【のっけから違うんだけど】
突然だが俺、織斑一夏には前世の記憶がある。それも別の世界で生きていた記憶だ。
以前の俺は死ぬ直前までとあるライトノベルを読んでいたのだが、最後まで読めなかった事が未練になったのか、なんとそのノベルの主人公に転生しちまった。
まあ、ノベルは飽くまでもフィクションだから、ここは『ラノベの世界観に限りなく近い別世界』なんだろうな、と俺は勝手にそう解釈している。なにしろ、ここは大筋はともかくかなりの部分が原作世界と乖離しているのだから。
「飛天御剣流、龍昇閃!」
近所の道場で竹刀を振り、人間の身長より三倍以上も高くジャンプしているのは、この世界での俺の姉、千冬だ。うん、まず一言言わせてくれ。作品違うだろ、おい。
「こら、一夏。俺の道場で剣を振る以上、中途半端は許さんぞ。集中しろ」
「す、すみません!」
そしてこちらは、千冬姉の師匠の篠ノ之清十郎さん。長髪にマッチョの渋い美中年だ。この人に至ってはもう、原作からして別の漫画のキャラである。
「ふふふ。一夏君は剣を振るより、掃除や料理の方が好きなようですからね。良かったら、私が家事の先生になりましょうか?」
こっちの巻き髪眼鏡の外国人はアバン=デ=ジュニアールⅢ世さん。長いのでアバン先生。この人も清十郎さんとはまた別の世界の住人だと思う。少なくとも、日本の地方都市をフラフラしているようなキャラじゃない。
ちなみに、清十郎さんには千冬姉と同い年の娘と、俺と同い年の娘がいる。
上の束は頭がメチャクチャ良いんだけどかなりサイコで、色々やらかしてはしょっちゅう清十郎さんに殴られてる。
そして妹の方は原作で主人公に対して好意を寄せるヒロインの一人だ。箒という名前で可愛い娘なのだが、アバン先生に師事した結果、西洋風の両刃剣で岩とかぶった斬る人間凶器と化している。
『お願いだからいっくんは! いっくんだけは人外魔境に入らないで! 別に戦闘能力だけが人間の価値じゃないよ!?』
束は、周囲が化け物揃いの中で唯一の一般人である俺に対して、事あるごとにこう訴えてくる。小説の中だともっとこう、いっつもヘラヘラしてて他人の心なんて分からない人だと思ってたけど、環境でここまで変わるものだろうか。
ちなみにこの数年後、俺は束と清十郎さんも公認で付き合うことになるのだが、それについてはまあ、ここで話すようなことではないか。
【本編開始】
そんなこんなで、IS学園の入学式である。
この文を読んでいる諸兄には説明不要だと思うので、ISと学園については割愛する。
ただ、世界には清十郎さんに匹敵する超人が結構ゴロゴロいるらしく、ISが軍事力的に絶対有利ということがないようで、原作のような女尊男卑にはなっていない。
あと、篠ノ之一家も別に証人保護プログラムだかで離散しておらず、今日に至るまで俺と箒との幼馴染み関係は続いている。変化点といえば箒が俺を『義兄上』と呼ぶことと、中国に引っ越した凰鈴音に熱烈LOVEなことぐらいか。
ところで、だ。
ISの原作序盤、一夏はクラス代表の座を争ってセシリア・オルコットと対立するというのは知っての通りだ。
で、だな。俺のすぐ後ろの席に座る、鉄仮面被った金髪縦ロールなんだけど……あれがこの世界のセシリアらしい。先の展開を知っていたので英国の代表候補生について事前に調べたのだが、正直にいって肝が潰れた。
インタビューによると、父は英国が誇る正義超人ロビンマスク・オルコット。……また違う作品のキャラじゃねえか。おまけにセシリアもセシリアじゃなくて『セシリアマスク』だし。どうなってんだ?
けど、どうやら戦闘能力は原作の比ではないようだ。だってセシリアマスク、ビットを十本以上も飛ばして自分で自分を援護射撃させながら、でっかい剣で斬りかかるというどこぞのガンダムみたいな戦法で今のイギリス国家代表を撃墜しているのだ。
仮にこの後の展開が原作通りなら、俺はそんな怪物とIS歴一ヶ月未満の腕前で試合をせにゃならなくなる。
いくら俺の専用ISが、他でもないマイステディ束が丹精込めて造ってくれた高性能機だとしても、機体の性能差ぐらい平然と埋めてくる化け物っているからな、うちの姉とか。
あ、千冬姉はちゃんと学園で教師やってる。でも世界大会で二連覇してたり、ドイツ軍に行ってなかったりとやっぱりちょこちょこ原作と違う。それといつも帯刀してる。
まあ、ある程度は成り行きに任せよう。幸い、箒は百パーセント俺の味方で、かつ学園での生活をサポートしてくれる手筈になっている。
……いや、でもあの鉄仮面とは戦いたくないな、やっぱ!
結論から言えば、原作の通りにはならなかった。
「はい、織斑さんを推薦しますわ!」
クラス代表を決めるホームルーム、弾むような声で俺を推薦したのは、他でもないセシリアマスクだった。ってお前が俺を推すのかよ!
「いいの? オルコットさんって代表候補生だし、実力的に順当だと思うけど」
「いえ、せっかくのクラス代表なのですし、皆さんも応援するならイケメンのがよろしくありません?」
だから、お前がそういうこと言うのかよ!? 原作のエリート風吹かせた勘違いお嬢様キャラはどこ行ったの、ねえ?
「……よし、他に誰もいないなら、クラス代表は織斑に決定だな」
あ、決まっちゃった。……まあいいか。
「うふふ。期待してますわ、織斑さん?」
セシリアマスクが後ろから小声で耳打ちしてきた。畜生、鉄仮面のくせに一丁前に女の子の良い香りさせていやがる、束ほどじゃないけど。
【帰ってきたリンリン】
鈴がIS学園に転入してくる、と箒が嬉しそうに話していた。何でも、向こうでゴタゴタがあって入学式に間に合わなかったらしい。
あ、原作と違って鈴とは中国に帰った後もしょっちゅう連絡を取ったり、一時帰国した鈴が篠ノ之家に泊まったりしているぐらいの交流がある。
そして前にも言ったが箒は鈴にベタ惚れしている。でも鈴はノーマルらしく、一線を越えないように逃げ回っているのだ。
もう一つ付け加えると、鈴も中国で霊光波動拳を学び、継承者候補の一人になったらしい。……お前もか、鈴よ。
てなもんで、鈴との再会もせいぜい数ヶ月振りなのであった。
「そっか、一夏が1組の代表なんだ。意外だわ」
「そんなにか?」
「うん。だってアンタって一般人じゃない? IS界隈だってトップランカーは揃って超人揃いだもん。千冬さんとか」
「さりげなくウチの姉を化け物扱いするなよ」
俺と世間話を交わす鈴だが、その間にも隙あらば抱きつこう……もとい、人目も憚らず押し倒そうと迫ってくる箒を撃退している。俺達にとっては日常茶飯事だが、食堂はちょっとした騒ぎになっていた。
「うぅ~! 鈴、義兄上とだけ話してないで、私にも構ってくれ!」
「そうね。アンタが席についてじっとしているっていうならやぶさかじゃないわよ」
「そんな! 鈴を目の前にして何もするなフゴッ!?」
あ、いいパンチ。しかもあれ、霊気が乗った強力なヤツだ、きっと。
「はぁぁ~……年々酷くなるわね。そろそろこっちも限界かも」
「理性のか?」
冗談のつもりで言ったのだが、気絶した箒を居眠りしているように偽装していた鈴の手が止まった。
「……え、マジで?」
「いやその、友達としては好きだし、たまにこれでカッコいいことするから……その、時々グラッてしちゃうことがあったりなかったり……」
いつも快活な鈴がしどろもどろなところを見ると、どうやら箒の努力は実を結びつつあるらしい。
まあ、なんだ。頑張れ。
あ、クラス対抗試合は開始七十秒で俺のKO負け。気を失っている間に乱入した無人IS(どうみてもブラックオックス)も鈴と3組のクラス代表の子が排除したらしい。
続く!
番外編のもしもシリーズを他にも考えてみたのですが……。
箒 → 一夏との関係性が本編と変わらないのに、殺傷力だけ上がってる
鈴 → ただの友達なので一夏争奪戦に参加しない、他のキャラのストッパーと大活躍
でもヒロインというより主役を食ってるサブキャラに
シャルル → ジョセフ寄りかシーザー寄りかにもよるけど、普通に親友ポジ
ラウラ → デフォルト千冬姉だと真島の兄さんに勝てなさそう
簪 → 出落ち
鈴とシャルルは作れそうでした。