いんふぃにっと・亀仙流   作:サイデリア

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第一話を投稿から一年以上経ってました。


第12話 仮面美少女シャルロット

「胴ぉぉぉーっ‼」

 

 放課後の運動場に怒号が轟く。

 竹刀を逆手に持った箒が、剣道部主将をド派手にぶっ飛ばした。

 

「……剣道に場外負けなんてあったっけ?」

「無いから。普通に1本勝ち」

 

 歓声は特にない。

 むしろ細身の女子高生といえど人間一人を片手で数十メートル吹っ飛ばした箒に、剣道部一同はドン引きすらしていた。

 箒もやり合いう前から勝敗が分かっていた、とばかりに何の情緒のなく一礼して戻っていく。

 

「おつかれ~、箒ちゃん」

「いつまでいる気だ、姉上」

「うわ~ん! 妹が辛辣過ぎるー‼」

 

 泣きわめく姉を放置して、箒は作法に乗っ取って防具を外していった。

 

 

(う~ん、こうやって見てると愉快な人なのに、いざ話し掛けると辛辣なんだよな、大体の人に対して)

 

 篠ノ之姉妹のやり取りを真横で観察するシャルロットことシャルルは、どうにか束からエイジャの赤石について聞き出せないものかと思案する。

 幸いにも、一夏がシャルロットを「新しい環境で勝手が分からない転校生」として気に掛けてくれる。束について自然に近付ける立ち位置を労せずして手に入れられたのは、彼にとって望外であった。

 もっとも、その束からは『恋人との逢瀬を邪魔する嫌な奴』と思われているが、それも計算の内だ。

 

 潜入してからまだ一週間。ロクな情報は掴めていないが、焦って警戒されると返ってやりにくくなる。

 

(女装なんてさっさと止めたいけど、焦ってしくじったら元も子もない! 頑張れ、僕!)

 

 人知れず気合いを入れるシャルル。

 そもそも男性である彼がISを操縦し、女装姿でIS学園に潜入しているのは、とある重大な任務を帯びているからだ。

 

 

 シャルルは歴史の影で人知れず技を継承してきた、波紋仙道の一派に身を置く修行僧であった。

 ローマの寺院で修行を積んでいたシャルルの元にある日、チベットの総本山から密命が届く。数年前に即身仏より奪われた至宝、エイジャの赤石の行方が掴めたのだ。

 総本山を襲撃したISを破壊した際、取り出したコアが赤石と同じ反応を示した。

 ISコアと赤石の関連性、そしてIS開発者である篠ノ之束が赤石紛失の少し前にやって来たことも合わせ、調査の為に波紋戦士を秘密裏にIS学園へ潜入させる事が決まった。

 

『いや、あの僕、男なんですけど、リサリサ先生!?』

『大丈夫よ。IS学園は日本にあるんでしょう? あそこには「見目麗しい美少年が女生徒に粉して女学院に潜入する」っていう文化があるらしいから』

『それマンガ!』

『第一、あなた以外に女学生に化けられる波紋戦士もいないし』

 

 リサリサの言うとおり、波紋戦士の男性はいずれも筋肉モリモリ、女性も実年齢より若くとも最低でも二十代後半。花盛りの女子高に違和感なく溶け込めるのは、シャルル一人だった。

 

『まあ、百歩譲って僕が女装するのは仕方ないとしてですよ。どうやって潜り込めっていうんです? 僕に整備の知識なんてありませんよ?』

 

 そもそもIS学園は一応、世界屈指のエリート育成学校だ。外見は誤魔化せても、男である以上は操縦者にはなれないし、整備科にしても生半可な知識量では入試に受かる見込みがない。

 

 ところが、この点についての突破口も見つかっていた。

 

 波紋戦士と協力関係にあるスピードワゴン財団が回収したISを調査するうちに判明したことだが、なんとISコアに波紋を流すことで機能を狂わせ、誰でも扱えるように出来るのだ。

 コアに用いられているのが赤石故のことだろうと考えられ、実際にシャルルもこの方法でISを操っている。

 

 当然、適正の無いところを強引に動かしている以上、問題点も多い。だが背に腹は変えられず、本来であればコアが機械的に処理しているハイパーセンサーや姿勢制御まで手動で行わねばならなかった。

 

『これも修行だと思って、引き受けてくれる?』

『あ~もう! 分かりましたよ!!』

 

 その後、スピードワゴン財団が買収したイタリアのIS開発企業デュノア社でシャルル専用機『ヅダ』を開発。さらにヅダのテスター『シャルロット・デュノア』の存在を偽造し、晴れてシャルルはIS学園の一生徒として潜り込めたのであった。

 

 

(だけど、織斑君がいるなら僕も男性操縦者ってことで良かったんじゃないかな~。いや、潜入任務なのにメチャクチャ目立つっていうのは大問題だろうけど)

「どうかしましたか? 何やら悶々としているようですが」

 

 色々と考えを巡らせていたところに、涼しげな声が降ってきた。見上げればそこにいたのは鉄仮面の淑女、セシリアマスクだった。

 

「ははっ、ちょっと、ここに来る前のことを思い出していて」

「そうですか。てっきり篠ノ之博士から織斑さんをどうやって寝取ろうか、とでも考えているのかと思いました」

「なんで?」

 

 心底意外そうなセシリアマスクに、シャルルの方がむしろ困惑させられる。仮面がどうのこうの以前に、こいつの考えは全く読めないな、と内心で一人呟くシャルルだ。

 

 セシリアマスクは、妹の気を引こうと必死になっている束へ顔を向けた。なお、妹は妹で愛しの鈴にアプローチを仕掛け、かなり本気で逃げられている。

 

「いえ、シャルロットさんって転校初日からやけに織斑さんに絡みまくるし、かと思えば篠ノ之博士に向けてビームでも出しかねないぐらい睨み利かせてますから。てっきり略奪愛目的なのかと」

「あ~、確かに言われてみれば」

 

 自分の行動を振り返ると、そんな風に見えなくもないなと思えてくる。

 むしろそういう方向でキャラを作るのもありかなと一瞬考えたが、やはり男に恋慕するのは演技といえども御免被りたい。だからセシリアマスクの質問をキッパリ否定した。

 

「そういうんじゃないよ。ただ、私って人付き合いとか苦手だから、最初に声を掛けてくれた相手にどうしても頼ってしまって」

「左様ですか。では、別にクラスメイトと交流を持ちたくない訳ではありませんのね」

「まあね」

「なら一安心ですわ。これからちょっと付き合ってくださいません?」

[……え?」

 

 予想外の提案にますます困惑するシャルルであったが、

 

「……構わないよ。どこへ行くの?」

 

 敢えて断る理由も、四六時中束を見張る必要も無いと考え、むしろクラスに味方を作るのもいざというときに重要だと判断したシャルルは、セシリアマスクに快諾した。

 

 勿論、シャルルにしてみれば、セシリアマスクが仮面の下で口許を歪に歪めたことなど知る由もなかった。




ここからはシャルロットことシャルル君が第二の主人公となります。


今回のネタ枠
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波紋戦士
「ジョジョの奇妙な冒険」より。
 特殊な呼吸によって肉体に波紋を起こし、そのエネルギーで戦ったり傷を癒したりする。
 波紋を流すことで生物の肉体を操る技術は劇中にも登場している。

スピードワゴン財団
 同じく「ジョジョの奇妙な冒険」より。ジョースター一族と長きに渡って共闘し、悪と戦ってきた一団。創設者はロバート・E・O・スピードワゴン。
 世界的なすげえ金持ち集団でいろんな箇所に影響力を与えられるのに、劇中には組織が腐敗している様子が出ていない、素晴らしくクリーンな組織。
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