いんふぃにっと・亀仙流   作:サイデリア

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 初の戦闘回となります。

 感想を書いてくださった方、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。


第三話 勝てばよかろうなのだ

 あっという間に一夏とセシリアマスクの試合の日になった。

 

「おりむーの専用機、間に合ったね」

「今日は使わないけどな」

 

 今日の試合は公平を期すため、互いに量産機のラファール・リヴァイヴで行われる。

 そのため、一夏の専用IS『白式』は展開状態のまま格納庫で待機となった。

 

「これが織斑さんの専用機、ですか。きれいな白ですね」

「あ、セッシー」

「よう」

 

 試合前だが、穏やかに挨拶を交わす一夏とセシリアマスク。

 

「……せっしー、その格好でIS乗るの?」

 

 本音が言う通り、セシリアマスクは体のラインが浮き上がるピッチリアンダースーツではなく、棘の付いた金属製の鎧を着ていた。西洋の騎士甲冑っぽいが、棘の分だけ凶悪そうだ。ちらりと見える脇腹がセクシーだ。

 

「我がオルコット家に伝わる伝統的な戦装束です。織斑さんだっていつもの武道着ですわ」

「おりむー、服ってこれしかないんだよ」

「勘違いするなよ、洗い替えに14着用意してる。同じのを着回しているわけじゃない」

「清潔感をアピールしてるつもりかな?」

『織斑さん、オルコットさん。会場の準備が出来ました。ピットへ移動してください』

 

 アナウンスが入り、二人は互いの定位置へ移動した。

 別れ際にセシリアマスクは、

 

「お互いに全力を尽くしましょう」

 と、一夏へ拳を突きだした。

 

「ああ」

 

 一夏も、セシリアマスクの拳に自分の拳を当てる。

 スポーツマンシップ溢れる光景に、本音もうんうんと頷いていた。

 

 

「どうだ、鈴。観えるか?」

『うん、バッチリ』

 

 アリーナの観客席では、階段席の中段で三脚を立て、テレビクルーが使うようなライブカメラのピントを調節している箒の姿があった。

 カメラにはノートパソコンが繋げられており、幼馴染みの凰鈴音にリアルタイムで画像が送信されている。

 キチンと撮影許可を取った上でのことだが、まさかの本格的機材の導入に、千冬も開いた口が塞がらなかった。

 なお、このカメラの出所は束だ。

 

「姉さんには後でビデオを送るから良いとして。やっぱり幼馴染みの初試合を一緒に観戦したいからな」

『気持ちはありがたいけどさ、箒。頬を染めながら画面越しに見つめるの止めて。さすがに気持ち悪い』

「きっ、気持ち悪……わ、私が……」

『ああっ! いや、違う! 箒が生理的にどうのじゃなくって!』

 

 箒は先日、かなりショッキングな失恋をして以来、情緒不安定で鈴に対して依存気味なのだ。

 先週の休日には、突然中国にいる鈴の元に押し掛けて来たほどだった。

 

(そのうえ、お風呂や布団の中でやったらベタベタしてくるし。断るとこの世の終わりみたいな顔するし)

 

 モニターの向こうで、鈴が箒に分からないようにため息を吐く。

 

(あたしも来週にはIS学園に転入するけど……やっていけるかな)

 

 不安の尽きない鈴であった。

 

 その時、周囲がにわかに騒がしくなった。一夏がピットから会場に姿を見せたのだ。

 

『ふうん。一夏、随分とイケメンになったわね』

「そうなんだ……ははっ」

『いちいち凹まない! 搭乗機はラファールのバニラ仕様ね』

「ああ。武装はヒートホークと40mmサブマシンガン。あとハンドグレネードだな」

『……ねえ、それ本当にIS? MS-06じゃなくて?』

「何を言っている。どこをどう見てもジオン公国製の名量産機、ラファール・リヴァイヴだろう。あのモノアイセンサーを見間違えるものか」

『ザクじゃん! ねえ、参考までに打鉄の武装って言える?』

「それぐらい勉強してるぞ。ビームサーベル1本と、ビームスプレーガン1丁だ」

『GMじゃねーか』

 

 会場のざわめきが大きくなった。セシリアマスクの入場だ。

 

『セシリアマスクって本当にマスクしてたの!?』

「一族の伝統らしい」

『どこの少数民族!?』

「英国貴族だ」

『嘘つけ! そこまでエキセントリックじゃないから、イギリス!』

 

 鈴は箒に頼み、カメラをセシリアマスクに寄せてもらった。

 鈴の表情が険しくなる。

 

『箒、あの鉄仮面ってどんな奴?』

「ああ。正々堂々とした気持ちの良い女だぞ。公平を期すために専用機ではなくラファールでの試合を提案したのも彼女だ」

『ふうん。……トンだ女狐ね』

 

 

 一夏とセシリアマスクは、空中である程度の距離を保って向かい合った。

 

「織斑さん。緊張してます?」

 セシリアマスクがプライベートチャンネルで一夏に尋ねた。

 会場のシグナルに赤いランプが灯る。これが緑になった時が開始の合図だ。

 

「まあな。天下一武道会でも思ったけど、大勢の前で戦うのは苦手だな」

「あら? 誰もいない所で戦う意味があります?」

「あるだろ、そりゃ。自分がどこまでやれるか、確かめるために戦ってるんだ。戦い自体に意味がある」

「強くなることが目的だと? ……なるほど」

 

 赤いランプが消えた。同時に、セシリアマスクは左腕を軽く上げる。

 

 手首と装甲の隙間から、ボールペンサイズのカプセルを放り投げた。

 

「じゃあ、セシリアマスクがISに乗ってる理由って何なんだ?」

「……決まっています。わたくしが――」

 

 カプセルがセシリアマスクと一夏の間、ちょうど真ん中辺りでひび割れた。

 

 緑のランプが灯る。

 

「勝利を獲るため、ですわ」

 

 その瞬間、アリーナ全体が光に包まれた。

 光は空中で割れたカプセルから放たれ、一夏から生身の視覚とハイパーセンサーをまとめて奪う。

 一夏は咄嗟に機体を急降下させた。

 直後に彼がいた場所を、合計19本のレーザーによる集中砲火が襲った。

 判断が遅ければ、シールドエネルギーを根こそぎにされていただろう。

 

 観客の視界もホワイトアウトしていた。箒も強烈な光で目が眩み、すぐ隣にいるはずの相手すら見えなくなっていた。

 

「な、なんだこれは!?」

 叫ぶ箒に、画面の向こうで鈴が答えた。

『閃光弾よ‼ あの鉄仮面、試合開始の直前に仕掛けてやがった!』

 鈴はカメラ越しにセシリアマスクを睨み付けた。

『上手く装甲に隠してたけど、あいつ相当な改造を機体に施しているわ! あんなのとバニラ仕様で戦ったりすれば‼』

「‼ 一夏!」

 

 

「うふ。うふふふふ」

 

 視界が戻らない一夏の耳に、セシリアマスクの声が通信機越しに届く。

 

「勘の鋭い方ですわ。不意打ちは完璧だと思ったのに」

「セシリアマスク!」

「まさか卑怯とは言いませんわよね。うふふ」

 

 一夏は全身の毛穴が開くほどの悪寒を覚え、最大加速でその場を離れた。

 

 ぼやけた視界でアリーナを逃げ続ける一夏を、四方八方から青色の荷電粒子ビームが襲った。

 直撃を避けるだけで精一杯の一夏は、確実にシールドエネルギーを削がれていく。

 

『どういうつもりだ、オルコット‼』

 

 会場のスピーカーから、千冬の怒号が飛んだ。

 並みの人間ならば竦み上がって動けなくなるであろうが、セシリアマスクは涼しい顔だ。

 

「閃光弾のことですか? キチンと試合開始と同時に起爆するようセットしました。フライングではありません。」

『そうではない! ラファール同士での試合を提案したのは貴様自身だろ! その貴様が自分専用機を持ち出すとは‼』

「専用機?」

 

 セシリアマスクは、千冬の言動をあろうことか鼻で笑った。

 

「お言葉ですが、この機体は紛れもなくラファールです。ただし! わたくしに合わせてギンギンにフルチューンしていますけどね!!」

 

 セシリアマスクのISは、その姿を一変させていた。

 

 緑の装甲は蒼に染まっている。

 腰にはスカートのような形状のスラスターが増設されていた。

 

 何より特異なのが、セシリアマスクを囲む合計16門の空中移動砲台だ。

 それぞれが独立した意思を持つかのように縦横無尽に飛び回り、逃げる一夏を猟犬のように追い詰めていた。

 

『攻撃を止めろ、オルコット!』

「黙ってろ、千冬先生」

 

 一夏がオープンチャンネルで割って入り、千冬の言葉を遮った。

 

「条件は『ラファール・リヴァイヴ同士での試合』だろ。何も間違っちゃいない」

『何を言っている!』

「外野は引っ込んでろって話だ! これは俺とセシリアマスクの試合なんだからな!」

 

 正論で一喝された千冬は、思わず言葉を詰まらせた。

 対戦相手が認めた以上、教員と言えど試合に口を挟む資格はない。

 試合は続行となった。

 

 最初こそ掠り当たりでシールドを削られていた一夏だったが、アリーナを高速で旋回飛行しながら逃げ回るうち、急速に被弾率を下げていった。

 死角からの射撃にすら対応し始め、同時に40mmサブマシンガンでの反撃を始めた。

 

 銃を撃つこと自体が始めての一夏は、動き回りながらとにかく弾丸をバラ撒いた。

 移動砲台が一夏の弾丸を避けて旋回する。そうして隊列が乱れた隙に急加速した一夏は、手近にあった移動砲台をすれ違い様にぶん殴った。

 殴り飛ばされた移動砲台は、別のもう1台と激突。2台まとめて大爆発を起こした。

 

「あらあら」

 

 砲台の爆発を隠れ蓑に、一夏は一瞬にしてセシリアマスクへ肉薄。鉄仮面に殴り掛かった。

 セシリアマスクは一夏の拳を、両手に持ったヒートホークを交差させて防御する。

 直後に一夏を背後から移動砲台が射撃。一夏は急降下して回避する。

 レーザーは予め角度が計算されており、一夏が避けてもセシリアマスクに当たることはなかった。

 

「それでこそ、ですわ!」

 

 鉄仮面の下でセシリアマスクが嗤う。

 

「それでこそです、織斑さん! なりふり構わず勝ちに行く甲斐が、あると言うもの‼」

「フェアプレイが聞いて呆れるぜ、セシリアマスク!」

「仕方ないでしょう。一目見て理解しました、貴方がとても強いということが。それに」

 

 手近な移動砲台をサブマシンガンで撃ち落とす一夏。

 攻撃がわずかに緩んだ隙に、すっかり気分が高揚しているセシリアマスクへ話し掛けた。

 

「それに、何だ?」

「お生憎様。これがわたくしの王道ですわ」

 

 セシリアマスクも銃を構えた。

 一夏の物より銃身が長く、口径も大きい、狙撃用のライフルだった。

 

「わたくしは武術家でもなければ、父のような正義超人でもない! 戦いにセンチメンタリズムを持ち込むことは致しません!」

 

 移動砲台を次々に撃墜する一夏。

 その肩装甲を、セシリアマスクの正確無比な射撃が撃ち抜いた。

 

「どんな手段を使おうと、最終的に! 勝てばよかろうなのだァーッ!!」

 

 突然、残っていた移動砲台が射撃を止め、全エネルギーを使って一夏に特攻を仕掛けた。

 それまで線の動きで動き回る相手を追っていた一夏は、突如点の動きに変わった標的に一瞬対処が遅れてしまった。

 近づく端から叩き潰していくが、3台の移動砲台に組み付かれた。

 

「弾けろ!」

 

 セシリアマスクの言葉をキーとして、一夏に取り付いた移動砲台が一斉に自爆した。

 観客席まで揺らすほどの猛烈な衝撃がアリーナを迸った。

 観客席は保護スクリーンで守られているはずだが、それを越えて衝撃が伝わるほどの爆発だった。

 

 

「くっ! オルコットの奴、移動砲台に何を仕込んでいたんだ!?」

 教員用の観戦室も衝撃で激しく揺れていた。

 それこそブリュンヒルデがバランスを崩すぐらいに。

「ほ、本来のオルコットさん専用機にも遠隔式の移動砲台――ファングが搭載されています。今使っているものが同じであれば、ジェネレーターを故意に誘爆させることで戦術級ミサイルに匹敵する爆発が起こせます!」

 体の一部がひときわ激しく揺れた山田教諭は、胸部に走った痛みに耐えながら千冬に解説した。

「戦術ミサイルだと!? 一夏はどうなった‼」

 黒煙に包まれたアリーナ。

 見えるのはセシリアマスクの姿だけだ。

 

 

 セシリアマスクは銃を構えたまま、アリーナの巨大スクリーンを横目で確認した。

 そこには対戦者二人の残存シールドエネルギーが表示されている。

 ほぼ無傷のセシリアマスクと、残り1割を切った一夏。

 

 セシリアマスクは一夏の拳とぶつけ合ったヒートホークに目をやった。

 1つはひび割れ、直接攻撃を受け止めたもう1つは刃の部分が欠けていた。

 僅かに減らされたシールドエネルギーの分のダメージであった。

 

「さすがは天下一武道会の準優勝者ですわね。直接殴られたらどうなっていたか」

 

 アリーナに立ち込めた爆炎を突き破り、高速で飛行する物体がセシリアマスクに迫る。

 ハイパーセンサーが動体反応を捉え、セシリアマスクはすぐさまライフルでそれを撃ち抜いた。

 

 破壊されたのは、高速で投擲された緑色のショルダーアーマーであった。

 

 セシリアマスクが気を取られた僅かな隙に、反対側に回り込んだ一夏が最高速度で突撃した。

 一夏のISは装甲がほとんど剥がれ落ち、生身に飛行ユニットだけ身に付けているような状態だった。

 その分だけ身軽になり、猛スピードでセシリアマスクへ接近する。

 

 振り向いたセシリアマスクは温存していた移動砲台を射出し、同時にライフルの銃身を折り畳んで連射モードに切り替えた。

 

 ライフルと移動砲台から放たれるフルオートの一斉射撃。

 おびただしい弾幕を、一夏は素手で片っ端から叩き落とした。

 そして、セシリアマスクへ肉弾となって猛突進する。

 

 セシリアマスクは嗤い、弾切れしたライフルを放り捨てた。

 ISの装備ではなく、鎧の両肩から新たにミニガンを展開。至近距離まで肉薄した一夏に照準を合わせた。

 次の瞬間。

 ミニガンの弾は、一夏の残像を貫いた。

 

「しまッ!?」

 

 気づけばセシリアマスクの周囲にはハンドグレネードが3つ、安全ピンが外れた状態で漂っていた。

 突撃すると見せ掛け、姿を消す寸前に一夏が投げたものだ。

 

 回避どころか防御も間に合わず、セシリアマスクは無防備のまま爆発を喰らった。

 

「ぐぅぅぅっ!?」

 

 セシリアマスクはシールドエネルギーを4割以下まで減らされた。

 しかし怯むことなく、移動砲台の最後の一つを手持ちの銃器のように両手で構え、銃口を空へ向けた。

 

「かー! めー!」

 

 太陽を背にして、腰元で両手首を合わせて気を溜める一夏がそこにいた。

 

 一夏は舞空術で機体に強引なブレーキを掛け、セシリアマスクと衝突する寸前に急速上昇していた。

 そのあまりの急加速により生じた残像をセシリアマスクは撃ち抜いたのだ。

 当然、慣性を制御できるISといえども、一夏の肉体には常人なら致命的なGが掛かったが、そこは鍛えぬかれた武術家。歯を食いしばって耐えた。

 

「はー! めー!」

 

 一夏の気が、手の中に集束して輝き出した。

 

「その技……知っていますわ‼」

 

 セシリアマスクが移動砲台のトリガーを引いた。

 移動砲台から放たれた荷電粒子ビームは、一直線に一夏へ向かう。

 

「波ァーッ‼」

 

 一夏も気を解放した。

 ビームとかめはめ波の弾速は同等だ。先に撃った方が有利となる。

 

 しかし一夏は、敢えてセシリアマスクを先に撃たせた。

 

 そして自らはかめはめ波を真後ろへ撃ち出した一夏は、気を推進力へ換えて射撃直後で棒立ちとなったセシリアマスクへ、自らを砲弾として撃ち出したのだ。

 

「がッはッ‼」

 

 荷電粒子ビームを避け、一夏はセシリアマスクの胴体に脳天からぶち当たった。

 

 ISの絶対防御を、刺付の西洋鎧もろとも粉砕する。

 

 薄れていく意識の中、セシリアマスクは3度嗤っていた。

 

(必殺のかめはめ波を攻撃ではなく、推進力にするとは……思いきったことをなさいますね。ですが、勝負は――)

 

 直後、セシリアマスクはアリーナの地面に叩きつけられて埋没。完全に意識を失った。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 一夏は呼吸を整えながらスクリーンを見上げ、大きなため息を吐いた。

 

「間に合わなかったか。あ~」

 

 スクリーンには『Winner セシリアマスク』の文字。

 激突した際、残りわずかだった一夏のシールドエネルギーが先に尽きてしまったのだった。

 

「行けると思ったんだけどな」

 

 そうボヤきながら、一夏は完全に気を失っているセシリアマスクを肩に担いで、フラフラとピットへ飛んでいった。

 

 

「異議ありだ! どう見ても勝ったのは一夏だったぞ!」

 静まり返っていた観客席で、箒が声を荒げた。

『落ち着きなよ、箒。ルール的にはセシリアマスクの粘り勝ち』

 モニター越しの鈴は、冷静な態度で箒を宥めた。

「そんなの納得できるか! 誰が見たって一夏の――」

『ええ、そうね。代表候補生が素人相手に反則すれすれの行為に及び、挙げ句相手の奇策に引っ掛かり、最後はルールに救われる。下手に負けるよりみっともない結果よね』

「むう……それはまあ、確かにな」

『せっかく勝てたのに、セシリアマスクはそれを誇りに思えるのかな』

 いささか腑に落ちない部分はあるが、鈴の言葉に箒はひとまず落ち着いた。

 

 

 しかし、翌日の放課後。

 病室で意識を取り戻したセシリアマスクは、鈴の予想を裏切っておおいに勝ちを誇っていた。

「そう、やっぱりわたくしの勝ちでしたのね! 計算通りですわ、オーッホッホッホッホ!」

 

 担任の立場上、お見舞いに来ていた千冬と山田教諭は、あまりの面の皮の厚さに呆れるのを通り越して感心さえしていた。

 

「さすが鉄仮面、面の皮が厚い……。ていうか、入院中もそのままなんですね、オルコットさん」

「とはいえ、お前は全治三ヶ月の重体。それでは来月のクラス対抗戦どころか、次の学年選抜戦出場も危うい。クラス代表はいち――織斑にやってもらう」

「構いませんわ」

「……意外ですね。あそこまでして織斑くんに勝とうとしたのに」

「わたくしは、あの方に勝ちたかっただけですわ。クラスの代表に執着したわけではありません」

「お前、あいつを知っているのか?」

 

 セシリアマスクは千冬たちから視線を外し、天井へ顔を向けた。

 

「面識はありません。わたくしが一方的にあの方の戦う姿を観ただけですわ」

 

 第21回天下一武道会。セシリアマスクはその会場の観客席で、始めて織斑一夏を見た。

 

「驚きましたわ。あの方、とても楽しそうに戦っていたのです。

 

 家の伝統やら国の誇りなどという見えないものに縛り付けられていたわたくしには、彼の姿がとても眩しく見えました。

 

 まさか進学予定だったIS学園で会えるとは思っていませんでした。これも奇縁ですわ」

「それで、実際に戦ってみてどうだった、うちの弟は」

「そうですね……」

 

 セシリアマスクは少し考え、鉄仮面の下で嗤った。

 

「今度は全力のわたくしで戦いたいですわ。きっと楽しい試合になりますもの」

「ふっ。希望に沿えるかな。あいつはまだまだ強くなる」

「あら? それはわたくしもですわ。それに、どうやらわたくしには形振り構わないファイトスタイルが性に合っていますの。今後はますます、強くて悪い女になりますわ。オーッホッホッホ!」

 

 いっそ清々しいまでのセシリアマスクに、教師二人は「更生の余地なし」と首を振るのだった。

 

 

 こうして一夏は、1ー1のクラス代表となった。

 だが、セシリアマスクとの試合はIS学園での戦いの始まりに過ぎない。

 一夏の修行は、まだまだ続く。

 

 

 

 ところ変わって、ここは南米・ギアナ高地。

 大自然溢れる景観の中に、ウサミミを生やした平屋サイズの人工建造物が場違いに建っていた。

 篠ノ之束の移動式ラボラトリーだ。

 

「ん~。いっくん、負けちゃったかぁ。もう、わたしに言ってくれれば鉄仮面の機体なんか目じゃないぐらいに魔改造してあげたのに」

 

 口調は残念そうでも悔しそうでもない束。

 経験値も機体性能も格上のセシリアマスクを、一夏は実質ノックアウトしている。実力で劣っている訳ではないと捉え、そこまで気にしていなかった。

 

 何より、今の束にはそれ以上の気掛かりがあった。

 

「う~。これは、間違いないかな」

 

 セシリアマスクの本来の専用機。

 今後IS学園に編入予定の各国代表候補生たちの専用機。

 各国で開発が進められている新型機。

 

 非合法なものも含めた様々な方法で集めた情報を精査し、束は1つの結論に達した。

 

「わたし以外に、ISをコアから開発してる奴がいる」




 実はロビンではなくケビンでしたー、ってやりたかったんだ……。
 そして本編開始前からある意味で籠絡済。やっぱせっしーはチョロかった。

 キャラの変遷としては、
①色的にロビンじゃなくてケビンだよな
②じゃあラフファイトスタイルでいいか
③でもセシリアなんだからチョロくないと

 とか考えてたらこうなりました。

今回のネタ

MS-06
GM
 機動戦士ガンダムより。
 前者はミリオタの方からの人気も高いザクii。なお、ハンドグレネードはOVAの別作品から。
 後者は主人公機ガンダムの量産型。

勝てばよかろうなのだ
 ジョジョの奇妙な冒険より。
 第2部ラスボス、カーズの名台詞。

セシリアマスクの鎧
 さらっと流したが、青くて刺が付いているのはロビンマスクの息子、ケビンマスクの物。
 ケビンも脇腹をチラ見せさせていた。
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