのまま農家であり、力を高めていくと錬金術や薬品の調合などと言った技術やマリオネットと呼ばれる特殊な人形をどの職よりも扱えるようになるトリッキーな職だ。
そしてもう一方のウィザードは新生魔法と呼ばれる特殊な属性を使い多彩な補助や一部の状態異常魔法を覚える補助寄りの万能職だ。
「端的に二つのどちらがいいかという話でいいのかな?」
「はいそうです」
他の此処にいる全員も興味津々と言った様子で耳を傾けている。
「実は知識と言っても私が知っている知識とほんの少し差異があるようで、其処の検証が出来ていない状態ではあるがそれでもいいかい?」
「はい、それでも私よりは色々知ってると思うから……」
「ふむわかった。 なら言わせてもらうけどまずは簡潔に答えから言うとどの職でもいいよ」
「…………はぃ?」
彼女はどこか腑抜けたような声を出し、周りの人たちはアルマ二人を含めてずっこけそうになっていた
「いやいや、アムは真剣に悩んでるんだぜ! そんな適当な感じで!」
とユスティ君はこちらに突っかかってくるが
「今からちゃんと理由も言うから落ち着いて」
という私の言葉を聞いて彼は落ち着いて聞く体制に戻った。
「さて理由としてはだけど確かにタイタニアは魔力が高いし、ドミニオンは攻撃的で防御が低く、エミルは防御寄りの種族特性みたいなものがある、ここまではいいかい?」
みんなが頷いたのを見て話を続ける。
「だけど実はこの特性ってのはさ、最初の方が多少有利になるってだけの話でそこまで問題にはならないんだ。 大体二次職の後半辺りから団栗の背比べ状態になるんだよ」
その答えを聞いて皆が驚いている、当然かもしれないなんせほぼ全員が実際に冒険者だったわけでもないし、ロバート先生は一応昔は冒険者だったらしいが其処ら辺りの知識は疎いのだろう。
「なので寧ろそういったステータス関連を気にする場合は装備品などを気にしたほうがいいね。 実際に私の知識の中ではタイタニアでソードマンの職に就いた人もいるしね。 それでも気になるなら、実はファーマーの二次職には、二つの属性を合わせる複合魔法というスキルもあるからそういった意味でも問題ないんじゃないかな?」
そう彼女に告げるとファーマーになっても問題ないと知って感極まったのか、瞳を潤ませながら震えるような声で小さくありがとうございますと言っていた。
そして他のエコちゃん含めて四人は、そんなアムちゃんに口々におめでとうやらよかったね、と声を掛けていく。
「それで他に何か聞きたい人はいるかな?」
そう私が聞くとドミニオンの子供達、フィロ君とリザちゃんはどうやらアムちゃんと同じ様な悩みだったらしくおいらたちは大丈夫と言いユスティ君の番となった。
「それじゃあユスティ君の質問は?」
「うん俺はファイター職のソードマンとフェンサーに憧れてるんだけど、二つの違いが分からないから教えてもらおうと思って」
「わかった簡単に解説しようか、まずはソードマンから。 ソードマンはファイター職で主に攻撃火力を主軸に置く職だ、また意外と搦め手も使えるので多芸だ。 もし二次職のさらに上に到達した場合はちょっと鍛錬がきつい時期もあるけど最終的にはかなりの攻撃力を得て、PTの攻撃の要になるだろう。 問題としてはその攻撃力の代わりに戦闘中にあっと言う間にスタミナを消費して息切れを起こしたり、PTを援護できるスキルを持ち合わせていないから物理が効かない相手だとただの案山子になる可能性が高い。 ここまではいいかい?」
彼はいつの間にかペンと紙を持ってメモを取りながら真剣に此方の話を聞いていた。
他の子達やアミス先生、ロバート先生も真剣な眼差しでこちらを見ている。
「次はフェンサーだ、此方もファイター職だがソードマンとは違って護りを重きに置く職だ。 また此方は敵の注意を引きつけたり自身が倒れても即座に復活できるようなスキルが揃っているからPTの護りの要となり得るだろう。 問題としては他グループに比べるとそれなりにはあるがファイター職としては火力が低い事と、一部のスキルが光と闇属性固定の為に光属性の敵に対する対抗手段が乏しい事だね。 こんな所かな」
そう言い終えるとユスティ君はありがとうございましたと此方に深々と頭を下げ、周りの人たちは感嘆した様子で見ていた。
「まぁ最終的には自分が何をしてみたいかで決めてみるといいよ」
そう私が言うと四人ともはい! と良い返事を返してくれた。
その後は冒険者としての押さえておきたい知識を中心に話を進め、時にはアミス先生とロバート先生、受付嬢と共に議論という形で話に花を咲かせていた。
そうして会話を続けていると流石に良い時間になってきたので、そろそろお開きにしようかという流れになってきた。
「今日はありがとう、色々と勉強になったよ。 冒険者というのも改めて色々あると知れてよかった」
「ロバート先生もお疲れさまでした、まだちょっと話せない内容の事もありましたがそれを抜いてもいろいろと濃い話が多いですからね」
「まだこれ以上あるのかい? やはり僕には冒険者は向いてなかったのかも知れないね」
「まぁやりたい時にやりたい事をやる、そんな自由人が冒険者向きですからね」
違いない! そう言いロバート先生は笑いながら帰っていく。
そして次はアミス先生に話していく。
「アミス先生もお疲れさまでした、今日はありがとうございました」
「いいえ、私こそありがとう。 ナナシちゃんのお陰でいろいろ勉強になったわ、それに少しだけとは言えあの子たちの冒険も教えてもらったしね。 それじゃあ明日はまた学校だからよろしくね」
そう言いアミス先生もまた帰っていく。
最後にユスティ君達四人組に話しかける。
「ユスティ君達ちょっと待ってもらっていいかな?」
その言葉に四人はこちらに向き返り、なんですかと言ってくる。
「確か四人はもうそろそろアクロニア学院を卒業するんだよね?」
「うん、そうだけど……」
そうユスティ君が答えてくれる。
「だから提案なんだけど卒業して四人とも冒険者になるなら、私とPT組まないかというお誘いなんだけどどうかな?」
そう提案すると四人は目を輝かせながらいいんですか! と問うてくる。
なので私ももちろん何も問題ないよと返答すると四人はやった! と言いながら燥いでいる、私としても一人ではやはり出来る事は限られてくるし彼らと今日一日接したことで多少なりとも愛着は湧いているので、もし私の知らないところでケガをしたり最悪命を落とした場合を考えてしまうと気になってしまうので断られなくてよかったと思う。
そうして卒業をした後にPTを組む約束をした後彼等とも別れて私も自室で休む事にした。
「PT」
冒険者たちで少数のチームを組んだ状態の事。
ECOの世界では最大で八人までを一PTとして組める。