モチーフが岸波のサーヴァントと被るので、この物語では整備士志望で貴重な一般人のメインキャラなので戦いませんが。
※11月15
数ヵ月ぶりなので、展開を丸っと修正。
第11話 六月の転校生。今何月だっけ?
IS学園の校門前。
今日から1ー1に加わる予定の転入生は、コンパクトを取り出して身だしなみを確認していた。
「大丈夫、だよね……」
鏡に向かって顔を左右に傾け、最後にニコリと笑顔を作った。
「……うん。今日も僕は可愛い! ……可愛い……」
笑顔はすぐにため息に変わった。
クラス対抗戦から半月後。
学園は表面上の落ち着きを取り戻していたが、水面下でのごたごたはむしろ広まりつつあった。
学校全体の空気がどこかヒリヒリとし、落ち着きがないようだ。
「おはようございます、箒さん」
そんな中でも、セシリアマスクは普段通りだった。
教室に入ると同時に、箒はセシリアマスクにすごい勢いで接近された。
「か、顔が近いんだが、セシリアマスク……」
「これはしたり。怪我はありませんか、箒さん?」
「ぶつかってはいないが……確かに君と頭突きなんかした日には惨いことになりそうだけど……」
「鉄面皮ですから。うふふ♪」
「……鉄仮面の間違いだろう……」
呆れながら席へ向かう箒に、ピッタリと追従するセシリアマスク。
箒はかなり警戒しながら席に着いた。
「な、何か用なのか?」
「風の便りに聞きましたの。箒さん、かのアバン流に師事してらしたんですって? てっきりご実家の飛天御剣流かと思っておりました」
「……地獄耳だな」
鉄仮面の冷たい目が、ギラリと光った気がした。
「この学園に来て、本当に良かったと思います。織斑さんといい、鈴さんといい、倒し甲斐のある強敵たちばかりですもの。ああ、怪我の完治が待ち遠しい!」
「だったら素直に入院してろ。そも……私は専用機を持っていないぞ?」
「いやですわ! 箒さん、戦おうと思えば
「ISをあんなもの呼ばわりとはさすがだな~、せっしー……」
セシリアマスクの背後からひょっこり顔を出した本音は、呆れているのか感心しているのか、微妙な表情で鉄仮面を見上げた。
「おはようございます、本音さん。……あら? 一夏さんはご一緒ではありませんの?」
「おりむーなら千冬せんせーのとこに泊まったらしいよ」
「そうなのか?」
箒に頷く本音。
「昨夜も遅くまで帰ってこなかったし。クラス対抗戦から、ちょくちょく千冬先生とかふぁんふぁん(凰鈴音)と遅くまで戻らないことがあったけど、帰ってこないのは初めてだったよ」
「ナニしているのでしょう。気になりますわ」
「物言いが不穏だぞ、セシリアマスク……」
ちょうどそこへ、一夏を連れだって千冬が入ってきた。
一夏は箒達へ軽く挨拶し、自分の席へ着く。
「ホームルームまで少し間があるが、込み入った話がいくつかあるので、始めさせてもらう」
千冬が一声掛けると、クラス全員はいそいそと席へ戻っていった。
「まず、我がクラスに転入生が入る。デュノア」
千冬に促され、金髪の少女が入室した。
「しゃ、シャルロット・デュノアです。よろしくお願いします……」
不安そうにお辞儀をする中性的な美少女に、教室の一部が沸き立った。
「彼女はジオン公国の代表候補生で、専用機ヅダのパイロットだ。セシリアマスクはまだ怪我が完治していない。
一歩前へ出るシャルロット。
「その、新参ものの私ですが、精一杯勤めるつもりです。至らない部分もありますが、そのときはみなさん、協力をお願いします」
もう一度、シャルロットは頭を深く下げた。
「まともだ!」
「普通だ!」
「いい子じゃないか!」
「うふふ。それにお顔もチャーミング、気に入りましたわぁ♪」
1ー1のクラスは、シャルロットを好意的に受け入れたようだ。
シャルロットは安堵したように肩の力を抜いた。
ただ一人、本音だけは――、
(あの人……なんだろう、なんだか……)
シャルロットに一方ならない違和感を覚え、一人首を傾げていた。
「それともうひとつ。先日の乱入事件で中断されたクラス対抗戦の二回戦は正式に中止となった。理由は凰の怪我が思ったより深く、しばらくISを動かせないからだ。本人は登校しているが、無理はさせないように」
千冬の視線は箒に真っ直ぐに注がれていた。
「うまく潜り込めたのはいいけど……こうも警戒されないのってどうなんだ……」
一時限目が終わった休み時間。
シャルロットはトイレの個室で一人、ため息を吐いた。
コンパクトを取り出すと、口紅のパレットに偽装したスイッチを押す。
「定期報告。こちら、シャルル・ツェペリ。IS学園に潜入した」
コンパクトの鏡部分がちらつき、サングラスを掛けた妙齢の女性が映し出された。
『ご苦労様、シャルル。けど、今後は定期報告の必要はないわ。進展があったときに随時、連絡をちょうだい』
「よろしいのですか?」
『ええ。通信網に抜け穴は多いとはいえ、あまり敵地で頻繁に通信するものではないわ』
「敵地、ですか」
『心構えの問題よ。それにしても――』
女性は少し考え込む素振りを見せて、表情を綻ばせた。
『よく似合ってるわね。本当に女の子みたいよ』
「勘弁してください……。結構、いっぱいいっぱいなんですよ、こっちは」
『今からそれで大丈夫? 今日から女子寮で暮らすのだし』
「うぅ……や、やっぱり僕が行く必要ありました?」
『仕方ないじゃない。ISを使えるのも、デュノア社の協力を得られるのも貴方だけだったのだから』
「協力っていうか……まあ、分かっています。篠ノ之束と、奪われた赤石の捜索。必ず遂げて見せます、リサリサ先生」
『期待しているわ。けど、無理はしないようにね』
通信を終え、コンパクトがただの鏡に戻った。
「無理っていうか、女装して女子高に潜入って時点で相当な無茶ですよね、先生……」
シャルルは一つ大きなため息を吐き――。
「まあ、せっかく任された大役だ。女装だろうとなんだろうと、やってやる!」
自身の頬を叩いて気合いを入れたシャルルは、シャルロットの仮面を被り直した。
そんなこんなで昼休み。
「いっくん、お昼にしよう!」
「何故当たり前のように学園にいる、姉さん」
「箒ちゃん!? 待って、剣しまって!?」
「落ち着け、篠ノ乃。あまりお姉さんを脅すものではない」
青髪のショートヘアに眼鏡を掛けた女生徒の執り成しで、箒は剣を鞘にしまった。
「あ、あはは……誰だか知らないけどありがとう」
「連れないな。一緒に桃鉄やスマブラで張り合った仲間ではないか」
「……その口調にその声、まさか美しい戦闘妖精?」
包帯だらけな鈴の言葉に、青髪の女生徒は首を振った。
「その名前は捨てた。あのような無様を晒した以上、恥ずかしくて戦闘妖精などと名乗る気にはなれない。ただの更識簪で充分だ」
「あの格好そのものは恥ずかしくないんだね、カンちゃん……」
本音のツッコミが聞こえていない簪は、鈴へ振り返った。
「君が言った通り、私にはパイロットとしての才覚は無かったようだ。だが武器開発の技術力は束さんにも劣らないと自負している。もし新装備が欲しくなったらいつでも声を掛けてくれ」
「あ、ありがとう……」
苦笑いで答える鈴であった。
「な、なんだこの女は……私の鈴に馴れ馴れしい!」
「全くだ! この束さんに匹敵する天才なんて……意外と、結構いるけど……IS関連ではわたしが世界一だよ。ねえ、いっくん?」
だが、振り向いた先に一夏の姿はなく、一人で教室を出ようとしていたシャルロットを呼び止めて何か話していた。
「えぇー……」
「学食に行くなら案内するぞ」
「えっ?」
一夏に呼び掛けられたシャルロットは、ギョッとしたように身を強張らせて振り返った。
「いや、食堂にしろ売店にしろ、一人で平気かな~って思って」
人の良さそうな一夏だが、彼の顔を見上げていたシャルロットは不意に寒気に襲われた。
視線を彼の背後へ向けると、ウサミミっぽいヘアバンドを付けた年上美人が、鬼瓦のような表情でこちらを睨んでいた。
(あいつは!)
一見するとあどけないが、その実コールタールのような腹黒さが滲んで見える。篠ノ之束だ。
「ん? あ、こら束!」
シャルロットの表情を見て振り返った一夏が、束を叱りつけた。
「無闇に人を威嚇するなって」
「ふーんだ」
「なに拗ねてるんだよ……」
妙に気安い二人のやり取りを見て、シャルロットはピンと閃いた。
(……これ、使えるかも。人の親切心に漬け込むようで気が引けるけど)
シャルロットは内心で一夏に謝罪しつつ呼び掛けた。
「えっと、織斑君、だったよね。せっかくだから、案内してもらおうかな」
「おう、いいぞ」
「おいこら、気安くいっくんに話し掛けるな、メス犬」
一夏に向けては媚びるような上目遣い、束には苦笑いを使い分け、シャルロットことシャルルはターゲットの懐へ踏み込んでいった。
ついに登場のシャルロット嬢……改め、シャルル・ツェペリでした。
あ、石を投げないで!
パイルバンカーこっち向けないで!
みんなも男の娘好きでしょう!?
なお、彼は本来イタリア人なので、シャルルではなく「カルロ」が正しい発音になると思われますが、セシリアマスク以上に原型がなくなるのでシャルルで通します。
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今回のネタ
ヅダ
一年戦争時代に旧ザクと正式採用の座を争ったが、コンペ中に(物理的に)空中分解して採用されなかった。その後、改良されたという触れ込みで試験運用がされたが……。
出展はCGアニメ「ガンダムIGLOO」から。涙なしには観られない作品。
ツェペリ
ジョジョの奇妙な冒険に登場する一族。波紋の才能と勇気に溢れ、仲間や家族のために命を燃やせる誇り高き血筋。
リサリサ先生
ジョジョの奇妙な冒険より、50歳にして20代の美貌を持つ人。ちなみに息子も当時19歳。
養豚場の豚を見るような目で有名。