・基本学園にいない
・出番が少なくていい
・そのくせ一夏と接点が多い
・筆者がラブコメ苦手だから描写少なくて済む
束以外のヒロイン候補は則巻アラレでした。でもそうなるとIS学園がペンギン村に来ちゃうから、無難に原作キャラにしました。
はい、そこ。束が無難はねーよ、核地雷だよとか言わない。ああいうのって結婚したらダダ甘にしてくれるから、きっと。
午後は授業ではなく、ホームルームだった。
クラス委員長、もといクラスの代表を決めるとのことだ。自薦でも他薦でも構わないと千冬が言うが早いか、セシリアマスクが手を挙げた。
「わたくしが立候補しますわ」
その途端、教室の空気が体感的に2度ほど冷え込んだ。謎の鉄仮面がクラスの顔になる状況を想像した数人が、慌てて手を挙げる。
「はいはーい! 私は織斑くんがいいと思いまーす!」
「わたしも織斑くんを推薦します! せっかく男子がいるんだし!」
「そっかな~? だって織斑くんってトーシロっしょ? その点、ミス・オルコットなら代表候補生で実力も充分だと思うけど」
「いや、一夏だって先日行われた第21回天下一武道会の準優勝者だ。実力という点では申し分ない」
「てんかいちぶどーかい? 何それ?」
クラスは織斑推しとセシリアマスク推しとで二分された。数で言えば織斑派に部がある。
「とのことだが、織斑。さっきから黙っているが、当事者として一言ないのか?」
千冬から呼び掛けられた一夏は、げんなりした表情だった。
「いや、俺はどっちでもいいんですけど。オルコットさんがやりたがってるなら俺は別に――」
「織斑さん?」
辞退しようとした一夏の言葉を遮ったのは、なんとセシリアマスクだった。
「どのような形でも他者から推薦された以上、それを蔑ろにするような発言は慎むべきではないでしょうか。それに貴方も武術家――戦士なのでしょう。自らの背に掛かった期待に叫び返す気概はないのですか」
セシリアマスク、その色モノ全開の外見からは想像もつかない熱のこもった言葉だった。
一夏は思わず言葉を呑み込んだ。
「オルコットの言う通りだな。それに、一度推薦された者が辞退することを私は認めていない。他に立候補もいないようなら、あとは当人同士で決めてもらう」
「それって、つまり?」
「単純に実力が上の方がクラス代表となる、ということですね。織斑先生?」
一夏の疑問には、千冬に代わってセシリアマスクが答えた。
ここまでお膳立てされては、一夏も頷かないわけにはいかなかった。
「分かった。俺も武術家の端くれだ、その勝負受けて立つ」
「ありがとうございます。では織斑先生、さっそくアリーナの使用許可を頂きたいのですが」
千冬は首を振った。
「そう簡単に許可は出せん。少なくとも一週間は掛かる。第一、織斑の専用機がまだ届いていないんだ。準備が整うまで待て」
「俺は別にこの教室でも構わないけど」
「生身で殴り合ってどうする!?」
「あら、わたくしが素手では戦えないとでも? 見くびってもらっては困りますわ、織斑先生」
「お前もその気になるんじゃない!」
何故か立ち上がってストレッチを始めたセシリアマスク。一夏も準備体操をしだしたので、千冬が慌てて止めに入った。
「というか、俺に専用機なんてあったのか」
「それはそうだろう。唯一の男性適性者なんだ、取りたいデータは山ほどある」
「おりむーの専用機? どんな機体ですか、織斑せんせ~?」
「私も詳しくは知らん。だが、織斑のために一から設計したらしい」
「……一夏のために、『いちか』ら」
山田教諭は下らない一言の代償として、教師の身にありながらバケツを持って廊下に立たされた。
何はともあれ、一夏はセシリアマスクと試合をすることになった。
日程は一週間後。それまでに一夏の専用機が間に合わうか分からないので、お互いにラファール・リヴァイヴで試合をすることになった。
量産機での試合を提案したのはセシリアマスクだった。曰く、
「真の戦士とはフェアなのです。お互いに同じ条件で戦ってこその真剣勝負。ですわよね、織斑さん?」
セシリアマスクから挑発的にそう言われ、一夏もニヤリと笑った。
亀仙人も言っていた。武道とは勝つためにはげむのではない、おのれに負けぬために鍛えるのだと。
セシリアマスクからも自分と同じファイティングスピリットを感じ、一夏は日課のトレーニングに一層力を入れていた。
その一夏をじっと見つめていた箒は、一夏の鍛練が一段落したタイミングで声を掛けようと近づいた。
「待たせたな、箒」
だが一夏の方はとっくに箒の気配に気付いており、先に箒の方へ振り返った。
「別に話しかけても良かったのに」
「い、いや、鍛練の邪魔をしてはいけないと思って……。私も剣道をやっているからな、少しは分かる」
「そうか? ……まあいいや。それで、何の用だ?」
一夏の質問に、箒は言い淀む。正直、何から聞いたものかと迷っていた。
「あの遠足の日から、今まで何をしていたんだ?」
いろいろ考え、箒はこう質問した。気になっていた事を一度に聞けるからだ。
「いや、何って言っても。武天老師さまに弟子入りして、武術の修行だよ。中学も武天老師さまのところから通ってたんだ」
「いや、誰だよ武天老師」
「!! 箒、知らないのか!?」
箒を見つめる一夏の目は、信じられないもの――道に落ちてた巻きグソを指でツンツンする眼鏡っ子へ向けるような目だった。
「いくら剣道しかやってないからって、少し勉強が足りないんじゃないか? 文武両道って言ってな、武術を修めるには学問も必要なんだぞ」
「そこまで言うほどの相手か!?」
「当たり前だ。いいか、武天老師さまはな――」
――少年説明中
「分かったか?」
「ああ。すごく偉大なスケベジジイなんだな」
「よかった、ちゃんと伝わって。あ、ちなみにかめはめ波は俺も出来るようになった。今見せてやる」
「いや、別にやらなくても――」
「かめはめ波!」
「本当に出た!?」
一夏の撃ったかめはめ波は、近くにあった大人の腰ぐらいの高さの岩を粉微塵に粉砕した。
「ギャアアアアアアアッ!!」
岩が悲鳴を上げた。
正しくは、岩に似せた被り物の中にいた人物が悲鳴を上げたのだ。
「って、あれ? この声ってまさか!?」
「さすがいっくんのかめはめ波……絶対防御があったお陰で丸焦げになるだけで済んだぜ……ガクッ」
「束ぇぇぇぇっ!!」
「姉さんんんん!?」
幸いなことに、束は水をぶっかけて放置したら、ふらつきながらも立ち直ってきた。
「いや~、隠れて驚かそうとおもったのに、束さん痛恨のミスだよ」
「こんなところでどうやって? 束の気なんて全然感じなかったのに」
「束さん特製のシェードだよ~。レーダーだけじゃなくって、気配も完全に殺せるのさ。ま、発動中は身動きとれなくなっちゃうけど」
「へえ、やっぱり束の技術力はすごいんだな」
「えっへん! 褒めて褒めて~」
一夏は、自分の腕の中で猫のように甘える束の頭をわしゃわしゃ撫でた。束の頭頂部でウサミミ型の何かが揺れる。
「で。何故お前たちは私の部屋にいるんだ? 特にそこのうさぎ」
目の前でいちゃつくバカップルを、すっかり目が死んでしまった千冬が心底煩わしそうに睨み付けていた。
一夏は気絶した束を、とりあえず千冬の私室へ運び込んだ。何故なら、まだ寮に自分の部屋が無かったからだ。保健室でもよかったが、どうせ頑丈な束なら適当に寝かせておけば充分だし、人見知りな彼女を不特定多数の人間が出入りする場所に置くのも気が引けた。
「そう邪険にしないでよ、お義姉ちゃん」
「誰がお義姉ちゃんだ!」
「だって、わたしがいっくんと結婚したら、ちーちゃんと束さんは姉妹になるんだよ? そして箒ちゃんもいっくんの妹になるのだ」
「くそっ! 冗談だと思っていたら本当に付き合っていたとはな! というか篠ノ之、お前さっきから大丈夫か!? 顔に生気が無いぞ!」
部屋の隅で天井をボーッと見上げる箒の瞳からは、ハイライトは愚か黒目が消えていた。
「あ、あはは……えっとね、箒ちゃん――」
「姉さん」
唐突にキリッとした凛々しい表情を取り戻す箒。束は妹相手に思わずドキリとさせられた。むろん、恐怖で。何しろ白眼を剥いたままなのだから。
「お幸せに」
その言葉を最後に、箒は糸が切れたマリオネットのようにコロンと横に倒れ、動かなくなった。
束がたいそう慌てたが、気を失っただけだったので千冬は箒を無造作にベッドへ放り込んで休ませた。
「で、いつから付き合ってたんだ、お前たち」
「この流れでそっちの話に行くんだ」
「いいから話せ。もうその話題を肴に呑んでやる」
言う通り、千冬は一升瓶と一合枡を用意していた。
「あれってもう何年前だ? 三年ぐらい?」
「そうだね」
「おい束。お前まさか中学生に手を出したのか!」
「仕方ないでしょ。だってあの頃のいっくん、すっごく可愛かったんだよ? そりゃもう妖精のように! 今は悪魔的格好よさだけど」
「束は天使みたいに可愛いけどな」
「やだな~。束さんの業界じゃ天使は蔑称だよ~。でへへ~」
「たぎるな、バカップル」
千冬が一合を一口で飲み干した。やってられねえ、とばかりに酒気を含んだ溜め息を吐き出す。
「で、どうして付き合い始めたか、だっけ。そりゃもうあのクソジジイのお陰だよ、忌々しいことに」
「武天老師のことか?」
「うん。あのジジイ、いっくんに国語の勉強だとか言って官能小説朗読させたり、エッチなビデオ視聴させたりしてたんだよ?」
「束、それは違うぞ。小説はともかく、ビデオはただのエアロビクスだ」
「でも、中学校に上がったばかりのいっくんには刺激が強すぎたでしょ」
一夏は無言で抱えている束のお腹を撫でた。束が気持ち良さそうに喉を鳴らす。
「猫か、お前は」
「そして社会勉強とかいって、街で開かれた水着のお姉さんのショーに連れていったり」
「何事も無かったように話を進めるな。というか一夏、あの老人は本当に武天老師だったのか? 話を聞く限りただのスケベジジイじゃないのか?」
「いくら千冬ねえだからって失礼だぞ。ただのスケベジジイじゃなくて、筋金入りのスケベジジイだ」
「スケベは否定しないのか」
いつの間にか、一夏と束まで一升瓶を空けていた。
「で、束さんは思ったのです。このままじゃいっくんにまでドスケベが伝染してしまう、道行く女性を鼻の下伸ばして視姦するムッツリになってしまうと。だから夜中にいっくんの部屋に忍び込んだよ」
「おい、雲行きが怪しくなってきたぞ」
「あれは本当に衝撃的だった。何しろ下着が透けて見えるネグリジェなんて、実物見るの始めてだったから」
「お前もなにしみじみと思い出している。というか束の太ももを擦るんじゃない」
「そして束さんは……んっ、いっくんにこう言ってやっ……も、もう。いっくん、ちーちゃんの前だよ?」
「お前も艶っぽい声を出すな。で、束は何と言って一夏を口説いたんだ?」
『ね~、いっくん。一緒に保健体育のお勉強しない?』
「その数分後、束さんは見事いっくんに貪られ、身も心も陥落したのでした」
「でした、じゃない。お前、武天老師のこと言えないからな。同じレベルのスケベだ」
「待ってくれ、千冬ねえ。考えてもみてくれ、エッチできれいなお姉さんって最高じゃないか! 据え膳食わない男がどこにいる! てか、ほとんど下着姿でベッドに入ってくる相手に何もしないとか失礼だろ!」
「力説するな、ドスケベ。技だけでなくスケベ心も伝授されたか、馬鹿弟」
その後、何だかんだと朝まで猥談を続けた3人だった。
そして、千冬のベッドで寝かされた箒は、布団を頭から被って凰鈴音と電話していた。
「と、言うことなんだ。酷い話だと思わないか、鈴」
『あの一夏がねえ。人も変われば変わるもんだ』
「一夏のことはもういい。鈴、私を慰めてくれ……」
『はいはい。初恋が破れて辛かったね』
「言葉だけじゃ足らない。そっと優しく抱き締めて、膝枕しながら頭を撫でてくれぇ……」
『電話越しでどうしろと!? てか箒、失恋のショックで変な趣味に目覚めてないわよね?』
「鈴、会いたい。ペロペロしたい、鈴ちゃんペロペロ」
『うわっ……』
今回まで設定と原作との差異の説明はだいたい終わったかと思います。まだまだ多くの変更点はありますが。
あと、一升瓶の中身は明言しておりませんので、あしからず。これは健全な二次創作です。
それにしてもストーリーが進んでないな。
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おまけ
DBとIS以外のネタについて解説します。
飛天御剣流
明治に生きる剣客を描いた「るろうに剣心」の主人公、緋村剣心の使う流派。すごい強い。
一話で千冬が使った飛龍閃は、刃が反っているものをどうやって鞘から飛ばすんだ? と空想科学読本でもテーマにされた。
セシリアマスク
元ネタはキン肉マンに登場する正義超人・ロビンマスク。
イギリス出身で長い連載の中でキャラが二転三転している。
ウルフマンほどではないが、しょっちゅう死んでる。新シリーズでもお亡くなりになった。