とある冒険者のキセキ  「元題名 とある「えこ民」の物語」   作:想いの力のその先へ

8 / 23
七話

   とある「えこ民」の物語 七話

 

 ユスティ君達との話し合いの数日後、学校の授業が終わった後に騎士団の連絡として、アランが久しぶりに顔を見せてきた。

 

「やあ、久しぶりナナシ」

 

「久しぶりという程時間は立ってないような気もするけど、久しぶりアラン。 それで騎士団の考えが纏まったんだって?」

 

「うん、そうなんだ。 混成騎士団としては以下の条件で纏まったんだ」

 

 そうして混成騎士団としてのアランが出した条件は以下の通りだ。

 1.ナナシは原則どの騎士団にも所属させずに行動させる。

 2.ナナシは探索の為の人員は自身の手で集めてもらう。

 3.各騎士団はナナシに行動してもらう場合依頼という形で出す。

 4.各騎士団はナナシに要求された場合人員以外の協力は惜しまない。

 5.以上を持って契約とし双方ともに履行する。

 こんな感じだった、計らずとも昨日ユスティ君達と約束していてよかったと胸を撫でおろす事になった。

 初日に人が足りないと言っていたか、こんな形で実感することになるとは正直思っていなかったからな。

 

「何かほっとしているところ悪いんだけどナナシ早速依頼なんだ。 西軍の騎士団駐屯所に行って欲しいんだ」

 

 まさかのいきなりの依頼だった、マジかぁ……

 まぁあの後にも酒場クエストをこなし続け使える魔法も増えてきてるし大丈夫だろうけど……

 

「アランその依頼どんなものか分かる?」

 

「ごめんね、こっちも西軍から依頼があるとしか聞かされてないんだ。 なので実際に駐屯所に言って確認して来て欲しい」

 

 アランに分かったと伝え、私はそのまま西稼働橋にある西軍の駐屯地に足を運んだ。

 

 

 そうしてついた西軍駐屯地で私は部屋の一室に案内される、北軍でノールとあった応接間とほぼ同じ構造だ。

 違うとすれば花の種類と壁に西軍の旗が掲げられているところ位だ、元々稼働橋自体同じデザインだからそれに付属する形で作られた駐屯地も同じ構造になっているのだろう。

 しばらく待つとドアがノックされ女性が一人入ってくる、彼女もまた見覚えがある。

 

「以前のギルド元宮の会議でも会ってはいるがこうやって言葉を直接交わすのは初めてだな。 私はランスィ、西軍で指揮官を拝命している」

 

 金髪のロングヘアーに右目の眼帯、胸元を大きく開けた扇情的な軍服の着方をしている彼女こそが北軍のノールと同じ隊長職にして西軍の実質的な司令官ランスィだ。

 彼女は主に短剣と自らの肉体を使った素早いヒット&アウェイを得意としている、敵対した場合その素早い動きに翻弄されいつの間にかナイフで切り刻まれるか、体術により文字通り昇天されられてしまうだろう。

 私は席を立ち彼女に握手を求めながら挨拶する。

 

「改めて初めましてナナシと申します。 今日は宜しくお願い致します」

 

 彼女は私の手を握り返し。

 

「ああ、よろしく頼む。 今日は比較的簡単な任務だが顔合わせ代わりと思ってな、依頼させてもらった」

 

 と、私に答えてくれる。

 簡単な任務か、ならば特に問題はないのだが。

 改めて二人とも席に対面する形で座りなおして話を始める。

 

「それでは今回の任務に関しての説明をするぞ。 今回は我が騎士団の新人研修の一環としてキラービーの峠道並びに、ビーの巣穴のモンスター討伐だ。 君には私と共にそれに同行してもらい新人のフォローをしてもらう。 出発は明日の朝だ、アミス教諭には既に伝えてあるので其処は安心してほしい」

 

 まさかの新人研修である、引率って簡単なお仕事だっただろうか? 私も一応新人なのだが……

 

「そこまで気を張らずとも良いよ。 あくまで顔合わせがメインで任務はついでだからな、もし新人が危なそうなら魔法でフォローを入れるだけでいい。 基本的に指揮は私の仕事だからな」

 

「そう言ってもらえると助かります、流石に教育なんて言われても分かりませんからね。 人数はどのくらいで? それと回復剤なんかはどうなるんですか」

 

「今回の人数は十人、回復剤等の消耗品はこちらで支給させてもらう。 場所も近場だからピクニックとでも思えばいいだろう」

 

 確かにキラービーの峠道は西アクロニア平原の目と鼻の先だし、ビーの巣穴も冒険初心者用の訓練ダンジョンみたいな位置付けだ、私は今回利用していなかったが。

 

「なるほど、了解しました。 私の方はもう質問等はありません、それでは明日は宜しくお願いします」

 

「ああ、此方こそ宜しく頼む。 それではまた明日」

 

 打ち合わせは終わり、ランスィと別れてもう一度学校へ行き自分の口からもアミス先生に任務について説明、明日は学校を休む旨を伝えると。

 

「ええ、西軍の方からもさっき聞いたわ。 ナナシちゃん、大変だと思うけど頑張ってね。 怪我をしないように気をつけて行ってらっしゃい」

 

 と激励の言葉を貰うことになった、それとは別にプレゼントがあるから楽しみにしていてねとの事だったが何かあるのだろうか?

 まぁ考えても仕方ないと思い至り、今日の所は明日の任務もあるし早めに帰路に就いて体調管理をしておくとしよう。

 

 

 

 そして翌日、西稼働橋で彼女たちと西稼働橋で合流しキラービーの峠道に出発した。

 キラービーの峠道、その名の通り前足が手のように変化して槍を持っている黄色い蜂型のモンスター「キラービー」が多く生息しており、他にも犬型のモンスターである「バウ」や黄色のプルルで名前もそのまま「イエロープルル」などが存在している。

 こちらを認識してくると襲い掛かってくるバウを適当に相手しながら私達はビーの巣穴を目指して進んでいた。

 

「バウは徒党を組んで襲ってくるが一匹ずつ確実に処理すればいい! 抜かるなよ!」

 

『了解しました!!』

 

 ランスィが兵士たちをそう鼓舞し、兵士たちも力強く返事を返す。

 こう見るとランスィが兵たちに慕われ頼もしい存在だという事が良く分かる。

 そして今の所私の出番はまだ来ていない、何度か危なそうな場面はあったが彼ら自身拙いながらも連携を取り、問題なくモンスターを処理出来ている。

 

「新人と言っていましたが頼もしいものだ、私の出番はないかもしれないなコレは」

 

 私が思わずそう呟くと。

 

「そうでもない。 今は外部者であるナナシが見てるから張り切っている部分もあるし、キラービーはバウとは違い連携もとれている。 まだまだ分からんさ。 もしもの時は宜しく頼む」

 

「了解しました、ですが出番など来ないほうが望ましいですがね。 お互いに楽が出来る」

 

「違いない」

 

 そう軽口を叩きながら道なりに進んでいくと前に洞窟が見えてきた、あれが今回の目的地であるビーの巣穴だ、ここも先程の峠道と同じようにキラービーが多く、そのミニマム版のチビー、見た目も名前もそのままの幼虫、それと紅く全体的に強化された個体であるワスプが生息している。

 

「此処からが本番だ! 気を引き締めるように! それでは突入!!」

 

 そうランスィが檄を飛ばし洞窟の中に侵入する。

 足を踏み入れると此方の侵入に気付いたキラービーが何匹か迎撃に来て戦闘が開始される。

 最初は問題なく戦っていたがやはり新人という事で連携の取り方が甘く、キラービーの連携で分断され冷静さを欠く事があったがその度に私が魔法で援護しランスィの。

 

「訓練を思い出せ! ツーマンセルで組みいつも通りに戦えば問題ない! 自分の相棒に背中を任せて戦うんだ!」

 

 という指示で冷静さを取り戻し戦線を拮抗させ最終的には討伐をしていく。

 そしてしばらくすると此処の区画のキラービーは撃破出来ていた。

 

「何とかなったみたいですね、いやはや途中は冷や汗ものでしたが」

 

「まったくだな、どうしても連携が甘い部分があった。 だが実戦経験を得て学ぶこともあっただろう。 連携はまた訓練して練度を上げていけばいい、貴様らも今日はよくやったそろそろ戻るぞ」

 

 ランスィの言葉を聞き皆が帰還の準備をしようと動いた時に奥の方からワスプが三匹ほど突撃してくる、そしてその更に奥には青い体の更に大きい蜂型のモンスター、あれは……!

 

「スティンガーが来るぞ! ランスィ気をつけて!」

 

「総員迎撃! ワスプを抑えるんだ! あいつは私とナナシでやる!」

 

 スティンガー、このビーの巣穴のボスモンスターであり、取り巻きとしてワスプを引き連れ中を徘徊している人の二倍ほどの大きさを持つモンスターだ。

 兵士たちがワスプと戦闘開始するのを確認して私たちもスティンガーの元へと向かう、スティンガーもまたその巨体に見合わぬ素早さでこちらに突撃してくる。

 スティンガーが槍を突き出してくるがランスィはそれを身体を屈める事で躱し、懐に忍び込みナイフで切りつけるが、奴には思った以上にダメージが入っていないようで槍を振り回して迎撃してくる。

 

「ちぃ、硬いな」

 

 私も〈ブラックウィドウ〉で援護するがやはり効果が乏しい、だが此方を煩わしく思ったのか槍を構えてチャージをしてくる。

 私はそれを横に跳ぶ事で回避し、其処にランスィが攻撃を仕掛けるが……

 

「不味い! ランスィ回避!!」

 

 私のその声を聴き彼女は咄嗟にバックステップをすると前方、先程彼女が移動しようとした場所に特大の雷が落ちる、スティンガーの魔法〈スーパーサンダーボルト〉だ。

 

「済まない、助かった」

 

「いいえ、しかし如何したものか。 ランスィ、土コロンとかあります?」

 

「ああ、持ってきているがどうしてだ」

 

「あいつは風属性で土属性が弱点ですから。 それで武器を土属性にすれば多少はダメージの通りが良くなります。 あとは私が隙を作りますのでアタッカーよろしく」

 

 そう言って私は行動を開始する、後ろであ、ちょ、まてとランスィが言ってくるが無視して先に進む。

 奴はまた槍を繰り出してくるがそれを躱し手に持ったハルムを盛大に叩き(ブロウ)つける。

 すると衝撃が強かったのか奴は少しではあるがバランスを崩す、ここだと思い私は先程使用が可能になった魔法を奴に掛ける、すると急に動きが悪くなる。

 その隙にランスィがナイフによる連撃を仕掛けるとやはりきついのか奴は目に見えて余裕がなくなってきた。

 だが奴にはもう打てる手がないのか此方にの攻撃に少しずつ削られていき最後にはその巨体を大地に墜とし地響きを響かせることとなった。

 それと同時に兵士たちの方も終わったようで多少怪我はしているが全員命に別状はない様だ。

 流石に皆疲れているのと連戦するつもりはないので急いで撤収する。

 

 

 

 そうして無事に西軍駐屯地に辿り着いて今回の討伐の反省会をする事と相成った。

 

「まずは皆今回の討伐ご苦労だった、キラービー討伐時に手間取る事はあったがその後のワスプを私達の援護なしに討伐できた事は、素直に称賛に値するよくやった」

 

 彼女がそう言うと兵士の中から安堵のため息や、やったー! という声が聞こえてくる。

 

「だがやはり連携が甘いことは事実だ、なので今後も訓練には励め! 初めての実戦で疲れただろう、宿舎に戻りゆっくりと休むように、では解散!」

 

 その言葉に兵士たちは了解と返事をし退室していく。

 そして部屋には私とランスィの二人きりとなる、すると彼女はこちらに対して頭を下げてくる。

 

「ナナシ今回は助かった、ありがとう。 流石に新人たちだけでは何人か犠牲が出てたかもしれない」

 

「いえ、頭を上げてください。 私は仕事をしただけですので」

 

 そう言うと彼女は頭を上げて此方に手を出してくる、私もまた手を出し握手をした。

 

「しかし君は存外無茶をするのだな、聞いていた話ではどちらかと言うと慎重と言うか臆病な感じだと思っていたが」

 

「私も勝算なしにあんな行動は起こしませんよ、どうにかなると踏んだからこその無茶ですから」

 

「無茶であるとは思ってたんだな」

 

 彼女は苦笑しながらそう言ってくる。

 確かにあのままでもいずれ倒せるとは思うがそれでは時間が掛かりすぎる、新人の兵士たちがどうなっているかわからない状況ではそこまで悠長にする訳にもいかないだろう。

 

「しかしあの時、急にスティンガーの動きが鈍くなったのはどうやったんだ? 君の魔法というのは分かるんだが」

 

 あの時使っていた魔法は〈マジックスロウ〉効果は文字通り相手の行動を遅延させる状態異常魔法だ、それでスティンガーの動きを遅くしていたのだ。

 それを聞いたランスィはなるほどと頷き、なら場合によってはウォーロックギルドから人を借りてもいいかもなと言っていたので私はそれに賛成しておいた。

 そしてランスィから今回の依頼の報酬を頂いて私たち二人も改めて解散となり私は帰路に就くことになった。

 

 




「属性」

このゲームには基本的に地水火風闇光の六属性と物理属性、新生属性が存在する。
火は水に強く、水は土に強く、土は風に強く、風は火に強く、闇は四属性に強く光属性に弱く、光属性は闇属性に強く四属性に弱いという独特な法則がある。
物理属性はそのまま一般的な物理と同じで新生属性はかなり特殊で得意も苦手もなくダメージ軽減手段は存在しない。

「コロン」

地水火風闇光の六種類ある攻撃属性を一定時間、変化させるアイテム。
自ら属性を変化できるスペルユーザー職以外はこのアイテムか、武器にとある事をすることによって属性付与する方法の二つしかない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。