記憶の無い僕と黒い刃の彼女   作:丸いの

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17. 雷光の中へ

 ヴァローナを南北に縦断する巨大な大通りを、僕は一人きりで歩いている。こんな街の中心部だというのに、前後左右何処にも通行人の姿など見えやしない。否、人だったら、この目的地に掃いて捨てるほどにいるのだ。皆が捉えた敵将の前で陣を張り、そして砦からの使者を待ちその陥落に向けて始祖族の元で士気を高めていることだろう。

 

 目的地は、その敵の最中。街の中心部に広がる市民の憩いの場であり、今はその市民たちの多数の遺体が転がっているであろう中央広場。大通りの中頃まで歩いて来れば、もうその光景は嫌でも目に入る。ところどころが赤く染まった石畳の広場に、何人もの武装をした北部人たちが集結をしている。広場の中心にて彼らが囲う高台の上に、その人は見せしめのようにつるし上げられていた。

 

「……見つけた。広場中心の高台にカタリナ様、その西方に反乱兵」

 

 連れ添っている誰かに伝えるわけでもなく、ただ淡々と事実を述べる。広場を囲う建物の高さ、標的のいる場所、そして彼らの配置。その全てが、幸いに今のところは計画から外れるものではない。

 

 反乱兵たちはその全てが寄せ集めの集団には見えないほどに整然と並び、一人の首領がその前で立っていた。この遠く離れたところからでも分かる、金色に光る十字剣。磔にされたまま死体のように身動きひとつしないカタリナ様とは対照的に、あの始祖族の女は時折その霊剣をふるわせながら反乱兵の前に立っている。

 

 彼らは待っている。人質として捕らえたカタリナ様と、砦の無血開城。その二つを天秤にかけさせて、どちらを選ぶのかという問いに対する答えを。そんなもの、砦の将官ならば選択肢など無いも同然だというのに、彼らは律儀に今まで待っている。

 

 それはきっと、カタリナ様を護るべき街にすらも切り捨てられた哀れな始祖族の戦士に仕立てあげて、そしてこの場で殺すため。アストランテの兵士たちの中で英雄視されている存在を無様に辱しめて殺すということが、一体彼ら北部人にどれほどの意味があるのかはわからない。でも、そんなことのために、抵抗の一切ない彼女はその視線たちの先で縛り上げられて無理矢理に立たせられている。

 

「敵の始祖族は、カタリナ様のすぐ前にいる。ああ、これならば――行けるッ」

 

 僕のような人間族が強力な始祖族を打ち倒すためには、その戦場を端から自分にとって有利な場へとするのが鉄則だ。もう僕は、その鉄則の下で始祖族を一人打ち倒している。だから今度もそれに乗ろうじゃないか。この中央広場において、カタリナ様を公に殺す場を作るというその慢心を、利用させてもらおうか。

 

 地面を捲りあげるほどの力で蹴りだし、敵兵に満たされたその場に向けて走り出した。決して一人きりなんかではない。僕の両手にはナインという名前の黒剣が、懐にはイーリスの霊剣の欠片が、そしてずっと背後には――虎視眈々と中央広場を見据える彼らがいるのだから。

 

 

* * *

 

 

「……それが、君たちが推測する敵の弱点か」

 

 イーリスは古ぼけた机に手をつき、探るような視線を向けてきた。

 

 あの始祖族は決して無敵なんかじゃない。縦横無尽に走る雷には、必ず弱点と対抗策があるはずだ。僕の主張は良く言えば希望に満ちていて、悪く言えば絶対的な根拠にかける机上の空論。それを受け入れてもらうのは、簡単なことではないだろう。

 

「仮にそれが本当だとしよう。奴の雷を打ち破ったとして、そのあとはどうなる。敵は巨大な霊剣を保有している。それに君たちが太刀打ちできるとでも?」

 

 霊剣は、それ自身が強靭でとてつもなく鋭利な特性を持つ強力な兵器だ。そして始祖族たちの振るう霊剣には、それ単独でも特異な能力が備わっている。例えばクアルスで対峙したアリアスならば、彼自身が扱う強力な火炎の他に、霊剣を複数生み出して投てき武器として扱う錬成という能力。きっと、あの始祖族も雷撃の他に何らかの特殊な能力が備わっているのだろう。

 

 こればっかりは、実際に自分の目で確かめなければ分からない。もしかしたら、雷撃など比ではないとんでもない隠し玉を抱えている可能性だってある。だからこそあの始祖族を打ち倒すにあたって未だ未知の能力の正体次第では最大の障壁になるのだ。そして、僕はその不測の事態に備えた考えも保有している。

 

「……詳細はお話しできませんが、霊剣と打ち合うだけなら不可能ではありません。それに、まだこちらには切り札があります」

 

 イーリスが放った兵を通して聞いた中央広場の状況が、僕たちが最後に切ることが出来るカードの存在を伝えてくれた。戦姫カタリナ・フォン・アストランテは、一人の護衛もつけずに単騎で突撃した結果マオと名乗った始祖族に再び敗北し、現在敵の手に落ちて中央広場にて磔にされている。

 

 ただ、彼女は殺されてはおらず、まだ生きているのだ。全身を雷にうたれたために意識はなく、肌には幾つもの火傷が走り、赤黒い髪や鎧の各部は黒く焦げ付いた無惨な姿。果たして交渉のカードに使おうとしているのか、それとも公の場で処刑をするために生かしているのかはわからない。それでも、彼女は五体満足でそこにいる。

 

 仮にその身柄を解放して意識を取り戻させることが出来たのならば、非常に心強い戦力となるだろう。彼女がマオに負けたのは、ひとえにあの敵を理解しないままに無謀な突撃を行ったからだ。これから僕たちが行う戦い方を彼女が徹底をするのならば、少なくとも一方的にむざむざと敗北を喫することは無いと信じたい。

 

「つまり、カタリナ様を解放すると。それこそ夢物語だ。中央広場には始祖族だけではなく武装蜂起した反乱者たちが集結している。よしんば君がその壁を突破してカタリナ様の元にたどり着いたとして、そこは数多くの敵に囲まれた修羅の巷だ。どうやってそこで戦う?」

 

 普通に考えれば、敵が密集している中に飛び込んでその将へ戦いを挑むだなんて、非現実的にも程がある無理な話だ。ただでさえ強力な始祖族に加えて何人もの反乱兵を相手取るのは、どう考えたって量と質の双方で圧倒をされている。

 

 しかし相手取ろうとしているのは、ただの戦力に長けた始祖族などではない。雷の使い手にして、巨大な十字剣型の霊剣を武器とする強大な敵。だがそれは言い換えれば、変哲のない人間族の反乱兵たちと連携を取ることを不得意とするということも意味する。

 

「……あの始祖族は、恐らく自分の戦いに反乱兵たちを介入させないでしょう。ただ彼らが剣を片手に存在するというだけで雷撃という能力は事実上封じられる。だからきっと、カタリナ様を解放した僕に対峙しているのは、あの女一人だけです」

 

 その光景を幻視する。幾多もの兵士たちの前で、意識が戻らず動く様子のないカタリナ様とただの人間族である僕、それと向かい合うは十字剣を構えたマオ。それはきっと絶望的な光景。でも、何人もの兵士の相手を一度にするよりもよほどマシだ。

 

「そしてその瞬間に――ええ、これは分の悪い賭けに過ぎません。でも仮にこの作戦が失敗したところで、僕とナイン、そしてもう捕らわれの身となったカタリナ様の三名しか失われない。ベットするには、ちょうどいい塩梅だとは思いませんか」

 

 無論、僕はあの始祖族の打倒に失敗するつもりなんてない。無策でイーリスがマオに戦いを挑むよりも、ナインの黒剣という隠し玉を持った僕の方が単騎での勝率はまだ高いだろう。でもこの作戦にはイーリスの同意が不可欠で、そして彼の協力が無ければ終始反乱兵たちの土俵で戦いを挑むことになる。

 

 だからイーリスをどうにかして頷かせる必要がある。リスクというものを考えれば、実質的に初手で動くことになるのが僕とナインだけというこの計画は、元々の作戦から考えればよほど良いものだろう。確かに確実性は薄いかもしれないが、それと同時にイーリスにとって失うものも少ない。

 

 さあ、その頭を縦に振れ。僕の願いが通じたのか、目を瞑って数秒間の沈黙を保っていたイーリスは、諦めたようにその口を重々しく開いた。

 

「……ああ、私もその計画に乗ってやろうじゃないか。だからこそ、それには掛け金が必要だ」

 

 イーリスは、自身の霊剣を顕現させていた。刃の一部が不自然に欠けたレイピアのような細長い短剣といった出で立ちのそれを机の上に置き、イーリスはその霊剣の柄へと力を込めた。それはまるで精密に組み合わさった積み木を崩すかの如く、霊剣の柄の半分近くが本体から分離を果たした。分離した柄の一部は当然霊剣の輝きを失ってはおらず、そして彼自身の体にも何ら異変は起きていない。

 

 彼のいきなりの行動に唖然としか出来ない僕をしり目に、彼はその淡く輝く破片をこちらへと差し出してきた。精巧に作りこまれた小物のような、不可思議な紋様を表面に走らせて白く淡い光を発するその破片が、僕の手のひらへと乗せられる。

 

「君の言う計画とは、こちらとの連携が必須だろう。私の霊剣の破片は、君の聴覚を通して私自身へと音を伝える。これを君に預けよう。なに、心配は無用だ。たとえ君が殺されてその破片が砕かれたところで、私の残ったもう一本の腕が霧散するだけのことだ。」

 

 それは、彼の最大限の協力を引き出したということだろう。彼の霊剣の破片を握り締め、そしてそれを懐へと仕舞い込む。このおかげで、僕は砦の方に適切なタイミングで支援を要請することが出来る。何の感慨もなく淡々とした表情を続けるイーリスが、とても心強く感じた。

 

 

「しょ、将官殿!! 敵の反乱兵から要求が!!」

 

 その話の切れ間を狙ったようなタイミングで小さな部屋と通路を隔てる扉が音を立てて乱雑に開かた。その直後に飛び込んできた一人の砦の兵士。彼の発したその一言を聞いて、驚きよりもとうとう来たかという感慨が先に浮かんだ。この膠着状態において、絶好の人質を取った敵がとるような行動など一つしか存在しない。

 

「案外敵の動きは素早いじゃないか。内容を伝えよ」

「え、ええ――戦姫カタリナ様の命とヴァローナの砦、そのどちらかを選べ――です」

 

 シンプルでありながら彼らの狙いを端的に伝えるその文言、それは端からこちらが出すであろう答えを知っての上で送りつけてきたとしか思えないもの。明け渡してしまったら二国間の要衝としての役割を失うほどのこの砦と、アストランテの王族とはいえどもたった一人の戦姫。真っ当な将ならば、天秤にかけることすらもすないような状況だ。しかしイーリスは、その兵士の言葉を聞いて、むしろその顔に深い笑みを浮かべた。

 

「……我々の答えを直接教えてやろうじゃないか――ヴァローナ正規軍将官イーリス・ディ・ヴィンターが命じる。ツカサ、そしてナイン。私の命の元、敵将マオ・リーフェンを打倒せよ」

 

 

* * *

 

 

「――き、来たぞ!! 全員傾聴、砦の兵だ!!」

 

 真っ正面から小細工抜きでの突撃。そんな無謀とも言える行為が敵に見つからないわけがない。前倒の姿勢のままに動かし続ける脚、そして見る間に縮まる敵の陣との距離。一歩踏み出すごとに、見る間に上がる景色の流れる速度。こんな状況だというのに、自分の体のあまりの軽さに、異様とも言える高揚感が沸き起こる。

 

 敵兵の叫びが伝搬し、僕という闖入者へと向けて彼らが剣先を並べて陣を組み始める。しかしそれは小規模な人数の奇襲ならばまだしも、それよりもずっと素早く接近するたった一人の襲撃者には到底釣り合うものではない。

 

 多勢に無勢、数の差だけはどうやったって覆ることはない。だからこそ、極限まで見極めなければならない。敵兵たちの位置を、そしてその中にあるはずの僅かな隙間を。戻ることは考えずに、ただその陣を突き破り中央に到達することだけを目標とすれば良い。

 

「たったの一人きり、馬鹿め!! 覚悟ォ――」

 

 そして、狙いを定めた。僕というたった一人で敵陣に突撃する愚か者を下そうと、血で薄汚れた剣を振り上げて突出してきた一人の敵兵。覚悟なんて、していなかったらこんなところに来るわけがないだろう。己を鼓舞するために、僕は敵兵に目掛けて精一杯の笑顔を向けた。

 

 限界まで姿勢を落とし、眼前まで迫る地面の姿。その体の上を敵兵の剣が通過し、風切り音だけを置き去りにする。これでまずは一人を抜いた。これで前後左右が敵だらけ、もう僕の体は敵陣の中にあり、引き返すことはすでに叶わず突破する他はない。

 

 倒れそうになる間際に地面へと黒剣を突き刺してバランスを取り、次なる標的へと目をつけた。心臓を目掛けて繰り出される槍。その切っ先を飛び上がってかわし、槍の柄を足場にしてさらに己の体を前へ前へと突き進ませる。

 

「速すぎて手に負えん!! リーフェン様を守れ!!」

「か、囲め!! 奴はたったの一人、押し込めば――」

 

 帰還は考えずにただ突き進むだけ。きっと、地獄へと向けた片道の往来だ。この陣をたとえ突破することは叶っても、振り向いたら決して抜け出すことの出来ない堅牢な人の壁があることだろう。

 

 これは、敵を倒すのではなくただその先に行くためだけの捨て身とも言える突撃に過ぎない。それでも、絶対に脚は止めない。敵兵たちが僕の行動を一騎当千の武人の襲撃と思っているうちは、彼らは絶対に僕を止められない。反乱兵たちの顔に浮かぶ理解の出来ないなものを前にした警戒感が彼らの剣先を遅らせて、そしてただ突き進むだけの僕にわずかばかりの猶予を与えるのだ。

 

「――さぁ、取った!!」

 

 兵士たち、そして未だに陣の奥で動じずに待機をしているであろう始祖族に向けて言い放つ。立ちはだかる最後の兵士たちの横を駆け抜けて、目の前に見えるは高台への石造りの段差。その頂へと手をかけて、一気に飛び上がった。つかの間の浮遊感の中でようやく視界へと入れた、磔にされたカタリナ様の姿。報告の通りの、敗北したその姿のままに両手を木の柱へと括り付けられた、まさに捉えられた敵将といった出で立ちだ。

 

 そしてついに、高台へと両の足を付けた。何人もの兵士を抜き去りたどり着いた目的地。その上に立ちあがり、カタリナ様が磔にされた柱へと一歩近づいた。その背後で、雷の弾ける鋭い音が鳴り響く。僕の動きだけではなく、この身を縊り殺そうと勇む反乱兵たちをも牽制するかのような、威圧というものをそのまま音にしたかのような響き。

 

「こちらを向きなさい。せっかく拾った命をまた捨てに来るとは、まったく愚かしい」

 

 言われるがままに、背後へと振り向く。巨大な十字剣が吐き出す雷、そしてそれを構えるのは装飾鎧へ身を包んだ一人の始祖族。再び、僕はこの動く理不尽な暴力の権化の前に姿を出したのだ。

 

 闖入者を排除しようと徒党を組んでいた反乱兵たちは高台にて向かい合う僕たちを遠巻きに眺めている。彼らの前に広がっている光景とは、臨戦態勢の始祖族を前にする、縛り付けられたまま意識のない敵将とその前に立ち尽くす愚かしい一人の人間の青二才という構図だ。彼らが手を下さずとも、始祖族の首領はこの闖入者に碌な抵抗も許さぬままに殺すだろう。だからこその、敵陣のど真ん中に一対一という歪な状況が出来上がったのだろう。

 

「僕は、ヴァローナの砦の将、イーリス・ディ・ヴィンター将官閣下の使いだ。殺すのは、閣下の言を伝えてからにして貰おうか」

 

 黒剣を構えたまま、そう高らかに宣言する。こんな異様とも言える派手な登場をしておいて砦の使いを自称するなど、無理のある話だ。当然のように押さえきれない嘲笑を漏らす反乱兵たち。そして始祖族の女も、愚かしい物を見つめるような呆れと失望を混ぜた視線をこちらに向けた。

 

「……ヴァローナでは使者は敵陣の中に飛び込むのが慣例なのか、それともあなたの気が違えたのかは問いません。ただ使者を名乗るのならばその伝言とやらを教えていただきましょうか」

 

 しかしこの女は食いついた。その一言を聞いて、いつの間にか浮かんでいた笑みを深くする。これでようやく、舞台は最後の仕上げを除いて全て組み上がった。あとはその仕上げを行うだけ。黒剣を逆手に持ち替えてカタリナ様が縛り付けられた柱の前に立ち、始祖族の金色の瞳を睨みつけた。

 

「――戦姫カタリナ様の命とヴァローナの砦、我々はそのどちらをも取る。街を蹂躙した貴様たち反乱兵、そしてその愚か者どもを焚きつけた帝国の間諜、ここでその全てを処断する」

 

 砦を出る間際に言い渡されたその言を一字一句違わずに言い切ると同時に、黒剣を持った両手を後ろへと突き出した。確かな手ごたえ、それはカタリナ様を柱へと縛り付ける縄のもの。縄を切り裂かれて体を支えるものが無くなった彼女の体が力なく高台の上に転がり、その直後に前後左右全ての方から響くあらんばかりの罵声。

 

 マオという始祖族が居なければ、彼らはその手に持った剣や槍で僕の体を原型を留めないほどに蹂躙するだろう。貴様ら壁の中の人間に生きる価値はない、その男を殺せ、見せしめに首を砦に放り込め。口々に彼らが吐き捨てたそれは、聞き取れたものだけでもこれだけある。一気に燃え上がった彼らの怒りとは裏腹に、マオが十字剣の切っ先を僕に向けた。

 

「言いたいことはそれだけですね。ならば、彼らの願いを叶えることとしましょう。もう邪魔が入ることはありません。あなたと戦姫、その双方を我らが処断します」

「……ええ、これで全て"準備は整った"」

 

 彼女の剣が雷光で光り出す。今だ止まない罵声に混じる、雷光の弾ける乾いた音。それを目の前にしながらも、はっきりと僕は宣言した。それは目の前で処刑の執行のために雷光を集約させている彼女に向けてだけではなく、懐にしまっているイーリスの霊剣の破片にも向けている。

 

 これで、イーリスは僕たちの状況を把握したはずだ。全ては計画通り。カタリナ様が捕まっていた高台の上で、解放された彼女と僕は敵の始祖族と向かい合い、今まさに雷光によって僕たちを処刑しようとしている。あとは、彼が最後の仕上げのための引き金を引くだけ――いや、もう彼はその引き金を引いたはずだ。

 

「終わりです。せめてもの慈悲として、苦痛もなく死なせてあげま――」

「――終わりではなく、ここからが始まりだ!!」

 

――ツカサ。計画通り、全部この場所に目掛けて降ってきている!!――

 

 一度は下げた二振りの黒剣を再び構えると同時に、耳にその音が届く。目の前で威圧的に光る雷の鳴き声に混じり、幾多もの獰猛な風切り音が頭上から聞こえてきた。

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