いんふぃにっと・亀仙流   作:サイデリア

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 以前の展開を作者が忘れかけてる21話です。
 ちなみにもっと忘れてるのが各キャラの個性。
 特に真島ぁ!!

 幸い、これ以上新キャラが出ないのが救いか。


第21話 反撃開始

「どっせい!」

 

 鈴はニヤニヤと締まりのない寝顔を浮かべていそうなセシリアマスクを保健室──という名を借りた学園専属病院のベッドに叩き込んだ。

 ぐへっ、とカエルの潰れたような声を上げたセシリアマスクだが、すぐに「グヘヘ」とだらしない笑い声が戻ってくる。

 

「もう、シャルル君ってば……もっと優しくしてくださいまし~……zzz」

「このアマ……誰よ、シャルルって?」

「せっしーの彼氏じゃない? この鉄仮面がいいって男がいるか知らんけど」

「……意外と辛辣よね、あんた」

 

 途中で合流した本音は、むにゃむにゃと寝息を立てるセシリアマスクに苦笑いであった。最初にぐったりしたセシリアマスクを見たときこそ、呼吸が止まるぐらいに驚いたものの、呑気な寝言を聞いてすっかり落ち着いたらしい。

 本音の小さな手が、セシリアマスクの鉄仮面から出ている美しい金髪を優しく鋤く……が、どうしても鉄仮面に手が当たってしまうのだった。

 シュールな情景に口許が弛むのを感じた鈴は、手で無理矢理表情を押さえて出入り口へと視線を逸らす。

 

「ふぁんふぁん、外が気になるなら戻っていいよ」

 

 向き直ると、本音の上目使いと視線がかち合った。

 

「せっしーはわたしが看てるし、ここになら先生もいるから」

「そうはいかないわ。セシリアマスクを頼む、って言われちゃったし。それにあいつらなら──」

「認識が甘いぞ、鈴!」

 

 今度は病室の入り口から、病院で出してはいけないような張りのある声がした。

 青い髪に赤褐色の瞳に眼鏡を掛けた、小柄なのにやたら態度の大きな少女……更織さんちの簪ちゃん(元ピエロ)である。

 

「戦況はすでに劣勢に傾いている! 敵の戦力はあまりに強大! あの織斑姉弟すら防戦一方、シャルロットは敵の機体に取り込まれ、ラウラと箒も倒されるのは時間の問題!! あのドクロのロボットは人間が相手に出来る代物ではない!」

「なんですって!」

「かんちゃんは助太刀しないの?」

「私が出ていっても秒殺されるだけだ。ビューティフルドリームも解体してしまったからな。その代わり、鈴! 君にこれを託そう!」

 

 簪は、日本刀の柄のようなものを鈴に投げて寄越す。

 ような、ではなく本当に日本刀の柄だった。しかしその重量はIS用装備にも匹敵し、鈴でなければ片手で持つなど不可能だっただろう。さりげなく簪も人間を越えているようだった。

 

「それは『試しの剣』。名前の通り試作品のIS、生身両用のエネルギーソードだ」

「両用?」

「そうだ。先日の試合の後、お前やうちの姉が操る『気』というものに興味が沸いてな。オカルトだと思って今までは無視していたが、調べてみるとなかなかどうして」

「言っとくけど、あんたとの試合じゃ霊撃なんて使ってないからね」

「……まあ、それはいい。とにかくだ! これは持ち主の気を取り込み、武装として出力することが出来るのだ。もっともさっきも言ったが試作品だからな、形状は剣かそれに準ずるものに固定される」

「……地味にすごくない?」

 

 簪から使い方を聞き、言われた通りに剣を腕の延長と考えて霊気を籠める。

 すると、空っぽの鍔の部分から濃緑のエネルギーソードが飛び出し、天井の建材を苦もなく蒸発させた。

 

「おおっ!」

 

 鈴の口から驚嘆の声が漏れ、霊気が視えない本音も腰を抜かし、簪は首を傾げた。

 

「あ、リミッター掛けるの忘れてた。このままでは無尽蔵に持ち主の気を抽出してしまうな」

「……確かにこのペースで気を吸われたら、普通の人間じゃ十秒も持たずにミイラになるわね」

「ふぁんふぁんは普通じゃないんだ……」

「まあ、お前なら大丈夫だろう。あと分かっていると思うが試合では使うなよ、それ。相手機の搭乗者を絶対防御もろとも両断してしまう」

「使わないって! でも、今はその威力が頼もしいわ! ありがと、カンザシ!」

 

 お礼の言葉とウインクを残し、鈴は窓から元気よく飛び出していった。

 ここは八階だが、今さらそんなことにツッコミを入れる二人ではない。

 

「頑張ってくださいな、鈴さん……」

 

 本音は背後からポツリと何か聞こえた気がして振り向いたが、セシリアマスクは静かな寝息を立てるだけだった。

 

 

「アバンストラッシュッ!」

 

 箒が逆手で振り抜いたIS用のブレードから射出した闘気の刃を、ドクロボットは青竜刀を風車のように回転させ、弾き飛ばしてしまう。

 

「くっ……!」

 

 ドクロボットが反撃に出る。青龍刀の持ち手を伸ばして薙刀に変形させ、ブースターを噴かして箒との間合いを一気に詰めた。

 

『鬼牙百裂撃』

「ぐわぁぁぁーっ!!」

 

 秒間百発にも及ぶ斬撃が箒を圧倒する。

 防御すらままならない箒は、かろうじて急所だけは守り通したものの、両腕と右足に深手を負って吹き飛ばされてしまった。

 意地でも武器は手放さなかったが、仰向けに倒れたまま手足に力が入らない。

 間髪入れずに飛び掛かったドクロボットは、満身創痍の相手に油断すること無く箒の両肩を踏みつけて抑え、顔めがけて再び柄を畳んだ剣先を突き下ろす。

 

「んがっ!!」

 

 位置が良かったおかげで上手いこと噛んで受け止めた。

 が、当然そんな無茶が長続きする訳もなく、ジリジリと刃が喉の奥に迫ってくる。

 

(くっ……まずいぞ、これはまずい!)

 

 うまいこと逆転の秘策が出てこなければ、あと数秒でゲームオーバーだ。

 つまり、箒の命運は次の三つに絞られる。

 

 ①可愛いモッピーは突如反撃のアイデアが閃く!

 ②愛しの鈴が助けに来てくれる。

 ③かわせない。現実は非情である。

 

(って、考えてる間に剣が喉に届きそう!! こ、こんなところで死ねるか! まだ鈴に╳╳╳も╳╳╳もしてもらってないし、╳╳╳╳だってしてないというのに!!)

 

 最後のど根性で歯を食いしばって刃を押しとどめるのだが、余命が一、二秒延びたに過ぎない。

 万事休す、答えは③。現実は非情である。

 

「アルトローーーーン!!」

 

 それを切り崩したのは、真横から超高速で突っ込んできた、龍の頭を模した大型のクローアンカーであった。

 クローはドクロボットを空中へ突き上げ、さらに地面へと叩きつける。地面を大きく陥没させるほどの衝撃で押さえ込み、トドメとばかりに先端から火炎放射までお見舞いした。

 なんと、正解は②だった。

 

「箒!!」

 

 愛しい相手の呼び声に、箒の死にかけていた体に力が戻る。

 激痛を意識の外へ吹き飛ばして元気よく立ち上がって振り返った箒は、

 

「パスっ!! て、あ」

 

 鈴がぶん投げた試しの剣が鼻柱に直撃し、今度こそ失神するところだった。

 後頭部が地面に着きそうな格好から、下半身の力と根性で再び立ち直ったところに、専用IS『アルトロン』をまとった鈴が地面スレスレを滑走してくる。

 その両腕には、龍の頭を模した多重間接構造をした伸縮自在の大型クローが装備されている。うち右手の一本が獲物に飛びつく蛇のように、強烈なパワーでドクロボットを押さえつけていた。

 

「ご、ごめん、力入れすぎた……鼻、大丈夫?」

「どうということはない……なんだ、これ?」

「それは──!!」

 

 右腕を伝わってきた衝撃に、鈴が顔色を変えた。

 見れば青竜刀から小太刀に持ち変えたドクロボットが、クローの根本から蛇腹状に伸びた腕を切り落としたのだ。

 

「こいつ!」

 

 鈴は両柄に刃の付いた長柄の武器、ツインビームトライデントを実体化させて身構えたが、そこへ箒の背中が割り込んだ。

 

「鈴、助けてくれたのは嬉しいが、これは私の戦いだ!」

「血まみれで言ってもカッコつかないわよ?」

「これは君が変なもの投げつけたからだ」

「いや、鼻血だけの出血じゃないでしょ、それ!?」

 

 鈴の言葉を無視して、箒は試しの剣を両手でしっかり握り締めて身構えた。

 

「それで、これはどう使えばいいんだ? ビームサーベルのようだが、スイッチが見当たらないぞ」

「あ~も~、この子は!! 柄を手の延長だと思って気を込めて! アンタなら出来るでしょ!」

「よっしゃあ!」

 

 普段よりも数倍気合の篭った雄叫びとともに、箒の闘気が試しの剣に収束していく。

 柄全体から稲光がほとばしり、緋色の閃光が刀剣となって固定される。

 

「おおっ! これはすごい……けど、無尽蔵に力が吸い出されるぞ!?」

 

 試しの剣を通して、全身の闘気が底の抜けた容器のごとく放出されていく感覚に戸惑った箒だが、すぐに倒れる前に叩き斬ればいいやと開き直り、ドクロボットヘと突進した。

 

 再び薙刀へ変形させた青竜刀で攻撃を受けたドクロボット。試しの剣はそれを、熱したナイフでバターでも切るように切断した。

 

「よしっ!」

 

 武器を失ったドクロボットは格闘技に切り替えて箒に鋭い正拳を放つ。

 それを頭突きで受けて相手の拳を破壊し、箒は逆袈裟懸けに試しの剣を振り抜いた。

 

「とどめだ!」

 

 ダメ押しとばかりに正眼からの幹竹割りで機体ごとコアを両断し、ドクロボットの機能を完全に停止させた。

 

「……ふっ、こんなもの……か?」

 

 残心を決めようとして、出血と疲労で体力の限界に差し掛かっていた箒の体は膝から崩れ落ち、アルトロンが伸ばしたドラゴンハングに受けとめられたのだった。

 

 

「しゃおらッ!!」

 

 超振動ドス、通称ジャックナイフを手に突進、すれ違い様に切り裂くラウラ・真島必殺のヒット&アウェイ戦法。これまで多くの敵を一方的に倒してきたスタイルが、二丁拳銃のドクロボットには通用しなかった。

 

 敵はラウラの動きを完全に読み切っており、すれ違う刹那にナイフの間合いギリギリ一歩外に後退し、そこからラウラの急所に発砲する。

 

 それを間一髪で回避できるのは、ラウラの誇る獣じみた直感力あってのことだ。それもあと何回も出来る芸当ではない。

 むしろ戦いが長引くほどにドクロボットはラウラの動きに追従してくるのだ。

 

「ちぃぃっ!! 細っこいナリしてゴッツイやんけ、われ! どこの組のもんじゃ!!」

『…………』

「ダンマリかいな。……くっ」

 

 対峙するドクロボットへの警戒を緩めることなく、周囲の様子を探る。

 一番近い箒は消耗が激しく、防御に回ってどうにか持ちこたえている状態だ。

 遠くの空の一夏と千冬も敵に翻弄されている。あの二人ですら追い詰める相手、という現実に、ラウラは覚悟を決めた。

 ジャックナイフを片手で構えながら、左目の眼帯を引き剥がした。

 人工的な金色に輝く、黒目のない瞳が姿を現す。

 

「こうなったらもう、出し惜しみはせんでぇ。こっち(・・・)の専用機で相手したる!! コール・ゲシュペンストぉーっ!!」

 

 ラウラの声紋、及びキーワードを読み取った義眼が激しく発光。その瞬間、相手のドクロボットのセンサーに強力なジャミングが掛かり、ラウラの姿を完全に見失う。

 時間にしてコンマ一秒にも満たない。だが、その間にラウラの姿は劇的に変化していた。

 

 全身を覆う黒い装甲、ドッシリとした下半身と重厚な。半月型の厳つい肩から伸びる両腕もマッシブで、右腕の手甲部分に生えた三本の白い杭は、どう見てもぶん殴るときに拳より先に突き刺さるヤバイ武装である。

 頭部はフルフェイスの赤いバイザーだが、左右にピンと張った幅広いアンテナがラウラの所属部隊『黒兎』を彷彿とさせる気がする。

 これぞ、ラウラ・真島専用IS『ゲシュペンスト』であった。

 

「ほな行くで!」

 

 装着完了前から再度突進していたラウラのゲシュペンストは、反応が僅かに遅れたドクロボットにジャックナイフを突き立てる。

 敵もさるもの、ジャックナイフの刀身に銃口を押し付けて発砲し、刃筋をずらす。そこへ間髪入れず、ゲシュペンストの右拳が飛んでくる。

 

「ジェットマグナム!!」

 

 手甲の三本杭がプラズマにより激しく発光、ゲシュペンストの強烈な拳と合わさった一撃がドクロボットのフレームを真芯で捉えた。

 衝撃と同時に高密度のプラズマの塊が叩き込まれたドクロボットは、たった一撃で内部の電送系にまで深刻なダメージを負う。

 

『!!!!!!』

「逃がさへんで!」

 

 たたらを踏んだドクロボットに、ゲシュペンストが正面から突進──するかと思いきや、寸前で軌道を真横にずらし、側転しながら蹴りあげた。

 牽制の攻撃にすぎないが、ドクロボットにフレームが歪むほどのダメージを与える。

 さらにゲシュペンストは相手の死角へ回り込むように高速移動しながら、エネルギーをまとって威力の増したジャックナイフで敵を切り刻んでいく。ただでさえ少ないドクロボットの装甲が削れていく。

 

 しかし敵の性能もさるもの、ゲシュペンストの速度に徐々に順応し、ジャックナイフを銃身で受け止めた。

 

「しゃらくさいんじゃ、ボケ!!」

 

 だがゲシュペンストは、受け止められたジャックナイフを馬鹿力で強引に押し切った。

 ドクロボットを殴り飛ばし、さらに前蹴り、回し蹴りと流れるように追撃。挙げ句に逆立ちからブレイクダンス染みた連続回転蹴りと続ける。

 

「もろたで!!」

 

 怯んだ相手の頭部を鷲掴みにしたゲシュペンストは、背負い投げのような形で豪快に地面へ叩きつけた。

 地響きと共に巨大なクレーターが形成され、ドクロボットがその反動で上空へと舞い上がる。

 空中で無防備をさらした敵へ向き直ったゲシュペンスト、その胸部装甲が左右にスライドして展開し、すでに赤熱するほどエネルギーを蓄えた重力砲身が姿を現す。

 

「ブラスターキャノン!! 発射ァ!!」

 

 ラウラの叫びと同時に、空間を歪ませた仮想砲身に蓄えられた莫大なエネルギーが極太の破壊光線となって射出された。

 

『ギギギッ』

 

 回避はもはや不可能と悟ったのか、ドクロボットはシールドを正面に集中させ、なんと破壊光線を正面から受け止めた。

 が、それも一瞬。

 

「甘いで!! ゲシュペンスト、全開やぁぁぁーっ!」

 

 リミッターを解除したことで破壊光線の出力が増し、ゲシュペンスト自身が反動で後退するほどのエネルギーがドクロボットを完全に呑み込んだ。

 

『デ……転……』

 

 ノイズ混じりの音声を最後に、ドクロボットはついに内部から爆発、コアすら残さず地上から完全消滅した。

 

「……ぐっ」

 

 敵の撃破を確認し、踵を返そうとしたゲシュペンストがその場に膝をついた。

 アーマーが量子変換されて義眼に収納され、生身に戻ったラウラは地面に手をついて激しく肩を上下させる。

 消耗しきった体は、指一本動かせそうにない。

 

「かっ……きっついわ~。このウチがここまで追い込まれるなんて……くぁぁ~」

 

 とうとう地面へ大の字になって倒れると、逆さまになった視界の先には──。

 

「おいおい、堪忍しいや……」

 

 悠然と大地に降り立ち、ラウラに向かって迫り来るイエローデビルの巨体があった。




 臨海学校で話を終わらせるつもりなので、ぼちぼち三分の二といったところです。


ゲシュペンスト
 スーパーロボット大戦より。パーソナルトルーパーという規格の巨大ロボット兵器の第一号。でも初登場はコンパチシリーズの名作RPG『ヒーロー戦記』のパワードスーツ。
 ちなみに、ラウラが使っているジャックナイフは長ドスっぽくてドイツ軍が持ってそうなアイテムから連想しただけで、特に意味のあるギミックではない。

アルトロン
 双頭龍、または二頭龍。元ネタは機動新世紀ガンダムWのアルトロンガンダム。火炎放射器があるのはTV番のみらしい。
 両腕に伸縮自在の大型クローとツインビームトライデント、背面にビームキャノンを装備している。龍砲をオプションとして接続可能だが、弾速が遅いせいで自爆する危険性(撃った弾丸に自分から追突してしまう)ので取り付けていない。
 なお、アルトロンもゲシュペンストもパイロットがISを「無い方が速い」「拘束具」「飛行ユニット」と馬鹿にしたことに腹を立てた技術部が、情熱に任せて造り上げたワンオフの機体、という設定。いわばモビルファイターのようなもので、少なくとも達人レベルの技量がなければ扱いきれないが、戦闘力は現状の鈴やラウラでも十傑衆レベルにまで達する。

試しの剣
 幽々白書で鈴木が桑原に渡したアイテム。本来なら持ち主の気を吸って、その性質に合わせた剣になる。戸愚呂兄をラケットのように変形してぶっ潰した。
 簪がリミッターを付けるのを忘れたせいで光魔の杖みたいになってしまった。

例の三択
 ジョジョの奇妙な冒険、第三部で強敵と戦うポルナレフのモノローグに登場。
 ちなみに原作における答えも実質②。

╳╳╳の伏せ字
 ご想像にお任せします。
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